部局等 | 内閣官房、内閣府本府、公正取引委員会、警察庁、総務本省、財務本 省、国税庁、厚生労働本省、農林水産本省、経済産業本省、国土交通 本省 |
電子申請等関係 システムの概要 |
国民が国の行政機関とこれまで書面を用いてやり取りしてきた申請・届出等について、インターネット等を経由した電子的な申請等によっても行うことができるようにするためのシステム |
効果が十分発現していない10府省等の12電子申請等関係システムの整備・ 運用等に係る経費 | 118億7519万円(背景金額)(平成17年度~20年度) |
本院は、電子申請等関係システムの利用状況について、平成21年9月18日に、内閣、内閣府、公正取引委員会、警察庁、総務省、財務省、国税庁、厚生労働省、農林水産省、経済産業 省及び国土交通省の11府省等の長に、「電子申請等関係システムの利用状況について」とし て、会計検査院法第36条の規定により意見を表示した。
これらの意見表示の内容は、上記11府省等のそれぞれの検査結果に応じたものとなってい るが、これを総括的に示すと以下のとおりである。
政府は、高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(平成12年法律第144号)に基づい て、13年1月、内閣に、内閣総理大臣を長とした高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(以下「IT戦略本部」という。)を設置し、高度情報通信ネットワーク社会の形成に関するe―Japan重点計画を作成するなどして、国民の利便性の向上を図るとともに、行政運営の簡素化、効率化及び透明性の向上に資するため、国及び地方公共団体の事務におけるインターネットその他の高度情報通信ネットワークの利用の拡大等行政の情報化を積極的に推進することとしている。
そして、各府省等は、その一環として、国民が国の行政機関とこれまで書面を用いてやり取りしてきた申請、届出等(以下「申請等」という。)について、インターネット等を経由した電子的な申請等を行うための電子申請等関係システムを整備・運用してきている。
IT戦略本部は、高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する重点計画を毎年度策定するとともに、必要に応じて行政の情報化を推進するための施策等を策定するなどしており、近年における電子申請等関係システムに係る行政の情報化を推進するための主な施策は、以下のとおりとなっている。
ア IT新改革戦略
IT戦略本部が18年1月に策定した「IT新改革戦略」の施策において、申請等における「オンライン利用率」を22年度までに50%以上とすることを目標とし、また、国の扱うほとんどの手続においてインターネットによる申請等が可能となっている一方で国民・企業等による電子政府の利用が進んでいないなどの状況を踏まえ、利用者の視点に立って添付書類の電子化、省略・廃止、手続自体の廃止等を図るなどとしている。
イ オンライン利用促進のための行動計画
各府省等は、上記のIT新改革戦略を受け、18年3月に、オンライン利用促進のため、年間申請件数10万件以上の手続、オンライン利用に関する企業ニーズの高い登記、国税、社会保険等の手続をオンライン利用促進対象手続(18年3時点で175手続。19年3月の改定により165手続)として、「オンライン利用促進のための行動計画」を定めており、これにより原則として添付書類を省略すること、電子署名を簡略化すること、システムを改修することなどの取組を進めることとしている。
ウ オンライン利用拡大行動計画
IT戦略本部は、20年9月に、IT新改革戦略に掲げた目標を達成するとともに、オンライン利用を飛躍的に拡大させていく必要があるなどとして、「オンライン利用拡大行動計画」を策定している。この計画によると、オンライン化された申請等の手続のうち、国民や企業による利用頻度が高い年間申請等件数が100万件以上の手続及び100万件未満であっても主として企業等が反復的又は継続的に利用する見込みのある手続を「重点手続」(71手続)とし、重点手続全体で25年度末に「オンライン利用率」72%以上の実現を目指すとしている。
また、同計画の実行に当たっては、オンライン利用の飛躍的拡大を図る一方で、利用率が極めて低調であるなどの手続についてはシステムの停止も含めて見直しを図るなどとしている。そして、内閣官房及び総務省は、利用率が極めて低調で、今後とも改善の見込みがない手続については、今後の利用者ニーズや費用対効果、代替措置の有無等を総合的に勘案して、停止すべきシステムの範囲をIT戦略本部に置かれている電子政府評価委員会に対して報告し、その評価や国民からの意見も踏まえた上で、システム停止の是非について結論を得るものとしている。また、停止すべきシステムの範囲は、内閣官房及び総務省において必要に応じて毎年見直していくこととしている。
