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  • 平成19年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

(2) 部隊発注工事により取得した財産を国有財産台帳等に正確に記録するよう適宜の処置を要求し、適切な財産管理を行うために国有財産台帳等への正確な記録が確実に行われる体制を整備するよう是正改善の処置を求めたもの


(2) 部隊発注工事により取得した財産を国有財産台帳等に正確に記録するよう適宜の処置を要求し、適切な財産管理を行うために国有財産台帳等への正確な記録が確実に行われる体制を整備するよう是正改善の処置を求めたもの

所管、会計名及び科目
防衛省所管 一般会計
(組織)防衛本省
(項)防衛本省
 
 
(項)施設整備費
 
 
(項)装備品等整備諸費
平成18年度は、
防衛省所管 一般会計
(組織)防衛本省
(項)防衛本庁
 
 
(項)施設整備費
 
 
(項)装備品等整備諸費
 
平成17年度は、
内閣府所管 一般会計
(組織)防衛本省
(項)防衛本庁
 
 
(項)施設整備費
 
 
(項)装備品等整備諸費
部局等
海上幕僚監部
部隊発注工事の概要
施設の取得、修繕等のために部隊等の長が部外に発注する工事
国有財産台帳等に記録すべき価格の基礎となる工事費
12億9759万円
(平成17年度〜19年度)

【適宜の処置を要求し及び是正改善の処置を求めたものの全文】

部隊発注工事により取得した財産の国有財産台帳等への記録について

(平成20年10月20日付け 防衛省海上幕僚長あて)

 標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正の処置を要求し及び是正改善の処置を求める。

1 部隊発注工事及び財産管理の概要

(1) 部隊発注工事の概要

 貴自衛隊における施設の取得、修繕等は、地方防衛局等が部外に発注して実施しているもののほか、防衛省における自衛隊の施設の取得等に関する訓令(平成19年防衛省訓令第66号。平成19年8月以前は建設工事に関する訓令(昭和41年防衛庁訓令第7号)及び防衛省における自衛隊の施設の取得等に関する訓令(昭和37年防衛庁訓令第72号)。以下、廃止された訓令を含めて「取得訓令」という。)等に基づき、部隊及び機関(以下「部隊等」という。)の長が工事の施行を部外に発注して実施している(以下、このような工事を「部隊発注工事」という。)。そして、貴自衛隊は、部隊発注工事として、17年度から、各基地内に情報・通信設備(架空及び地中に敷設された光ファイバケーブル、地中に敷設する光ファイバケーブルを格納するための埋設管路、建物内に敷設されて建物と一体不可分となっている光ファイバケーブル等から構成されている。)を設置する基地内基幹伝送路を整備している。
 貴自衛隊が部隊発注工事を実施する場合には、海上自衛隊契約規則(昭和43年海上自衛隊達第17号)等に基づき、調達要求元となる部署が契約担当部署に工事等役務調達要求書(以下「調達要求書」という。)を提出することにより、契約担当部署が契約の手続を始めることになっている。

(2) 防衛省における国有財産及び物品の管理

 防衛省は、国有財産法(昭和23年法律第73号)、物品管理法(昭和31年法律第113号)等に基づき、その所管に属する国有財産及び物品の管理を行っている。
 国有財産の管理は、防衛大臣からその事務の一部を分掌している経理装備局会計課長、海上幕僚長等の部局長が行っており、国有財産のうち不動産及びその従物等については、防衛省所管国有財産(施設)の取扱いに関する訓令(昭和38年防衛庁訓令第30号。以下「取扱訓令」という。)に基づき、上記部局長のうち経理装備局会計課長及び地方防衛局等の長(以下「施設部局長」という。)が管理することとなっている。そして、施設部局長は管内に所在する部隊等の施設を管理していて、その用途又は目的に応じて当該施設を部隊等に供用しており、部隊等においては、供用に関する事務を行う供用事務担当官が、供用された施設の維持及び保存を行うこととなっている。また、供用事務担当官は、供用に関する事務の一部を当該施設を使用している部隊等の長に補助させることができることとなっており、この場合、部隊等の長は、当該施設に修繕等の必要が生じたときは、供用事務担当官に協議しなければならないこととなっている。
 また、物品の管理については、防衛大臣からその事務の委任を受け又は事務の一部を分掌している海上幕僚長及び部隊等の長が物品管理官又は分任物品管理官(以下「物品管理官等」という。)として行っている。

