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  • 平成19年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • (第3 中小企業金融公庫)|
  • 不当事項|
  • その他

(821)(822) 中小企業信用保険事業の実施に当たり、中小企業信用保険法等に基づき保険種類の選択はできないこととなっているのに、し意的に選択された保険種類で保険を引き受けているもの


(821)(822) 中小企業信用保険事業の実施に当たり、中小企業信用保険法等に基づき保険種類の選択はできないこととなっているのに、し意的に選択された保険種類で保険を引き受けているもの

部局等
中小企業金融公庫(平成20年10月1日以降は株式会社日本政策金融公庫)本店
契約名
包括保証保険契約
契約の概要
中小企業金融公庫が信用保証協会から保険料の納付を受けて、保険事故の発生に際して保険金を支払うことを約するもの
契約の相手方
(1) 北海道信用保証協会
 
(2) 横浜市信用保証協会
契約による保険引受期間
(1) 平成18年10月〜19年3月
(2) 平成18年10月〜19年3月
不当と認める保険の引受件数、金額
(1)
1,378件
12,864,295,379円
(2)
300件
4,951,635,000円
1,678件
17,815,930,379円

1 契約の概要

(1) 包括保証保険契約の概要

 中小企業金融公庫(以下「公庫」という。)は、中小企業金融公庫法(昭和28年法律第138号)に基づき、各都道府県等に設立された52の信用保証協会(以下「協会」という。)の行う債務保証を包括的に保険する中小企業信用保険事業を実施している。
 公庫は、中小企業信用保険法(昭和25年法律第264号。以下「保険法」という。)等に基づき、事業年度の半期ごと(上期は4月から9月まで、下期は10月から翌年3月まで。)に、各協会を相手方として、それぞれの協会が中小企業者の金融機関からの借入れについて債務の保証をした額の総額が一定の金額に達するまで、その債務保証につき、公庫と当該協会との間に保険関係が成立する旨を定める包括保証保険契約(以下「保険契約」という。)を締結している。
 保険契約によると、保険法等に基づき、協会が債務の保証をすると、普通保険、無担保保険等の保険種類(注) ごとに定めた保険引受けの限度額(以下「引受限度額」という。)に達するまで保険関係が自動的に成立することとなっている。また、引受限度額を超えた債務保証は、他の保険種類の成立要件を備えていて、かつ、当該保険種類の引受限度額に余裕があるときは、当該保険種類の保険関係が自動的に成立することとなっている。そして、公庫は、「保険手続きの留意点について」(48中信公保第121号)において、協会がし意的に保険種類を選択したり、無保険扱いにしたりすることはできないこととしている。
 また、保険関係は、保険法等に基づき、貸付実行日の順に成立することとなっている。ただし、貸付実行日を同一とする債務保証が数口ある場合でその一部が引受限度額を超えることとなるときは、保証通知番号等を基準に判断されることとなっている。

(2) 債務保証に関する通知及び保険金の支払

 協会は、債務保証をしたときは、公庫に対して、当該債務保証の保険種類、保険事故の発生率(以下「事故発生率」という。)等を通知することとなっている。
 そして、公庫は、協会が債務者の債務不履行により代位弁済を行った場合、保険契約に基づき、代位弁済額(元本)に、保険種類ごとの所定の割合(普通保険70%、無担保保険80%。以下「てん補率」という。)を乗じて得られた額を保険金として協会に支払うこととなっている。

 保険種類  中小企業者であることなど共通の要件のみによって成立する普通保険や担保を提供させないという個別の成立要件がある無担保保険等の保険法により定められた保険の種類

2 検査の結果

 本院は、公庫において、合規性等の観点から、保険法等に基づいて保険の引受けが適正に行われているかなどに着眼して会計実地検査を行った。そして、平成18、19両事業年度の52協会に係る保険契約を対象として、保険契約証、協会から提出された保証通知書等の書類により検査した。さらに、52協会のうち16協会については、保険契約の申込書等の書類により契約内容を実地に調査するとともに、残りの36協会については、公庫に同様の調査を求めて、その調査結果の内容を公庫において確認するなどの方法により検査した。
 検査したところ、次のとおり、2協会において、受け取る保険金の額が多くなるよう保険法等に違反してし意的に保険種類の選択を行っているなど適切ではない事態が見受けられた。

(1) 北海道信用保証協会

 北海道信用保証協会は、18年度下期の保険契約において、同協会が19年3月30日に行った債務保証の一部(35億9309万余円)が無担保保険の引受限度額を超えたことが4月6日に判明したため、この事実を公庫に報告したところ、公庫は、同協会に対して、当該引受限度額を超えたものについては普通保険に振り替えるよう指示した。
 同協会は、上記の指示に対して、3月30日付けの無担保保険の成立要件を備えた債務保証1,378件、12,864,295,379円のうち、事故発生率が高い特定の債務保証をし意的に選択して、受け取る保険金の額が普通保険よりも多い無担保保険とした上で、残った債務保証を無担保保険から普通保険に振り替える通知を公庫に対して行った。
 そして、公庫は保証通知番号順になっていない上記の通知どおりに保険を引き受けていた。なお、上記の1,378件について、保証通知番号順に適正に保険引受けを行った場合には、217件、21億余円の保険種類が異なることとなる。

(2) 横浜市信用保証協会

 横浜市信用保証協会は、18年度下期の保険契約において、同協会が19年3月30日に行った債務保証の一部(35億8949万余円)が無担保保険の引受限度額を超えたことが4月4日に判明したため、この事実を公庫に報告したところ、公庫は、同協会に対して、当該引受限度額を超えたものについては普通保険に振り替えるよう指示した。
 同協会は、上記の指示に対して、3月30日付けの無担保保険の成立要件を備えた債務保証280件、4,477,635,000円のうち、事故発生率が高い特定の債務保証をし意的に選択して無担保保険としたり、3月29日までに無担保保険として保険関係が既に成立していた債務保証20件、474,000,000円の保険種類を変更して普通保険としたりなどした上で、これに係る通知を公庫に対して行った。
 そして、公庫は貸付実行日順になっていないなどしている上記の通知どおりに保険を引き受けていた。なお、上記の300件について、貸付実行日等の順に適正に保険引受けを行った場合には、90件、14億余円の保険種類が異なることとなる。

 このような事態が生じていたのは、前記の2協会がし意的に保険種類の選択を行ったことなどにもよるが、公庫において、引受限度額を超過した債務保証について他の保険種類に振り替えるよう指示していながら、2協会から通知された保険種類の確認が適切でなかったことなどによると認められる。
 したがって、(1)北海道信用保証協会1,378件、12,864,295,379円、(2)横浜市信用保証協会300件、4,951,635,000円、計1,678件、17,815,930,379円は、保険法等に違反した保険種類の選択が行われており、公庫がこれを引き受けた事態は不当と認められる。