本院は、参議院からの検査要請に基づき、18年10月に、「各府省等におけるコンピュータシステムに関する会計検査の結果について」として、その検査結果を報告している。そして、同報告において、電子申請等関係システムの電子申請件数を全申請件数(電子申請件数と書面による申請件数の計)で除した率(以下「電子申請率」という。)が全体では低い状況にあることから、各府省等において、手続のオンライン化の必要性、経済性を十分検討するとともに、利便性に対する国民の意見、要望も広く聴取して、そのニーズを的確に把握するなどしてシステムの利用の拡大を図り、もって国民の利便性の向上に努めることが必要であり、本院は、今後とも多角的な観点から検査を実施していくとしている。
また、20年10月に、国土交通大臣等に対し、自動車保有関係手続のワンストップサービスの利用が低調となっているため、サービスの運用方法等の改善を図るよう意見を表示している。
本院は、検査要請に基づいて実施した前記の18年の検査から3年が経過し、この間、前記1のようにIT戦略本部がオンライン利用拡大行動計画を策定していることなどを踏まえ、経済性、効率性、有効性等の観点から、システムの利用が拡大しているか、システムの見直しが行われているかなどに着眼して検査を行った。
検査に当たっては、21年4月時点で各府省等において運用している電子申請等関係システム65システムのうち、前記の自動車保有関係手続のワンストップサービス等を除いた49システムについて、電子申請等関係システムに係る調書を徴するとともに、17府省等(注1)
において、各システムの利用状況、電子申請率向上のための施策等について関係資料により実地に検査を行った。
各府省等が運用している上記49システムの17年度から20年度までの間の整備・運用等に係る経費(注2) は、表1 のとおり計1080億3064万余円となっている。
府省等名 | システム数 | 平成17年度 | 18年度 | 19年度 | 20年度 | 合計 |
人事院 | 2システム | 6,456,975 | 9,268,350 | 7,609,350 | 10,833,900 | 34,168,575 |
内閣府本府 | 3システム | 89,901,588 | 169,684,788 | 114,254,238 | 386,144,511 | 759,985,125 |
公正取引委員会 | 1システム | 22,184,818 | 14,561,085 | 43,835,267 | 58,158,995 | 138,740,165 |
警察庁 | 1システム | 25,867,800 | 93,940,492 | 67,425,037 | 39,324,600 | 226,557,929 |
金融庁 | 2システム | 1,362,861,363 | 2,272,697,553 | 1,807,532,089 | 993,735,491 | 6,436,826,496 |
総務省 | 4システム | 1,369,902,436 | 1,890,534,489 | 1,632,899,493 | 1,499,427,951 | 6,392,764,369 |
法務省 | 2システム | 317,923,812 | 295,224,835 | 1,399,108,916 | 1,819,406,133 | 3,831,663,696 |
外務省 | 1システム | 28,750,838 | 68,707,979 | 28,589,577 | 147,566,298 | 273,614,692 |
財務省 | 5システム | 7,340,802,302 | 6,926,235,625 | 6,120,330,948 | 6,567,817,598 | 26,955,186,473 |
国税庁 | 2システム | 8,144,979,729 | 8,623,502,486 | 8,956,731,093 | 9,639,151,787 | 35,364,365,095 |
文部科学省 | 1システム | 46,507,366 | 29,461,530 | 44,426,707 | 21,668,562 | 142,064,165 |