(3) 国有財産台帳及び物品管理簿

ア 国有財産台帳

 施設部局長は、その所属に属する国有財産について、国有財産の分類及び種類ごとに、区分及び種目、所在、数量、価格、異動年月日等を記載した国有財産台帳を備えて、管理することとなっている。また、施設部局長は、国有財産の取得、所管換、処分等があった場合には、直ちにこれを国有財産台帳に記録することとなっている。そして、建物及び工作物の場合、新築(工作物の場合は新設)、模様替(建物等の主要構造を変更することなく財産を効率的に使用するための改良工事)等により、当該建物等の価格等に変動があった場合は国有財産台帳に記録することとなっており、一方、建物等の減耗を回復して原形に近づけるために行う工事は、国有財産台帳に記録する必要がないとされている。
 そして、貴自衛隊においては、部隊発注工事により国有財産の取得や価格等の変動があった場合には、取得訓令及び取扱訓令に基づき、供用事務担当官等がその内容を施設部局長に報告することとなっており、施設部局長は、その報告に基づいて国有財産台帳に記録することになっている。

イ 物品管理簿

 物品管理官等は、その管理する物品について、物品の分類、細分類及び品目ごとに、物品の増減等の異動数量、現在高その他物品の異動に関する事項等を物品管理簿に記録することとなっており、政令で定める重要な物品については、その取得価格を記録することとなっている。
 そして、貴自衛隊は、物品を取得しようとする場合には、物品管理官等が契約担当部署に対して取得のため必要な措置を請求することとなっており、物品管理官等は、当該取得物品の納入の際に作成される納品書・(受領)検査調書に基づいて物品管理簿に記録することとなっている。

2 本院の検査結果

(検査の観点及び着眼点)

 国有財産台帳及び物品管理簿(以下、これらを合わせて「国有財産台帳等」という。)は、国有財産及び物品(以下、これらを合わせて「国有財産等」という。)を適切に管理するための帳簿であり、新たに国有財産等を取得した場合には、国有財産法又は物品管理法に従って国有財産台帳等に記録する必要がある。
 また、国有財産台帳等を基に毎年度作成される「国有財産増減及び現在額報告書」及び「国有財産増減及び現在額総計算書」並びに重要物品を報告の対象とする「物品増減及び現在額報告書」及び「物品増減及び現在額総計算書」(以下、これらを合わせて「国有財産報告書等」という。)は、国有財産等の現況を国会を通じて国民に対して明らかにするという性格を有するものとされている。
 そこで、正確性、合規性等の観点から、17年度から部隊発注工事により貴自衛隊が取得した基地内基幹伝送路等の財産が国有財産台帳等に適切に記録されているかなどに着眼して検査した。

(検査の対象及び方法)

 本院は、12部隊等(注) において会計実地検査を行った。そして、12部隊等における基地内基幹伝送路の整備により取得した財産(工事件数41件、工事費11億9971万余円)及びそれ以外に取得した財産(工事件数132件、工事費13億7928万余円)を対象として、契約書、国有財産台帳等の書類により検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。

ア 貴自衛隊は、前記のとおり、基地内基幹伝送路の整備により情報・通信設備を新たに取得していた。そして、これらは国有財産法又は物品管理法に従い、国有財産台帳等に記録する必要があった。
 しかし、大部分の部隊等は、情報・通信設備の取得を役務の調達であると判断して、新たな財産を取得したとは解釈していなかったため、同設備は国有財産台帳等に記録されていなかった(国有財産台帳等に記録されていなかった財産の取得に係る工事件数40件、工事費計11億8868万余円)。

