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  • 国会及び内閣に対する報告(随時報告)|
  • 会計検査院法第30条の2の規定に基づく報告書|
  • 平成20年7月

独立行政法人水資源機構において、談合等に係る違約金条項について、課徴金減免制度の適用を受けて課徴金の納付を免除された事業者に対しても違約金を請求することができるよう改善させたもの


2 検査の結果

(検査の観点及び着眼点)

 公正取引委員会は、18年3月に、機構が発注した水門設備工事の入札において談合の疑いがあるとして、水門設備業者に立入り検査を実施し、19年3月に、同工事において談合があったとして、入札に参加した水門設備業者に対し、排除措置命令を行うとともに課徴金納付命令を行っている。そして、排除措置命令書において、違反行為があったとされる期間に入札が行われていて、かつ、違反行為の対象となっていたとされている契約の種類及び入札方法に該当する契約(以下「違反行為対象契約」という。)のうち、違約金条項が付されているものは6件(契約金額計55億9013万余円)となっている。
 そして、公正取引委員会では、19年3月に、免除事業者及び減額事業者からの申出に基づき、上記の機構発注の水門設備工事における談合事件(以下「水門談合事件」という。)について、当該事業者名等を公表している。
 また、課徴金減免制度は、競争秩序の早期回復を図るために導入された措置であるのに対し、違約金条項は、談合等により被ることになる損害の早期回復などのために発注者が契約上付するもので、両者は、それぞれ趣旨・目的が異なるものである。
 このような状況を踏まえ、合規性、経済性、効率性等の観点から、水門談合事件に係る違約金の請求は適切に行われているか、違約金条項は課徴金減免制度の導入を踏まえた適切な内容となっているかなどに着眼して検査を実施した。

(検査の対象及び方法)

 水門談合事件に係る違反行為対象契約において違約金条項が付されていた前記6件の契約(契約金額計55億9013万余円)を検査の対象とした。
 検査に当たっては、水門談合事件に係る契約について会計検査院が作成及び提出を求めた調書等を分析するとともに、機構本社において、上記の契約に係る違約金の請求状況等のほか、水門談合事件後の違約金条項の見直し状況について、会計実地検査を行った。

(検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。
 検査の対象とした6件の契約のうち、課徴金算定対象契約は5件であり、残りの1件は免除事業者1社との契約となっていた(表1 及び表2 参照)。

表1
 課徴金算定対象契約並びに免除事業者及び減額事業者との契約の状況
(単位:件、千円)

区分  検査対象契約  
うち違約金を請求しているもの  
うち違約金が納入されているもの
契約年月 件数 契約金額 件数 契約金額 違約金請求額 件数 収納金額
課徴金算定対象契約 15年12月

17年2月
5 4,434,780 5 4,434,780 443,478 5 443,478
  うち減額事業者2社注(1) との契約 16年3月

16年10月
2 923,349 2 923,349 92,334 2 92,334
免除事業者1社注(2) との契約 16年10月 1 1,155,357 0 0
6 5,590,137 5 4,434,780 443,478 5 443,478

注(1)
 減額事業者2社  JFEエンジニアリング株式会社及び日立造船株式会社
注(2)
 免除事業者1社  三菱重工業株式会社

表2
 免除事業者との契約の概要
(単位:千円)

契約件名 契約方式 契約年月日 契約金額
徳山ダム利水・水位低下用放流ゲート設備工事 指名競争契約 16年10月18日 1,155,357

 課徴金算定対象契約5件について、機構では、19年7月に、違約金条項に基づき計4億4347万余円の違約金の請求を行い、いずれも請求後一月以内に全額納入されていた。そして、この5件(契約金額計44億3478万円)のうち2件(契約金額計9億2334万余円)は減額事業者2社との契約に係るもので、納入された違約金は計9233万余円であった。
 一方、上記の減額事業者と同時に名称等が公表された免除事業者との契約1件(契約金額11億5535万余円)については、独占禁止法の改正により課徴金減免制度が導入された17年4月より前に締結されたものであり、免除事業者が減額事業者と同様に違反行為を行い機構が損害を被ることになっていても、機構の違約金条項では、課徴金の納付が免除された場合には、受注者に対し違約金を請求する場合の条件(以下「請求条件」という。)には該当しないとして、違約金の請求は行っていない。
 しかし、受注者が課徴金減免制度の適用を受け、課徴金の納付を免除されても、発注者は、談合により被った損害について、損害賠償請求等により適切に回復する必要がある。このことに関し、機構では、上記1件の契約について、別途、損害賠償を請求することを検討中であるとしている。
 上記について、談合により生じた損害の回復という点からみると、違約金条項は、これを契約書に付することにより、談合等が発覚した場合に、損害の発生及び損害額の証明を要することなく、あらかじめ約定した一定の額の違約金の請求を行い、収納することを可能とするものである。また、違約金条項を付している場合、受注者が談合等を行っていないとして違約金の支払に応じない場合も、発注者は違約金として請求する額について証明を要しないことから、早期に訴訟を提起することが可能となる。一方、違約金条項を契約書に付していない場合、損害を回復するためには損害賠償等を請求することとなるが、損害額の算定が困難であったり、提訴した場合に裁判が長期化したりなどして、早期かつ確実に損害を回復できないおそれがある。
 このように、違約金条項は談合等により被った損害の早期回復に資するものであるが、機構は、独占禁止法の改正を受けて、免除事業者との契約についても違約金を請求できるよう検討してきたものの、排除措置命令書の違反行為対象契約の中には受注調整が行われていない契約が含まれている可能性があるとして、水門談合事件後も工事の契約を多数締結しているにもかかわらず、違約金条項の見直しには至っておらず、損害賠償を請求する方針としていた。しかし、受注調整が行われていない契約が含まれている可能性があることにより受注者が違約金の請求に応じないおそれがあるにしても、免除事業者は、違反行為の実行としての事業活動を行ったことにより課徴金を納付すべき事業者とされた者が課徴金の納付を免除されたもので、個別の契約について受注調整を行っているものがあるのであるから、当該契約について、違約金条項に基づく速やかな損害の回復ができない状況となっている事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、機構において、上記のような事情はあったものの、損害の速やかな回復に資するための違約金条項の見直しがより重要であることについての認識が十分でなかったことなどによると認められた。