科目
|
医業収益
|
|
部局等
|
独立行政法人国立病院機構沼田病院
|
|
不適正な会計経理の内容
|
会計窓口で診療に要した費用として納入される現金の収納事務
|
|
領得されるなどした診療収入の額
|
25,424,111円
|
(平成16年度〜19年度)
|
独立行政法人国立病院機構(以下「機構」という。)沼田病院(以下「沼田病院」という。)は、がん及び循環器疾患に係る高度な医療を推進するとともに、巡回診療の実施等によるへき地診療の充実強化を図っている。
沼田病院においては、独立行政法人国立病院機構会計規程(平成16年規程第34号)及び独立行政法人国立病院機構収入管理事務要領(平成16年要領第6号)(以下、これらを「会計規程等」という。)に基づき、経理責任者は病院長、収納管理者は事務長(平成19年3月31日以前は企画課長)とされており、経理責任者は診療収入等の現金収納事務を行う収納担当者を指名することとされている。そして、会計規程等によると、経理責任者は、収納担当者の事務の取扱いについて、過誤又は不祥事が発生しないように常に指導監督することとされており、また、収納管理者は、収納担当者の窓口収納分について、毎日、現金、領収証控等の点検を行うこととされている。
沼田病院においては、会計窓口で診療に要した費用として納入される現金の収納に当たり、費用の算定、収納した現金に係るデータ(以下「収納データ」という。)の登録等のために使用するコンピュータシステム(以下「医事会計システム」という。)により出力した領収証を患者に交付するとともに、その控えを収納の事実を確認する証拠書類として保管している。そして、領収証の出力後に請求内容に誤りなどがあった場合は、診療費の算定を担当する者が、当該領収証に係る収納データを削除することとしている。
また、収納担当者は、会計窓口の現金収納事務の終了後、医事会計システム等から当日の収納データの一覧表等(以下「入金額チェックリスト」という。)を出力して、現金及び領収証控と突合することにより、会計窓口で収納した現金の額を確認することとされており、さらに、収納管理者はそれらの事務を点検することとされている。
本院は、20年5月に、機構理事長から会計検査院法第27条の規定に基づく報告を受けた。報告の内容は、沼田病院に勤務する派遣職員(16年4月から18年6月までは委託職員。以下「派遣職員A」という。)が、16年4月から20年1月までの間に、請求内容に誤りなどがないにもかかわらず、医事会計システムに入力された外来患者分の収納データ等を不正に削除するなどして、当該収納データ等に係る金額に相当する現金を領得していたとするものであった。
これを受けて、本院は、合規性等の観点から、上記の報告内容について確認を行うとともに、現金収納事務等の体制が適切であったかなどに着眼して、領収証控と収納データとを突合したり、会計窓口での現金収納事務等の実態を調査したりするなどの方法により会計実地検査を行った。
検査の結果、本院は、次表のとおり、16年4月から20年1月までの間に不正に削除されるなどした収納データ等に係る診療収入計1,515件、25,424,111円が派遣職員Aに領得されるなどしていたことを確認した。
項目
|
平成16年度
|
17年度
|
18年度
|
19年度
|
計
|
件数
|
294件
|
270件
|
410件
|
541件
|
1,515件
|
金額
|
6,239,176円
|
6,485,465円
|
7,116,730円
|
5,582,740円
|
25,424,111円
|
そして、沼田病院における現金収納事務及び収納現金の確認業務の体制について、次のような事態が見受けられた。
ア 現金収納事務
沼田病院は、経理責任者が派遣職員Aを16年4月に収納担当者に指名して、16年4月から18年6月までの間は、会計窓口での現金収納事務をすべて派遣職員Aに行わせていた。そして、18年7月以降は、派遣職員Aを現金収納事務に従事しないこととしたにもかかわらず、昼休みの時間に会計窓口での現金収納事務を行わせるなどしていた。さらに、医事会計システムに接続するためのパスワードが一度も更新されなかったこともあり、派遣職員Aは、現金収納事務に従事しないこととなった18年7月以降においても、医事会計システムに接続することが可能な状況であった。
一方、収納管理者は、毎日行うこととされている現金、領収証控等の点検を怠り、また、経理責任者も、過誤又は不祥事が発生しないように指導監督を十分行っていたとは認められない状況であった。
イ 収納現金の確認業務
会計窓口の現金収納事務の終了後における収納現金の確認業務についても、前記の現金収納事務と同様に、16年4月から18年6月までの間は、派遣職員Aが1人で行っており、18年7月以降は他の職員が同業務を担当することとなったが、収納現金の確認に当たっては、入金額チェックリストとの突合しか行わず、領収証控との突合は全く行っていなかった。
上記の事態は、現金収納事務及び収納現金の確認業務の体制が適切でなく、病院の収入となるべき現金25,424,111円が派遣職員Aによって領得されるなど、会計経理が著しく適正を欠いていて、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、派遣職員Aが不正な行為を行うなどしているのに、沼田病院において、収納管理者が会計窓口で収納した現金や領収証控等の点検を十分に行っていなかったこと、経理責任者の指導監督が十分でなかったこと、また、機構において内部監査等が十分でなかったことなど、内部統制が機能していなかったことなどによると認められる。