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  • 平成19年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第38 国立大学法人東北大学、第39 国立大学法人静岡大学|
  • 不当事項|
  • 予算経理

(855) (856) 研究用物品の購入に係る経理が不当と認められるもの


(855) (856) 研究用物品の購入に係る経理が不当と認められるもの

会計名及び科目
経常費用
業務費
 
 
一般管理費
 
平成15年度以前は、
 
一般会計(組織)文部科学本省
(項)科学技術振興調整費
 
国立学校特別会計
(項)研究所
 
 
(項)産学連携等研究費
部局等
(1) 国立大学法人東北大学(平成16年3月31日以前は東北大学)
(2) 静岡大学(平成16年4月1日以降は国立大学法人静岡大学)
会計経理の内容
大学に設置されている附置研究所における研究用物品の購入
不適正な会計経理の額
(1) 7,286,495円
(平成13年度〜18年度)
(2) 4,105,080円
(平成14、15両年度)

1 研究用物品の購入に係る経理の概要

 国立大学法人(平成16年3月31日以前は国立大学)は、学術研究の中核的研究拠点として附置研究所を設置している。附置研究所は、研究で使用する設備備品及び消耗品(以下「研究用物品」という。)を購入しており、15年度以前は会計法(昭和22年法律第35号)等により、また、16年度以降は大学の会計規程等(以下、これらを合わせて「会計法令等」という。)により処理することとなっている。そして、研究用物品の購入等の契約については、会計法令等の定めるところにより、その給付の完了の確認を行うこととなっている。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、合規性等の観点から、予算が会計法令等に従って適切に執行されているか、研究用物品の購入に係る会計経理が適正に行われているかなどに着眼して、21国立大学法人において会計実地検査を行った。そして、これらの国立大学法人における納品書、請求書等の書類により検査するとともに、会計法令等に違反していて、予算の執行が適切でないと思われる事態があった場合には、当該国立大学法人に報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。
 なお、本院は、19年次の国立大学法人静岡大学(16年3月31日以前は静岡大学。以下「静岡大学」という。)における独立行政法人科学技術振興機構の再委託費に係る会計実地検査の結果、静岡大学に所属する教授が静岡大学に架空の取引に係る購入代金を支払わせていたため、再委託費が過大に交付されていた事態について平成18年度決算検査報告 に掲記した。その際、静岡大学に対して、同教授が受給していた他の研究資金についても調査を求めていたところ、20年2月に静岡大学から調査結果の報告を受けたので、その報告内容の確認も行った。

(2) 検査の結果

 検査したところ、国立大学法人東北大学(16年3月31日以前は東北大学。以下「東北大学」という。)及び静岡大学において、次のとおり会計法令等に違反している事態が見受けられた。

ア 東北大学

 東北大学は、東北大学に設置されている多元物質科学研究所及び電気通信研究所において、多元物質科学に関する基礎及び応用の先端的研究並びに高次情報通信の学理及びその応用の研究を行うために、研究用物品の購入を行っている。
 そして、東北大学は、13年度から18年度までの間に多元物質科学研究所に所属しているA教授及びB准教授並びに電気通信研究所に所属しているC助教から納品書、請求書等の提出を受けて研究用物品の購入代金を業者に支払っていた。
 しかし、このうち7,286,495円については、表1のとおり、実際には上記の教授等が業者に架空の取引を指示して虚偽の納品書、請求書等を作成させて、これにより東北大学に架空の取引に係る購入代金を支払わせていたものであり、その全額を業者に預けて別途に経理していた。

表1 東北大学における架空の取引に係る支払状況
(単位:円)
研究者
費目
年度
架空の取引に係る購入代金
A教授
校費
平成13〜15
2,172,042
産学連携等研究費
15
536,404
業務費
16〜18
1,474,704
B准教授
業務費
16、17
1,982,540
C助教
試験研究費
15
12,348
業務費及び一般管理費
18
1,108,457
合計
13〜18
7,286,495

イ 静岡大学

 静岡大学は、静岡大学に設置されている電子工学研究所において、主に光・電子工学分野の研究を実施して、国際研究機関との共同研究及び地場産業への研究協力を行うために、研究用物品の購入を行っている。
 そして、静岡大学は、14、15両年度に同研究所に所属しているD教授から納品書、請求書等の提出を受けて消耗品の購入代金を業者に支払っていた。
 しかし、このうち4,105,080円については、表2のとおり、実際には同教授が業者に架空の取引を指示して虚偽の納品書、請求書等を作成させて、これにより静岡大学に架空の取引に係る購入代金を支払わせていたものであり、その全額を14年度に別途購入して未払いとなっていた電源ケーブル等の設備備品の支払に充てていた。

表2 静岡大学における架空の取引に係る支払状況
(単位:円)
研究者
費目
年度
架空の取引に係る購入代金
D教授
試験研究費
平成14、15
3,711,330
校費
14
393,750
合計
14、15
4,105,080

 以上のように、事実と異なる会計経理を行い、代金を支払っている事態は、会計法令等に違反していて、東北大学において7,286,495円及び静岡大学において4,105,080円が不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、研究者において、大学の予算の原資が税金等の公金であり、事実に基づく適正な会計経理を行うという基本的な認識が欠けていたこと、東北大学及び静岡大学において、研究用物品の納品検査等が十分でなかったことによると認められる。