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  • 国会及び内閣に対する報告(随時報告)|
  • 会計検査院法第30条の2の規定に基づく報告書|
  • 平成20年7月

国及び国が資本金の2分の1以上を出資している法人における談合等に係る違約金条項の導入状況等について


 国及び国が資本金の2分の1以上を出資している法人における談合等に係る違約金条項の導入状況等について

検査対象 国の機関39府省庁等及び国が資本金の2分の1以上を出資している法人207法人
違約金条項の概要 談合等の事実が確定するなどした場合に契約相手方は約定した額を発注者に支払わなければならないとする契約条項
違約金条項の導入状況 すべての契約種類について導入している機関 10省庁等及び109法人
一部の契約種類について導入していない機関 19府省庁等及び70法人
すべての契約種類について導入していない機関 10省庁等及び28法人
談合等の事実が確定した事件数及び事件に係る検査対象機関の数 23事件(平成14年4月〜19年11月) 6府省庁及び15法人
上記のうち検査対象機関が談合等の事実を把握していない事件数及びその機関数  5事件 1省及び3法人
上記の23事件について検査対象機関が請求した違約金等の件数及び金額 違約金条項が付されている契約 551件 232億円
違約金条項が付されていない契約 7,839件 111億円
上記のうち収納された違約金等の件数及び金額 違約金条項が付されている契約 441件 212億円
違約金条項が付されていない契約 654件 6億円

1 検査の背景

 近年、国の機関等が発注する工事や物品の購入、役務の提供等において、その受注者及び受注者以外の入札参加事業者等が、入札に当たり、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号。以下「独占禁止法」という。)第3条の規定に違反し、談合を行ったとして公正取引委員会から排除措置命令等を受けたり、刑法(明治40年法律第45号)第96条の3に規定する競売入札妨害罪、談合罪等の容疑で逮捕等されたりする事態(以下、法律の規定に違反するこれらの行為を「談合等」という。)が数多く発生している。
 政府は、公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(平成12年法律第127号)に基づき、平成13年3月の閣議決定により、公共工事の入札及び契約の適正化を図るための措置に関する指針(以下「指針」という。)を定めており、各省各庁の長、特殊法人等(注1) の代表者又は地方公共団体の長(以下「各省各庁の長等」という。)は、指針に従い、公共工事(国、特殊法人等及び地方公共団体が発注する建設工事。以下同じ。)の入札及び契約の適正化を図るための措置を講ずるよう努めるものとするとされている。そして、公共工事の入札・契約を巡る近年の状況を踏まえ、18年5月に指針が改正され、公共工事の入札に関する談合について、その再発防止を図るという点から、各省各庁の長等は、談合があった場合における請負者の賠償金支払義務を請負契約締結時に併せて特約すること等により、その不正行為の結果として被った損害額の賠償の請求に努めるものとするとされている。
 また、前記のとおり、談合等が発生した契約は、工事だけでなく物品、役務等の幅広い分野にわたっており、発注者である国の機関等においては上記の公共工事と同様に、談合等により生じた損害の回復に努める必要がある。
 一方、17年4月に独占禁止法が改正(18年1月施行)されたことにより、課徴金減免制度(注2) の導入や審判手続等の見直しが行われるなど、独占禁止法の執行力・抑止力の強化が図られている。

(注1)
 特殊法人等  特殊法人又は独立行政法人のうち、次の要件のいずれにも該当する法人であって、公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律施行令(平成13年政令第34号)で定めるもの
〔1〕  資本金の2分の1以上が国からの出資による法人又はその事業の運営のために必要な経費の主たる財源を国からの交付金若しくは補助金によって得ている法人
〔2〕  その設立の目的を実現し、又はその主たる業務を遂行するため、計画的かつ継続的に建設工事の発注を行う法人
(注2)
 課徴金減免制度  談合などの違反行為を行った事業者が公正取引委員会の調査開始日よりも前に違反事実を申告するなど法律に定められた要件を満たす場合、当該事業者に対し公正取引委員会が課徴金の納付を免除又は減額するもの

 会計検査院は、表1-1のとおり、談合等の発生を契機とした事態について、契約事務の適正化等の点から検査した結果を決算検査報告に掲記するなどしており、これらの中では談合等による損害の回復状況等についても記述している。

表1-1
 会計検査院が報告した検査結果

報告区分 件名
15年度決算検査報告 国立大学病院及び国立病院における寝具の賃貸借等契約に係る入札談合について
会計検査院法第30条の2の規定に基づく国会及び内閣に対する報告
(18年10月) 
高速道路の建設事業に係る入札・契約制度の見直しの状況等について
成田国際空港株式会社における空港施設等の整備事業に係る入札・契約の実施状況等について
17年度決算検査報告 防衛施設庁における建設工事及び委託業務に係る入札・契約の実施状況について
会計検査院法第30条の2の規定に基づく国会及び内閣に対する報告
(19年9月)
国土交通省において、地方公共団体における国土交通省所管の国庫補助事業について、談合等があった場合の違約金等に係る国庫補助金相当額の国への返還に係る取扱いを定め、周知徹底を図るよう改善させたもの
18年度決算検査報告  国土交通省及び独立行政法人水資源機構における水門設備工事に係る入札・契約の実施状況について
福島、和歌山、宮崎各県における国土交通省所管の国庫補助事業に係る入札・契約の状況について

 また、参議院では、19年6月11日に決算委員会において、平成17年度決算に関して内閣に対し警告すべきものと議決し、同月13日に本会議において内閣に対し警告することに決している。
 この警告決議のうち、本件に関連する項目の内容は、次のとおりである。

4 国土交通省発注の水門設備工事の入札に関して、談合撲滅の先頭に立つべき同省が中央省庁として初めて官製談合防止法に基づく改善措置要求を受け、さらに、緑資源機構発注の林道整備調査の入札に関して、同機構及び農林水産省所管公益法人の役員等が独占禁止法違反容疑で逮捕されるという官製談合事件が相次いで発生したことは、極めて遺憾である。
 政府は、官製談合の排除等に関する度重なる本院の警告にもかかわらず、このような事態に至ったことを真摯に受け止め、これら事案の徹底解明は当然のこと、談合情報を得たときは談合の存否の確認に努めるとともに、公共工事に係る入札契約方式の改善、天下りの自粛、職員の意識改革などの方策を講じ、官製談合の根絶に尽力すべきである。