会社名
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(1)
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東日本高速道路株式会社
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(2)
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中日本高速道路株式会社
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(3)
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西日本高速道路株式会社
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科目
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仕掛道路資産
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道路資産完成原価
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管理費用
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部局等
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(1)
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本社、2支社
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(2)
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本社、4支社
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(3)
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本社、4支社
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工事名
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(1)
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横浜新道新保土ヶ谷地区舗装補修工事等28工事
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(2)
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東名高速道路清水〜菊川間舗装補修工事等28工事
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(3)
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南大阪管内舗装補修工事等59工事
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工事の概要
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高速道路において、高機能舗装を新設したり、従来の舗装を高機能舗装に打ち換えたりなどするもの
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契約金額
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(1)
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139億7411万余円
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(平成16年度〜19年度)
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(2)
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172億8343万余円
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(平成16年度〜19年度)
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(3)
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293億1921万余円
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(平成16年度〜19年度)
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請負人
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(1)
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16会社、3共同企業体
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(2)
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18会社、5共同企業体
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(3)
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32会社、5共同企業体
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契約
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平成16年11月〜20年3月 一般競争契約、公募型指名競争契約、指名競争契約、随意契約
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工事費積算額
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排水桝(ます)の改良
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(1)
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2359万余円
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(平成17年度〜19年度)
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(2)
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2421万余円
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(平成17年度〜19年度)
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(3)
