会計名及び科目 | 一般会計 | (組織)総務本省 | (項)総務本省 | ||||||||||||
部局等 | 総務本省 | ||||||||||||||
契約名 |
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契約の概要 |
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契約の相手方 |
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委託費支払額 |
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過大になっている委託費支払額 |
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標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を求める。
貴省は、ICT(Information and Communication Technologyの略。以下「情報通信技術」という。)を利活用して各種課題を解決するため、貴省に代わって委託契約により受託者に事業を行わせ、その成果を貴省に帰属させて、業務の実施に要した委託期間内の経費を委託費として受託者に支払うこととしている。
そして、貴省は、平成19年度に、情報通信技術を利活用した、地域における児童を見守る最適なシステムモデルの構築、運用、評価等を、地方公共団体又は地方公共団体と特定非営利活動法人や企業等の民間団体等から構成される協議会に委託して、その成果を全国に普及させることを目的とする地域児童見守りシステムモデル事業(以下「児童見守りモデル事業」という。)を16件(委託費支払額11億2299万余円)実施している。
また、19年度以降、地域経済の活性化や少子高齢化への対応など地域が抱える課題について、情報通信技術の利活用を通じてその解決を促進するためのモデル的取組を市区町村又は複数市区町村の連携主体に委託し、これにより地域のユビキタス(いつでも、どこでも、何でも、だれでも、ネットワークに簡単につながること)化の促進等を目的とする地域ICT利活用モデル構築事業(以下「ICT利活用モデル事業」という。)を27件(委託費支払額14億5785万余円)実施している。なお、本事業については、委託成果の評価結果を受けて、委託を継続することが本事業の目的達成に必要と認められる場合には、20年度以降、継続して事業を委託することがあり得るとされている。
貴省は、両モデル事業を実施する受託者を公募し、応募者が提出した提案書により受託候補者を選定した後、受託候補者との間で、契約の目的、契約額、委託期間、事業計画等を定めた児童見守りモデル事業又はICT利活用モデル事業の委託契約(以下、両事業の委託契約を「委託契約」という。)を締結している。そして、受託者は、委託契約の事業計画書に記載した計画に基づき委託事業を行い、委託事業が完了すると、実施した委託業務の内容、システム設計書、モデル運用結果等を記載した成果報告書及び収入支出の明細等を記載した実績報節告書を、委託業務の実施に係る経費の支出状況を明らかにした証拠書類とともに貴省に提出し、提出を受けた貴省は、その内容を審査した上で、委託費を支払っている。
貴省は、児童見守りモデル事業の公募要領及びICT利活用モデル事業の実施要領(いずれも19年2月策定。以下、これらを「実施要領等」という。)において、委託事業による成果を貴省に提出させるだけでなく、受託者等の地域におけるユビキタス化の推進等のため、委託事業の終了後に受託者が、自らの負担で自らの事業用として継続してシステムを使用する予定であることを事業採択の要件としている。また、実施要領等においては、委託事業に計上できる経費を当該事業に直接必要な経費に限定しており、当該事業に必要な機器類は、原則としてリース又はレンタルにより受託者が調達することとしている。
このうち、リースは、リース会社が賃借しようとする者に代わって機器類を購入して、当該機器類の購入価格と金利等の諸経費を合わせた金額(以下「購入価格等」という。)をリース期間を通じてリース料により回収するものである。
貴省は、委託事業に必要な機器類のリース料について、実施要領等において、委託期間内に発生したもののみを委託対象経費とすることとしているが、委託対象経費とするリース料の算定に用いるリース期間の設定については、具体的に定めていない。
本院は、合規性、経済性等の観点から、委託事業に必要な機器類のリース料に係る委託対象経費は適切に算定されているかなどに着眼して、前記43委託事業のうち、8都県における8市、1特別区、1特定非営利活動法人、計10受託者が19年度に実施した児童見守りモデル事業4件、ICT利活用モデル事業6件、計10件の委託事業を対象として、事業企画書、実績報告書等の書類により実地に検査を行った。
検査したところ、委託事業において委託対象経費とされた機器類のリース料に関し、委託対象経費として算定の対象としたリース期間の設定方法について、次のような事態が見受けられた。
前記10受託者のうち、委託事業に必要なサーバ、パソコン等の機器類をリースにより調達していたのは9受託者であった。
このうち、児童見守りモデル事業の4受託者(注1)
(委託費支払額3億0036万余円、このうちリース料は1億9427万余円)は、リース期間を委託期間内での使用期間とし、また、ICT利活用モデル事業の4受託者(注2)
(同2億6195万余円、このうちリース料は1992万余円)は、19年度の委託期間終了後も継続して委託事業に選定されることを前提に、リース期間を、19年度の委託期間内での使用期間及び20年度以降に継続して委託されると想定される期間内での使用期間(以下、これらを合わせて「委託期間」という。)を合計した期間としていた。このため、リース期間を委託期間と同一期間として設定していたこれら計8受託者においては、委託期間内でリース料の全額2億1420万余円が支払われることとなり、購入価格等の全額が委託対象経費となることとなっていた。
しかし、前記のとおり、貴省は、実施要領等において、委託事業の終了後は受託者が自らの負担で自らの事業用として継続してシステムを使用し、かつ、委託事業に必要な機器類のリース料については、委託期間内に発生したもののみを委託対象経費とすることとしていることから、リース料の全額を委託費で負担することとなっているのは、適切ではないと認められる。
したがって、委託事業の終了後に受託者が自らの事業用として継続して使用することを予定している機器類をリースにより調達する場合、委託対象経費とするリース料の算定に用いるリース期間は、委託期間をそのままリース期間とするのではなく、当該機器類の使用可能年数として一般的に認められている法定耐用年数に準拠するなど合理的な基準に基づいて設定するべきであると認められる。
委託期間をそのままリース期間として設定していた8事業において、当該機器類の多くを占めるサーバ等の法定耐用年数である5年をリース期間として算定されるリース料を委託対象経費とすると、前記のリース料2億1420万余円は2615万余円となり、委託対象経費とするリース料が約1億8804万円過大になっていると認められる。
実施要領等では、委託対象経費とする機器類のリース料について、委託期間内に発生したもののみを委託対象経費とすることとしているのに、リース料の全額を委託費で負担する結果になっている事態は適切でなく、是正改善を図る要があると認められる。
このような事態が生じているのは、貴省において、委託事業に必要な機器類をリースにより調達する場合の委託対象経費とするリース料について、委託対象経費の算定の対象となるリース期間を具体的に定めていなかったこと、受託者において、委託事業の趣旨を十分に理解していなかったことなどによると認められる。
貴省は、本件両委託事業のように、事業終了後も受託者が自らの事業用として継続してシステムを使用することが委託事業採択の要件となっていて、かつ、そのシステムに必要な機器類を原則としてリースにより調達することとする委託事業を、今後も多数実施することが見込まれる。
ついては、貴省において、今後、同種の委託事業を実施するに当たっては、当該事業に必要な機器類のリース料を委託対象経費とする場合は、原則として、リース期間を委託期間と同一期間として設定するのではなく、法定耐用年数のような合理的な期間に基づいて設定することを実施要領等に明記するなど、委託対象経費とする機器類のリース料が適切に算定されるよう、是正改善の処置を求める。