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  • 平成20年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第6 外務省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

健康管理休暇に際して支給される航空運賃を経済的なものにすることなどにより、健康管理旅行費を節減するよう改善させたもの


(2) 健康管理休暇に際して支給される航空運賃を経済的なものにすることなどにより、健康管理旅行費を節減するよう改善させたもの


会計名及び科目 一般会計 (組織)在外公館 (項)在外公館共通費(平成19年度以前は(項)在外公館)
部局等 外務本省、4大使館、1総領事館
健康管理旅行費の概要 特定不健康地に勤務する在外公館の職員等が、心身の保養、健康診断、病気治療等を行うために取得する年次有給休暇等に際して国が支弁する旅費
上記5公館に係る健康管理旅行費の額 6076万余円 (平成19、20両年度)
上記のうち節減できた健康管理旅行費の額 3198万円  

1 健康管理旅行費及び国際旅客航空運賃の概要

(1) 健康管理休暇制度の概要

 外務省は、健康管理休暇制度実施規程(平成14年外務省訓令第11号)等(以下「規程等」という。)に基づき、自然、衛生、社会等の環境が極めて厳しく、外務大臣が特定の不健康地として指定した地域(以下「特定不健康地」という。)に勤務する大使館及び総領事館(以下「在外公館」という。)の職員並びに当該職員と同居している扶養親族が、肉体的・精神的に健康な状態で勤務・生活できるよう、心身の保養、健康診断、病気治療等を行うために、在勤地から外務大臣が指定する近隣先進国等の都市(以下「基準都市」という。)までの旅費の国費支弁を受けて年次有給休暇等を取得する制度(以下「健康管理休暇」という。)を設けている。健康管理休暇は、職員が特定不健康地に所在する在外公館に着任した日から6か月、2年6か月等が経過したときに取得できるものであり、その滞在先は原則として基準都市とされているが、健康管理上等の特別な事情があれば基準都市以外の都市とすることが認められている。

(2) 健康管理旅行費の支給

 外務省は、規程等において、健康管理休暇に際して国が支弁する旅費(以下「健康管理旅行費」という。)の額を、在勤地から基準都市へ旅行する場合に要する額(以下、これに係る航空運賃を「規定額」という。)又は職員等が健康管理休暇のために実際に支払う額のいずれか低い方の額とするとしている。そして、規程等では規定額を直行往復エコノミークラス運賃としているが、外務省は、経済情勢や航空運賃の実勢等を勘案して、各在外公館に対して、平成20年度第3四半期までは在勤地・基準都市間の航空運賃に日程変更可能な割引航空券が存在する場合はその額を適用するよう指示し、20年度第4四半期からは割引航空券が存在する場合はその額を適用するよう指示していた。また、基準都市への直行便がなく経由地を経る必要がある場合は、利用可能な最も経済的な経路を選択するよう指示していた。
 健康管理旅行費は、特定不健康地に所在する全124公館において、19年度に891件4億2918万余円、20年度に930件4億0542万余円、計1,821件8億3461万余円が支給されている。

(3) 国際旅客航空運賃の種類

 国際旅客航空運賃には、普通運賃に比べて安価な割引運賃があり、このうち正規の割引運賃には、国際航空運送協会(International Air Transport Association)が設定したIATA・PEX(Special Excursion Fares)運賃、各航空会社が独自に決めたキャリアPEX 運賃(以下、IATA・PEX 運賃とキャリアPEX 運賃を合わせて「PEX 運賃」という。)等がある。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院は、合規性、経済性等の観点から、規程等における基準都市は適切に設定されているか、健康管理旅行費の規定額は最も経済的な運賃や経路に基づいて決定されているかなどに着眼して、外務本省及び13公館(注1) において会計実地検査を行った。そして、13公館が支給した健康管理旅行費、19年度162件5605万余円、20年度138件4148万余円、計300件9754万余円について、旅費精算請求書等により公務出張の際の航空運賃等と比較するなどして検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。
 検査した13公館のうち5公館(注2) の多くの職員等は、次のような事情から、規定額の範囲で又は少額の自己負担を追加して、基準都市が東京でない場合であっても本邦へ帰国していたり、基準都市が東京の場合にビジネスクラスで本邦へ帰国していたりするなどしていた。