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2294万余円
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(平成17年度〜19年度)
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突起型路面標示の設置
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(1)
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3517万余円
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(平成16年度〜19年度)
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(2)
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5957万余円
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(平成16年度〜19年度)
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(3)
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1億1292万余円
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(平成16年度〜19年度)
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低減できた工事費積算額
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排水桝の改良
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(1)
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2178万円
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(平成17年度〜19年度)
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(2)
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2166万円
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(平成17年度〜19年度)
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(3)
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1877万円
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(平成17年度〜19年度)
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突起型路面標示の設置
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(1)
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680万円
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(平成16年度〜19年度)
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(2)
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899万円
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(平成16年度〜19年度)
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(3)
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1520万円
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(平成16年度〜19年度)
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東日本高速道路株式会社(以下「東会社」という。)、中日本高速道路株式会社(以下「中会社」という。)及び西日本高速道路株式会社(以下「西会社」という。また、以下、これらを合わせて「3会社」という。なお、3会社は平成17年9月30日以前は日本道路公団)は、高速道路の建設工事又は保全工事の一環として、高機能舗装を新設する工事や従来のアスファルト舗装(以下「従来舗装」という。)を高機能舗装に打ち換えるなどの工事(以下、これらの工事を合わせて「高機能舗装工事」という。)を、毎年度多数実施している。
高機能舗装は、従来舗装に比べて表層に使用するアスファルト混合物の空隙(げき)率を高くしたもので、空隙が雨水等や車両の走行騒音を吸収するために、速やかな排水による走行安全性の向上効果や騒音の低減効果等の機能を有している。そして、3会社は、4年10月から高機能舗装を段階的に導入して、10年1月にアスファルト舗装の標準としており、20年3月末の時点で、全高速道路の舗装延長の約6割が高機能舗装となっている。
ア 橋りょう部の排水桝の改良
高機能舗装は、雨水等を舗装表面を流下させて排水する従来舗装と異なり、表層中に浸透した雨水等を不透水性の基層表面を流下させて排水する構造となっている。そして、橋りょう部の従来舗装用の排水桝は、雨水等の呑(のみ)口が舗装表面と同じ高さに設けられていることから、高機能舗装に打ち換えた場合、表層中に浸透した雨水等は排水桝の側面で遮断されて排水できない構造となっている。このため、3会社は、高機能舗装工事のうち橋りょう部で従来舗装を高機能舗装に打ち換える工事において、排水機能を確保するために、表層中に浸透した雨水等が流入できるように排水桝の改良を実施している(参考図1 、2 参照)。
イ 突起型路面標示の設置
3会社は、高機能舗装工事の実施に併せて、事故防止等の安全対策の一環として、車両が通過する際に生ずる軽振動により運転手へ車線逸脱防止の注意喚起を行うことなどを目的として、車道外側線(標示幅20cm)や車道中央線等(標示幅15cm)の路面標示の上に突起を付け加えたもの(以下「突起型路面標示」という。)を設置している(参考図1
、3
参照)。
そして、3会社は、高機能舗装工事における橋りょう部の排水桝(以下、単に「排水桝」という。)の改良及び突起型路面標示の設置については、現地条件が工事ごとに異なることなどから、仕様及び積算の基準を定めていなかった。
3会社は、それぞれの中期経営計画等において、高速道路の安全性や走行環境の向上を図るなどのため、今後も引き続き舗装の高機能舗装化を推進することとしており、また、建設・管理コストの更なる削減に努めることとしている。
そこで、本院は、3会社の本社及び10支社において、経済性等の観点から、仕様及び積算の基準が定められていない高機能舗装工事における排水桝の改良及び突起型路面標示の設置について、その実施が適切なものとなっているかなどに着眼して会計実地検査を行った。
