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(820) 米軍普天間飛行場の代替施設の建設に伴う地質調査及び海象調査の技術業務委託契約において、支出負担行為をすることなく追加で業務を実施させるなどしていて、会計法令等に違背しているもの


(820) 米軍普天間飛行場の代替施設の建設に伴う地質調査及び海象調査の技術業務委託契約において、支出負担行為をすることなく追加で業務を実施させるなどしていて、会計法令等に違背しているもの

会計名及び科目
一般会計 (組織)防衛本省 (項)防衛本省
部局等
防衛本省(平成19年8月31日以前は防衛施設庁本庁)(支出負担行為の実施計画担当部局)
沖縄防衛局(平成19年8月31日以前は那覇防衛施設局)(契約及び支払部局)
契約名
(1) シュワブ(H14)地質調査(その1)
(2) シュワブ(H14)地質調査(その2)
(3) シュワブ(H14)地質調査(その3)
(4) シュワブ(H14)地質調査(その4)
(5) シュワブ(H14)海象調査
契約の概要
米軍普天間飛行場の代替施設を沖縄県名護市辺野古(へのこ)沿岸域に建設するための基本設計に先立ち、海底の地質調査及び海象調査を業務委託するもの
契約の相手方
(1) サンコーコンサルタント株式会社
(2)(3) パシフィックコンサルタンツ株式会社
(4) 応用地質株式会社
(5) 株式会社東京久栄
契約
(1) 平成15年3月 公募型競争後の随意契約
(2)〜(5) 平成15年3月 公募型競争契約
契約額
(1)
97,650,000円
 
(2)
47,985,000円
 
(3)
93,450,000円
 
(4)
540,750,000円
 
(5)
61,950,000円
 
841,785,000円
 
支払
(1) 平成15年7月、18年4月
(2) 平成15年6月、18年4月
(3) 平成15年6月、18年4月
(4) 平成16年3月、18年4月
(5) 平成15年8月、18年4月
和解金の支払
(1)〜(5) 平成20年3月
和解金額
(1)
129,800,000円
 
(2)(3)
1,090,000,000円
 
(4)
873,200,000円
 
(5)
87,000,000円
 
2,180,000,000円
 
適正な会計処理を行っていなかったため支払うこととなった額
 
2,180,000,000円
(平成19年度)

1 技術業務委託契約に係る予算執行の概要

(1) 地質調査等5契約の概要

 沖縄防衛局(平成19年8月31日以前は那覇防衛施設局。以下「沖縄局」という。)は、沖縄県宜野湾市に所在する米軍普天間飛行場の代替施設の建設予定地を「キャンプ・シュワブ水域内名護市辺野古(へのこ)沿岸域」とするなどの「普天間飛行場の移設に係る政府方針」(平成11年12月28日閣議決定。18年5月30日廃止)等に基づき、基本設計に先立ち海底の地質調査及び海象調査を行うために、15年3月に、履行期限を16年3月末とするシュワブ(H14)地質調査(その1)等の5件の技術業務委託契約(以下「地質調査等5契約」という。)を、サンコーコンサルタント株式会社、パシフィックコンサルタンツ株式会社、応用地質株式会社及び株式会社東京久栄(以下、これらを「受託会社4社」という。)と契約金額計841,785,000円で締結している。そして、地質調査等5契約の仕様書によれば、地質調査に当たっては、機械ボーリングを実施して、土質試験を行うこととしていて、海象調査に当たっては、波浪、流況及び潮位の調査を行うこととしていた(以下、これらを「調査業務」という。)。

(2) 事態の経緯

 沖縄局は、地質調査等5契約に基づく調査業務の実施に当たり、沖縄県との公共用財産使用についての協議の中で、同県より海草藻場・さんごへの影響を回避するよう求められており、仕様書で定めていない業務(以下「追加業務」という。)として、調査予定地点周辺の海底の状況を把握するための潜水調査を15年度に受託会社4社に実施させていた。
 しかし、同県が、海草藻場等への影響について専門家へのヒアリングを行うなどしたことから、上記協議の同意までに時間を要して、調査業務の年度内完了が困難となったため、沖縄局は、前払金計252,155,000円を除く計589,630,000円を16年度に繰り越して、履行期限を17年3月末とする変更契約を締結していた。
 また、米軍普天間飛行場の代替施設建設に反対する地元住民等の阻止行動(以下「阻止行動」という。)への対応のために、沖縄局は、警戒船を大量に導入するなどの追加業務を16年度に受託会社4社に実施させていたが、さらに、阻止行動が激化したことなどから、調査業務の年度内完了が困難となったため、前年度と同額を17年度に繰り越して、履行期限を18年3月末とする変更契約を締結していた。
 上記のように、地質調査等5契約の仕様書で定めていた調査業務はほとんど実施されないまま、17年11月に、米軍普天間飛行場の代替施設の建設予定地が変更されたことから、沖縄局は、地質調査等5契約に基づく調査業務を一時中止して、その後契約解除を行い、契約金額計841,785,000円を上限として支払うこととしたが、受託会社4社と支払額及び仕様書の変更に伴う契約変更の合意に至らず受領を拒否されたため、17年度に繰り越していた計589,630,000円を、18年4月に、那覇地方法務局に供託していた。
 受託会社4社は、同年8月までに国を相手取り、損害賠償請求事件等を提訴したが、20年3月に、和解が成立して、沖縄局は、和解金計2,180,000,000円を受託会社4社に支払っていた。

