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  • 平成19年度|
  • 第6章 歳入歳出決算その他検査対象の概要|
  • 第1節 国の財政等の概況

個別の決算等


第4 個別の決算等

 歳入歳出決算等の検査対象別の概要は第2節に記述するとおりであるが、国の会計等のより的確な理解に資するために、一般会計歳出決算における不用額等の状況について個別に取り上げることとして、その現状を述べると次のとおりである。

一般会計歳出決算における不用額等の状況

1 国の決算とその意義

(1) 国の決算の意義、重要性

 国の予算は、日本国憲法第86条に「内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。」とされており、決算は、同法第90条に「国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。」とされている。
 このように、我が国の財政活動は、国会の議決に基づく予算を基に執行され、その執行実績として予算に対応した決算が作成されて、国会に提出される。
 決算は予算執行の実績を表示したものであることから、予算執行に関する情報提供の機能を持っている。予算が執行された後、決算情報を十分活用することにより、歳入予算に比して実際の収納はいかなる実績を示したか、歳出予算は予算の目的どおり執行され、所期の効果を発現できたかなどを分析、評価するなどして、将来の財政執行をより一層適正なものとしていくことなどが、決算制度の果たすべき重要な役割となっている。
 また、決算が正確性を欠くと、その分析、評価等を通じて予算の編成や執行の改善を図るという重要な機能を的確に果たすことができないため、決算に表示される数値等が正確に表示されていることは、極めて重要なものとなっている。

(2) 歳出決算の内容

 国の歳入歳出決算は、財務大臣が歳入歳出予算と同一の区分である部局等の組織の別及び歳出の目的に従った項の区分により作成されており、歳出決算は、財政法(昭和22年法律第34号)第38条の規定により、歳出予算額、前年度繰越額、予備費使用額、流用等増減額、支出済歳出額、翌年度繰越額、不用額の各事項を明らかにしなければならないとされている。このうち不用額は、歳出予算額に前年度繰越額、予備費使用額及び流用等増減額を加えたもの(以下「歳出予算現額」という。)のうち、支出されないこととなった金額であり、歳出予算現額から支出済歳出額及び翌年度繰越額を控除した金額となる。
 また、歳出決算における歳出予算額は、当初予算の成立の後、補正予算が作成された場合は、当該補正予算による予算額の追加、又は修正減少を反映したものとなる。このため、歳出決算の各事項に補正予算も深く関連している。
 なお、一般会計支出済歳出額の中には他会計への繰入れがあり、これを受け入れた特別会計において、当該年度中に支出されず翌年度にも繰り越されなかったものは、当該特別会計の決算において不用額となる。
 また、特別会計において歳入歳出の決算上剰余金を生じた場合には、積立金としての積立て及び資金への組入れを除き、同会計の翌年度歳入に繰り入れられるほか、予算で定めるところにより、同会計の翌年度歳入に繰り入れる金額の全部又は一部を一般会計の歳入に繰り入れることができる。

(3) 不用額の発生理由等

 前記のとおり、不用額は、歳出予算現額から支出済歳出額及び翌年度繰越額を控除した金額である。歳出予算現額のうち支出されないこととなった金額である不用額については国庫金が支払われることはない。
 不用額が生じた具体的な原因、事情については、後述するように、〔1〕 予算の経済的、効率的な執行や経費の節約によるもの、〔2〕 予算作成後の予見し難い事情の変更等によるもの、〔3〕 予算上の見積りや想定が実情と合っていなかったものなど、多様である。
 不用額が生じたこと、又はその額や歳出予算現額に占める割合が大きいことなどをもって、直ちに予算の見積りが正確でない、あるいは予算の執行が適切でないといった見方をすることは一面的であり、適当でない。
 一方、我が国の財政が極めて厳しい現状にあり、毎年多額の公債を発行している状況において、予算の執行をより的確に行っていくことは重要である。

(4) 一般会計の予算額、決算額等の推移及び概要

 平成10年度から19年度までの一般会計の予算額及び決算額の推移は、表1のとおりである。

表1 一般会計の予算額及び決算額の推移(平成10年度〜19年度)
(単位:億円)
 
平成
10年度
11年度
12年度
13年度
14年度
15年度
16年度
17年度
18年度
19年度
 
[歳入]
歳入予算額 A
879,914
890,188
897,702
863,525
836,889
819,395
868,787
867,048
834,583
838,041
 
うち租税及印紙収入
501,650
456,780
498,950
496,250
442,760
417,860
440,410
470,420
504,680
525,510
うち公債金
340,000
386,160
345,980
300,000
349,680
364,450
365,900
334,690
274,700
254,320
うち前年度剰余金受入
8
9,586
15,119
4,839
10
3,874
14,909
16,817
15,663
8,286
収納済歳入額 B
897,826
943,763
933,610
869,030
872,890
856,228
888,975
890,002
844,127
845,534
 
うち租税及印紙収入
494,318
472,344
507,124
479,481
438,332
432,824
455,890
490,654
490,690
510,182
うち公債金
339,999
375,135
330,039
299,999
349,679
353,449
354,899
312,689
274,699
253,819
うち前年度剰余金受入
17,001
53,908
53,389
40,399
20,919
36,147
32,068
40,007
34,806
29,672
(B−A)
17,912
53,574
35,908
5,504
36,000
36,832
20,188
22,954
9,543
7,492
[歳出]
歳出予算額 C
879,914
890,188
897,702
863,525
836,889
819,395
868,787
867,048
834,583
838,041
 
うち予算補正額
103,223
71,587
47,831
37,001
24,589
1,504
47,677
45,219
37,723
8,953
前年度繰越額 D
16,993
44,305
38,019
35,550
41,551
32,273
16,635
22,566
19,282
21,351
歳出予算現額 E=C+D
896,908
934,494
935,721
899,075
878,441
851,668
885,422
889,614
853,866
859,393
支出済歳出額 F
843,917
890,374
893,210
848,111
836,742
824,159
848,967
855,195
814,454
818,425
翌年度繰越額 G
44,305
38,019
35,550
41,551
32,273
16,635
22,566
19,143
21,351
20,755
不用額 H
8,684
6,101
6,960
9,412
9,425
10,874
13,888
15,275
18,060
20,212
歳出予算現額に占める不用額の割合 I=H/E
1.0%
0.7%
0.7%
1.0%
1.1%
1.3%
1.6%
1.7%
2.1%
2.4%
(C−F)
35,996
△185
4,491
15,414
146
△4,764
19,819
11,852
20,128
19,616
 
[剰余金]
歳計剰余金 J=B−F
53,908
53,389
40,399
20,919
36,147
32,068
40,007
34,806
29,672
27,109
前年度までに発生した剰余金の使用残額 K
0
16
250
10
0
0
523
623
0
34
繰越歳出財源として控除する額 L
44,305
38,019
35,550
20,908
32,273
16,635
22,566
19,143
21,351
20,755
地方交付税交付金等財源として控除する額 M
16
4,950
2,217
4,911
4,945
6,030
34
純剰余金 N=J−(K+L+M)
9,586
10,402
2,381
3,874
10,521
11,972
9,009
8,286
6,319

 歳出予算は、15、19両年度を除き毎年度2兆円を超える補正が行われており、特に10、11両年度は10.3兆円、7.1兆円の大規模な補正予算が計上されている。歳出決算は支出済歳出額において、11、12両年度に89兆円台となったが、13年度以降は81.4兆円から85.5兆円となっている。また、翌年度繰越額は1.6兆円から4.4兆円あり、それぞれ翌年度の予算において前年度繰越額として歳出予算現額を構成している。そして、歳出予算に計上されたもののうち支出されないこととなった金額である不用額は、近年増加しており、特に16年度以降の増加が顕著であり、19年度には2.0兆円となっている。これに伴い歳出予算現額に占める不用額の割合(以下「不用率」という。)も、12年度までは1%の範囲に収まっていたが、13年度以降は毎年上昇して、19年度では2.4%となっている。
 上記の不用額の発生は、当該年度の支出済歳出額を減少させており、これに伴い、歳入、歳出の決算額の差額である財政法第41条に定める剰余金(歳計剰余金)が増加することとなる。この歳計剰余金は、2.0兆円から5.3兆円と多額となっているが、このうち、前記の翌年度繰越の財源に充当するものなどを控除した財政法第6条に定める剰余金(以下「純剰余金」という。)は、その計上がなかった13年度を除き0.2兆円から1.1兆円となっている。この純剰余金のうち2分の1を下らない金額は、財政法第6条の規定に基づき、翌々年度までに、公債又は借入金の償還財源に充当されることとなる。

