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(849) 雇用安定事業関係業務、障害者雇用納付金関係業務等に係る委託業務の実施に当たり、委託業務の経費に架空の旅費等を含めるなどしていたため、委託費の支払額が過大となっているもの


(849) 雇用安定事業関係業務、障害者雇用納付金関係業務等に係る委託業務の実施に当たり、委託業務の経費に架空の旅費等を含めるなどしていたため、委託費の支払額が過大となっているもの

科目
(高齢・障害者雇用支援勘定)
 
 
(項)
高年齢者等助成金支給経費
 
 
(項)
高年齢者等雇用相談経費
 
 
(項)
高年齢者等職業生活設計援助経費
 
 
(項)
障害者雇用継続助成金支給経費
 
(障害者雇用納付金勘定)
 
 
(項)
障害者雇用納付金関係業務費
 
 
(項)
職業開発事業費
 
平成15年9月30日以前は、
 
労働保険特別会計(雇用勘定)
 
 
(項)
雇用安定等事業費
 
日本障害者雇用促進協会
 
 
障害者雇用継続援助事業特別会計
 
 
(項)
業務取扱費
 
 
障害者雇用納付金事業特別会計
 
 
(項)
業務委託費
 
 
一般会計
 
 
(項)
職業開発事業費
部局等
独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構(平成15年9月30日以前は厚生労働本省(13年1月5日以前は労働本省)及び日本障害者雇用促進協会)
契約名
(1)
雇用安定事業関係業務委託
(平成12年度〜19年度)
 
(2)
障害者雇用納付金関係業務委託
(平成13年度〜18年度)
 
 
障害者職域拡大等研究調査委託
(平成14年度〜18年度)
 
 
障害者雇用管理等講習委託
(平成14年度〜18年度)
 
 
障害者雇用啓発事業委託
(平成14年度〜18年度)
 
 
障害者雇用継続助成金関係業務委託
(平成13年度〜17年度)
契約の概要
(1)
事業主に対して支給する助成金に係る普及指導及び申請書の受理、点検、審査等並びに事業主その他の関係者に対する高年齢者等の雇用に関する技術的事項についての相談その他の援助等
 
(2)
障害者雇用納付金の徴収等に関する事務、障害者の雇用に関する技術的事項についての研究・調査・講習、障害者雇用継続助成金の受給資格認定申請書等の受理、点検等
契約の相手方
29協会
契約
(1)
平成12年4月ほか 随意契約
 
(2)
平成13年4月ほか 随意契約
支払額
(1)
12,381,659,685円
(平成12年度〜19年度)
 
(2)
3,927,361,949円
(平成13年度〜18年度)
 
16,309,021,634円
 
過大になっている支払額
(1)
68,782,038円
(平成12年度〜19年度)
 
(2)
42,517,111円
(平成13年度〜18年度)
 
111,299,149円
 

1 委託業務の概要

(1) 委託業務の概要

 独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構(平成15年9月30日以前は財団法人高年齢者雇用開発協会及び日本障害者雇用促進協会。以下「機構」という。)は、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構法(平成14年法律第165号)等に基づき、高年齢者等又は障害者の雇用の促進及びその職業の安定に係る事業を行う法人(全国に設立された雇用開発協会等の法人。以下「協会」という。)に対して、雇用安定事業関係業務、障害者雇用納付金関係業務等の一部(以下「委託業務」という。)の実施を委託している。
 上記のうち、雇用安定事業関係業務の内容は、〔1〕 事業主に対して支給する助成金に係る普及指導及び申請書の受理、点検、審査等、〔2〕 事業主その他の関係者に対する高年齢者等の雇用に関する技術的事項についての相談その他の援助、〔3〕 高齢期雇用就業支援コーナーの運営等に関する業務の実施となっている。
 また、障害者雇用納付金関係業務等の内容は、〔1〕 障害者雇用納付金の徴収等に関する事務、〔2〕 障害者の雇用に関する技術的事項についての研究・調査・講習、〔3〕 障害者雇用継続助成金の受給資格認定申請書等の受理、点検等に関する業務の実施となっている。
 そして、15年9月30日までは、雇用安定事業関係業務については、財団法人高年齢者雇用開発協会が、厚生労働省(13年1月5日以前は労働省)から交付を受けた高年齢者雇用確保事業等交付金を財源として、また、障害者雇用納付金関係業務等については、日本障害者雇用促進協会が、法律に基づき事業主から徴収した障害者雇用納付金等を財源として、それぞれ協会に対して委託業務の実施を委託していた。その後、15年10月1日に、日本障害者雇用促進協会の業務に国及び財団法人高年齢者雇用開発協会の業務の一部を加えて実施する機構が設立されて、雇用安定事業関係業務、障害者雇用納付金関係業務等を承継して、同日以降、機構が厚生労働省からの交付金等を財源として、協会に対して委託業務の実施を委託することとなった。