検査に当たっては、3会社の10支社管内で実施された高機能舗装工事のうち、工期が18年度及び19年度に係る115工事(東会社28工事、当初契約金額計139億7411万余円。中会社28工事、同172億8343万余円。西会社59工事、同293億1921万余円)を対象として、設計書等の書類、現地の状況等を確認するなどの方法により検査を行った。
検査したところ、排水桝の改良及び突起型路面標示の設置について、次のような事態が見受けられた。
排水桝の改良については、東会社は前記28工事のうちの15工事で計633個(工事費積算額計2359万余円)、中会社は前記28工事のうちの13工事で計876個(同2421万余円)、西会社は前記59工事のうちの33工事で計1,587個(同2294万余円)を、それぞれ実施していた。そして、これらの排水桝についての改良の方法、施工単価等は、次のようになっていた。
ア 交換による排水桝の改良
上記東会社の15工事(注1)
のうちの12工事、中会社の13工事のうちの6工事及び西会社の33工事(注2)
のうちの7工事においては、排水桝の改良は桝を交換する方法によることが標準であるなどとして、それぞれ計491個(東会社)、計443個(中会社)及び計318個(西会社)の既設の桝を撤去して、側面に孔(あな)の開いた高機能舗装用の桝に交換していた。
そして、施工単価についてみると、材料費は見積りを徴するなどして、また、施工費は3会社が定めている排水桝の設置、撤去の施工歩掛かりを用いるなどして、桝1個当たり31,014円から76,124円(東会社)、34,560円から89,090円(中会社)及び25,912円から63,514円(西会社)とそれぞれ積算していた。
イ 加工による排水桝の改良
前記東会社の15工事(注1)
のうちの4工事、中会社の13工事のうちの7工事及び西会社の33工事(注2)
のうちの28工事においては、既設の排水桝を引き続き利用することとして、それぞれ計142個(東会社)、計433個(中会社)及び計1,269個(西会社)の既設の桝を、切欠きを設ける方法や側面に孔を開ける方法により高機能舗装用に加工して利用していた。
そして、加工の仕様及び施工単価についてみると、次のようになっていた。
仕様については、排水機能の確保という施工の目的が同じであり、現地条件に大きな違いが見受けられないのに、桝1個当たりの加工の箇所数及び形状や、施工器具や施工方法が回転式切断機を用いた切欠きや溶断機を用いた削孔となっているなど、工事を実施する事務所(以下「事務所」という。)等ごとに異なっていた。
また、施工単価については、上記の様々な仕様を前提として、かつ、事務所等ごとに見積りを徴したり、他工種の施工歩掛かりを準用したりなどして積算しているため、桝1個当たり4,100円から15,819円(東会社)、3,253円から20,130円(中会社)及び118円から13,910円(西会社)とそれぞれ事務所等ごとに異なっていたが、3会社とも前記交換の施工単価よりも相当安価となっていた。
このように、排水桝の改良については、改良後の排水機能の確保が同様になされているのに、交換と加工で施工単価に大きな差異が認められるとともに、加工の仕様及び施工単価に事務所等ごとの差異が認められた。また、排水桝は、設置環境や排水に対して十分な耐久性を有するものを設置することとされており、本件各排水桝についても、破損等により排水機能を喪失するなどしない限り交換の必要はなく、加工して利用する方法を標準とすれば、改良を経済的に実施できると認められた。
したがって、3会社において、排水桝の改良について、既存の排水桝を加工して利用する方法を標準としていないこと、また、加工に関して適切かつ経済的な仕様及びこの仕様を反映した積算の基準を定めていないことは適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
15工事 東会社が排水桝の改良を実施した15工事のうち、交換と加工の両方を実施しているものが1工事ある。
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33工事 西会社が排水桝の改良を実施した33工事のうち、交換と加工の両方を実施しているものが2工事ある。
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突起型路面標示の設置については、東会社は前記28工事のうちの17工事で計53,953m(工事費積算額計3517万余円)、中会社は前記28工事のうちの18工事で計102,394m(同5957万余円)、西会社は前記59工事のうちの27工事で計188,653m(同1億1292万余円)を、それぞれ実施していた。そして、これらの工事における突起型路面標示についての仕様及び施工単価は、次のようになっていた。
仕様については、注意喚起機能の確保という施工の目的が同じであり、現地条件に大きな違いが見受けられないのに、材料メーカーなどへの聞き取り調査の結果や過去の施工実績等に基づき決定しているため、突起の設置間隔が、東会社では24cm、30cm及び40cm、中会社では30cm、40cm及び50cm、西会社では5cm、10cm、20cm、30cm及び40cmとなっているなど、事務所等ごとに異なっていた。
また、施工単価については、上記の様々な仕様を前提としたり、事務所等ごとに施工業者等から見積りを徴したりなどして積算しているため、例えば、標示幅20cmで路面標示と突起を一体的に設置する場合、1m当たり715円から1,126円(東会社)、518円から2,412円(中会社)及び739円から1,147円(西会社)と3会社とも事務所等ごとに差異が認められ、この状況は標示幅15cmの場合も同様となっていた。
したがって、3会社において、突起型路面標示の設置について、適切かつ経済的な仕様及びこの仕様を反映した積算の基準を定めていないことは適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
本件排水桝の改良(東会社計633個、中会社計876個及び西会社計1,587個)及び突起型路面標示の設置(東会社計53,953m、中会社計102,394m及び西会社計188,653m)に係る工事費積算額を、本院の指摘を受けて3会社等が実施した仕様及び施工歩掛かりなどについての調査、検討等の結果を踏まえて計算すると、次のとおりとなる。
排水桝の改良については、既存の桝を加工する方法で実施して、また、排水機能が十分に確保できて、かつ、経済的な、既存の桝に直径3cmの呑口を2孔設ける方法で加工することとして工事費を計算すると、東会社で180万余円、中会社で255万余円、西会社で417万余円となり、東会社で2178万余円、中会社で2166万余円、西会社で1877万余円が低減できたと認められた。
また、突起型路面標示の設置については、突起の設置間隔を、注意喚起機能が十分に確保できて、かつ、経済的となる40cmとすることとして工事費を計算すると、東会社で2836万余円、中会社で5058万余円、西会社で9771万余円となり、東会社で680万余円、中会社で899万余円、西会社で1520万余円が低減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、3会社において、高機能舗装工事における排水桝の改良の方法や加工の方法等についての標準的な仕様及び突起型路面標示の設置についての標準的な仕様並びにこれらの仕様を反映した積算の基準を定めていなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、3会社は、20年9月に、排水桝の改良及び突起型路面標示の設置について、適切かつ経済的に実施するよう、これらについての標準的な仕様及びこの仕様を反映した積算の基準を定めて社内に通知して、同年10月から適用する処置を講じた。