2 検査の観点、着眼点、対象及び方法

(1) 検査の観点及び着眼点

 我が国の財政をみると、19年度末現在の一般会計の公債残高が542.3兆円に達しており、また、19年度の国債費の支出済歳出額は19.2兆円と一般会計歳出の支出済歳出額の23.6%を占めるなど依然として厳しい状況が続いており、国の施策を行うための予算の配分及び執行は有効かつ効率的に行われることが重要となっている。
 こうした中で、国は国民及び国会に対する決算等の説明責任を果たすとともに、決算の分析、評価等を通じて次の予算の編成や執行の改善に活用することが強く求められている。決算のうち、不用額は、計画段階での見積りである予算額と執行実績である決算額に開差が生じているものであり、その具体的な原因、事情については、前記のとおり、〔1〕 予算の経済的、効率的な執行や経費の節約によるもの、〔2〕 予算作成後の予見し難い事情の変更等によるもの、〔3〕 予算上の見積りや想定が実情と合っていなかったものなど、多様であることから、その発生理由等を的確に把握することが重要である。
 本院は、15年度決算検査報告の特定検査対象に関する検査状況に「一般会計歳出予算の執行状況について」を掲記して、14年度までの一般会計歳出予算の執行状況とともに不用額等の発生状況とその推移等を記述しているが、19年度の不用額は、14年度の0.9兆円の約2.2倍に当たる2.0兆円となっている。
 このような状況を踏まえて、一般会計歳出決算における歳出決算の各事項について、主に、不用額等を中心に、正確性、有効性等の観点から次の項目に着眼して検査を行った。
〔1〕  不用額等は、主要経費別、使途別の歳出決算においてどのような状況となっているか。
〔2〕  不用額はどのような原因、事情等から発生しているか。
〔3〕  不用額の発生理由は歳出決算にどのように記述されているか。
〔4〕  不用額の予算への反映等はどのような状況となっているか。
〔5〕  繰越額と不用額との関係、補正予算等の状況はどのようになっているか。

(2) 検査の対象及び方法

 一般会計を所管している16府省等(注1) の15年度から19年度までの歳出決算を対象に、歳出決算報告書、各府省等が作成して財務省に提出している歳出決算分析調書(注2) 等により、18年度の不用額が生じた原因、事情等を分析、検討(注3) するとともに、各府省等の本府省等において会計実地検査を行った。

 16府省等  国会、裁判所、会計検査院、内閣、内閣府、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、防衛省(平成19年1月8日以前は内閣府防衛庁)
 歳出決算分析調書  1項の不用額が1000万円以上、又は1項の不用率が20%以上のいずれかに該当する(項)について、不用額が大きい順に各項の不用額の70%程度に達するまでの(目)を対象として、その不用内容(理由)が記載されている。
 平成18年度の不用額が生じた原因、事情等を分析、検討することとしたのは、本件分析には多岐にわたる検査が必要なため、19年度に係る分析が本報告書作成に間に合わないためである。

3 一般会計歳出決算における不用額等の状況

(1) 主要経費別及び使途別の歳出決算における不用額等の状況

ア 主要経費別にみた一般会計歳出決算

 15年度から19年度までの不用額等の状況について主要経費別に一般会計歳出決算を整理すると、表2のとおりである。

表2 主要経費別一般会計歳出決算
(単位:億円)
主要経費
年度
(平成)
当初予算額
予算補正追加額
予算補正修正減少額
歳出予算額
前年度繰越額
予備費使用額
流用等増△減額
歳出予算現額
支出済歳出額
翌年度繰越額
不用額
構成比
社会保障関係費
15
189,907
7,317
380
196,844
1,840
109
198,793
197,200
435
1,157
10.6%
16
197,970
6,120
143
203,947
435
19
204,402
202,859
413
1,129
8.1%
17
203,807
4,969
542
208,234
413
208,648
206,030
1,266
1,351
8.8%
18
205,738
3,970
981
208,727
1,266
72
210,066
205,549
730
3,786
20.9%
19
211,408
3,551
1,434
213,525
730
9
214,265
211,409
340
2,515
12.4%
文教及び科学振興費
15
64,712
17
1,585
63,144
2,113
65,257
64,720
380
156
1.4%
16
61,330
1,414
444
62,300
380
62,681
61,490
944
246
1.7%
17
57,234
1,350
795
57,789
944
0
58,733
57,008
1,568
156
1.0%
18
52,671
2,600
454
54,816
1,568
56,385
53,306
2,853
225
1.2%
19
52,743
2,336
72
55,006
2,853
4
57,864
54,577
3,033
253
1.2%
国債費
15
167,980
32
7,189
160,824
160,824
155,440
5,383
49.5%
16
175,685
14,332
7,233
182,784
182,784
175,148
7,635
54.9%
17
184,421
22,086
10,305
196,203
196,203
187,359
8,843
57.8%
18
187,615
9,295
7,759
189,151
189,151
180,368
8,782
48.6%
19
209,988
4,288
9,600
204,675
204,675
192,904
11,771
58.2%
恩給関係費
15
12,028
3
12,025
333
12,358
12,069
212
76
0.7%
16
11,321
2
11,318
212
11,530
11,359
111
59
0.4%
17
10,693
2
10,691
111
10,802
10,650
69
82
0.5%
18
9,988
1
9,987
69
10,056
9,917
59
80
0.4%
19
9,235
253
0
9,487
59
9,547
9,406
101
39
0.1%
地方交付税交付金
15
163,926
163,926
163,926
163,926
0.0%
16
153,886
11,686
165,572
165,572
165,572
0.0%
17
145,709
13,516
159,225
159,225
159,225
0.0%
18
137,424
21,425
158,850
158,850
158,850
0.0%
19
146,196
2,992
2,992
146,196
146,196
146,196
0.0%
地方特例交付金
15
10,061
10,061
10,061
10,061
0.0%
16
11,048
11,048
11,048
11,048
0.0%
17
15,180
15,180
15,180
15,180
0.0%
18
8,159
8,159
8,159
8,159
0.0%
19
3,119
3,119
3,119
3,119
0.0%
防衛関係費
15
49,529
131
630
49,030
554
362
49,947
49,274
513
159
1.4%
16
49,029
333
232
49,130
513
206
49,850
48,980
647
222
1.6%
17
48,563
582
189
48,956
647
159
49,763
48,775
683
303
1.9%
18
48,139
710
149
48,700
683
155
49,539
48,174
1,086
277
1.5%
19
48,016
430
32
48,414
1,086
94
49,596
47,575
1,705
315
1.5%
公共事業関係費
15
80,970
2,125
90
83,005
23,000
106,005
93,588
11,690
726
6.6%
16
78,159
10,915
47
89,027
11,690
242
100,960
82,356
17,667
936
6.7%
17
75,310
4,899
55
80,154
17,667
122
97,944
83,905
13,022
1,016
6.6%
18
72,014
5,799
43
77,770
13,162
90,932
77,089
12,892
950
5.2%
19
69,472
4,562
74
73,960
12,892
95
86,948
72,571
12,835
1,541
7.6%
経済協力費
15
8,160
1,322
44
9,438
1,005
10,443
8,997
1,348
97
0.8%
16
7,685
155
25
7,815
1,348
503
9,667
8,800
776
90
0.6%
17
7,404
331
18
7,717
776
8,494
7,840
563
90
0.5%
18
7,218
809
11
8,016
563
8,580
7,838
643
98
0.5%
19
6,912
1,049
11
7,950
643
8,593
7,874
601
117
0.5%
中小企業対策費
15
1,728
845
124
2,449
75
2,525
2,411
40
73
0.6%
16
1,737
1,310
96
2,951
40
2
2,995
2,883
33
78
0.5%
17
1,729
795
94
2,431
33
1
2,466
2,365
18
83
0.5%
18
1,616
945
44
2,516
18
△2
2,532
2,396
30
106
0.5%
19
1,625
2,757
77
4,305
30
△4
4,331
4,177
20
132
0.6%
エネルギー対策費
15
5,566
40
5,526
62
5,589
5,569
11
8
0.0%
16
5,064
1
31
5,035
11
5,046
5,041
1
3
0.0%
17
4,953
0
28
4,925
1
4,927
4,925
0
1
0.0%
18
4,709
1
4,708
0
4,708
4,707
0
0.0%
19
8,647
10
0
8,657
8,657
8,656
0
0.0%
食料安定供給関係費
15
6,875
772
190
7,456
264
1
7,722
7,439
113
169
1.5%
16
6,748
44
43
6,749
113
6,862
6,520
131
210
1.5%
17
6,754
82
130
6,707
134
18
0
6,860
6,569
93
197
1.2%
18
6,360
23
68
6,315
93
6,409
6,100
86
222
1.2%
19
6,073
945
122
6,896
86
6,982
6,742
75
163
0.8%
産業投資特別会計へ繰入
15
1,636
1,636
1,636
1,024
611
5.6%
16
987
987
987
977
9
0.0%
17
710
710
710
710
0.0%
18
480
480
480
480
0.0%
19
202
202
202
202
0.0%
改革推進公共投資事業償還時補助等
16
4,168
8,642
12,810
12,810
12,809
0
0.0%
17
3,689
7,610
11,299
11,299
11,299
0
0.0%
その他の事項経費
15
51,305
1,656
1,437
51,525
3,024
846
55,396
52,434
1,889
1,072
9.8%
16
52,784
2,478
956
54,306
1,889
134
△2
56,328
53,117
1,838
1,371
9.8%
17
52,167
2,689
1,035
53,821
1,835
807
△1
56,462
53,349
1,856
1,257
8.2%
18
51,222
3,515
854
53,883
1,856
70
2
55,812
51,515
2,969
1,327
7.3%
19
51,945
1,775
578
53,141
2,969
393
4
56,508
53,009
2,041
1,457
7.2%
予備費
15
3,500
1,000
2,500
△1,319
1,180
1,180
10.8%
16
3,500
500
3,000
△1,107
1,892
1,892
13.6%
17
3,500
500
3,000
△1,108
1,891
1,891
12.3%
18
3,500
1,000
2,500
△298
2,201
2,201
12.1%
19
3,500
1,000
2,500
△597
1,902
1,902
9.4%
15
817,890
14,221
12,716
819,395
32,273
851,668
824,159
16,635
10,874
100.0%
16
821,109
57,435
9,757
868,787
16,635
885,422
848,967
22,566
13,888
100.0%
17
821,829
58,915
13,696
867,048
22,566
889,614
855,195
19,143
15,275
100.0%
18
796,860
49,094
11,371
834,583
19,282
853,866
814,454
21,351
18,060
100.0%
19
829,088
24,951
15,998
838,041
21,351
859,393
818,425
20,755
20,212
100.0%