厚生労働省 | 5システム | 1,723,121,772 | 1,764,008,322 | 1,566,397,058 | 1,523,118,924 | 6,576,646,076 |
農林水産省 | 3システム | 454,593,964 | 394,394,475 | 944,028,283 | 732,464,260 | 2,525,480,982 |
水産庁 | 1システム | 293,000,000 | 233,734,000 | 216,597,000 | 206,518,000 | 949,849,000 |
経済産業省 | 5システム | 983,938,266 | 883,559,941 | 864,508,123 | 731,915,465 | 3,463,921,795 |
特許庁 | 2システム | 1,564,385,426 | 1,579,006,453 | 963,182,203 | 1,099,489,594 | 5,206,063,676 |
国土交通省 | 5システム | 1,593,333,985 | 1,155,043,582 | 952,841,600 | 1,824,895,213 | 5,526,114,380 |
海上保安庁 | 1システム | 97,522,242 | 71,886,150 | 74,877,600 | 68,441,400 | 312,727,392 |
環境省 | 1システム | 105,040,088 | 169,731,873 | 92,404,185 | 96,599,657 | 463,775,803 |
最高裁判所 | 2システム | 627,463,734 | 549,767,612 | 574,838,240 | 698,056,844 | 2,450,126,430 |
20府省等 | 49システム | 26,198,538,504 | 27,194,951,620 | 26,472,417,007 | 28,164,735,183 | 108,030,642,314 |
そして、これら49システムの利用状況等を検査したところ、次のような事態が見受けられた。
各府省等が整備・運用している電子申請等関係システムの17年度から20年度までにおける電子申請率の推移は全体でみると、表2 のとおり、17年度8.1%、18年度19.8%、19年度26.0%、20年度34.0となっていて、毎年度向上してきているものの、内閣府本府等10府省等(注3) が運用している汎用受付等システム等の12システムは、電子申請率が10%以下と低迷していて、このうち7システムは、20年度における電子申請率が1%以下と著しく低迷している。そして、これら12システムの電子申請件数についてみると、表3 のとおり、20年度における年間の電子申請件数が100件以下のシステムが6システム見受けられた。
府省等名 | システム名 | 平成17年度 | 18年度 | 19年度 | 20年度 |
人事院 | インターネットによる受験申込みシステム | 17.6 | 15.0 | 11.0 | 17.0 |
国家公務員経験者採用管理システム | ― | 64.1 | 100 | 100 | |
内閣府本府 | 汎用受付等システム | 0.4 | 0.2 | 0.4 | 0.4 |
公益認定等総合情報システム | ― | ― | ― | 93.0 | |
適格消費者団体専用電子掲示板システム | ― | ― | 82.8 | 79.3 | |
公正取引委員会 | オンライン共通受付システム | 10.6 | 7.9 | 7.0 | 3.3 |
警察庁 | 電子申請・届出システム | 0.2 | 0.2 | 1.3 | 0.8 |
金融庁 | 金融庁電子申請・届出システム | 51.1 | 71.9 | 82.2 | 85.6 |
金融商品取引法に基づく有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システム | 76.7 | 82.9 | 99.3 | 99.8 | |
総務省 | 総務省電子申請・届出システム | 0.5 | 0.4 | 0.2 | 0.3 |
総務省電波利用電子申請・届出システム | 11.6 | 18.0 | 25.7 | 32.5 | |
政府統計共同利用システム(政府統計オンライン調査総合窓口) | ― | ― | ― | 把握不可 | |
政治資金・政党助成関係申請・届出オンラインシステム | 0 | 0 | 0 | 0.0 | |
法務省 | 総合的な受付・通知システム | 11.3 | 15.2 | 23.3 | 46.7 |
