会計名及び科目
|
一般会計 (組織)防衛本省 (項)防衛本省
|
|
部局等
|
陸上幕僚監部、5方面総監部
|
|
糧食費の概要
|
陸上自衛隊の自衛官等に対して、食事を無料で支給するなどのために要する費用
|
|
糧食費の使用額
|
198億6548万余円
|
(平成19年度)
|
上記のうち総使用可能額を超過していた額
|
5億1121万円
|
陸上自衛隊は、防衛省の職員の給与等に関する法律(昭和27年法律第266号)及び防衛省の職員の給与等に関する法律施行令(昭和27年政令第368号)により、営舎内に居住しなければならないこととされている自衛官である陸曹長等(以下「営内者」という。)に対して食事を無料で支給しており、また、職員が災害派遣等を命ぜられたり、宿営を必要とする部隊演習に参加したりする場合等においても食事を無料で支給するなどしている。
食事の支給に当たっては、給食の実施に関する訓令(昭和35年防衛庁訓令第54号)により、各幕僚長等は、当該会計年度開始前に日常の生活に必要な基本食等の定額、定量及び栄養摂取量の基準を防衛大臣の承認を得て定めなければならないこととされている。
そして、陸上幕僚監部は、全国で同一基準による同質・同量の給食を実施するために、各地域の物価水準等を考慮して方面隊ごとの1人1日当たりの基本食の定額(以下「方面定額」という。)を防衛大臣の承認を得て定めている。そして、陸上幕僚監部は、平成19年度において、各方面総監部に対して、「平成19年度基本食の定額等について(通達)」(平成19年陸幕需第35号電)を発出して、これを受けて各方面総監部は、各地域の物価水準等を考慮して駐屯地ごとの定額(以下「駐屯地定額」という。)を定めて、各駐屯地に通知している。
上記の通達によれば、給食の実施に要する当該年度の糧食費については、方面総監部において方面定額に方面隊の延べ給食人員を乗じて算出した額(以下「総使用可能額」という。)の範囲内で運用することとなっている。
そして、陸上幕僚監部は、「平成19年度給食業務について(通達)」(平成19年陸幕需第17号)を定めて、方面総監部に対する糧食費の予算の示達に当たっては、方面定額、営内者数のほか、大規模災害時の備蓄のための在庫等を勘案して当年度配賦予算額等を決定して、四半期又は月ごとに示達している。そして、この額と各駐屯地が保有する糧食の前年度繰越在庫の調達額との合計額(以下「示達資金」という。)の範囲内で給食を実施することとして、糧食費の定額管理、在庫管理を徹底するよう指示している。各方面総監部は、当該示達資金を各駐屯地に配分して、各駐屯地では、駐屯地定額、定量及び栄養摂取量の基準等を考慮して糧食を調達して、これを使用して給食を実施しており、これに要した糧食費の実績額(以下「使用額」という。)を四半期ごとに集計して糧食費使用期報を作成して、方面総監部へ報告することとされている。
本院は、合規性、経済性、効率性等の観点から、陸上幕僚監部、5方面総監部及び48駐屯地において、給食の実施に当たり通達等で定められた方面定額に基づいて糧食費は執行されているか、年度末繰越在庫の管理は適切に行われているかなどに着眼して会計実地検査を行った。そして、19年度の糧食費の使用状況、在庫状況等について、糧食費使用期報等により検査するとともに、会計実地検査を実施しなかった駐屯地についても、陸上幕僚監部に対して糧食費の使用状況等の報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
19年度における5方面隊の糧食費の使用状況についてみると、表1のとおりとなっていた。糧食費に係る示達資金は、各駐屯地が保有する糧食の18年度末繰越在庫相当額18億9524万余円に19年度配賦予算額等199億1173万余円を加えた計218億0698万余円となっており、また、総使用可能額は、194億1644万余円となっていた。これに対して、糧食費の使用額の合計は198億6548万余円となっていた。
項目\方面隊名
|
北部
|
東北
|
東部
|
中部
|
西部
|
合計
|
示達資金
|
4,804,865
|
2,860,702
|
6,325,895
|
3,934,032
|
3,881,486
|
21,806,982
|
総使用可能額a
|
4,226,732
|
2,383,120
|
5,789,089
|
3,608,248
|
3,409,257
|
19,416,448
|
使用額b
|
4,492,259
|
2,401,755
|
5,726,916
|
3,641,538
|
3,603,020
|
19,865,489
|
超過額b−a=c
|
265,527
|
18,634
|
△62,172