 不用額についてみると、毎年度、社会保障関係費、国債費、公共事業関係費、その他の事項経費及び予備費において、不用額が多く、特に、国債費の不用額は、不用額合計の約半分(48.6%から58.2%)を占めており、また、予備費の不用額も、不用額合計の約1割(9.4%から13.6%)となっている。
 また、補正予算についてみると、国債費において毎年度公債の償還財源等の国債整理基金特別会計への繰入れ等に対応するために、多くの予算補正追加額(以下「補正追加額」という。)、予算補正修正減少額(以下「補正減少額」という。)が計上されている。また、地方交付税交付金では交付金の精算のために、社会保障関係費では負担金等の義務的経費の精算に対応するために、公共事業関係費では災害対策費等の追加等特に緊要となった事項等について措置を講ずるために、それぞれ多くの補正追加額が計上されている。

イ 使途別にみた一般会計歳出決算

 表2の15年度から19年度までの不用額等の状況について使途別に一般会計歳出決算を整理すると、表3のとおりである。

表3 使途別一般会計歳出決算
(単位:億円)
使途区分
年度
(平成)
当初予算額
補正追加額
補正減少額
歳出予算額
前年度繰越額
予備費使用額
流用等増△減額
歳出予算現額
支出済歳出額
翌年度繰越額
不用額
構成比
人件費
15
42,373
1
1,145
41,231
0
12
△17
41,227
40,946
0
280
2.5%
16
41,705
2
444
41,265
0
24
△10
41,279
40,939
1
337
2.4%
17
41,439
0
449
40,991
1
21
0
41,014
40,631
0
383
2.5%
18
41,270
0
394
40,876
0
5
△21
40,860
40,485
0
375
2.0%
19
41,168
67
175
41,060
0
15
3
41,080
40,709
0
370
1.8%
旅費
15
1,144
3
62
1,086
8
9
7
1,111
1,040
6
64
0.5%
16
1,141
5
57
1,091
6
3
0
1,100
1,026
8
65
0.4%
17
1,130
3
60
1,074
8
5
0
1,089
1,007
7
74
0.4%
18
1,087
5
35
1,058
7
1
3
1,070
987
10
73
0.4%
19
1,053
1
7
1,049
10
1
△1
1,059
977
6
75
0.3%
物件費
15
27,745
115
524
27,378
346
423
3
28,152
27,697
154
300
2.7%
16
27,794
277
516
27,590
154
198
△11
27,930
27,287
267
376
2.7%
17
27,844
718
504
28,091
267
182
△14
28,526
27,739
384
402
2.6%
18
28,678
836
395
29,128
384
207
0
29,719
28,879
406
433
2.4%
19
29,705
309
148
29,874
406
194
△34
30,440
29,438
573
429
2.1%
施設費
15
9,655
896
6
10,534
3,006
△12
13,528
11,635
1,717
174
1.6%
16
9,815
2,143
9
11,940
1,717
113
2
13,775
10,896
2,715
162
1.1%
17
9,357
1,067
22
10,387
2,715
21
△13
13,110
10,786
2,088
235
1.5%
18
8,939
1,689
5
10,590
2,088
0
12,678
9,473
2,970
234
1.2%
19
8,561
822
26
9,326
2,970
30
△3
12,323
8,954
2,760
608
3.0%
補助費・委託費
15
227,573
11,223
1,901
236,974
17,419
747
5
255,147
242,421
10,972
1,753
16.1%
16
247,861
21,469
806
268,585
10,972
728
△9
280,277
263,023
14,760
2,493
17.9%
17
243,009
15,966
1,603
257,414
14,760
769
△7
272,937
257,787
12,939
2,210
14.4%
18
232,318
12,291
1,601
243,066
13,079
9
△11
256,144
239,127
13,596
3,420
18.9%
19
234,151
11,223
1,806
243,618
13,596
329
△2
257,541
240,632
13,049
3,859
19.0%
他会計へ繰入
15
486,398
1,362
7,984
479,776
11,100
109
490,985
480,559
3,523
6,902
63.4%
16
470,710
32,368
7,325
495,753
3,523
2
499,280
486,260
4,667
8,352
60.1%
17
477,527
40,456
10,437
507,545
4,667
98
512,311
498,832
3,644
9,834
64.3%
18
463,652
33,572
7,839
489,385
3,644
493,030
477,711
4,242
11,075
61.3%
19
494,135
9,817
12,801
491,152
4,242
495,394
478,540
4,204
12,649
62.5%
その他
15
22,999
618
1,091
22,413
391
△1,302
13
21,515
19,858
259
1,397
12.8%
16
22,080
1,167
598
22,560
259
△1,071
29
21,777
19,533
144
2,100
15.1%
17
21,521
702
619
21,543
144
△1,098
34
20,625
18,411
78
2,134
13.9%
18
20,912
698
1,098
20,477
78
△223
29
20,361
17,789
125
2,447
13.5%
19
20,312
2,709
1,032
21,960
125
△571
37
21,552
19,173
160
2,218
10.9%
15
817,890
14,221
12,716
819,395
32,273
851,668
824,159
16,635
10,874
100.0%
16
821,109
57,435
9,757
868,787
16,635
885,422
848,967
22,566
13,888
100.0%
17
821,829
58,915
13,696
867,048
22,566
889,614
855,195
19,143
15,275
100.0%
18
796,860
49,094
11,371
834,583
19,282
853,866
814,454
21,351
18,060
100.0%
19
829,088
24,951
15,998
838,041
21,351
859,393
818,425
20,755
20,212
100.0%

 不用額についてみると、毎年度、補助費・委託費、他会計へ繰入及び「その他」の不用額が多く、この3者で不用額合計の9割以上(92.4%から93.8%)を占めている。このうち、他会計へ繰入は、公債の償還財源等の国債整理基金特別会計への繰入れである国債費を含むことなどから、最も不用額が多く、不用額合計の6割以上(60.1%から64.3%)を占めている。
 また、補正予算についてみると、補助費・委託費において多くの補正追加額が計上されているほか、他会計へ繰入においては、多くの補正追加額、補正減少額がそれぞれ計上されている。

(2) 不用額が生じた原因、事情等

 不用額は、国会で議決した予算に対してこれを支出せず、経費使用の実績が予算での想定を下回っているものである。不用額の発生には、前記のとおり、予算の経済的、効率的な執行、経費節減による成果によるものもあれば、予算作成後の予見し難い事情の変更等により生じたもの、予算上の見積りや想定が実情と合っていなかったものもあるなど、様々なケースがある。また、その発生理由が、主として予算編成段階にある場合、執行段階にある場合、さらに両者が複合的に影響している場合もある。このように不用額の発生理由は一律でなく、その評価に当たっては発生理由の分析が重要である。
 そこで、18年度の一般会計歳出決算において不用額が30億円以上となっている40目(不用額計1,567,056百万円、不用額全体の86.8%)を対象に、不用額が生じた具体的な原因、事情を検査した。その際、国債費及び予備費については、いずれも不用額が大きく、国債費は歳出の財源に充てるために発行された公債の償還費、利払い費等であること、予備費は予見し難い予算の不足に充てる経費であることから、国債費及び予備費とそれ以外の(目)に分けて検査することとした。

ア 国債費

 (項)国債費のうち予算額の98%以上を占める(目)普通国債等償還財源等国債整理基金特別会計へ繰入(以下「普通国債償還財源繰入」という。)では、毎年度不用額が生じている。
 普通国債償還財源繰入は、一般会計の負担に属する国債・借入金の償還及び国債・借入金の利子等の支払並びにこれらの事務取扱いに必要な経費に充てる財源として、国債整理基金特別会計へ繰り入れるものである。
 普通国債償還財源繰入については、財務省は、当初予算成立後、国債利子等の金利の変動等も加味するなどして、毎年12月ごろに、補正予算において補正追加額や補正減少額を計上している。普通国債償還財源繰入の不用額は、表4のとおり、18年度に8782億円に上っており、不用額が最大の(目)で、不用率も、一般会計歳出全体では2.1%であるのに対して普通国債償還財源繰入では4.7%と高くなっている。また、19年度の普通国債償還財源繰入の不用額は1兆1771億円に上っており、不用率も5.8%と更に増加している。