乗員上陸許可支援システム | 24.3 | 31.4 | 34.0 | 37.5 | |
外務省 | 在留届電子届出システム | 22.5 | 24.3 | 30.9 | 28.9 |
財務省 | 財務省電子申請システム | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 |
輸出入・港湾関連情報処理システム(NACCS) | 未集計 | 94.2 | 95.9 | 95.5 | |
税関手続申請システム(CuPES) | 未集計 | 11.2 | 12.6 | 17.2 | |
法人企業統計調査等ネットワークシステム | 14.6 | 16.7 | 18.6 | 20.0 | |
国庫事務電算化システム | 100 | 100 | 99.8 | 99.9 | |
国税庁 | 国税電子申告・納税システム(e―Tax) | 0.4 | 4.6 | 21.5 | 32.9 |
国税庁電子開示請求システム | 7.2 | 0.1 | 0.0 | 0.0 | |
文部科学省 | 電子調査票収集システム | 52.5 | 64.5 | 75.1 | 90.2 |
厚生労働省 | 厚生労働省汎用申請・届出等省内処理システム | 0.0 | 5.6 | 14.9 | 13.3 |
労働保険適用徴収システム | 0.0 | 0.4 | 0.7 | 1.0 | |
毎月勤労統計調査オンラインシステム | 18.8 | 20.0 | 20.5 | 21.3 | |
看護師等養成所運営報告システム及び看護師等学校養成所入学状況並びに卒業生就業状況調査システム | 100 | 100 | 100 | 100 | |
介護福祉士養成施設等事業報告システム | 100 | 100 | 100 | 100 | |
農林水産省 | 農林水産省電子申請システム | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 |
植物検疫検査手続電算処理システム | 84.1 | 85.0 | 85.5 | 86.2 | |
動物検疫検査手続電算処理システム | 86.8 | 88.5 | 89.6 | 87.8 | |
水産庁 | 漁獲管理情報処理システム | 98.0 | 97.8 | 98.5 | 98.1 |
経済産業省 | 経済産業省汎用電子申請システム | 1.1 | 1.7 | 1.7 | 1.9 |
貿易管理オープンネットワークシステム(JETRAS) | 9.2 | 8.1 | 8.3 | 8.2 | |
企業活動基本調査オンラインシステム | 15.1 | 20.1 | 19.2 | 19.6 | |
新世代統計システム | 27.2 | 30.7 | 31.6 | 32.7 | |
工業標準策定システム | 99.5 | 99.3 | 98.2 | 96.9 | |
特許庁 | 弁理士試験願書請求受付システム | 55.2 | 56.0 | 57.4 | 61.7 |
電子出願関連事務処理システム | 90.2 | 91.1 | 92.3 | 91.5 | |
国土交通省 | 国土交通省オンライン申請システム | 0.8 | 1.0 | 1.2 | 1.3 |
輸出入・港湾関連情報処理システム(NACCS)(港湾サブシステム) | ― | 18.9 | 27.5 | 30.5 | |
特殊車両通行許可オンライン申請システム | 8.7 | 19.5 | 27.7 | 37.1 | |
道路占用許可電子申請システム | 32.3 | 15.4 | 37.2 | 61.4 | |
宅建業電子申請システム | ― | ― | 1.4 | 12.6 | |
海上保安庁 | 輸出入・港湾関連情報処理システム(NACCS)(港湾サブシステム) | 23.4 | 27.3 | 30.9 | 34.3 |
環境省 | 環境省電子申請・届出システム | 0.3 | 19.3 | 23.4 | 34.5 |
最高裁判所 | 最高裁判所汎用受付等システム | 把握不可 | 把握不可 | 把握不可 | 把握不可 |
督促手続オンラインシステム | ― | 25.2 | 32.0 | 38.9 | |
検査対象システムは20府省で計49システム | 8.1 | 19.8 | 26.0 | 34.0 |
表3 電子申請率が低迷している12システム | ||
上段:全申請件数 | ||
中段:電子申請件数 | ||
下段:電子申請率 | (単位:件、%) |
府省等名 | システム名 | 平成17年度 | 18年度 | 19年度 | 20年度 |