|
33,290
|
193,762
|
449,041
|
超過割合c/a
|
6.2%
|
0.7%
|
△1.0%
|
0.9%
|
5.6%
|
2.3%
|
駐屯地数d
|
28
|
13
|
34
|
31
|
24
|
130
|
超過駐屯地数e
|
28
|
11
|
10
|
25
|
22
|
96
|
割合e/d
|
100%
|
84.6%
|
29.4%
|
80.6%
|
91.6%
|
73.8%
|
このうち、東部方面隊では糧食費の使用額が総使用可能額の範囲内となっていたが、北部方面隊等4方面隊においては、1人1日当たりの糧食費が方面定額を超えており、これら4方面隊の総使用可能額に対する超過額の合計は5億1121万余円に上っている。
これを方面隊別にみると、北部方面隊で2億6552万余円(総使用可能額に対する使用額の超過割合6.2%)、西部方面隊で1億9376万余円(同5.6%)と大幅に超過しており、東北方面隊及び中部方面隊でもそれぞれ1863万余円(同0.7%)、3329万余円(同0.9%)超過していた。さらに、当該方面隊の19年度における四半期ごとの超過割合をみると、特に第4四半期に大きくなっており、北部方面隊では23.1%、西部方面隊では16.2%となっていた。
また、駐屯地別にみると、糧食費の使用額が駐屯地定額に延べ給食人員を乗じて算出した使用可能額を超過していた駐屯地は、全体で130駐屯地中96駐屯地(超過駐屯地の割合73.8%)となっていた。特に、北部方面隊では28駐屯地中28駐屯地(同100%)、西部方面隊では24駐屯地中22駐屯地(同91.6%)となっていてほとんどの駐屯地において超過していた。
北部方面隊では、平成19年度において、方面定額に方面隊の延べ給食人員を乗じて算出した糧食費の総使用可能額は計42億2673万余円であった。しかし、糧食費使用期報等で確認したところ、1人1日当たりの方面定額を超えて糧食費を使用しており、表2のとおり、その使用額は計44億9225万余円となっていて、総使用可能額を2億6552万余円超過していた。そして、北部方面隊の全駐屯地で駐屯地定額を超えて糧食費を使用していた。
項目
|
第1四半期
|
第2四半期
|
第3四半期
|
第3四半期まで
|
第4四半期
|
年間
|
示達資金
|
−
|
−
|
−
|
−
|
−
|
4,804,865
|
総使用可能額a
|
1,073,656
|
1,077,523
|
1,064,611
|
(3,215,791)
|
1,010,940
|
4,226,732
|
使用額b
|
1,049,832
|
1,046,033
|
1,151,508
|
(3,247,374)
|
1,244,884
|
4,492,259
|
超過額b−a=c
|
△23,823
|
△31,490
|
86,896
|
(31,582)
|
233,944
|
265,527
|
超過割合c/a
|
△2.2%
|
△2.9%
|
8.1%
|
(0.9%)
|
23.1%
|
6.2%
|
北部方面総監部では、示達資金の範囲内であれば方面定額に基づく総使用可能額を超えて糧食費を使用してもよいと誤解していたことなどから、特に第4四半期においては、同方面隊の1人1日当たりの平均使用額が1,076円となっていて、方面定額874円に比べて202円も超過していた。このため、既に第3四半期までの使用額の累計が同期間までの総使用可能額を3158万余円超過していて、第4四半期の総使用可能額は10億1094万余円となっていたのに、第4四半期に12億4488万余円を使用していて、2億3394万余円の大幅な超過を生じていた。
上記のように、4方面隊において、全国で同一基準による同質・同量の給食を実施するために定められた方面定額に基づく総使用可能額を超過して糧食費を使用して、営内者等に対して食事を支給している事態は適切とは認められず、改善を図る必要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、方面総監部において、糧食費については示達資金の範囲内であれば方面定額に基づく総使用可能額を超えても使用できると誤解していたこと、陸上幕僚監部において、方面総監部に対して糧食費については総使用可能額の範囲内で執行するよう指導を十分に行っていなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、陸上幕僚監部は、20年9月に各方面総監部等に対して通達を発して、糧食費の執行に当たっては、方面定額に基づく総使用可能額の範囲内で行うことを明確にするとともに、定額管理を適切に行うよう周知徹底するなどの処置を講じた。