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  • 平成19年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • 第29 独立行政法人水資源機構|
  • 平成18年度決算検査報告掲記の意見を表示し又は処置を要求した事項の結果

豊川用水施設の改築に伴う固定資産の計上について


豊川用水施設の改築に伴う固定資産の計上について

平成18年度決算検査報告 参照)

1 本院が求めた是正改善の処置

(検査結果の概要)

 独立行政法人水資源機構(以下「機構」という。)は、愛知用水公団が建設して、昭和43年に水資源開発公団(以下「公団」という。)が承継した豊川用水事業に係るダム、堰等の水源、取水施設及び幹線、支線水路等の施設(以下、これらの施設を「豊川用水施設」という。)を、平成15年10月1日の設立時に公団から承継して、管理している。
 豊川用水施設の管理は、豊川用水施設等に関する施設管理規程等に基づいて行うこととされている。この規程等では、ダム、幹線水路等の農業、水道及び工業用水の共用施設については機構が自ら管理することとして、支線水路、畑地かんがい施設等の農業用水の専用施設(以下、これらを「農業専用施設」という。)については、豊川総合用水土地改良区等4土地改良区に管理を委託することとしている。
 管理を委託している農業専用施設について、公団は、経年劣化等によりその維持管理が土地改良区の収支を圧迫する要因となっていたことから、昭和61年度に抜本的対策を検討したが、豊川水系が水資源開発水系に指定されていなかったために、施設を改築することはできない状況であった。
 このため、62年度に愛知県が事業主体となった「県営かんがい排水事業豊川総合用水地区」が農林水産省国庫補助事業として事業化されて、農業専用施設が順次改築されてきている。そして、事業の実施に当たり、公団、同県及び豊川総合用水土地改良区との間で「豊川用水施設の改築及び追加工事等に係る県営かんがい排水事業豊川総合用水地区の施行に関する協定書・同覚書」(以下「協定」という。)が締結されており、工事完了後の施設は、速やかに同県から公団に引き継ぐこととされて、その財産権は公団に帰属するとされている。なお、この協定は、機構設立後も引き続き適用することとされている。
 そこで、正確性等の観点から、機構の管理する施設が固定資産として財務諸表に適切に表示されて、財務諸表の真実性が確保されているかなどに着眼して検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 機構が引き継いだ農業専用施設について

 機構は、協定に基づき、平成15年10月から19年3月までの間に、同県が改築した農業専用施設を各工事完了後に引き継いでいるが、これらの施設について固定資産として計上していなかった。

(2) 公団から機構に承継された農業専用施設について

 公団は、協定に基づき、昭和63年3月から平成15年9月までの間に、同県が改築した農業専用施設を各工事完了後に引き継いでいたが、これらの施設について固定資産として計上していなかった。また、公団の解散により、機構に同施設が承継された後も、機構は、これらの施設について固定資産として計上していなかった。

 このような事態が生じているのは、機構において、改築された農業専用施設を固定資産として計上すべきであることについての認識が十分でなかったために、無償で取得した固定資産について、計上すべき資産の価額及び会計処理方法等が規定されていなかったことなどによると認められた。

(検査結果により求めた是正改善の処置)

 機構においては、改築された農業専用施設について機構の施設として位置付けていることから、財務諸表の真実性が確保されるよう、次のとおり、機構の理事長に対して19年10月に、会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を求めた。
 すなわち、機構において、改築された農業専用施設のように無償で取得した固定資産について
ア 計上すべき資産の価額、会計処理方法等を規定すること
イ 正確な資産の価額を計上した財務諸表を作成すること

2 当局が講じた処置

 本院は、機構本社において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
 検査の結果、機構は、本院指摘の趣旨に沿い、無償で取得した固定資産について、次のような処置を講じていた。
ア 会計規程を改正するなどして、無償で取得した資産を公正な評価額で計上することとした。
イ 19事業年度決算において、改正した会計規程に基づき正確な資産の価額を計上した財務諸表を作成した。