(1) 規定額に適用する航空運賃

 検査した13公館のうち4公館(注3) は、ロンドン等の基準都市までの航空路線に日程変更可能な割引航空券が存在しないとして、エコノミークラスの普通運賃を規定額に適用していた。そして、20年度第3四半期までにエコノミークラスの割引運賃に変更していたものの、この割引運賃はPEX運賃等に比べて割引率の低いものであった。
 しかし、在外公館の公務出張の際にはPEX運賃で航空券を購入することとしており、これら4公館でも、基準都市への公務出張の際にはPEX運賃等で航空券を購入していた。
 したがって、健康管理休暇においても、公務出張と同じPEX運賃等の経済的な航空運賃を規定額として適用すべきであると認められた。

(2) 基準都市までの経由地

 検査した13公館のうち在イラン日本国大使館は、基準都市(フランクフルト及び東京を交互に指定)が東京の場合に、規定額を在勤地のテヘランからフランクフルトを経由地とする航空路線のPEX運賃にしていた。
 しかし、近年、中東諸国を経由地とする航空路線がテヘランから本邦までの一般的な経路になっており、航空運賃もフランクフルトを経由するより安価であることから、健康管理休暇を取得した多くの職員等は、上記PEX運賃とほぼ同額のビジネスクラスの割引航空券を購入して本邦へ帰国していた。
 したがって、このように経済的な航空路線の利用が可能な場合は、従前の経由地を見直して経済的な経路による航空運賃により規定額を決定すべきであると認められた。
 上記のとおり、在外公館における公務出張等では経済的なPEX運賃等や経路による航空券を購入しているのに、健康管理旅行費の規定額をそれらの航空運賃等によらずに決定している事態は適切とは認められず、改善を図る必要があると認められた。

(節減できた健康管理旅行費の額)

 上記の(1)及び(2)により、規定額に、公務出張で購入されていたPEX運賃等の経済的な航空運賃等を適用したとすれば、5公館の健康管理旅行費19年度50件3417万余円、20年度44件2658万余円、計94件6076万余円は、それぞれ19年度1583万余円、20年度1293万余円、計2877万余円となり、健康管理旅行費を19年度1833万余円、20年度1364万余円、計3198万余円節減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められた。
ア 外務省において、健康管理旅行費の規定額に適用する航空運賃や経由地がある場合の経路について見直しが十分でなかったこと
イ 健康管理旅行費の経済的な執行に対する職員の認識が十分でなかったこと
ウ 外務省において、基準都市の見直しを適切に行っていなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、外務省は、健康管理旅行費の執行が経済的なものとなるよう次のような処置を講じた。
ア 21年5月に、各在外公館に対して公電を発するなどして、健康管理旅行費の規定額について、最も経済的な航空運賃を適用するとともに、経由地がある場合は最も経済的な経路を選択するよう指示した。これを受けて特定不健康地に所在するすべての在外公館は、規定額が経済的なものになるよう見直しを行った。
イ 経済的な航空運賃を規定額に適用するよう徹底するために、同年9月に、各在外公館に対して訓令を発して、職員の健康管理休暇取得時等に経済的な航空運賃の適用の有無を調査することなどを指示するとともに、職員に健康管理旅行費を合理的かつ最も経済的な航空運賃や経路により執行するよう周知した。
ウ 基準都市については、定期的に見直すこととするとともに、上記の訓令により、各在外公館に対して、現行の基準都市が現状に合わないと考えられる場合は、速やかに報告するよう指示した。

 13公館  在カンボジア、在フィリピン、在ベトナム、在ラオス、在カザフスタン、在イラン、在サウジアラビア、在トルコ、在ヨルダン、在タンザニア、在チュニジア各日本国大使館、在ホーチミン、在ジッダ両日本国総領事館
 5公館  在イラン、在サウジアラビア、在ヨルダン、在タンザニア各日本国大使館、在ジッダ日本国総領事館
 4公館  (注2)の5公館のうち在イラン日本国大使館を除く4公館