表4 普通国債償還財源繰入の執行状況
(単位:百万円)
年度
所管
当初予算額
補正追加額
補正減少額
歳出予算現額
支出済歳出額
不用額
不用率
平成
15
財務省
国債費
普通
16,663,758
3,264
718,915
15,948,108
15,409,713
538,394
3.4%
16
国債
17,449,395
1,433,214
723,352
18,159,257
17,395,713
763,543
4.2%
17
償還
18,209,356
2,156,057
1,030,528
19,334,885
18,450,509
884,376
4.6%
18
財源
18,615,489
929,511
775,962
18,769,038
17,890,802
878,235
4.7%
19
繰入
20,946,531
428,804
960,028
20,415,307
19,238,132
1,177,175
5.8%

 そして、普通国債償還財源繰入の支出済歳出額の内訳は、表5のとおりであり、いずれの年度においても国債償還と国債利子が全体の額の約9割を占めている。

表5 普通国債償還財源繰入の支出済歳出額の内訳
(単位:百万円)
区分
平成15年度
16年度
17年度
18年度
19年度
債務償還費
7,484,684
9,920,306
11,304,376
10,770,891
11,742,318
 
国債償還
7,203,884
9,612,458
10,956,127
10,621,806
9,857,440
借入金償還
280,799
307,847
348,249
149,085
1,884,877
利子及割引料
7,780,394
7,331,219
7,029,202
7,044,040
7,436,261
 
国債利子
7,503,450
7,101,721
6,839,273
6,895,570
7,063,506
財務省証券割引料
309
149
8
460
9,936
借入金利子
276,635
229,347
189,920
148,009
362,817
国債事務取扱費
144,635
144,188
116,929
75,870
59,553
 
国債事務取扱手数料
143,206
143,059
115,647
74,315
58,052
庁費等
1,428
1,128
1,282
1,555
1,500
15,409,713
17,395,713
18,450,509
17,890,802
19,238,132

 また、普通国債償還財源繰入の不用額の内訳は、表6のとおりであり、いずれの年度においても国債利子及び財務省証券割引料の不用額が普通国債償還財源繰入の不用額全体の約9割を占めている。

表6 普通国債償還財源繰入の不用額の内訳
(単位:百万円)
区分
平成15年度
16年度
17年度
18年度
19年度
債務償還費
△64,236
0
△1,743
1,261
 
国債償還
△64,236
△1,743
1,261
借入金償還
0
利子及割引料
561,488
740,316
815,302
835,439
1,118,322
 
国債利子
461,108
634,424
708,562
730,900
914,941
財務省証券割引料
104,690
104,850
104,991
104,539
95,063
借入金利子
△4,311
1,041
1,748
0
108,318
国債事務取扱費
41,143
23,226
70,817
41,534
58,852
 
国債事務取扱手数料
40,987
23,098
70,568
41,299
58,708
庁費等
156
128
248
235
143
538,394
763,543
884,376
878,235
1,177,175

 18年度の普通国債償還財源繰入の不用額は、主に、利子及割引料の中の国債利子(7309億円。普通国債償還財源繰入の不用額全体の83.2%)及び財務省証券割引料(1045億円。同11.9%)であり、債務償還費の不用額はわずかである。
 そこで、これらの状況を踏まえて、普通国債償還財源繰入の不用額の大半を占める国債利子について多額の不用額が生じた具体的な原因、事情を検査すると、次のとおりである。
 国債利子のうち、当初予算作成時(前年度12月ごろ)までに発行済の国債に係る利子については、当該年度に支払う利子の額が確定しているため(変動利付国債を除く。)、当初予算での想定と実績は一致するので、不用額が生じない。
 一方、当初予算作成後に発行する国債等に係る利子については、当初予算作成時点では、国債発行額、国債金利、利子支払期等の変動要因があるため、実績額が予算額を下回る可能性がある。
 このうち、国債金利については、近年、実績金利が当初予算での予算積算金利を下回る状況となっている。18年度においても、表7のとおり、主要銘柄である10年利付国債の当初予算における予算積算金利は2.0%となっているが、補正予算作成時までの実績金利は1.7%から2.0%となっているなど金利差が生じている。こうした金利差等に伴い支払予定のなくなった18年度の国債利子額6636億円については、補正予算において修正減少しており、この結果、国債金利に関しては、補正後予算と決算に大きな差は生じていない。

表7 平成18年度補正予算における当初予算の予算積算金利と実績金利の開差に伴う国債利子の補正減少額(10年利付国債)
(単位:億円)
当初予算
補正予算
年度内に利払日が到来すると想定された国債発行額
予算積算金利
国債利子額
予算積算金利に対する実績金利
国債利子額の補正後の修正
補正減少額
206,840
2.0%
3,477
1.7%〜2.0%
3,304
173

 国債発行額については、18年度当初予算での想定は国債発行計画に基づき133兆2351億円としていたが、実際は、18年度中の国債発行額は132兆8734億円であり、大きな差は生じていない。しかし、18年度中の国債発行額のうち、発行時点が年度の後半となり年度内に利払日が到来しなかったものが予算での想定よりも多かったため、表8のとおり、実際に年度内に利払日が到来した国債発行額は70兆0942億円にとどまったことなどにより、支払予定のなくなった8056億円の国債利子が不用額となっている。

表8 平成18年度に発行した国債のうち年度内に利払日が到来した国債が予算の想定に比べて少なかったことなどに伴う国債利子の不用額
(単位:億円)
国債
当初予算
補正予算
決算
年度内に利払日が到来すると想定された国債発行額
(A)
Aの国債利子の補正後予算額
(B)
平成18年度における国債発行額
(C)
Cのうち年度内に国債利子が支払われた国債発行額
(D)
Dに係る国債利子の支払実績額(金利)
(E)
国債利子の不用額
(B−E)
国債合計
1,332,351
13,434
1,328,734
700,942
5,377
8,056
 
うち10年利付国債
206,840
3,304
208,770
138,888
1,617
(1.7%〜2.0%)
1,687
その他の増減(たばこ特別税充当額、受入経過利子充当額、買入消却における利子負担軽減額等)
△747
国債利子の不用額
7,309
注(1)
 「Aの国債利子の補正後予算額(B)」は、既に発行している国債に係る国債利子の予算積算金利と実績金利との金利差等に伴い修正減少した額である。
注(2)
 「平成18年度における国債発行額(C)」は、平成18年度中に発行された国債の発行額(額面金額)である。

 このように、18年度決算において国債利子に不用額が生じた具体的な原因、事情は、国債の発行時点が年度の後半となったものが多かったために、年度内に利払日が到来した国債が予算の想定に比べて少なかったことなどによると認められた。

イ 予備費

 予備費は、予見し難い予算の不足に充てるものであり、政府全体としての予備的財源であることから、財務大臣がこれを管理している。予備費を使用するときは、各省各庁の長は、その理由、金額及び積算の基礎を明らかにした予備費使用要求書を作製して、これを財務大臣に送付し、財務大臣は、この要求書を調査した上で、所要の調整を加えて予備費使用書を作製して、閣議決定を求め、あるいは自らこれを決定する。そして、この予備費の使用が決定されたときは、その経費については、各省各庁への予算配賦があったものとみなされる。各省各庁は、予備費を使用するときは、当該経費の目的に従った(項)及び(目)において予備費使用額として計上して、これを歳出予算現額に含めて支出している。
 一方、予備費の歳出予算額から上記の各省各庁へ予算配賦された予備費使用額を差し引いたものが、財務省における(項)予備費の歳出予算現額となるが、この額は配賦、執行されず全額不用額となる仕組みとなっている。
 予備費は、予見し難い事態の発生や事情の変更等によって予算の不足が生じた場合に使用されるために、年度によってその使用額は大きく異なる。15年度から19年度では、表9のとおり、298億円から1319億円となっていて当初予算額を大きく下回っていたが、いずれの年度も補正予算で500億円から1000億円の修正減額をしているために、不用額としては1180億円から2201億円になっている。このように予備費の不用額の発生は、経費の性格上、発生した予見し難い事態の規模等に左右される。

表9 予備費の執行状況
(単位:百万円)
年度
所管
当初予算額
A
補正減少額
B
歳出予算額
C=A−B
予備費使用額
歳出予算現額
不用額
D
不用額/歳出予算額
D/C
不用額/当初予算額
D/A
平成
15
財務省
予備費
(予備費)
350,000
100,000
250,000
△131,999
118,000
118,000
47.2%
33.7%
16
350,000
50,000
300,000
△110,727
189,272
189,272
63.1%
54.1%
17
350,000
50,000
300,000
△110,807
189,192
189,192
63.1%
54.1%
18
350,000
100,000
250,000
△29,864
220,135
220,135
88.1%
62.9%
19
350,000
100,000
250,000
△59,752
190,248
190,248
76.1%
54.4%

