科目
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業務経費
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(項)
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人材養成確保関係費
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(項)
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事業附帯関係費
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部局等
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独立行政法人国際協力機構本部
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派遣システムの概要
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専門家及び調査団の派遣手続を処理するための情報システム
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派遣システムの開発等に係る契約件数及び金額
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27件
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13億1445万余円
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(平成15年度〜19年度)
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上記のうち改修するための契約件数及び金額
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5件
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3億5260万余円
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(平成18、19両年度)
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仕様を満たしていなかった項目数及びこれに係る改修のための契約金額相当額
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7項目
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5924万円
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新たな機能を追加した項目数及びこれに係る改修のための契約金額相当額
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11項目
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3850万円
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独立行政法人国際協力機構(以下「機構」という。)は、独立行政法人国際協力機構法(平成14年法律第136号)に基づき、技術協力の実施に必要な業務として開発途上国に専門家や各種の調査団を多数派遣しており、一連の派遣手続を効率的に処理するためのシステム(以下「派遣システム」という。)を開発して運用している。
機構は、平成15年度から19年度までの間に、派遣システムに係る契約27件を契約金額計13億1445万余円で富士通株式会社等3社から成る共同企業体(以下「共同企業体」という。)等3者と締結している。
そして、機構は、派遣システムのテスト結果、派遣システムの利用者(以下「利用者」という。)からの要望等に対応するために、18、19両年度に、早急に行う必要があると判断した48項目を改修するための契約5件を契約金額計3億5260万余円で富士通株式会社等と締結している。
システム開発において、仕様が確定した後にこれを変更する場合は、通常、システム発注者は、プログラムの改修に伴う追加的な費用負担が必要になり、その額は開発の段階が進んでいるほど多額になるとされている。このような改修をすべてなくすことは困難とされているが、システム発注者は、それらを極力少なくするよう努力する必要がある。
本院は、経済性、効率性、有効性等の観点から、48項目の改修はどのような理由で行われたのか、機構は必要な仕様が基本設計書に記載されていることを確認しているか、新たに機能を追加するために改修したものはその必要性等の検討が十分行われているかなどに着眼して、機構本部において、48項目の改修に係る契約書、仕様書、基本設計書等により会計実地検査を行った。
検査したところ、次のとおり、48項目のうち7項目は機構が承認した基本設計書が機構の求める仕様を満たしていなかったために改修しなければならなくなったものであり、11項目は利用者からの要望に対する改修の必要性や費用対効果の検討が必ずしも十分でないまま当初の仕様になかった機能を追加したものであった。
ア 基本設計書が機構の求める仕様を満たしていなかったもの
7項目 契約金額相当額計5924万余円
機構は、利用者によるテストを実施したところ、機構の求める仕様を満たしていないことが判明したことなどから、7項目の改修を行っていた。
機構は、派遣中の専門家に国内俸(注)
等の給付を行っている。専門家のうち短期専門家は派遣期間が1年未満であり、所得税法(昭和40年法律第33号)上「居住者」とされることから、国内俸は所得税が源泉徴収されることとなっている。そのため、機構は、派遣期間の各月の国内俸を各月に給付する仕様書にしていた。
しかし、共同企業体が、派遣最終月の国内俸の給付については、派遣最終月の前月に行うよう基本設計書を作成していたのに、機構はこれをそのまま承認していた。
このため、機構は、平成19年1月に、仕様書どおりに改修するための契約(契約金額相当額238万余円)を締結していた。
機構は、専門家の候補者の推薦を回答期限を定めて関係省庁等に依頼しているが、期限までに回答がない場合は利用者に注意を喚起するために、「!」印を派遣システムのモニター画面上に表示する仕様にしていた。この際、機構は期限経過後に関係省庁等から回答があり、回答の受領日等の必要事項を入力すれば、「!」印が自動的に消去されるように共同企業体が基本設計書を作成するものと考えていた。
しかし、共同企業体はそのような指示はなかったとして、「!」印が自動的に消去されるようにしていなかった。
このため、機構は、平成18年9月に、「!」印が自動的に消去されるように改修するための契約(契約金額相当額572万余円)を締結していた。
なお、上記の点に関して、機構と共同企業体の間の折衝の記録は残されていない。
イ 利用者からの要望に対する検討が必ずしも十分でなかったもの
11項目 契約金額相当額計3850万余円
これら11項目の改修は、利用者から出された要望に応じて新たな機能を追加したものなどである。しかし、機構は、使い勝手を向上させるためとはいえ、その必要性や費用対効果の検討が必ずしも十分でないまま開発費用を負担していた。
機構は、派遣システムのモニター画面上に表示される専門家に関する情報のうち、専門家の氏名、派遣国、派遣期間等一部の情報を一画面に表示する仕様を承認して、この仕様に基づき派遣システムの開発を進めて、運用を開始した。
しかし、システムの運用開始後に、利用者から当初別の画面に表示されていた派遣地の健康管理区分、共済会入会の有無、国内の銀行口座の名義等の情報も一画面に表示された方が情報の確認・訂正に便利である旨の意見が出された。これを契機に、機構は、改修の必要性やその費用が効果に見合ったものかの検討が必ずしも十分でないまま、平成19年1月に、業務に特段の支障が生じてはいなかったのに、主要な情報を一画面に表示できるように改修するための契約(契約金額相当額691万余円)を締結していた。
このように、派遣システムの開発に当たり、改修に伴う機構の追加的な費用や新たな開発費用が多額に上っている事態は、派遣システムの開発予算の経済的、効率的な執行という点から適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、機構において、必要な仕様が基本設計書に記載されているか十分確認を行っていなかったこと、利用者からの要望に対する改修の必要性や費用対効果に係る検討が必ずしも十分でなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、機構は、追加的な費用や新たな開発費用の発生を抑えるために、次のような処置を講じた。
ア 20年9月から、基本設計書の策定段階でテスト仕様書を作成して、基本設計書が確実に仕様を満たしているか確認することにした。
イ 20年9月に、情報システムの開発や運用管理をする際に遵守すべき事項を定めた独立行政法人国際協力機構情報システム管理規程(平成20年規程(情)第25号)を制定して、同年10月以降のシステム開発等に当たっては、情報化統括責任者(CIO)を長とする情報システム委員会でその必要性や費用対効果を審議することとした。
ウ 20年9月に、情報システムの開発等において注意すべき事項をとりまとめて、開発担当者に周知するとともに、開発に係る会議等の記録を作成して活用するよう関係者に対して指示した。