(3) 地質調査等5契約に係る予算執行

 国の予算の執行に当たっては、財政法(昭和22年法律第34号)、会計法(昭和22年法律第35号)等(以下「会計法令等」という。)に基づき行うこととされている。
 会計法令等によれば、財務大臣の指定する経費は、各省各庁の長が、支出負担行為の実施計画に関する資料を作製して、財務大臣の承認を経なければならないこととなっており、地質調査等5契約の予算は、財務大臣の指定する経費となっている。そして、支出負担行為担当官は、支出負担行為をするに当たっては、法令又は予算の定めるところに従って行わなければならず、実施計画に定める金額を超えてはならないこととなっており、実施計画について変更を要するときは、その事由を明らかにして、財務大臣の承認を求めなければならないこととなっている。
 また、契約担当官及び支出負担行為担当官は、工事又は製造その他についての請負契約を締結した場合においては、自ら又は補助者に命じて、契約の適正な履行を確保するため必要な監督をしなければならないこととなっている。
 防衛本省(19年8月31日以前は、防衛施設庁本庁。以下「本省」という。)において、技術業務委託契約の監督に関する事務については、「技術業務委託の契約等の事務処理関係の運用について(通知)」(平成2年施本建企第46号)により、「防衛施設庁における建設工事の監督等に関する訓令」(昭和40年防衛施設庁訓令第15号。以下「監督等に関する訓令」という。)に準じて行うこととなっている。監督等に関する訓令によれば、支出負担行為担当官の補助者である工事監督官は、工事内容を変更するなどの必要があると認めたときは、速やかにその旨を支出負担行為担当官に報告しなければならないこととなっており、支出負担行為担当官から工事内容の変更について指示を受けたときは、変更部分に係る図面、仕様書及び見積内訳書を作成して、工事変更伺書によりこれらを支出負担行為担当官に提出しなければならないこととなっている。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、本省及び沖縄局において、沖縄局が14年度に締結した地質調査等5契約について、合規性等の観点から、それぞれの契約に係る会計経理が会計法令等に従って適正に行われているかなどに着眼して、契約書等の書類により会計実地検査を行った。

(2) 検査の結果

 検査したところ、次のとおり会計法令等に違背した事態が見受けられた。
 すなわち、沖縄局において、支出負担行為をすることなく潜水調査や警戒船を大量に導入するなどの追加業務を受託会社4社に実施させていて、追加業務の経費が予算額を超える事態となっていたにもかかわらず、本省は、増額の予算措置を講じていなかったり、支出負担行為の実施計画について財務大臣の変更承認を経ていなかったりしており、沖縄局は、追加業務に係る受託会社4社との契約変更を行っていなかった。
 また、沖縄局の支出負担行為担当官が任命していた統括工事監督官、主任工事監督官及び工事監督官は、履行期間の延期に関する伺書は作成していたものの、追加業務については、口頭での報告としており、報告を受けた支出負担行為担当官は、速やかに精算すべきであるとの指示をしていたとしているが、これらの報告及び指示の具体的な内容について関係資料により確認することはできなかった。一方、本省は、阻止行動に屈することなく地質調査等5契約に基づく調査業務を実施させるよう沖縄局に指示をしていた。この指示を受けた沖縄局は、追加業務を受託会社4社に実施させることを優先したため、監督等に関する訓令に定める手続を先送りしていた。
 そして、追加業務の経費については、防衛庁(19年1月9日以降は防衛省)は、契約金額を変更していない以上、これを超える額は支払えないとの判断から、契約金額を上限として支払うことに決定したため、前記のとおり、受託会社4社は、国を相手取り、実際に要した追加業務の経費とこれに係る遅延損害金等の支払を請求するとして、東京地方裁判所にそれぞれ損害賠償請求事件等を提訴した。同裁判所は、20年1月に、国及び受託会社4社に対して、「本件業務委託契約に係る変更手続等の履践状況はともかく、これまでの当事者双方の主張、証拠調べ手続の結果から認められる被告の指示に基づき原告が行った業務実態にかんがみると、被告には本件業務委託契約上の支払義務が発生していると認めるのが相当である」旨の和解条項案を示して、国及び受託会社4社がこれを受け入れたことから、同年3月に、和解金計2,180,000,000円で和解が成立した。この結果、本省は予算の流用等所要の手続を行い、沖縄局は受託会社4社に対して、同月に、和解金計2,180,000,000円を支払っていた。
 前記のように、沖縄局において、支出負担行為をすることなく追加業務を実施させていて、追加業務の経費が予算額を超える事態となっていたにもかかわらず、本省は、増額の予算措置を講じていなかったり、支出負担行為の実施計画について財務大臣の変更承認を経ていなかったりしていたこと、沖縄局は、追加業務に係る受託会社4社との契約変更を行っていなかったことは、地質調査等5契約に係る予算執行に当たり適正な会計処理を行っておらず適切とは認められない。
 したがって、上記のように地質調査等5契約に係る予算執行において、裁判上の和解という形式により和解金計2,180,000,000円を支払うこととなった追加業務に関して、支出負担行為をすることなく実施させるなど会計法令等に違背した取扱いを行っていて、不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、本省及び沖縄局において、地質調査等5契約に係る予算執行に当たり、会計法令等を遵守して適正に執行すべきであることへの認識が十分でなかったことなどによると認められる。