(2) 委託費の交付、精算等の手続

 委託業務に係る委託費の交付、精算等の手続は、機構が定めた「雇用安定事業関係業務、障害者雇用納付金関係業務及び障害者雇用継続助成金関係業務委託要領」(平成16年要領第29号)等によると、おおむね次のとおりとなっている。
〔1〕  機構は、厚生労働大臣の認可を受けて、協会と年度ごとに業務委託契約を締結する。そして、当該業務委託契約に基づき、概算払により委託費を交付する。
〔2〕  協会は、委託業務が終了したときは、業務実績及び委託費の収支の状況を記載した業務実績報告書及び委託費精算報告書(以下「精算報告書等」という。)を機構に提出する。
〔3〕  機構は、協会から提出された精算報告書等の内容を審査して、適当と認めるときは、委託費の額を確定して精算する。

(3) 委託費の対象経費

 委託費の対象経費は、〔1〕 協会において委託業務に従事する者の給与、超過勤務手当等の人件費、〔2〕 謝金、旅費、庁費等の一般管理費、〔3〕 その他各委託業務の実施に必要な経費となっている。

(4) 委託業務の適正な実施について機構が講じた処置

 本院は、本件委託業務について、19年次に、機構において、18協会に支払われた委託費を対象として会計実地検査を行い、18協会が、委託費から不正な支払を行ってこれを別途に経理するなどして委託費を委託業務の目的外の用途に使用するなどしていた事態を平成18年度決算検査報告に掲記したところである。そして、機構は、上記の会計実地検査を踏まえて、協会あてに「会計事務の適正化について」(平成19年9月21日高障経発第28号)を発して、個々の指摘事項を踏まえた留意点を明示して、委託費の適正な会計経理について、協会の職員に周知徹底を図るとともに、各協会の事務局長の責任において、自主点検を行うことを指示するなどしたところである。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、機構及び29協会(注) において会計実地検査を行い、14年度から19年度までの間に29協会に支払われた委託費を対象として、合規性等の観点から、委託費が業務の目的に沿って適正に使用されているかに着眼して、上記の各協会における自主点検の結果も含めて、精算報告書等の書類により検査した。そして、適正でないと思われる事態があった場合には、更に機構等に調査及び報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査を行った。なお、検査の過程において不正な事態等が判明した場合には、可能な範囲において過去の年度までさかのぼって検査を実施した。

(2) 検査の結果

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。
 機構は、29協会が12年度から19年度までの間に実施した委託業務について、各協会から提出された精算報告書等に基づき、委託費の支払額を計16,309,021,634円と確定して精算していた。
 しかし、29協会は、委託費から、不正な支払を行ってこれを別途に経理したり、旅費等を過大に支払ったり、懇親会に係る経費を支払ったりするなどして、計111,299,149円(うち29協会自主点検分計68,399,779円)を委託業務の目的外の用途に使用するなどしていた。
 これを態様別に示すと、次のとおりである(協会数については重複しているものがある。)。