内閣府本府 | 汎用受付等システ厶 | 4,194 | 7,211 | 6,717 | 7,177 |
17 | 19 | 30 | 32 | ||
0.4 | 0.2 | 0.4 | 0.4 | ||
公正取引委員会 | オンライン共通受付システム | 65,956 | 62,280 | 98,690 | 59,141 |
7,030 | 4,958 | 6,936 | 1,996 | ||
10.6 | 7.9 | 7.0 | 3.3 | ||
警察庁 | 電子申請・届出システム | 2,023 | 1,934 | 1,995 | 1,984 |
6 | 5 | 26 | 16 | ||
0.2 | 0.2 | 1.3 | 0.8 | ||
総務省 | 総務省電子申請・届出システム | 254,279 | 219,085 | 188,154 | 195,843 |
1,474 | 894 | 476 | 688 | ||
0.5 | 0.4 | 0.2 | 0.3 | ||
政治資金・政党助成関係申請・届出オンラインシステム | 6,321 | 6,048 | 6,210 | 6,354 | |
0 | 0 | 0 | 2 | ||
0 | 0 | 0 | 0.0 | ||
財務省 | 財務省電子申請システム | 73,877 | 67,311 | 63,569 | 69,758 |
69 | 48 | 55 | 61 | ||
0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | ||
国税庁 | 国税庁電子開示請求システ厶 | 81,140 | 145,228 | 140,974 | 134,410 |
5,920 | 275 | 50 | 61 | ||
7.2 | 0.1 | 0.0 | 0.0 | ||
厚生労働省 | 労働保険適用徴収システム | 5,181,433 | 5,220,165 | 5,256,518 | 4,943,257 |
3,779 | 21,032 | 40,146 | 54,282 | ||
0.0 | 0.4 | 0.7 | 1.0 | ||
農林水産省 | 農林水産省電子申請システム | 161,995 | 156,436 | 182,865 | 145,865 |
22 | 28 | 20 | 39 | ||
0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | ||
経済産業省 | 経済産業省汎用電子申請システム | 671,851 | 601,960 | 571,563 | 580,231 |
8,033 | 10,455 | 10,220 | 11,030 | ||
1.1 | 1.7 | 1.7 | 1.9 | ||
貿易管理オープンネットワークシステム(JETRAS) | 48,510 | 53,182 | 57,634 | 52,888 | |
4,464 | 4,319 | 4,835 | 4,348 | ||
9.2 | 8.1 | 8.3 | 8.2 | ||
国土交通省 | 国土交通省オンライン申請システム | 2,059,200 | 2,036,209 | 1,961,997 | 2,043,143 |
18,403 | 20,752 | 25,040 | 26,726 | ||
0.8 | 1.0 | 1.2 | 1.3 |
上記の10府省等は、電子申請率が10%以下と低迷しているシステムについてその向上を図るため、申請窓口を総務省が運用する電子政府の総合窓口(e―Gov)電子申請システムに統合して申請者の利便性向上を図ったり、ホームページ等において電子申請の利用についての広報、普及を行ったりなどしているものの、郵送等による申請が可能で電子申請することのメリットが少ないこと、電子申請だけでは手続が完結せず別途に添付書類が必要な場合があることなどから、電子申請率が低迷しているとしている。
前記18年の検査において、オンライン化によって電子申請が可能となった手続について、16年度における各手続の全申請件数の申請件数区分ごとの分布状況を調査したところ、表4 のとおり、全申請件数が50件以下となっていて申請そのものが極めて少ない手続が全体の72.8%となっていた。そこで、18年の検査と同様に、19年度において電子申請が可能な47システムの12,425手続について、1年度の全申請件数の申請件数区分ごとの分布状況を調査したところ、表4のとおり、全申請件数が0件のものが6,370手続(構成比51.2%)、1件以上50件以下のものが3,055手続(同24.5%)となっていて、申請そのものが極めて少ない手続が9,425手続(同75.8%)と相当数を占めており、16年度と比べ電子申請が可能な手続の利用状況に大きな変化はない状況となっている。
