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  • 平成20年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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指定統計調査等に係る事務の委託費の執行に当たり、委託先において、虚偽の内容の関係書類を作成するなど不適正な会計経理を行って物品の購入等に係る需用費を支払っていて、委託費の支払額が過大となっているもの


(11) 指定統計調査等に係る事務の委託費の執行に当たり、委託先において、虚偽の内容の関係書類を作成するなど不適正な会計経理を行って物品の購入等に係る需用費を支払っていて、委託費の支払額が過大となっているもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)総務本省 (項)総務本省
    (項)統計調査費
  (項)国勢調査費
部局等 総務本省
委託費の概要 指定統計調査等に係る事務を実施するために直接必要な需用費等の経費
委託の相手方 6府県知事
過大となっている支払額
6,510,847円
(平成15年度〜19年度、5省分)

上記のうち総務省に係る額
4,306,659円
(平成15年度〜19年度)

1 委託費の概要

 国は、各種の統計を作成しているが、このうち、統計法(昭和22年法律第18号)に基づき総務大臣が指定しその旨を公示した統計は指定統計とされており、指定統計を作成するための調査(以下「指定統計調査」という。)は、同法に基づき行うこととされている。そして、総務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省及び経済産業省(以下「5省」という。)は、指定統計調査等に係る事務(以下「指定統計調査等事務」という。)を実施する経費として、地方公共団体に対して、統計調査地方公共団体委託費等(以下「委託費」という。)を交付している。これは、地方財政法(昭和23年法律第109号)に基づき、国が専らその用に供することを目的として行う統計及び調査に要する経費については、地方公共団体は負担する義務を負わないこととされていることから、国が負担する金額を地方公共団体に支出しているものである。
 委託費の取扱いについては、5省により指定統計調査地方公共団体委託費取扱要綱等(以下「取扱要綱等」という。)が定められており、委託費の対象となる経費は、物品の購入等に係る経費(以下「需用費」という。)、調査員等への報酬、旅費等となっている。取扱要綱等によれば、知事は、委託費を都道府県の歳入歳出予算に繰り入れ、明確に区分して経理し、毎年度、国に精算書を提出しなければならないこととなっており、また、委託費を指定統計調査等事務を執行する目的以外に使用してはならないこととなっている。そして、国は、必要があると認めるときは、知事に対して、委託費の経理状況について資料の提出等を求め、監査又は調査を行うことができることとなっている。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 平成20年9月以降、一部の県において、委託費に係る需用費について不適正な会計経理が行われていたとの新聞報道等があった。本院は、これを契機として、国が地方公共団体に委託した指定統計調査等事務のうち、5省が15年度から19年度までの間に13道府県(注1) に委託した指定統計調査等事務について、合規性等の観点から、委託費の経理が適正に行われているか、支出等の会計事務手続は適正に行われているかなどに着眼して、委託費の対象となる経費のうち主に需用費を対象として、精算書等の書類により会計実地検査を行った。

(2)検査の結果

 検査したところ、6府県(注2) において、15年度から19年度までの間に、虚偽の内容の関係書類を作成するなど不適正な会計経理を行って需用費を支払っていたものが、計6,510,847円あった。
 これを態様別に示すと、次のとおりである(表参照)
ア 預け金
  業者に架空取引を指示するなどして、契約した物品が納入されていないのに納入されたとする虚偽の内容の関係書類を作成することなどにより需用費を支払い、当該支払金を業者に預け金として保有させて、後日、これを利用して契約した物品とは異なる物品を納入させるなどしていたもの

2県(5省) 支払額5,041,185円

イ 差替え
  業者に虚偽の請求書等を提出させて、契約した物品が納入されていないのに納入されたとする虚偽の内容の関係書類を作成することなどにより需用費を支払い、実際には契約した物品とは異なる物品に差し替えて納入させていたもの

1県(2省) 支払額188,688円

ウ 翌年度納入
  物品が翌年度に納入されていたのに、支出命令書等の書類に実際の納品日より前の日付を検収日として記載することなどにより、物品が現年度に納入されたこととして需用費を支払っていたもの

5府県(5省) 支払額1,243,570円

エ 前年度納入
  物品が前年度に納入されていたのに、支出命令書等の書類に実際の納品日より後の日付を検収日として記載することなどにより、物品が現年度に納入されたこととして需用費を支払っていたもの

2県(5省) 支払額37,404円

表 不適正な会計経理により支払われた需用費の府県別・省別・態様別内訳

(単位:円)

府県名 省名 年度(平成) 預け金 差替え 翌年度納入 前年度納入
岩手県 総務省 16、17、19 447,197 230,399 1,963 679,559
文部科学省 16、17、19 21,743 10,001 304 32,048
厚生労働省 16、17、19 20,139 10,761 170 31,070
農林水産省 16、17、19 119,179 59,744 90 179,013
経済産業省 16、17、19 103,129 60,375 988 164,492
16、17、19 711,387 371,280 3,515 1,086,182
埼玉県 総務省 15〜18 27,998 524,589 552,587
文部科学省 17 12,900 12,900
厚生労働省 18 19,413 19,413
農林水産省 17 30,355 30,355
経済産業省 16〜18 160,690 108,710 269,400
15〜18 188,688 695,967 884,655
京都府 総務省 17 10,965 10,965
大分県 総務省 17、18 111,424 111,424
文部科学省 17、18 11,500 11,500
厚生労働省 17、18 7,015 7,015
農林水産省 17 4,861 4,861
経済産業省 17、18 21,939 21,939
17、18 156,739 156,739
宮崎県 総務省 15〜19 6,715 31,939 38,654
文部科学省 16 158 158
厚生労働省 16 527 527
農林水産省 16 525 525
経済産業省 15、16 694 1,950 2,644
15〜19 8,619 33,889 42,508
沖縄県 総務省 15〜19 2,913,470 2,913,470
文部科学省 15、16、19 215,227 215,227
厚生労働省 16、19 226,854 226,854
農林水産省 15、16 240,652 240,652
経済産業省 15〜19 733,595 733,595
15〜19 4,329,798 4,329,798
合計 総務省 15〜19 3,360,667 27,998 884,092 33,902 4,306,659
文部科学省 15〜19 236,970 34,559 304 271,833
厚生労働省 16〜19 246,993 37,716 170 284,879
農林水産省 15〜17、19 359,831 95,485 90 455,406
経済産業省 15〜19 836,724 160,690 191,718 2,938 1,192,070
15〜19 5,041,185 188,688 1,243,570 37,404 6,510,847

 これらのアからエの事態は、指定統計調査等事務の委託先である6府県において、契約した物品が納入されていないのに納入されたこととして虚偽の内容の関係書類を作成するなど不適正な会計経理を行って物品の購入等に係る需用費を支払っていたもので、これにより委託費が計6,510,847円過大に支払われており、不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、6府県において、物品の購入等に係る会計経理を行うに当たり、会計法令等を遵守することの認識が欠如していたこと、5省において、6府県に対する委託費の適正な執行についての指導及び精算書の確認が十分でなかったことなどによると認められる。

 13道府県  北海道、京都府、青森、岩手、秋田、埼玉、神奈川、奈良、広島、大分、宮崎、鹿児島、沖縄各県

 6府県  京都府、岩手、埼玉、大分、宮崎、沖縄各県