ア 架空の出張等を名目として委託費から旅費等を不正に支払い、これを別途に経理して職員の飲食費に充てるなど、委託業務の目的外の用途に使用するなどしていたもの

15協会 22,600,690円

<事例>

 A協会は、平成14年度から16年度まで及び18年度に、虚偽の内容の旅費請求書等を作成して、出張の事実がないのに職員を出張させたこととして委託費から旅費計797,130円を不正に支払い、これを別途に経理するなどして、委託業務の目的外の用途に使用していた。

イ 委託業務に係る出張について、職員が当初の日程を短縮して出張するなどしていたのに、当該旅費の差額について精算していなかったため、委託費から過大な額の旅費を支払うなどしていたもの

24協会 26,373,789円

ウ 職員の超過勤務の管理を適正に行っていなかったため、委託費から過大な額の超過勤務手当を支払っていたもの

14協会 11,065,094円

エ 懇親会に係る飲食費等を委託費から支払っていたもの

13協会 9,615,131円

オ 協会の通常総会に係る議案書の印刷代、機構が定めた委託費による負担割合を上回った会計ソフトリース料等、委託業務の対象外の経費を委託費から支払っていたもの

27協会 31,050,617円

カ 委託費の残額を消化するため、年度末に業者に架空請求を行わせてこれに係る代金を委託費から支払い、当該支払金を業者に預け金として保有させて、翌年度にこれを利用して、契約した物品とは異なる物品を納入させるなどしていたもの

7協会 10,593,828円

 したがって、次表のとおり、29協会が12年度から19年度までの間に実施した委託業務に係る適正な委託費の額は計16,197,722,485円となり、前記の委託費の支払額計16,309,021,634円との差額計111,299,149円が過大に支払われており、委託費の経理が適正を欠いていて、不当と認められる。

表 雇用安定事業関係業務、障害者雇用納付金関係業務等における過大な支払額
(単位:円)
年度
業務
委託費の支払額
適正な委託費の額
過大な支払額
平成12
雇用安定事業
75,649,977
75,578,397
71,580
13
雇用安定事業
361,096,335
359,885,125
1,211,210
障害者雇用納付金
41,054,334
40,493,274
561,060
14
雇用安定事業
2,165,532,776
2,147,125,995
18,406,781
障害者雇用納付金
967,337,779
954,320,125
13,017,654
15上期
雇用安定事業
961,782,700
954,423,168
7,359,532
障害者雇用納付金
381,017,863
376,618,131
4,399,732
15下期
雇用安定事業
1,333,202,988
1,323,664,832
9,538,156
障害者雇用納付金
423,414,941
417,607,633
5,807,308
16
雇用安定事業
2,641,419,017
2,624,125,210
17,293,807
障害者雇用納付金
919,279,263
909,199,949
10,079,314
17
雇用安定事業
2,724,993,056
2,715,005,334
9,987,722
障害者雇用納付金
764,538,463
757,463,250
7,075,213
18
雇用安定事業
1,982,799,171
1,977,899,583
4,899,588
障害者雇用納付金
430,719,306
429,142,476
1,576,830
19
雇用安定事業
135,183,665
135,170,003
13,662
小計
雇用安定事業
12,381,659,685
12,312,877,647
68,782,038
障害者雇用納付金
3,927,361,949
3,884,844,838
42,517,111
16,309,021,634
16,197,722,485
111,299,149
注(1)
 平成15年度上期(15年9月末)までは、財団法人高年齢者雇用開発協会及び日本障害者雇用促進協会が、それぞれ協会に業務の実施を委託していた。
注(2)
 業務欄の「雇用安定事業」は雇用安定事業関係業務、「障害者雇用納付金」は障害者雇用納付金関係業務等をそれぞれ示すものである。