年度 | 区分 | 電子申請が可能となった手続の全申請件数 | 電子申請が可能となった手続数計 | |||||||
0件 | 1件~50件 | 51件~100件 | 101件~1,000件 | 1,001件~10,000件 | 10,001件~99,999件 | 10万件以上 | 把握できないなど | |||
平成 16年度 |
手続数 | 7,054 | 3,309 | 495 | 1,061 | 545 | 255 | 149 | 1,357 | 14,225 |
10,363 | ||||||||||
構成比 | 49.5 | 23.2 | 3.4 | 7.4 | 3.8 | 1.7 | 1.0 | 9.5 | 100 | |
72.8 | ||||||||||
19年度 | 手続数 | 6,370 | 3,055 | 508 | 1,133 | 559 | 261 | 147 | 392 | 12,425 |
9,425 | ||||||||||
構成比 | 51.2 | 24.5 | 4.0 | 9.1 | 4.4 | 2.1 | 1.1 | 3.1 | 100 | |
75.8 |
府省等名 | 電子申請件数 | 電子申請件数が最も多い手続 | 電子申請件数の多い上位3手続 | その他の手続 | |||
電子申請件数 | 左の占める割合 | 電子申請件数 | 左の占める割合 | 電子申請件数 | 左の占める割合 | ||
a | b | c=b/a×100 | d | e=d/a×100 | f | g=f/a×100 | |
内閣府本府 | 160 | 66 | 41.2 | 135 | 84.3 | 25 | 15.6 |
公正取引委員会 | 1,996 | 1,383 | 69.2 | 1,993 | 99.8 | 3 | 0.1 |
警察庁 | 16 | 3 | 18.7 | 7 | 43.7 | 9 | 56.2 |
総務省 | 134,589 | 71,796 | 53.3 | 128,447 | 95.4 | 6,142 | 4.5 |
財務省 | 37,615,739 | 17,669,707 | 46.9 | 34,626,383 | 92.0 | 2,989,356 | 7.9 |
国税庁 | 9,454,526 | 5,076,492 | 53.6 | 9,189,400 | 97.1 | 265,126 | 2.8 |
厚生労働省 | 22,897,215 | 22,653,001 | 98.9 | 22,733,060 | 99.2 | 164,155 | 0.7 |
農林水産省 | 459,100 | 240,414 | 52.3 | 443,150 | 96.5 | 15,950 | 3.4 |
経済産業省 | 176,692 | 101,589 | 57.4 | 152,142 | 86.1 | 24,550 | 13.8 |
国土交通省 | 448,785 | 264,536 | 58.9 | 389,011 | 86.6 | 59,774 | 13.3 |
電子政府評価委員会は、各府省等における電子申請等関係システムの整備経費・運用経費(注4)
やオンライン申請件数等について調査し、その結果を「電子政府評価委員会平成20年度報告書」として21年3月に公表している。そして、同報告書において、電子申請等関係システムを、〔1〕経費を比較的容易に把握できるシステム(類型I)、〔2〕整備経費については比較的容易に把握することができるが、運用経費については、正確な数値が把握できないシステム(類型II)及び〔3〕整備経費及び運用経費ともに正確な数値が把握できないシステム(類型III)の3類型に分類した上で、各システムの年間運用経費に1年当たりの整備経費を加えた額をオンライン申請等件数で除するなどしたオンライン申請1件当たりの経費(注5)
を公表している。そして、類型Iに該当するシステム全体でのオンライン申請1件当たりの経費は、144円となっていて、また、類型II及び類型IIIを合わせたシステム全体でのオンライン申請1件当たりの経費は、391円となっている。
この報告書によると、電子申請率が低迷している前記12システムの19年度におけるオンライン申請1件当たりの経費は、表6