 近年の予備費使用額の主な内容は、15、17両年度における(目)衆議院議員総選挙執行委託費や19年度における(目)特定C型肝炎ウイルス感染者等救済給付金支給等業務費交付金等となっている。

ウ 国債費及び予備費以外の(目)

 国債費及び予備費以外の38目の不用理由を歳出決算分析調書でみると、表10のとおり、「事業量等が予定を下回ったことなどのため」及び「地方公共団体等からの交付申請が少なかったことなどのため」としているものが最も多くなっている。これらについて不用額が生じた具体的な原因、事情を検査したところ、前者については、予算作成時に支給対象者数や給付額等を正確に見込むことが困難であったこと、制度や事業内容等の周知・普及が十分でなかったことなどと、多岐にわたっており、後者については都道府県の財政状況が厳しいことが全体の半数近くとなっている状況である。

表10 不用額が生じた具体的な原因、事情(平成18年度の不用額が30億円以上の(目))
歳出決算分析調書における不用理由
本院の検査による不用額が生じた具体的な原因、事情
分類
事業量等が予定を下回ったことなどのため(12目)
〔1〕  予算作成時に支給対象者数、給付額等を正確に見込むことが困難であったため(3目)
(ウ)
〔2〕  制度変更に対する理解不足や申請された計画に不備があるなど、制度や事業内容等の周知・普及が十分でなかったため(2目)
(エ)
〔3〕  アスベスト対策等で緊急に予算がついたが、精査の結果、補助対象とならないものが含まれていたため(1目)
(ウ)
〔4〕  制度の定着に伴い利用者等の伸びが鈍化するなどしたため(1目)
(ウ)
〔5〕  地元調整が難航したり、精査の結果、工事の施工範囲が減少したりしていたため(1目)
(オ)
〔6〕  年度途中の法律改正により、補助の対象が変わったりしたため(1目)
(カ)
〔7〕  特別会計へ繰り入れた金額に過不足が生じた場合は翌々年度までに調整することとしていたものを、当該年度に調整する決算の処理方法に変更したため(1目)
(カ)
〔8〕  受給者の死亡等により支給できなかったため(1目)
(イ)
〔9〕  競争入札の結果、入札差額により当初予定を下回る金額で契約が締結できたことなどのため(1目)
(ア)
地方公共団体等からの交付申請が少なかったことなどのため(12目)
〔1〕  都道府県の財政状況が厳しいことにより交付申請が少なかったため(5目)
(ウ)
〔2〕  制度の変更点が周知されていなかったり、新たに創設された事業内容等の周知・普及が十分でなかったため(3目)
(エ)
〔3〕  年度途中の法律改正により、年度内での事業実施ができなかったため(1目)
(カ)
〔4〕  財政状況が好転し、交付対象外となる組合があったりなどしたため(1目)
(ウ)
〔5〕  地方公共団体からの事業計画の変更等があったため(1目)
(ウ)
〔6〕  地方公共団体からの要望が減少したことなどのため(1目)
(ウ)
事業計画の変更等があったため(3目)
〔1〕  地元調整等により、施設規模の見直しをしたため(1目)
(オ)
〔2〕  被災箇所での十分な調査が行えず、施工中に現場状況を照査した結果、工事量が減少したことなどのため(1目)
(イ)
〔3〕  計画変更に伴う設計見直し等により、事業が実施できなかったため(1目)
(カ)
契約価格が予定を下回ったことなどのため(3目)
〔1〕  競争入札の結果、入札差額により当初予定を下回る金額で契約が締結できたことなどのため(3目)
(ア)
地元調整等が難航したことなどのため(3目)
〔1〕  居住者の合意が得られず、事業着手に至らなかったため(2目)
(オ)
〔2〕  相手国の事情により、計画どおりの事業執行ができなかったため(1目)
(イ)
退職者が予定を下回ったため(2目)
〔1〕  予算作成時に退職人数等を把握することが困難であったため(2目)
(ウ)
災害関連事業が少なかったことなどのため(1目)
〔1〕  被害の発生状況等から事業の採択要件を満たさなかったり、再度災害の危険性が比較的低く事業の申請に至らなかったため(1目)
(イ)
前年度超過交付分を交付額から減額したため(1目)
〔1〕  制度の定着に伴い利用者等の伸びが鈍化するなどしたため(1目)
(ウ)
推進を要する事業が少なかったため(1目)
〔1〕  プロジェクトが効果的に実施されるために準備した機動的経費が当該年度では必要がなかったため(1目)
(カ)

 そして、不用額が生じた具体的な原因、事情を発生理由別に分類すると、おおむね次のとおりである。

(ア) 予算の経済的、効率的な執行や経費の節約によるもの(4目)

 競争入札の結果、入札差額により当初予定していた金額を下回る金額で契約が締結できたことなどにより不用額が生じている。中には、一般競争入札の件数を前年度より大幅に増加したことにより、その入札差額が不用額となったものも見受けられた。

(イ) 予算作成後の予見し難い事情の変更等によるもの(4目)

 受給者が年度途中で死亡したことなどにより支給額が支払われなかったこと、被災箇所の十分な現地測量が行えず、施工中に現場状況を照査した結果、工事量が減少したことなどにより不用額が生じている。

(ウ) 予算上の見積りや想定が実情と合っていなかったもの(16目)

 予算作成時に支給対象者数、給付額等を正確に見込むことが困難であったこと、都道府県の財政状況が厳しいことにより、予定より交付申請が少なかったことなどにより不用額が生じている。

(エ) 事業内容等の周知・普及が十分でなかったもの(5目)

 法律改正に伴う新規事業、制度改正に伴う指定医療機関の変更や報酬の支払方式の変更等について、制度や事業内容等の周知・普及が十分でなかったことなどにより、地方公共団体等からの交付申請等が予定より下回り不用額が生じている。

(オ) 地元調整等の難航等により事業が実施できなかったもの(4目)

 地元の同意や居住者の合意形成が得られなかったなどして地元調整が難航して、事業量等が予定を下回ったり、地域の実情により施設規模等を見直したりしたことなどにより不用額が生じている。

(カ) その他(5目)

 年度途中の法律改正により、補助対象が変更になったり、年度内での事業実施ができなかったりしたことなどにより不用額が生じている。

(3) 不用理由の決算への記述

 内閣から国会に提出される歳入歳出決算に添付される各省各庁歳出決算報告書では、不用額については歳出予算額、支出済歳出額等と同様に、(目)単位で示されているが、不用理由は(項)単位で、その備考欄に示されている。そして、表11のとおり、歳出決算では、1項の不用額が5億円以上の(項)について、不用理由が「予算不用」に記述されているが、これは、歳出決算報告書の不用理由と同一の記述となっている。

表11 歳出決算の不用理由の記述(平成18年度)
不用理由の記述
項数
事業量、支給対象人員等が予定を下回ったので、補助金、委託費等を要することが少なかったことなどのため
42
地方公共団体等からの交付申請が予定を下回ったので、補助金等を要することが少なかったことなどのため
17
事業計画等の変更等により、補助金等を要することが少なかったことなどのため
16
契約価格が予定を下回ったので、整備費等を要することが少なかったことなどのため
15
退職者が予定を下回ったので、退職手当を要することが少なかったことなどのため
11
職員基本給等を要することが少なかったことなどのため
4
災害復旧事業等が少なかったことなどのため
3
地元との調整等が難航したことなどにより、交付金等を要することが少なかったことなどのため
2
貸付金利息収入が予定を上回ったので、補給金を要することが少なかったことなどのため
2
金利の低下に伴い国債利子が減少したことなどにより、特別会計へ繰入を要することが少なかったため
1
その他
2
115

 このように国会に提出される歳出決算及び歳出決算報告書では(項)単位で不用理由を記述しており、(目)単位での記述はない。
 そして、一つの(項)に不用額が生じた複数の(目)がある場合には、不用額が多額の(目)や歳出予算現額に対する不用額の割合が高い(目)に係る不用理由を、当該(項)の不用理由として記述する取扱いとなっている。
 また、18年度の歳出決算に記述されている不用理由は、表11のとおり、いずれも「事業量、支給対象人員等が予定を下回ったので、補助金、委託費等を要することが少なかったことなどのため」、「地方公共団体等からの交付申請が予定を下回ったので、補助金等を要することが少なかったことなどのため」、「事業計画等の変更等により、補助金等を要することが少なかったことなどのため」など一般的な記述内容にとどまっており、不用額が生じた具体的な原因、事情は、正確に表されていなかったり、読み取り難いものとなっていたりしており、記述内容を検討することが望まれる。
 これらについて事例を示すと、次のとおりである。

