会計名及び科目 | 空港整備特別会計(平成20年度以降は社会資本整備事業特別会計(空港整備勘定)) | |||||
(項)空港等維持運営費 | ||||||
(項)航空路整備事業費 | ||||||
部局等 | 18地方航空局等 | |||||
契約名 | 名古屋ASR駆動機構等定期整備等89件 | |||||
契約の概要 | 航空管制用レーダーの構成品のうち駆動機構、方位信号発生器等の早期に経年劣化するものについて、定期的に部品の交換等を行うもの | |||||
契約金額 |
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契約の相手方 | 5会社 | |||||
契約 | 平成17年4月〜19年10月 | 随意契約 | ||||
部品材料費の積算額 |
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低減できた部品材料費の積算額 |
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国土交通省は、航空交通の安全と円滑な運航を確保するための航空保安業務の一環として、管制業務等を実施しており、管制業務等の円滑な実施を支援するために、航空管制用レーダー等(注1)
(以下「レーダー」という。)の運用を行っている。そして、レーダーは、平成19年度末において全国の空港等に7種類、計67基設置されている。
レーダーは、電波を送受信する空中線装置、制御監視装置等から成っていて、これらの装置は、駆動機構、方位信号発生器等の構成品から組み立てられたものとなっている(参考図参照)
。
27地方航空局等(注2)
は、レーダーの性能を維持することなどを目的として、レーダーの構成品のうち駆動機構、方位信号発生器等の早期に経年劣化するものについて、各構成品の使用年数等に応じて、定期的に分解、点検、部品の交換等を行う整備(以下「定期整備」という。)を、レーダーの製造業者又はその代理人(以下「製造業者等」という。)に随意契約により請け負わせている。
定期整備は、国土交通省航空局が構成品ごとに制定した共通仕様書(以下「共通仕様書」という。)等に基づき行うこととされている。そして、共通仕様書においては、整備間隔、整備内容及び定期的に交換する部品の規格・数量等が規定されている。
定期整備を請負に付する場合の契約(以下「定期整備請負契約」という。)に係る予定価格の積算に当たり、その積算の基礎となる標準費用は、国土交通省航空局が積算の統一及び適正化を図ることなどを目的として制定した航空無線施設定期整備積算基準(昭和63年空無第26号。以下「定期整備積算基準」という。)等に基づき積算することとされている。
定期整備積算基準によると、標準費用の一部である部品材料費の積算に当たり、その積算の基礎となる部品の単価については、国土交通省航空局が制定した「航空無線工事積算基準」(昭和63年空無第26号)及び「航空無線工事積算基準等運用指針」(昭和63年空無第26号)に基づき積算することとされている。
これらによれば、刊行物である積算参考資料に掲載されていない部品の単価を積算する場合は、2者以上の専門業者等から見積りを徴して査定するなどした上で、これを実例価格、市場価格等と比較検討して積算単価を設定することとされている。
前記のとおり、定期整備請負契約に係る部品材料費の積算は積算の統一及び適正化を図ることなどを目的として制定された定期整備積算基準に基づき行うこととされている。
そこで、経済性等の観点から、部品材料費の積算が統一的かつ適正に行われているかなどに着眼して検査した。
本院は、17年度から19年度までの間に定期整備請負契約を締結した実績のあった18地方航空局等(注3) において、共通仕様書に規格が規定されている部品を交換する構成品に係る89定期整備請負契約(契約金額計9億2798万余円)の部品材料費(積算額計3億9244万余円)を対象として、国土交通本省及び12地方航空局等(注4) において、契約関係書類等により会計実地検査を行い、残りの6地方航空局等(注5) については契約関係書類等を提出させて、これにより検査を行った。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
すなわち、地方航空局等は、部品材料費の積算に当たり、レーダーの定期整備は当該レーダーの製造業者しか履行できない状況を踏まえて、当該レーダーの製造業者等から見積りを徴して、これを査定し積算単価を設定しているだけで、他の地方航空局等の実例の積算単価をすべて正確に把握することは困難であるとして、他の地方航空局等が設定した実例の積算単価との比較検討を十分に行っていなかった。
そこで、前記の89定期整備請負契約において交換した部品のうち、共通仕様書に規格が規定されているものであって、かつ、同一年度内に2契約以上において交換されたものについてみると、これに該当するものは469種類、15,038点となっていた。これらについて、部品の積算単価を比較したところ、264種類、10,522点については積算単価が同一であったものの、205種類、4,516点については同一規格であるにもかかわらず、その積算単価に開差が生じており、このうち最も廉価なものに対する高価なものの倍率が1.5倍以上2倍未満のものが47種類、688点、2倍以上のものが110種類、2,500点となっていた。
レーダーの構成品であるロータリージョイントのベアリングについてみると、その積算単価は、大阪航空局及び仙台、鹿児島両空港事務所においては4,374円である一方、福岡空港事務所においてはその約2倍の8,667円となっていて、これらの開差は4,293円となっていた。
このように、部品材料費の積算に当たり、同一規格である部品については、その積算単価も統一的に設定すべきであるのに、積算単価に開差が生じている事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
前記の積算単価に開差が生じている205種類、4,516点の部品について、各年度及び各規格ごとに、地方航空局等が設定した積算単価の中から最も廉価なものを用いて他の地方航空局等の部品材料費を修正計算すると計3億7009万余円となり、前記の部品材料費の積算額計3億9244万余円を2234万余円低減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、国土交通省において、地方航空局等における定期整備で同一規格の部品が多数交換されているのに、地方航空局等において部品の積算単価を統一的かつ適正に設定する仕組みを構築していなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、国土交通省は、20年9月に、部品材料費の積算を適切に行うために、定期整備積算基準を改正するとともに、統一的な積算単価を定期整備部品材料価格表に設定するなどして、同年10月以降に積算する定期整備請負契約から適用する処置を講じた。
(参考図)