<事例1>

 舞鶴造修補給所は、舞鶴地方総監部の契約担当部署に調達要求書を提出して、舞鶴地区(舞鶴航空基地を除く。)及び新潟地区に所在する部隊等の基地内基幹伝送路を平成19年3月までに工事費計53,096,400円で整備している。しかし、取得した基地内基幹伝送路は、国有財産台帳等に記録されていなかった。

イ 基地内基幹伝送路以外の財産について、調達要求元となる部署が供用事務担当官又は分任物品管理官と協議を行わないまま、直接契約担当部署に調達要求書を提出していたり、模様替等に該当するものを国有財産台帳に記録する必要がないと判断していたりなどしたため、照明装置、囲障等の一部財産が記録されていなかった(国有財産台帳等に記録されていなかった財産の取得に係る工事件数28件、工事費計1億0890万余円)。

<事例2>

 横須賀造修補給所は、横須賀地方総監部の契約担当部署に調達要求書を提出して、既設のフェンス(全長177m)及び基礎を撤去の上、同じ場所に新たにフェンス(全長177m)を設置する工事を3,675,000円で平成20年3月までに実施している。この場合、新たに設置したフェンスについては国有財産台帳に記録する必要があった。しかし、同造修補給所は、あらかじめ部隊等の長である同造修補給所長が工事内容を供用事務担当官に上申しなければならないにもかかわらず、軽微な工事であり、供用事務担当官に対する協議が不要であると判断して、供用事務担当官との協議を行わないまま工事を実施していた。このため、新たに設置したフェンスは国有財産台帳に記録されていなかった。

(是正及び是正改善を必要とする事態)

 上記のように、新たに国有財産等を取得しているにもかかわらず、国有財産法又は物品管理法に従った国有財産台帳等への記録が行われておらず、その結果、国有財産報告書等が国有財産等の現況を正しく反映したものとなっていなかったりしている事態は適切とは認められず、是正及び是正改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

 このような事態が生じているのは、貴自衛隊において、部隊発注工事により新たに取得した財産を国有財産台帳等に記録して管理すべきであることについての認識が十分でなかったり、部隊発注工事の調達要求元である部署と国有財産の供用事務を担当する部署又は物品管理の事務を担当する部署との連携が十分でなかったり、国有財産台帳等に記録する必要がある事由を十分に理解していなかったりしたことなどによると認められる。

3 本院が求める是正及び是正改善の処置

 国有財産台帳等は、これらを基に毎年度作成される国有財産報告書等が国有財産等の現況を国会を通じて国民に対して明らかにするという性格を有するものとされており、また、国有財産等を適切に管理するための基本的な帳簿であることから、正確に記録されることが重要である。
 ついては、貴自衛隊において、前記の国有財産台帳等に記録されていない国有財産等を国有財産台帳等に正確に記録するために必要な措置を講ずるよう是正の処置を要求し、また、部隊発注工事により今後取得する財産について適切な管理を行うために、国有財産台帳等への正確な記録が確実に行われる体制を整備するよう、次のとおり是正改善の処置を求める。
ア 国有財産台帳等への記録を含めて、取得した財産を国有財産法又は物品管理法に従って管理することについて認識させるため、部隊等に対する指導・研修を徹底すること
イ 部隊発注工事の調達要求元である部署と国有財産の供用事務を担当する部署又は物品管理の事務を担当する部署の連携を十分に図ることができるように協議の手順等を定めること
ウ 国有財産台帳等に記録する必要がある事例を示すなど具体的な留意事項を定めた通知を供用事務担当官等に発すること

 12部隊等  横須賀、呉、佐世保、舞鶴、大湊各地方総監部、東京業務隊、航空補給処、鹿屋、厚木、那覇、徳島各航空基地隊、函館基地隊