所管、会計名及び科目
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内閣府所管 一般会計 (組織)防衛本庁
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(項)
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施設整備費
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平成11年度以前は、
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総理府所管 一般会計 (組織)防衛本庁
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(項)
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施設整備費
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防衛省所管 一般会計 (組織)防衛施設庁
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(項)
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施設運営等関連諸費
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平成17年度以前は、
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内閣府所管 一般会計 (組織)防衛施設庁
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(項)
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施設運営等関連諸費
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平成11年度以前は、
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総理府所管 一般会計 (組織)防衛施設庁
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(項)
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施設運営等関連諸費
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部局等
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内部部局(自衛隊施設取得の基本事項所掌部局)
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沖縄防衛局(契約部局)(平成19年8月31日以前は那覇防衛施設局)
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送信所の概要
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海上自衛隊那覇航空基地からの情報を洋上の固定翼哨(しよう)戒機に送信する施設
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不動産購入費
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26億9594万余円
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(平成3年度〜14年度)
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借料
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9億3066万余円
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(昭和63年度〜平成19年度)
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不動産購入費及び借料の合計額
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36億2661万円
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防衛省(平成19年1月8日以前は内閣府防衛庁、13年1月5日以前は総理府防衛庁)は、昭和52年度以降に係る防衛計画の大綱(昭和51年10月国防会議・閣議決定)、「中期防衛力整備計画(昭和61年度〜平成2年度)」(昭和60年9月国防会議・閣議決定)等に基づき、平成2年度からP−3C型固定翼哨(しよう)戒機(以下「P−3C」という。)を海上自衛隊那覇航空基地に逐次配備している。P−3Cを配備・運用するためには、P−3Cに対する戦術支援と指揮管制を行う対潜戦作戦センター(以下「作戦センター」という。)及び洋上を飛行するP−3Cと作戦センター間の短波無線による交信を確保するための送受信所が必要となることから、防衛省は、作戦センターを那覇航空基地内に、受信所を沖縄県国頭(くにがみ)郡国頭村に整備することとした。そして、送信所については、受信所から一定距離以上離れていること、電波環境が良好なことなどの要件を満たしていることから、国頭郡本部(もとぶ)町豊原区を適地として選定した。
防衛省は、昭和63年4月に海上自衛隊本部送信所(以下「送信所」という。)の建設用地の借上げを含む「昭和63年度海上自衛隊施設取得等基本計画書」を策定した。そして、沖縄防衛局(平成19年8月31日以前は那覇防衛施設局。以下「防衛局」という。)は、毎年度の海上自衛隊施設取得等基本計画書に基づき、昭和63年度から、順次、送信所の建設用地約30万5千m2
について、用地の買収又は借上げ(以下「取得等」という。)を行い、平成19年度末時点で全体の約96%を取得等している。そして、同年度末における取得等に要した経費の累計額は、買収(面積109,159.2m2
)に要した額26億9594万余円、借上げ(面積183,468.3m2
)に要した額9億3066万余円、計36億2661万余円に上っている。
本院は、防衛局が送信所の用地の取得等を開始して既に約20年経過していることから、防衛省の内部部局、海上幕僚監部、防衛局等において、経済性、有効性等の観点から、用地の取得等に多額の費用を投入した施設整備が着実に進ちょくしているかなどに着眼して会計実地検査を行った。そして、19年度までに取得等した用地292,627.6m2 を対象として、担当者等から説明を聴取するとともに毎年度の海上自衛隊施設取得等基本計画書等の書類及び現地の状況を確認するなどの方法により検査した。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
防衛局は、昭和63年度から用地の取得等を開始して、同年度末時点で全体の約87%を取得等していたが、平成元年3月に本部町議会(以下「町議会」という。)が送信所建設反対に関する意見書を可決するなど、地元は反対姿勢を強める状況にあった。その後、3年3月に町議会が一転して建設促進要請を可決するなどしたことから、翌4年3月に町議会で送信所建設予定地内の町道を廃止する議案が可決された。しかし、同年7月に防衛局が行おうとした測量は、現地での抗議活動等のため実施できない状態であった。そして、同年10月に沖縄県は、防衛局が提出した里道の用途廃止申請について本部町豊原区の同意書が添付されていないことなどを理由に不受理とした。また、7年3月に町議会は、4年3月に廃止を決議した町道を復活するための路線認定等を全会一致で可決した。さらに、10年8月の選挙で当選した町長も送信所建設反対の姿勢を示して、14年9月に町長が再選された後に、防衛局が送信所の建設について数度にわたり調整を試みたものの、進展が見られなかった。
このように、送信所の建設が困難な状況となっていることから、防衛省は、送信所の建設経費については4年度以降まったく予算要求をしていない。なお、海上自衛隊は、長期間にわたり送信所が未整備であることから、那覇航空基地内に設置している応急用空中線等を暫定的に使用してP−3Cへの送信を行っている状況である。
そして、防衛省の内部部局は、送信所建設について再検討するため、15年12月に各自衛隊に対して建設用地を送信所以外の目的に利用することができないかなどについて照会して、16年1月に各自衛隊から利用の予定はない旨の回答を得ていた。しかし、防衛省は、その後も送信所の建設を断念することなく、地元の理解を得て送信所の建設を実現したいとする方針を堅持していた。
以上のように、送信所の建設のめどが立っておらず、19年度までに取得等した用地292,627.6m2
(これに要した経費の累計額36億2661万余円)が長期間にわたり遊休していて投資効果が発現していない事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、防衛省において、送信所の建設が困難な状況を認識していたにもかかわらず、地元の理解を得て送信所の建設を行うとの方針を見直さなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、防衛省は、20年6月に送信所の建設中止を決定して、同年7月に地元自治体等に対して建設中止について説明するとともに、送信所建設計画に係る予算要求を行わないこととするなどの処置を講じた。