今般、国及び国が資本金の2分の1以上を出資している法人について、談合等に係る違約金条項の導入等の状況、検査対象機関が締結した契約に関して発生した談合事件に係る違約金等の請求状況等について検査したところ、次のような事態が見受けられた。
ア 違約金条項の導入等の状況について
(ア) すべての契約種類について違約金条項を導入していないのは、府省庁等の内部部局で10省庁等、法人で28法人となっている。また、一部の契約種類について違約金条項を導入していないのは、府省庁等の内部部局で19府省庁等、法人で70法人となっている。
(イ) 内部規程等の定めによらず違約金条項を導入している検査対象機関において、組織内で違約金条項の導入等の状況が区々となっていて統一的な事務処理が行われていないものがある。また、随意契約のうち、見積合わせにより契約相手方を決定する方式としているものなどについて、契約書に違約金条項を付していないものがある。
(ウ) 違約金条項の内容をみると、請求条件が17年4月の独占禁止法の改正に対応したものとなっていないことなどにより、課徴金の納付命令が行われない場合などには、基本的には違約金の支払を受けられないことになるものがある。また、単価契約の場合に、違約金の算定対象額を契約未履行部分の金額としていて、契約履行後に談合等が発覚した場合に、違約金条項に基づく違約金の請求が困難となるものがある。さらに、損害額が違約金請求額を超える場合の取扱いを契約書に明示していないものがある。
イ 違約金等の請求状況等について
(ア) 検査対象機関において談合事件が発生していた事実を把握しておらず、談合等により生じた損害が回復されていないものが4機関において5事件ある。
(イ) 契約の履行が完了している談合対象契約のうち、違約金条項が付されているものについては、速やかに違約金の請求を行い、請求金額の91.2%が収納されている。一方、違約金条項が付されていない契約については、損害額の合理的な算定方法の検討などに相当な期間を要し、損害金の請求に至っていないものや、契約相手方が支払に応じなかったことから訴訟を提起したが、判決の確定に至るまで長期間を要しているものなどがある。このため、違約金等が収納されている契約のみをとってみても、違約金条項が付されているものでは、収納されるまでの期間は談合等の事実が確定した日から起算して平均134.5日となっているのに比べ、付されていないものでは、平均656.9日となっていて、損害の回復に時間を要している状況である。また、3機関においては違約金条項を導入しているにもかかわらず、談合対象契約とされたものの中には違約金条項が付されていないものがある。
(ウ) 違約金条項が付されている談合対象契約について、契約相手方が課徴金減免制度の適用を受けたため、違約金条項を適用するための請求条件に該当しないこととなり、違約金を請求していないものが2機関あるが、当該検査対象機関においては、その後も違約金条項の見直しには至っておらず、同様な事態が発生した場合には違約金を請求できないとしている。このことに関し、2機関は、20年7月に違約金条項の見直しを行い、課徴金の納付を免除された契約相手方に対しても違約金を請求することができるよう改善の処置を講じた。
違約金条項は、談合等によって生じた損害の回復を容易にするとともに、談合等に対する抑止効果を期待して導入されるものである。そして、検査対象機関において発生した談合事件に係る損害の回復状況をみると、違約金条項が付されている契約においては、違約金条項が付されていない契約に比べ、早期に損害回復がなされている状況である。このような中、国、独立行政法人、国立大学法人等の締結する随意契約については、「随意契約見直し計画」を策定するなど見直しを進め、競争性のない随意契約を競争入札等に計画的に移行するなど随意契約の適正化が推進されている。このため、これらの検査対象機関においても、違約金条項を導入する必要性は今後更に高まることになる。
したがって、以上の検査結果を踏まえ、検査対象機関においては、次のような措置を執ることが必要である。
ア 全部又は一部の契約種類について違約金条項を導入していない機関においては、適切に違約金条項の導入を行う。
イ 違約金条項の導入は内部規程等に基づいて行い、違約金条項を契約に付することを徹底する。また、随意契約であっても、必要な場合は適切に違約金条項を付する。
ウ 違約金条項に規定する内容については、単価契約の場合における違約金の算定対象額を適切に定めたり、損害額が違約金請求額を超える場合の取扱いを適切に定めたりするほか、請求条件として排除措置命令の確定等に係る事項を追加するなど、談合等の発生に対応して的確に違約金条項を適用し、損害の回復を行うことができるものにする。
エ 談合事件が発生していた事実を適時適切に把握する。その際には、契約相手方から書類の提供を受けたり、他の発注機関などから情報の提供を受けたりなどして的確に情報を収集する。また、談合事件が発生したことを把握していなかったため、談合等により生じた損害が回復されていない契約については、早急に談合等により生じた損害額の調査を行い、損害の回復に努める。
オ 違約金条項が付されていない契約などで、談合等により生じた損害の回復がなされていない契約については、損害賠償請求権に係る時効が3年であることなども念頭に置きつつ、早期の損害回復に努める。また、当該契約が補助金等を原資として法人が自ら実施した事業に係るものである場合には、当該損害金に係る国庫補助金相当額の返還手続を適切に行う。
会計検査院としては、今後とも違約金条項の導入及び見直しの状況並びに談合等により生じた損害の回復状況等について引き続き注視していくこととする。