のとおり、3,883円から3,571,159円となっていて、これらシステムの電子申請の現状がこのまま推移すると、費用対効果が十分発現されないこととなると認められる。
府省等名 | システム名 | 類型 | 申請1件当たりの経費 | 備考 |
内閣府本府 | 汎用受付等システム | III | 3,571,159 | |
公正取引委員会 | オンライン共通受付システム | I | 3,883 | |
警察庁 | 電子申請・届出システム | I | 9,357 | |
総務省 | 総務省電子申請・届出システム | I | 253,834 | |
総務省 | 政治資金・政党助成関係申請・届出オンラインシステム | III | ― | |
財務省 | 財務省電子申請システム | III | 332,272 | |
国税庁 | 国税庁電子開示請求システム | I | 581,620 | |
厚生労働省 | 労働保険適用徴収システム | II | 50,089 | |
農林水産省 | 農林水産省電子申請システム | II | (487,275)295,536 | 19年度運用経費は保証期間で「0」のため、20年度経費を参考値として( )内に記入している。 |
経済産業省 | 経済産業省汎用電子申請システム | I | 13,664 | |
経済産業省 | 貿易管理オープンネットワークシステム(JETRAS) | III | 64,500 | |
国土交通省 | 国土交通省オンライン申請システム | III | 27,292 |
前記のとおり、オンライン利用拡大行動計画では、システム停止の是非についても検討することとされているが、これを受けて文部科学省オンライン申請システム及び防衛省申請届出等システムが20年度中に停止している。これらのシステムは、いずれも内閣官房及び総務省が電子政府評価委員会に報告し、同委員会による評価を受けた上で、〔1〕利用実績が極めて低いこと、〔2〕電子申請1件当たりの費用が高額となっていること、〔3〕対象としている手続の性格上利用促進が見込まれないことなどを理由として、運用を停止したものである。
しかし、電子申請等関係システムを停止する基準については、オンライン利用拡大行動計画において「今後の利用者ニーズや費用対効果、代替措置の有無等を総合的に勘案して」とされているだけで、電子申請率あるいはオンライン申請1件当たりの経費等の明確な指標がなく、また、停止に至るまでの手順等も明確になっていない。
電子申請等関係システムの整備・運用等に係る経費が多額に上っているにもかかわらず、電子申請率が10%以下と低迷しているシステムが10府省等で12システム(17年度から20年度における整備・運用等に係る経費118億7519万余円)見受けられ、これらの中には、電子申請率が1%以下と著しく低迷しているシステムが7システムあるなど、システムの整備・運用等に係る経費に対してその効果が十分発現していない事態は適切でなく、改善の要があると認められる。
このような事態が生じているのは、IT戦略本部が策定した政府の施策を受け、各府省等において原則としてすべての手続を一律にオンライン化してきたこと、10府省等において電子申請率が低迷しているシステムについて費用対効果の検討が十分でなく、抜本的な見直しを行っていないことなどによるほか、内閣官房においてシステムを停止等させる際の基準となる指標や停止等に至るまでの手順等を明確にしていないことなどによると認められる。
政府は、国民の利便性の向上、効率的な電子行政サービスの提供等を図るため、今後とも電子申請等関係システムを運用していくこととしている。
ついては、内閣官房において、オンライン利用拡大行動計画に沿った利用の拡大に向けた諸施策の着実な推進を図るとともに、電子申請率が低迷していて今後とも改善の見込みがなく、電子申請等関係システムの整備・運用等に係る経費に対してその効果の発現が十分見込めないシステムについては、システムの停止等の抜本的な措置を執ることができるよう、当該措置を執る際の基準として電子申請率やオンライン申請1件当たりの経費等の指標や当該措置を執るに至るまでの手順等を明確化することについて、各府省等と所要の調整を適時適切に行うよう内閣総理大臣に対して意見を表示した。
また、10府省等において、オンライン利用拡大行動計画に沿った利用の拡大に向けた諸施策の着実な推進を図るとともに、電子申請率が低迷していてシステムの整備・運用等に係る経費に対してその効果が十分発現していないシステムについては、システムの停止、簡易なシステムへの移行など費用対効果を踏まえた措置を執るようそれぞれの長に対して意見を表示した。