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  • 平成19年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第52 阪神高速道路株式会社|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

高速道路の清掃業務費の積算について、作業の実態等に適合した適切なものとするよう改善させたもの


高速道路の清掃業務費の積算について、作業の実態等に適合した適切なものとするよう改善させたもの

科目
管理費用
 
休憩所等事業営業費用
部局等
阪神高速道路株式会社本社、3管理局
工事名
阪神高速道路保全管理工事(平成18年度)等2件
工事の概要
高速道路の清掃業務、土木維持工事、電気通信設備維持工事等を委託するもの
工事費
196億5328万余円
(平成18、19両年度)
契約の相手方
阪神高速技術株式会社
契約
平成18年4月、19年4月 随意契約
清掃業務費の積算額
10億2205万余円
(平成18、19両年度)
低減できた清掃業務費の積算額
3464万円
(平成18、19両年度)

1 高速道路の清掃業務の概要

(1) 保全管理工事の概要

 阪神高速道路株式会社(以下「会社」という。)は、高速道路の機能の保持や通行車両の安全かつ快適な走行に資することなどを目的として、高速道路の清掃業務、土木維持工事、電気通信設備維持工事等(以下、これらを「保全管理工事」という。)を実施している。そして、会社は毎年度、高速道路の保全管理工事を随意契約により阪神高速技術株式会社に委託して実施しており、その支払額は、平成18年度92億1446万余円、19年度104億3882万余円、計196億5328万余円となっている。

(2) 高速道路の清掃業務費の積算

 保全管理工事の積算は、会社制定の「土木工事設計積算基準」(以下「積算基準」という。)に基づき算定されている。このうち、高速道路の路面、パーキング、排水設備等における清掃業務費の労務費の積算は、各種作業車両の運転手及び清掃作業員により構成されている。そして、この清掃作業員の職種は、作業の種別により普通作業員又は軽作業員としている。
 積算基準によれば、普通作業員とは普通の技能及び肉体的条件を有して、人力による土砂等の掘削、積込み、運搬等各種作業を行うものなどとされていて、軽作業員とは主として人力による軽易な清掃又は後片付けなど各種作業を行うものなどとされている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 毎年度継続的に行われている高速道路の清掃業務は、高速道路の重要な管理業務であり、多額の経費を要している。
 そこで、本院は、本社及び大阪、神戸両管理部において、経済性等の観点から、清掃作業員の職種及び労務費の積算が作業の実態等に適合した適切なものとなっているかに着眼して、高速道路の清掃業務費の積算額、18年度5億0303万余円、19年度5億1902万余円、計10億2205万余円を対象として、契約書、設計書等の書類により、また、作業実態を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。

(検査の結果)

 検査したところ、作業の種別により次のような事態が見受けられた。

(1) 人力による清掃作業

 清掃作業員の作業についてみると、次のとおりであった。
ア 路面清掃では、低速走行する清掃車に添乗して、紙くず、木切れなどのごみを発見の都度、停車して、この清掃車から乗り降りしてごみを撤去することを主な作業としていた。
イ パーキング清掃では、パーキングエリア内の駐車場部分等の空き缶、紙くずなどのごみを撤去することを主な作業としていた。
ウ 排水桝(ます)清掃では、排水桝のグレーチングを開けて、桝内の土砂等を手が届く範囲内でスコップ等により取り除くことを主な作業としていた。
 会社は、上記アからウまでの各清掃における清掃作業員の職種について、いずれも普通作業員による作業として積算していた。しかし、これらの作業は、特に技能を要するものではなく、人力による軽易な作業と認められた。

(2) 高圧洗浄車を使用する清掃作業

 排水管(内径200mm〜300mm)、縦断・横断側溝(内空断面の幅600mm、深さ700mm〜1,200mm)、円形水路(内径300mm)、埋設管(内径200mm〜400mm)等の各排水設備の清掃作業は、高圧の水流で管内又は側溝内の土砂等を除去する高圧洗浄車を使用して行っている。
 これら各排水設備の清掃作業における清掃作業員は、高圧洗浄車の運転手と共に清掃作業を行ったり、車両の操作助手等をしていたりしていた。
 そして、排水管及び縦断・横断側溝清掃の清掃作業員の職種について、普通作業員としていた。一方、同じ高圧洗浄車により同様な作業となっている円形水路及び埋設管清掃の清掃作業員の職種については、軽作業員としていた。
 上記のように、各排水設備の清掃作業が同様な作業となっているにもかかわらず、清掃作業員の職種は、清掃を実施する排水設備の種類により区々となっている状況であった。

 前記(1)、(2)の作業について、他の高速道路会社においては、軽作業員の労務単価により積算していた。
 これらについて、会社は、本院の検査を踏まえて、清掃作業員の労務費について実態調査を実施した。その結果、清掃作業員の1日当たりの平均労務単価は、軽作業員の労務単価と同程度の水準となっていた。
 したがって、これら清掃作業員について、作業の実態等を考慮せず、また、職種の整合性等を図らずに普通作業員の単価を採用していることは適切とは認められず、改善の必要があると認められた。

(低減できた積算額)

 上記のことから、高速道路の清掃業務費について、清掃作業員の労務単価を実態調査に基づく労務単価により計算すると、18年度は4億8667万余円、19年度は5億0074万余円、計9億8741万余円となり、前記の10億2205万余円を3464万余円低減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、会社において、高速道路の清掃業務費について、作業の実態等に適合した積算を行うための検討が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、会社は、20年9月に、高速道路の清掃業務費の積算が適切なものとなるよう、清掃作業員の労務単価を軽作業員とする内容の積算基準に改正して、同月以降の契約から適用する処置を講じた。