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  • 平成20年7月

独立行政法人水資源機構において、談合等に係る違約金条項について、課徴金減免制度の適用を受けて課徴金の納付を免除された事業者に対しても違約金を請求することができるよう改善させたもの


 独立行政法人水資源機構において、談合等に係る違約金条項について、課徴金減免制度の適用を受けて課徴金の納付を免除された事業者に対しても違約金を請求することができるよう改善させたもの

科目 一般勘定  
部局等 独立行政法人水資源機構
違約金請求の概要 談合等により生じた損害の回復を図るため、契約条項に基づき請負代金額等の一定割合に相当する額を受注者に対して請求するもの
課徴金減免制度の概要 談合などの違反行為を行った事業者が公正取引委員会の調査開始日よりも前に違反事実を申告するなど法律に定められた要件を満たす場合、当該事業者に対し公正取引委員会が課徴金の納付を免除又は減額するもの
水門談合事件に係る違反行為対象契約において違約金条項が付されていた契約及び契約金額 6件 55億9013万余円 (平成15、16両年度)
上記のうち検査の対象とした契約及び契約金額 6件 55億9013万余円  
上記のうち課徴金納付を免除された事業者と締結した契約及び契約金額 1件 11億5535万円 (平成16年度)

1 談合等に係る違約金条項等の概要

(1) 談合等に係る違約金条項の制定

 独立行政法人水資源機構(平成15年9月30日以前は水資源開発公団。以下「機構」という。)では、産業の発展及び人口の集中に伴い用水を必要とする地域に対する水の安定的な供給の確保を図るため、水資源の開発又は利用のための施設の改築等の公共工事等を多数実施している。
 近年、公共工事等における受注者等が、入札に当たり、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号。以下「独占禁止法」という。)第3条の規定に違反し談合を行ったとして、公正取引委員会から独占禁止法第7条第1項等に規定する排除措置命令等を受けたり、刑法(明治40年法律第45号)第96条の3に規定する競売入札妨害罪、談合罪等の容疑で逮捕等されたりする事態(以下、法律の規定に違反するこれらの行為を「談合等」という。)が数多く発生している。
 上記のように、公共工事等の入札において談合等があった場合には、受注者等の不法行為等による損害が生じることとなるが、機構では、機構に生じた損害の回復を容易にするとともに、談合等に対する抑止効果を期待して、平成15年7月に、機構発注の工事及び建設コンサルタント業務等(以下「工事等」という。)の契約において、当該工事等に関し談合等の不正行為を行った受注者に対し、請負代金額(契約締結後に請負代金額の変更があった場合には、変更後の請負代金額。以下同じ。)等の10分の1に相当する額を違約金として支払わせる違約金条項を制定し、同年8月6日以降に入札公告等の入札手続を開始する契約に適用することとし、その旨を支社等に通達している。
 その後、機構では、国土交通省等が発注した鋼橋上部工事に関して大規模な談合行為が発生したことを踏まえ、17年12月に、政府調達に関する協定(平成7年条約第23号)の適用を受ける工事について、受注者の悪質性が特に際立っている場合には、請負代金額の10分の1に相当する額の違約金に加え、請負代金額の100分の5に相当する額の違約金を支払わなければならないとするなど違約金条項の強化を行っている。

(2) 違約金条項の適用

 機構が定めた違約金条項では、受注者(共同企業体にあっては、その構成員)が、機構と締結した契約について次のいずれかに該当したとき、受注者は違約金として請負代金額の10分の1に相当する額などを支払わなければならないこととされている。
〔1〕  受注者が独占禁止法第3条の規定に違反したことなどにより、公正取引委員会が受注者に対し、独占禁止法第7条の2第1項の規定に基づく課徴金の納付命令(以下「課徴金納付命令」という。)を行い、当該命令が確定したとき
〔2〕  受注者(法人にあっては、その役員又は使用人を含む。)の刑法第96条の3又は独占禁止法第89条第1項若しくは第95条第1項第1号に規定する刑が確定したとき
 また、機構では、公正取引委員会が受注者に対して行った課徴金納付命令が確定した場合、どの契約が課徴金納付命令の対象となったかを確認するため、公正取引委員会に対し、課徴金納付命令の対象となった契約(以下「課徴金算定対象契約」という。)について照会した後、課徴金算定対象契約であると認められた契約については、受注者に対して違約金条項に基づく違約金の請求を行っている。

(3) 独占禁止法の改正

 17年4月に独占禁止法が改正(18年1月施行)されたことにより、課徴金減免制度の導入や審判手続等の見直しが行われるなど、独占禁止法の執行力・抑止力の強化が図られている。

ア 課徴金減免制度の導入

 課徴金減免制度は、カルテルからの離脱インセンティブを与え、カルテルの発見、解明を容易にして、競争秩序の早期回復を図るために導入されたもので、違反行為の実行としての事業活動を行った事業者が自ら違反事実を申告するなど法律で定める要件に該当すれば、当該事業者の課徴金を減免する制度である。
 すなわち、課徴金を納付すべき事業者が、公正取引委員会規則で定めるところにより、単独で、当該違反行為をした事業者のうち最初に公正取引委員会に当該違反行為に係る事実の報告及び資料の提出を行ったなどの要件に該当する場合には、公正取引委員会は、独占禁止法第7条の2第7項の規定に基づき、課徴金の納付を命じないものとするとされている。そして、公正取引委員会は、これにより課徴金の納付を命じないこととしたときは、当該事業者に対し、文書をもってその旨を通知することとされている。
 また、当該違反行為をした事業者のうち2番目又は3番目に公正取引委員会に上記の報告等を行ったなどの要件に該当する場合には、公正取引委員会は、独占禁止法第7条の2第8項又は第9項の規定に基づき、課徴金の額の一定割合を減額するものとするとされている。

イ 課徴金減免制度の適用を受けた事業者名等の公表

 公正取引委員会では、18年9月に、「課徴金減免制度の適用を受けた事業者名等の取扱いに関する方針」を定め、課徴金の納付を免除した事業者(以下「免除事業者」という。)又は課徴金の額を減額した事業者(以下「減額事業者」という。)から申出があった場合、当該事業者の名称、所在地、代表者名及び免除の事実又は減額の率を公表することとしている。

(4) 排除措置命令における認定事実

 公正取引委員会は、独占禁止法第3条等の規定に違反する談合などの行為があるときは、独占禁止法第7条等の規定に基づき、事業者等に対し排除措置命令を行うことができることとされている。そして、排除措置命令は、独占禁止法第49条の規定に基づき、文書によってこれを行い、排除措置命令書には、違反行為に関して公正取引委員会が認定した事実(以下「認定事実」という。)及びこれに対する法令の適用などを示さなければならないこととされている。そして、この認定事実には、違反行為者、違反行為の対象となった契約の種類、発注者及び入札方法、違反行為があった期間等が含まれるが、個別の契約件名、契約年月日等については示されない場合が多い。