科目
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(款)鉄道事業建設仮勘定
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部局等
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東京地下鉄株式会社本社
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工事名
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八丁堀駅エレベーター設置に伴う土木・建築工事等44工事
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工事の概要
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駅の改良工事の一環として、出入口の増設、エレベーターの設置等を行うもの
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工事費
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137億4314万余円
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(平成16年度〜19年度)
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契約
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平成16年7月〜20年3月 一般競争契約、指名競争契約、見積合せ競争契約、特命随意契約、随意契約
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土留仮設鋼材の材料費の積算額
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1億7701万余円
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(平成16年度〜19年度)
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低減できた土留仮設鋼材の材料費の積算額
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1990万円
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(平成16年度〜19年度)
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東京地下鉄株式会社(以下「会社」という。)は、旅客の安全性の確保及び利便性の向上を目的として駅の改良土木工事(以下「改良工事」という。)を平成16年度から19年度までの間に59工事、工事費総額165億0551万余円で実施している。これらの工事は、安全性の確保を目的として、「鉄道に関する技術上の基準を定める省令等の解釈基準の一部改正について」(平成16年国鉄技第124号)に基づき、排煙設備の改良や避難通路にするための出入口の増設等を行ったり、利便性の向上を目的として、「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」(平成12年法律第68号)等に基づき、駅の地上出入口からホームまでのエレベーター等を新設したりなどするものである。
これらの工事を実施するに当たり、開削工法による掘削を行う場合には、周辺地盤の崩壊を防止するとともに工事期間中の作業スペースを確保するために、仮設の土留壁を設置している。この土留壁に使用するH形鋼杭及び鋼矢板(以下、これらを「土留仮設鋼材」という。)には、施工現場に全部又は切断して一部を存置するもの(以下「埋殺し鋼材」という。)と、引き抜いて撤去するもの(以下「引抜き鋼材」という。)がある。
そして、改良工事においては、土留仮設鋼材の材料費を次のとおり積算していた。
埋殺し鋼材については、会社制定の「土木工事積算基準」(以下「積算基準」という。)に基づき、会社制定の「材料等単価表」(以下「単価表」という。)記載の土留仮設鋼材の新品材料単価を適用して積算する。また、引抜き鋼材については、積算基準に掲載している下記の供用期間別損料表(以下「損料表」という。)に基づき、該当する供用期間の損料率を単価表記載の土留仮設鋼材の新品材料単価に乗じて土留仮設鋼材の損料を算出して積算する。
供用期間
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3か月未満
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6か月未満
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1年未満
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2年未満
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3年未満
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3年以上
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損率
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10%
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20%
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30%
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50%
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70%
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80%
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会社は、旅客の安全性の確保及び利便性の向上を目的とした改良工事を今後も引き続き多数実施する見込みである。そこで、本院は、会社の本社において、経済性等の観点から土留仮設鋼材の材料費の積算が適切なものとなっているかなどに着眼して会計実地検査を行った。そして、16年度から19年度までの間に会社が施行した前記の改良工事59工事について、予定価格の工事内訳書の内容及び工事現場における土留仮設鋼材の施工状況等を検査した。
検査したところ、上記工事のうち、八丁堀駅エレベーター設置に伴う土木・建築工事等44工事、工事費総額137億4314万余円(土留工事費7億8766万余円)において、次のような事態が見受けられた。
すなわち、会社は、上記の44工事について、積算基準に基づき埋殺し鋼材については新品材料単価を、引抜き鋼材については損料を用いることとして決定したそれぞれの単価に鋼材使用重量を乗ずるなどして土留仮設鋼材に係る材料費を、1億7701万余円と積算していた。
しかし、埋殺し鋼材については、会社制定の土木工事標準示方書においても特段新品材料の使用を指定しておらず、また、会社は強度上の問題もないことから、新品に比べて安価な他の工事現場において使用された中古品の土留仮設鋼材の使用を認めており、その積算に当たっては単価表における土留仮設鋼材の新品材料単価をそのまま適用せずに一定程度低減して行うべきであると認められた。
現に、改良工事において埋殺し鋼材に中古品を使用している工事が見受けられ、また、会社の地下鉄建設工事を実施する部署においては積算に当たって中古品の使用を考慮して、国土交通省制定の「土木工事標準積算基準書」(以下「国交省積算基準」という。)に準じて土留仮設鋼材の新品材料単価を10%低減していた。
また、引抜き鋼材については、専門の賃貸業者が所有する土留仮設鋼材の貸出しを受けて、施工現場で使用するのが一般的であり、その積算に当たっては土留仮設鋼材の損料ではなく賃料によるべきであると認められた。
現に、国交省積算基準によれば、引抜き鋼材の積算は損料ではなく賃料で行うこととして、賃料は市場単価に供用日数を乗じて算出することとしており、また、会社の地下鉄建設工事を実施する部署においては「建設用仮設材賃料積算基準」(平成7年建設省経機発第43号。以下「国交省賃料基準」という。)に準じて積算している工事が見受けられた。
町屋駅空調機械室新設その他土木工事(平成18年度契約、工事費2億0475万円、土留工事費1297万余円)においては、埋殺し鋼材の積算に当たり、2種類の土留仮設鋼材を使用することとして、それぞれの鋼材使用重量に単価表の鋼材単価69,300円/t、72,000円/tを乗ずるなどして材料費を合計3,711,501円としていた。しかし、2種類の土留仮設鋼材について、中古品の使用を考慮して、国交省積算基準に準じて単価表の鋼材単価を10%低減すると材料単価はそれぞれ62,370円/t、64,800円/tとなり、これにそれぞれの鋼材使用重量を乗ずるなどすると材料費は合計3,430,273円となり、材料費を281,228円低減できたと認められる。
また、引抜き鋼材の積算に当たり、予定使用期間が405日であることから、損料表に基づき単価表の材料単価の67,500円/tに0.5を乗じて、土留仮設鋼材の損料を33,750円/tとして、これに鋼材使用重量を乗ずるなどして材料費を233,328円としていた。しかし、国交省賃料基準に準じて賃料の積算を行うと、単価表の土留仮設鋼材の1日当たり賃料は41円/tであり、これに上記の405日を乗ずると、引抜き鋼材の賃料は16,605円/tとなり、これに鋼材使用重量を乗ずるなどすると材料費は137,047円となり、材料費を96,281円低減できたと認められた。
このように、改良工事における土留壁に使用する土留仮設鋼材の材料費の積算に当たって、中古品の使用を考慮しなかったり、賃料による積算を行わなかったりしていた事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
上記により、埋殺し鋼材の積算については中古品の使用を考慮して国交省積算基準に準じて土留仮設鋼材の新品材料単価を10%低減させることとし、また、引抜き鋼材の積算については国交省賃料基準に準じて算出することとして修正計算すると、土留仮設鋼材の材料費の積算額は1億5711万余円となり、前記の積算額1億7701万余円を約1990万円低減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、埋殺し鋼材及び引抜き鋼材の積算方法の取扱いについて、会社内の改良工事を実施する部署では新品材料価格と損料を、地下鉄建設工事を実施する部署では10%低減した材料単価と賃料を用いており統一的な積算の運用がなされていなかったことによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、会社は、20年9月に、土留仮設鋼材の材料費の積算に当たって、埋殺し鋼材については新品材料単価を10%低減させることとし、また、引抜き鋼材については賃料によることとするよう積算基準を改正して、同年10月以降契約する工事から適用することとする処置を講じた。