<事例1>  (項)国債費の不用理由の記述

(所管)財務省(組織)財務本省(項)国債費
(単位:百万円)
(項)
不用額
歳出決算の不用理由
(項) 国債費
878,235
金利の低下に伴い国債利子が減少したこと等により、普通国債等償還財源等国債整理基金特別会計へ繰入を要することが少なかったため
(目)
不用額
本院の検査による不用額が生じた具体的な原因、事情
(目) 普通国債等償還財源等国債整理基金特別会計へ繰入
878,235
国債発行額のうち年度内に利払日が到来した国債が予算の想定に比べて少なかったことなどのため、国債利子等の支払額が減少したことによるもの
(目) 出資国債償還財源国債整理基金特別会計へ繰入
 

 財務省の平成18年度歳出決算の(項)国債費の不用額は878,235百万円であり、その不用理由は歳出決算上「金利の低下に伴い国債利子が減少したこと等により、普通国債等償還財源等国債整理基金特別会計へ繰入を要することが少なかったため」とされている。これは、同項の2目のうち不用額が生じた(目)である普通国債償還財源繰入について歳出決算分析調書において記載された不用理由をもって、同項の不用理由としているものである。
 この詳細についてみたところ、前記(2)アのとおり、普通国債償還財源繰入に不用額が生じた具体的な原因、事情は、18年度中に発行した国債のうち年度内に利払日が到来した国債が予算の想定に比べて少なかったことなどのために、国債利子等の支払額が減少したことによるものであった。
 したがって、現状の歳出決算では、(項)国債費の不用理由の記述内容は不用額が生じた具体的な原因、事情が正確に表されていないものとなっている。
 なお、財務省は、上記についての本院の指摘を踏まえて、19年度歳出決算の(項)国債費の不用理由について、「金利の低下及び年度内に利払日が到来した国債が少なかったことに伴い国債利子が減少したこと等により、普通国債等償還財源等国債整理基金特別会計へ繰入を要することが少なかったため」とした。

<事例2>  (項)老人医療・介護保険給付諸費の不用理由の記述

(所管)厚生労働省(組織)厚生労働本省(項)老人医療・介護保険給付諸費
(単位:百万円)
(項)
不用額
歳出決算の不用理由
(項) 老人医療・介護保険給付諸費
21,220
地方公共団体からの交付申請が予定を下回ったので、地域支援事業交付金を要することが少なかったこと等のため
(目)
不用額
本院の検査による不用額が生じた具体的な原因、事情
(目) 地域支援事業交付金
(ア)
9,328
(ア)
制度改正後間もなかったことなどにより、事業の実施方法について周知が十分でなかったため、地方公共団体からの交付申請が予定より下回ったもの
(目) 介護給付費財政調整交付金
(イ)
6,707
(イ)及び(ウ)
制度の定着に伴いサービス利用者等の伸び率が鈍化したため、交付金等が当初の見込みより少なくなったことによるもの
(目) 介護給付費等負担金
(ウ)
5,183
 
 その他6目
0
 

 厚生労働省の平成18年度歳出決算の(項)老人医療・介護保険給付諸費の不用額は21,220百万円であり、その不用理由は歳出決算上「地方公共団体からの交付申請が予定を下回ったので、地域支援事業交付金を要することが少なかったこと等のため」とされている。これは、同項の9目のうち、不用額が9,328百万円と最大の(目)地域支援事業交付金について、歳出決算分析調書において記載された不用理由をもって、同項の不用理由としている。
 しかし、上記(目)の不用理由とされた「地方公共団体からの交付申請が予定を下回った」具体的な原因、事情は明らかになっていない。そこで、この詳細についてみたところ、介護保険制度改正(18年4月施行)により地域支援事業が創設されたが、改正後間もなかったことなどの理由により、事業の実施が遅れて、事業の実施方法について周知が十分でなかったために、地方公共団体からの交付申請が予定より下回ったものとなっていた。
 また、同項には上記(目)以外に、(目)介護給付費財政調整交付金が不用額6,707百万円、(目)介護給付費等負担金が5,183百万円等があり、この2目の不用理由は、歳出決算分析調書等によると、介護保険制度(12年4月から実施)の定着に伴いサービス利用者等の伸び率が鈍化したことにより、介護給付費が当初の見込みより少なくなったために、〔1〕 前年度に交付された介護給付費財政調整交付金に超過交付分が生じて、この超過交付分を当該年度の同交付金から減額等したことによるものが6,707百万円、〔2〕 介護給付費等負担金が予定より下回ったものが5,183百万円などとされていた。
 したがって、現状の歳出決算では、記述内容から不用額が生じた具体的な原因、事情が読み取れず、また一部の(目)のみの不用理由が記述されたものとなっている。

(4) 不用額の予算への反映状況等

 近年、国会の決算審議、議決等において、国の決算結果等の予算への反映について一層の取組が求められている。
 決算結果等の予算への反映については、当該年度内に支出の予定がなくなった場合には、補正予算において予算額を修正減少したり、決算上不用額が生じた場合には、その不用理由の分析を行い、予算への反映ができるものは、翌々年度の概算決定額(以下「予算概算額」という。)において予算額を減額したりすることとしている。

ア 翌年度以降の予算への反映

 各府省等は、1億円以上の不用額が発生した(目)について予算概算額に反映させる取組を行っている。そこで、18年度決算において1億円以上の不用額が発生している357目(人件費は除く。)を対象に、不用額について予算概算額への反映状況についてみたところ、各府省等において、反映できたとしているものが135目、反映できなかったとしているものが222目見受けられた。
 そして、18年度の不用額が30億円以上の40目のうち、人件費の2目を除く38目を対象に不用額の20年度の予算概算額への反映状況についてみると、予算概算額への反映ができたとしているものが13目あり、不用率の高い(目)に多数見受けられた。一方、反映できなかったとしているものが25目あり、不用率が低い(目)に多数見受けられる状況であった。
 予算概算額への反映ができたとしている13目について、各府省は、20年度予算の作成に当たり、18年度に不用額が生じたことなどを踏まえて、事業の採択予定地区数を絞り込んだり、受給者の人員等の見直しを行ったり、平均落札価格の低下、物価の下落等を考慮して予算単価の見直しを行ったりなどして予算概算額に反映できたとしている。
 一方、予算概算額への反映ができなかったとしている25目について、各府省は、主に、長期的な事業計画に基づいて事業実施見込額を計上したり、次年度以降の事業が廃止になったりなどしているため、不用額を予算概算額に反映できなかったとしている。
 そして、この25目のうち、2年以上連続して予算への反映ができなかったとしている(目)で、かつ、不用率が10%以上となっている(目)についてみたところ、不用額が生じた具体的な原因、事情から予算概算額への反映の必要性を検討することが望まれるものが見受けられた。
 これについて事例を示すと、次のとおりである。

<事例3>  (所管)厚生労働省(組織)厚生労働本省(項)特別障害給付金国庫負担金(目)国民年金特別会計へ繰入

 厚生労働省は、国民年金に任意加入していなかったことにより、障害基礎年金が受給できない障害者に対する福祉的措置として、障害者に支給する特別障害給付金の費用等の全額を、一般会計から国民年金特別会計(福祉年金勘定)に繰り入れている。
 上記の(目)「国民年金特別会計へ繰入」の不用額は、表12のとおり、80億円から100億円に上り、不用率も8割近い状況となっている。厚生労働省は、このように不用額が発生した理由を、特別障害給付金の支給対象人員が予定を下回ったことによるとしており、また、不用額を予算に反映できなかった理由は、当該給付金給付費の性質上、直接的に反映させることは困難なためとしていた。

表12 「国民年金特別会計へ繰入」の不用額の推移(平成17年度〜19年度)
(単位:百万円)
主要経費等
使途別
平成17年度
18年度
19年度
社会保障関係費
他会計へ繰入
 
 
 
 社会保険費
 
 
 
 
     歳出予算現額a
 
10,088
13,279
11,883
     不用額b
 
8,048
10,148
8,501
     不用率(b/a)
 
79.8%
76.4%
71.5%
(注)
 平成19年度は、(項)特別障害給付金国庫負担金(目)年金特別会計へ繰入

 しかし、当該(目)において多額の不用額が生じた具体的な原因、事情は、予算上は毎年度支給対象人員を24,000人と見込んでいるのに対して、支給決定者の実績は、平成17年度5,705人、18年度6,943人と大幅に下回って推移していることによると認められた。この支給対象人員の見込みは、同省が8年度に一定割合で抽出した地区における当該給付金の支給対象人員を基に全国の対象人員を推計したものであり、結果として推計の精度が十分とはいえないことや17、18両年度の高い不用率の状況などを考慮すると、不用額の予算概算額への反映の必要性を検討することが望まれる。
 なお、19年度の(目)「年金特別会計へ繰入」の不用額は、上記と同様の原因、事情により、8,501百万円に上り、不用率も7割を超えている状況となっている。

