電気通信格差是正事業費補助金等は、地域における情報基盤を整備して高度情報化社会の均衡ある発展を図るために、次の事業を実施する事業主体に対して施設や設備の整備に要する経費の一部として交付されるものである。
ア 新世代地域ケーブルテレビ施設整備事業(電気通信格差是正事業費補助金)
この補助事業は、センター施設、光ファイバケーブル(以下「光ケーブル」という。)等から成る線路設備、地域に密着した行政、防災等の映像情報等を提供する自主放送のためのスタジオ設備等を整備するものである。そして、本件補助事業は、自主放送を実施しなければならない事業であるとされている。
イ 加入者系光ファイバ網設備整備事業(地域情報通信ネットワーク基盤整備事業費補助金)
この補助事業は、過疎地域自立促進特別措置法(平成12年法律第15号)に基づき過疎地域に指定されている地域等の住民が超高速インターネットアクセスを可能とするための光加入者装置、分岐装置等の設備を整備するものである。
ウ 地域イントラネット基盤施設整備事業(情報通信格差是正事業費補助金)
この補助事業は、センター施設、光ケーブル等から成る伝送施設、児童・生徒による学校間交流第等を実施できる交流学習システムのためのテレビ電話、送受信装置等を整備するものである。そして、本件補助事業において管理用情報のデータ入力に係る経費は補助の対象とならないことになっている。
本院が総務省、5県、29市町等において会計実地検査を行ったところ、4事業主体において次のとおり適切でない事態が見受けられた。
補助事業者 | 間接補助事業者 | 補助事業 | 年度 | 補助対象事業費 | 左に対する国庫補助金 | 不当と認める補助対象事業費 | 不当認める国庫補助金 | 摘要 | |
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | ||||||
(19) | 群馬県 | 吾妻郡東吾妻町(注)
(事業主体) |
新世代地域ケーブルテレビ施設整備 | 17 | 351,750 | 117,250 | 35,819 | 11,939 | 目的不達成 |
この補助事業は、東吾妻町が、同町の旧東村地区において、自主放送、テレビ放送の再送信等を実施するために、光ケーブル等から成る線路設備、自主放送のためのスタジオ設備等を整備したものである。
しかし、同町は、テレビ放送の再送信は実施しているが、自主放送については平成18年3月に開局した直後の短期間に同一内容の放送を繰り返し流したのみで、それ以降は一切実施していない状況であった。
したがって、スタジオ設備(整備費35,819,230円)は補助の目的を達しておらず、これに係る国庫補助金相当額11,939,743円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同町において本件補助事業が自主放送を実施しなければならない事業であるという認識に欠けていたこと、群馬県及び総務省において同町に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。
(20) | 山形県 鶴岡市(注) (事業主体) |
— | 加入者系光ファイバ綱設備整備 | 17 | 446,849 | 148,949 | 3,990 | 1,330 | 補助金の過大交付 |
この補助事業は、鶴岡市が、同市の旧朝日村地区の住民に超高速インターネットアクセスが可能な環境を提供するために、民間通信事業者の局舎内等に光加入者装置、分岐装置等を設置するとともに、同地区内に光ケーブルを敷設するなどしたものである。そして、同市は、超高速インターネットアクセスを可能とすることに加えて、ケーブルテレビの映像の光信号も同時に流せる波長分割多重機能付の分岐装置を設置していた。
しかし、本件補助事業の目的を達成するには、波長分割多重機能のない分岐装置によることとしても支障はなく、上記機能付の高額な分岐装置を設置する必要はなかった。
したがって、補助対象事業費3,990,332円が過大になっており、これに係る国庫補助金相当額1,330,000円が過大に交付されていて不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同市において本件事業の経済的な実施に対する認識が十分でなかったこと、総務省において同市に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。
補助事業者 | 間接補助事業者 | 補助事業 | 年度 | 補助対象事業費 | 左に対する国庫補助金 | 不当と認める補助対象事業費 | 不当認める国庫補助金 | 摘要 | |
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | ||||||
(21) | 長崎県壱岐市
(事業主体) |
— | 地域イントラネット基盤施設整備 | 19 | 376,748 | 125,582 | 18,272 | 6,090 | 目的不達成 |
この補助事業は、壱岐市が、児童・生徒の利用する学校間交流システム等を構築するために、市役節所庁舎内にテレビ電話を制御するサーバ等を、小・中学校等に情報入力端末やテレビ電話等をそれぞれ設置するとともに、これらの施設を接続する光ケーブルを敷設したものである。
しかし、同市は、テレビ電話を各学校の職員室に設置していて、補助の目的である児童・生徒による学校間交流等に一度も利用していない状況であった。
したがって、補助の目的に沿って利用されないままになっているテレビ電話及びテレビ電話を制御するサーバ(これらの整備費18,272,268円)は補助の目的を達しておらず、これに係る国庫補助金相当額6,090,000円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同市において補助の目的どおりにテレビ電話を使用することに対する認識が十分でなかったこと、総務省において同市に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。
(22) | 熊本県天草市 (事業主体) |
— | 地域イントラネット基盤施設整備 | 18 | 499,993 | 249,996 | 3,010 | 1,505 | 補助の対象外 |
この補助事業は、天草市が、行政、地域映像等の情報を提供する広域行政情報提供システム等を構築するために、市庁舎と支所等の間を接続する光ケーブルを敷設するとともに、敷設した光ケーブルにおける障害発生を知らせるなどの光ケーブル監視装置等を整備したものである。
しかし、同市は、補助の対象とならない光ケーブル監視装置への管理用情報のデータ入力に係る経費3,010,350円を補助対象事業費に含めていた。
したがって、この補助の対象とならない経費3,010,350円に係る国庫補助金1,505,000円が過大に交付されていて不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同市において本件事業に係る補助対象経費の確認が十分でなかったこと、総務省において同市に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。
(19)—(22)の計 | 1,675,341 | 641,777 | 61,092 | 20,864 |