 このような事態が生じていたのは、協会において、委託業務の適正な執行及び委託費の適正な会計経理に関する認識が欠けていたこと、また、機構において、精算報告書等に係る審査が十分でなかったことなどによると認められる。

 29協会  社団法人岩手県雇用開発協会(平成19年3月31日以前は同協会及び社団法人岩手県障害者雇用促進協会)、社団法人宮城県高齢・障害者雇用支援協会(18年3月31日以前は社団法人宮城県雇用開発協会及び社団法人宮城県障害者雇用促進協会)、社団法人秋田県雇用開発協会(18年3月31日以前は同協会及び社団法人秋田県障害者雇用促進協会)、社団法人山形県高齢・障害者雇用支援協会(19年3月31日以前は社団法人山形県雇用対策協会及び社団法人山形県障害者雇用促進協会)、社団法人福島県雇用開発協会(18年3月31日以前は同協会及び社団法人福島県障害者雇用促進協会)、社団法人栃木県雇用開発協会、社団法人埼玉県雇用開発協会、財団法人神奈川県雇用開発協会、社団法人新潟県雇用開発協会、社団法人富山県雇用開発協会(18年3月31日以前は社団法人富山県雇用対策協会及び社団法人富山県障害者雇用促進協会)、社団法人石川県雇用支援協会(18年3月31日以前は社団法人石川県雇用対策協会及び社団法人石川県障害者雇用促進協会)、社団法人福井県雇用支援協会(18年3月31日以前は社団法人福井県雇用開発協会及び社団法人福井県障害者雇用促進協会)、社団法人山梨県雇用促進協会(17年3月31日以前は社団法人山梨県雇用開発協会及び社団法人山梨県障害者雇用促進協会)、社団法人長野県雇用開発協会、社団法人岐阜県雇用支援協会(19年3月31日以前は社団法人岐阜県雇用開発協会及び社団法人岐阜県障害者雇用促進協会)、社団法人静岡県雇用支援協会(20年3月31日以前は社団法人静岡県雇用開発協会及び社団法人静岡県障害者雇用促進協会)、社団法人三重県雇用開発協会(18年3月31日以前は同協会及び社団法人三重県障害者雇用促進協会)、社団法人滋賀県雇用開発協会(18年9月30日以前は社団法人滋賀県雇用対策協会及び社団法人滋賀県障害者雇用促進協会)、社団法人和歌山県雇用開発協会(19年3月31日以前は社団法人和歌山県高年齢者雇用開発協会及び社団法人和歌山県障害者雇用促進協会)、社団法人鳥取県高齢・障害者雇用促進協会(18年3月31日以前は社団法人鳥取県雇用促進協会及び社団法人鳥取県障害者雇用促進協会)、社団法人島根県雇用促進協会(18年3月31日以前は同協会及び社団法人島根県障害者雇用促進協会)、社団法人広島県雇用開発協会、社団法人徳島雇用支援協会(18年3月31日以前は社団法人徳島県雇用開発協会及び社団法人徳島県障害者雇用促進協会)、社団法人愛媛高齢・障害者雇用支援協会(18年3月31日以前は社団法人愛媛県高年齢者雇用開発協会及び社団法人愛媛県障害者雇用促進協会)、社団法人高知県雇用開発協会、財団法人佐賀県高齢・障害者雇用支援協会(19年3月31日以前は財団法人佐賀県高年齢者雇用開発協会及び社団法人佐賀県障害者雇用促進協会)、社団法人熊本県高齢・障害者雇用支援協会(18年3月31日以前は社団法人熊本県高年齢者雇用開発協会及び社団法人熊本県障害者雇用促進協会)、社団法人宮崎県雇用開発協会(18年3月31日以前は社団法人宮崎県高年齢者雇用開発協会及び社団法人宮崎県障害者雇用促進協会)、財団法人鹿児島県雇用支援協会(18年3月31日以前は財団法人鹿児島県雇用開発協会及び財団法人鹿児島県障害者雇用促進協会)