イ 当該年度の予算への反映

 各省各庁の長は、当初予算が配賦された後、予算を執行しているが、このうち公共事業費その他財務大臣の指定する経費については、財政法第34条の2第1項の規定に基づき支出負担行為の実施計画(以下「実施計画」という。)を作成して、財務大臣の承認を経なければならないとされており、この実施計画に基づいて予算を執行することとされている。各省各庁の長は、予算を執行し毎年度9月から11月ごろに年度末までの予算の節減見込み等を財務省に報告しており、当該年度内に支出の予定がなくなったものは、補正予算において予算額を修正減少することとなる。
 そこで、18年度に不用額を30億円以上計上している40目のうち支出負担行為の実施計画について財務大臣の承認を経なければならないとされている21目を検査したところ、当該(目)に配賦された予算額、又はその一部について実施計画に計上されていないものが15目、計614億円見受けられた。これらの大部分は補助事業であり、年度途中での法律改正や地方公共団体等の財政事情等から、実施計画に計上されていないものである。
 このように配賦された予算額が実施計画に計上されていない(目)の事例を示すと、次のとおりである。

<事例4>  (所管)国土交通省(組織)国土交通本省(項)都市環境整備事業費(目)都市再生推進事業費補助

 国土交通省は、平成18年度に配賦された都市再生推進事業費補助の予算額のうち、中心市街地の再生を図るための補助事業に係る9,000百万円については、根拠となる中心市街地の活性化に関する法律(平成10年法律第92号)の改正が年度内に予定されていたために、年度当初の実施計画に計上していなかった。そして、同法が、18年6月に改正、同年8月に施行されて9,000百万円のうちの一部を地方公共団体の要望を踏まえて、同年11月の実施計画に所要額を計上したものの、結果として年度内の事業の前提となる内閣総理大臣による中心市街地活性化基本計画の認定又は認定見込みが極めて少数にとどまったために、残り7,744百万円については実施計画に計上せず不用額としている。
 これについて、国土交通省は、基本計画の認定等が年度内にどの程度行われるか不確定であり、一方では認定の状況に応じて事業実施が可能なように年度末まで予算額を確保し続ける必要があったとしている。

<事例5>  (所管)農林水産省(組織)水産庁(項)水産基盤整備費(目)水産物供給基盤整備事業費補助

 農林水産省は、水産物供給基盤整備事業費補助の当初予算額を地方公共団体等からの事業要望額等を参考に積算しているが、平成18年度に配賦された予算額のうち4,352百万円については、地方公共団体の財政事情等により実際には事業実施の要望がなかったために、実施計画に計上していなかった。そして、実施計画に計上しないまま18年度の不用額に計上している。
 これについて、農林水産省は、年度途中においても、現地調整が未了であったために、当初実施計画に計上していない地区等からの事業実施要望が想定されることから、これらの事業が実施できるよう必要な予算額を確保し続ける必要があったとしている。

 各府省等において、配賦された予算額を実施計画に計上できないことについてはそれぞれ理由があるが、実施計画に計上されていないものについては、事業実施の可能性を調べた上で、支出予定がないと考えられるものについては補正減少として補正予算に反映できるかなどについて検討することが望まれる。

(5) 繰越額と不用額との関係、補正予算等の状況

ア 前年度繰越額と不用額との関係

 歳出予算の繰越しについては、経費の性質上又は予算成立後の事由に基づき年度内にその支出が終わらない見込みのあるものについて、あらかじめ繰越明許費として国会の議決を経た経費を翌年度に繰り越す明許繰越しと、年度内に支出負担行為を行い、その後に生じた避け難い事故のために年度内に支出を終わらなかった経費を翌年度に繰り越す事故繰越しがある。
 17年度から18年度に繰り越したものは、表13のとおりである。

表13 翌年度繰越額の状況
(単位:億円)
明許繰越し
事故繰越し
17,662
(92.2%)
1,480
(7.7%)
19,143
(100%)

 これによると翌年度繰越額の92.2%は明許繰越しとなっている。明許繰越しのうち公共事業関係費が大半を占めているが、これは、事業の実施に相当の期間を要する公共事業関係費の性質上、支出が年度内に完了しない見込みがあるものが少なくないためである。
 歳出予算の翌年度への繰越しを行う場合には、各省各庁の長等は繰越計算書を作成して、事項ごとに繰越しの事由及び金額を明らかにして財務大臣の承認を受けなければならないこととされていて、この承認手続はおおむね2、3月ごろに行われている。このため、基本的には翌年度内での執行が確実なものであって、翌年度において不用額は発生し難いと考えられる。
 そこで、17年度から18年度への繰越額が10億円以上あり、かつ当該18年度に前年度繰越額から不用額を10億円以上計上している16目において、前年度から繰り越された理由と当該年度に不用額が発生した理由についてみると、表14のとおりとなっていた。

表14 平成17年度からの繰越額の繰越理由等
平成17年度からの主な繰越理由
目数
18年度に不用額が発生した主な理由
目数
地元調整の難航や計画変更等により不測の日数を要したため
10
地元調整が難航したため
3
事業計画・工法の変更があったため
4
補助対象外が判明したため
2
事業量が減少したため
1
用地の取得が遅延等したため
1
地元調整が難航したため
1
計画・設計変更等に不測の日数を要したため
4
事業計画の変更があったため
2
契約価格が予定を下回ったため
2
その他
1
その他
1

 これらの(目)における前年度からの繰越理由としては、地元関係者との協議や合意に時間を要したことなどが原因で事業計画が変更されたものが多くを占めている。そして、これら(目)の繰越額が当該年度に不用として計上された理由をみると、地元調整の難航や事業計画の変更等となっていて繰越理由と同様の理由が多い。
 なお、前年度繰越額については予算の変更を行う対象とはならず、補正減少の手続は執られないため、当該年度で執行されないものはその年度末に不用額として処理されることとなる。
 事業計画の変更等という繰越理由で前年度から繰り越された経費が同様の理由で当該年度においても執行されず、不用となった例を示すと次のとおりである。

<事例6>  (所管)内閣府(組織)内閣本府(項)内閣本府施設費(目)施設整備費

(単位:百万円)
年度
当初予算額
補正追加額
歳出予算額
前年度繰越額
歳出予算現額
支出済歳出額
翌年度繰越額
不用額
前年度繰越額に係る不用額
平成
17
7,610
7,610
1,139
8,750
4,420
4,329
1
18
8,498
8,498
4,329
12,827
2,868
6,604
3,354
3,226

 内閣府は、赤坂迎賓館の施設の老朽化等から施設全体の総合改修を平成17年度から3年間で実施することとしていた。その後18年1月に至り有識者による懇談会を設置して、赤坂迎賓館の活用方法の検討等を行うこととなった。このため、17年度には施設の保全上当面必要最低限のもの(配管の更新等)に限り実施して、他に予定されていた総合改修に該当する部分については、計画変更等により不測の日数を要したため、赤坂迎賓館に係る総合改修に要する経費のうち3,258百万円を18年度に繰り越した。
 18年4月の上記懇談会の報告を踏まえて、設計者を選定して、施設の建設(改修)に関して同年12月に別途の有識者懇談会を設置して、検討を開始することとなったが、全体の総合改修方針の決定が遅れたために、18年度においても計画変更に伴い設計見直しの検討に日数を要して、17年度から繰り越された経費の大部分に相当する3,226百万円については、18年度内に事業を完了する見込みが立たず不用としている。

イ 歳入の(目)返納金等に含まれる実質的な不用額

 支出済となった歳出の返納金は、翌年度の4月30日までは、支払った歳出の金額に戻入することができるが、これを越えると翌年度以降の歳入に組み入れなければならないとされている(会計法(昭和22年法律第35号)第9条、予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号)第6条)。このため、国が地方公共団体等に対して補助金等として支出して、決算上支出済額となった歳出のうち、結果として地方公共団体等が事業を実施しなかったなどの理由で、翌年度の5月以降に国に補助金等を返還したものは、翌年度の歳入に(目)返納金等として計上される。
 これらのうち事業を実施しなかった補助金等の返還額相当は、実質においては補助金等として執行されたものとはいえず、実質的な不用額と認められる。
 18年度における(目)返納金等に含まれる前年度以前に支出された補助金等に係る実質的な不用額は、表15のとおりである。

表15 (目)返納金に含まれる補助金等の返還額(実質的な不用額)
(単位:百万円)
平成18年度(17年度以前の不用相当額)
補助金
負担金
交付金
補給金
委託費
23,921
108,581
2,929
3,204
4,422
143,059

 決算上の不用額とともに、翌年度歳入の(目)返納金等に含まれるこれらの実質的な不用額を把握することは、予算の執行実績としての決算の的確な理解に資するものと考えられる。

ウ 補正予算の状況

 補正予算は財政法第29条に「内閣は、次に掲げる場合に限り、予算作成の手続に準じ、補正予算を作成し、これを国会に提出することができる。」と定められており、その「次に掲げる場合」とは次のとおりである。
〔1〕  法律上又は契約上国の義務に属する経費の不足を補うために必要な予算の追加を行う場合
〔2〕  予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となつた経費の支出又は債務の負担を行なうために必要な予算の追加を行なう場合
〔3〕  予算作成後に生じた事由に基づいて、予算に追加以外の変更を加える場合
 当初予算は見積りである以上、経済上その他諸々の事情の変更により、予算の不足が生じたり、その内容を変更しなければならなかったりする場合が発生する。この場合に当初予算を追加したり変更したりする予算が補正予算である。補正予算は国会の議決が成立した後は当初予算と一体として執行される。
 補正予算は当初予算では想定できない事態に対応して作成されるものである。
 そこで、18年度の補正予算において補正追加額が10億円以上かつ当初予算額以上あり、さらに、そのような状況が18年度以前から3年以上継続している15目を検査したところ、表16のとおりであった。

表16 補正追加額の理由
事業内容
多額の補正追加額が計上された理由
災害関連
(10目)
台風、豪雨等の災害が発生したことから、国及び地方公共団体が施行する事業が緊急に生じたため
施設整備
(2目)
受刑者等が急増したことから緊急的に施設を整備する必要が生じたため
当初予算ではわからなかった対象施設等が明確になったため
分担金・出資金・補給金
(3目)
当初予算ではわからなかった国際連合ミッション等に係る分担金の額が判明したため
当初予算ではわからない公庫の信用保険事業に係る準備基金に充てるための出資金が確定的になった時点で予算を計上することとしているため
当初予算ではわからない貸付けの償却が判明し、公庫の損益差が確定的になった時点で予算を計上することとしているため

 これらの多くは災害関連であり、その性質上当初に予見することが困難であることから毎年度補正追加額により対応しているものである。
 そして、災害関連以外で3年以上継続して多額の補正追加額が計上されている(目)の事例を示すと、次のとおりである。

<事例7>  (所管)財務省(組織)財務本省(項)政府出資(目)中小企業金融公庫出資金

 財務省は、信用保証協会が行う中小企業者の金融機関からの借入れについての債務保証を、中小企業金融公庫が包括的に保険する中小企業信用保険事業に関して、同公庫が保険準備基金を積むための資金を出資金として支出している。
 この出資金については、毎年想定を大きく超える多額の保険金支払いが発生しているために、表17のとおり、毎年度当初予算を大きく上回る多額の補正追加額を計上している。

表17 中小企業金融公庫出資金補正追加額の推移(平成16年度〜19年度)
(単位:百万円)
年度
当初予算額(A)
補正追加額(B)
補正追加額/当初予算額(B)/(A)
歳出予算現額
支出済歳出額
平成
16
74,290
74,290
74,290
17
38,000
52,200
137.3%
90,200
90,200
18
36,500
55,000
150.6%
91,500
91,500
19
32,400
220,700
681.1%
253,100
253,100

 これについて財務省は、年度当初では、保険金の支払対象となる事故等の発生が不確定で、想定できる範囲で予算計上していることから、年度当初に見込めなかった不測の事態が発生して、それに伴う保険金の支払い等の見通しが見込める段階で、多額の補正追加額を計上しているとしている。

<事例8>  (所管)法務省(組織)法務本省(項)法務省施設費(目)施設整備費

 法務省は、(目)施設整備費で受刑者等の収容体制の確保のために刑務所等の施設の整備を行っており、表18のとおり、毎年度、当初予算を大きく上回る多額の補正追加額を計上している。

表18 施設整備費補正追加額の推移(平成15年度〜18年度)
(単位:百万円)
年度
当初予算額(A)
補正追加額(B)
補正追加額/当初予算額(B)/(A)
歳出予算現額
支出済歳出額
翌年度繰越額
平成
15
17,089
34,600
202.4%
81,451
39,655
41,795
16
18,885
65,798
348.4%
126,478
53,211
73,266
17
17,490
39,328
224.8%
130,085
66,955
63,129
18
16,378
52,037
317.7%
131,545
61,604
69,941

 これについて法務省は、当初予算で収容状況の動向について正確な予測を立てることは困難であり、主として犯罪の増加に伴い受刑者等の収容人員の急増、介助を必要とする受刑者等の急増、独居拘禁に付すことを要する受刑者等の急増、長期受刑者等の急増等、当初予算の想定を超えて収容人員数が増加したために、収容施設の整備に補正追加額で対応しているとしている。

4 まとめ

 不用額は、歳出予算現額のうち支出されないこととなった金額であり、歳出予算現額から支出済歳出額及び翌年度繰越額を控除した金額である。不用額が生じた具体的な原因、事情については多様であり、不用額が生じたこと、又はその額や歳出予算現額に占める割合が大きいことなどをもって、直ちに予算の見積りが正確でない、あるいは予算の執行が適切でないといった見方をすることは一面的であり、適当でない。
 一方、我が国の財政が極めて厳しい現状にあり、毎年多額の公債を発行している状況において、予算の執行をより的確に行っていくことは重要である。

(1) 主要経費別、使途別の歳出決算における不用額等の状況

 主要経費別にみると、社会保障関係費、国債費、公共事業関係費、その他の事項経費及び予備費において不用額が多く、特に、国債費の不用額は、不用額合計の約半分を占め、また、予備費の不用額も不用額合計の約1割となっている。
 一方、使途別にみると、補助費・委託費、他会計へ繰入及び「その他」の不用額が多く、この3者で不用額合計の9割以上を占めている。

(2) 不用額が生じた原因、事情等

 18年度の一般会計歳出決算において不用額が30億円以上となっている40目を対象に、不用額が生じた具体的な原因、事情について国債費及び予備費とそれ以外の(目)に分けて検査した。
 国債費の不用額の大半を占める国債利子についてみると、不用額が生じた具体的な原因、事情は、国債の発行時点が年度の後半となったものが多かったために、年度内に利払日が到来した国債が予算の想定に比べて少なかったことなどによると認められた。
 予備費は、予見し難い事態の発生や事情の変更等によって予算の不足が生じた場合に使用されるために、予備費の不用額の発生は、経費の性格上、発生した予見し難い事態の規模等に左右される。
 国債費及び予備費以外の(目)の不用理由を歳出決算分析調書でみると、「事業量等が予定を下回ったことなどのため」及び「地方公共団体等からの交付申請が少なかったことなどのため」としているものが最も多くなっている。これらの不用額が生じた具体的な原因、事情は、制度や事業内容等の周知・普及が十分でなかったことや都道府県の財政状況が厳しいことなどとなっている。

(3) 不用理由の決算への記述

 歳出決算及び歳出決算報告書の不用理由は一般的な記述内容にとどまっており、不用額が生じた具体的な原因、事情は、正確に表されていなかったり、読み取り難いものとなっていたりしており、記述内容を検討することが望まれる。

(4) 不用額の予算への反映状況等

ア 翌年度以降の予算への反映

 各府省等は、不用額が発生した(目)について予算概算額に反映させる取組を行っている。18年度決算において不用額が発生している(目)について予算概算額への反映状況についてみたところ、事業の採択予定地区数を絞り込むなどして反映できたとしているものが見受けられる一方で、長期的な事業計画に基づいて事業実施見込額を計上したりしているなどのため反映できなかったとしているものも見受けられた。
 反映できなかったとしている(目)についてみたところ、不用額が生じた具体的な原因、事情から予算概算額への反映の必要性を検討することが望まれるものが見受けられた。

イ 当該年度の予算への反映

 公共事業費その他財務大臣の指定する経費については、当初予算が配賦された後、支出負担行為の実施計画を作成することとなっているが、これらのうちには、配賦された予算額、又はその一部について実施計画に計上されていないものがあり、その大部分は補助事業である。そして、これらは、年度途中での法律改正や地方公共団体等の財政事情等から実施計画に計上されていないものである。各府省等において、配賦された予算額を実施計画に計上できないことについてはそれぞれ理由があるが、実施計画に計上されていないものについては、事業実施の可能性を調べた上で、支出予定がないと考えられるものについては補正減少として補正予算に反映できるかなどについて検討することが望まれる。

(5) 繰越額の状況と不用額、補正予算等の状況

ア 前年度繰越額と不用額との関係

 歳出予算の翌年度への繰越しを行うものは、基本的には翌年度内での執行が確実なものであって、翌年度において不用額は発生し難いと考えられる。前年度からの繰越額から不用額が生じている(目)についてみると、不用の理由が地元調整の難航や事業計画の変更等前年度からの繰越理由と同様となっているものが多い。

イ 歳入の(目)返納金等に含まれる実質的な不用額

 事業を実施しなかった補助金等の返還額相当で、翌年度の歳入に(目)返納金等として計上された実質的な不用額を把握することは、決算上の不用額とともに、予算の執行実績としての決算の的確な理解に資するものと考えられる。

ウ 補正予算の状況

 補正予算は当初予算では想定できない事態に対応して作成されるものである。補正追加額が継続して計上されているものの多くは、その性質上当初に予見することが困難な災害関連であるが、災害関連以外でも、3年以上継続して多額の補正追加額を計上しているものが見受けられた。

 本院としては、一般会計歳出決算における不用額等の状況について引き続き注視していくこととする。