会計名及び科目 | 一般会計 | (組織)国税庁 | (項)国税庁共通費 |
部局等 | 東京国税局 | ||
不納付加算税及び延滞税の内容 | 不納付加算税は、源泉徴収により納付すべき税額を法定納期限までに納付しない場合に、本税の額に対し所定の割合を乗じて計算した金額を課税するもので、延滞税は、法定納期限までに完納しない本税の額に対して、法定納期限の翌日から納付する日までの期間の日数に応じ、所定の割合を乗じて計算した金額を課税するもの | ||
不当と認める不納付加算税等の額 | 不納付加算税 | 50,000,000円(平成20年度) | |
延滞税 | 36,556,100円(平成20年度) | ||
計 | 86,556,100円 |
給与の支払者は、所得税法(昭和40年法律第33号)の規定により、支払の際に、所定の方法により計算した源泉所得税を徴収して、徴収の日の属する月の翌月10日(休日等の場合はその翌日。以下「法定納期限」という。)までに国に納付しなければならないこととなっている。
そして、給与の支払者は、徴収した源泉所得税を法定納期限後に納付した場合、国税通則法(昭和37年法律第66号)の規定により、その税額に100分の5などの割合を乗じて計算した金額に相当する不納付加算税と、法定納期限の翌日から徴収した源泉所得税を完納する日までの期間の日数に応じて、その税額に100分の4.4などの割合を乗じて計算した金額に相当する延滞税を納付しなければならないこととなっている。
東京国税局は、総務部人事第一課(以下「人事課」という。)において同局及び管内全84税務署の職員の給与計算に関する事務(以下「給与計算事務」という。)を行っている。給与の支給に当たり、人事課は、給与システムを使用して、社会保険料(国家公務員共済組合の短期掛金、長期掛金等)、源泉所得税等の各控除項目の金額とこれらを合計した控除額計の金額等を同局分、税務署分及びこれら両者を合算した局・署合計分ごとに出力した「支給・控除額・金種別内訳書」(以下「内訳書」という。)を作成している。
上記の給与システムは、内訳書出力の際、個々の控除項目については、その金額が10億円以上で桁数が10桁以上になる場合であっても、印字される範囲は9桁目の金額までで、10桁目以上の金額は印字されない仕様となっていた。このため、人事課の給与事務担当者は、内訳書に印字されている各控除項目の金額を合計した額と、内訳書に10桁目まで印字されている控除額計の金額とを照合して、両者が10億円単位で一致しない場合には、10桁目以上の金額が印字されていない控除項目を特定して内訳書の金額を手書きで補正することになっていた。そして、人事課では、内訳書の決裁の過程で給与事務担当者が行った補正内容に誤りがないか、確認の上、内訳書を総務部会計課(以下「会計課」という。)に送付していた。
給与事務担当者は、19年6月分賞与支給の際、内訳書のうち税務署分において印字された各控除項目の金額を合計した額と控除額計の金額との間に10億円の開差があったため、その原因を長期掛金の10桁目の金額が印字されていないことにあるとして、印字された長期掛金の金額に10億円を加えるなどの補正をして、内訳書を作成していた。そして、人事課は内訳書を会計課に送付し、会計課は内訳書に基づき、19年6月29日、長期掛金2,148,215,485円を財務省共済組合へ、源泉所得税842,717,033円を麹町税務署へ支払っていた。
その後、20年4月23日に、国家公務員共済組合連合会から東京国税局へ長期掛金の金額について確認依頼があり、内訳書を確認したところ、長期掛金の金額が10億円過大であり、19年6月分賞与支給の際に不一致の原因となった控除項目は長期掛金ではなく源泉所得税であることが判明した。その結果、同局は源泉所得税が10億円納付不足となっていた。
同局は、20年4月28日に財務省共済組合から長期掛金10億円の返還を受け、同月30日に麹町税務署へ源泉所得税10億円を納付した。そして、これに伴い、不納付加算税50,000,000円及び延滞税36,556,100円を同年6月2日に同税務署に納付していた。
なお、前記の給与システムは、20年6月に、内訳書の各控除項目の金額について、11桁目までの金額が印字されるように改善されている。
本院は、上記の不納付加算税及び延滞税の支払について、東京国税局から事態の通報があったのを受け、合規性等の観点から、給与計算事務が適切に行われたかなどに着眼して、同局において、内訳書等の関係書類により会計実地検査を行った。
検査したところ、給与計算事務において、次のような適切とは認められない事態が見受けられた。
19年6月分賞与支給の際、給与事務担当者は、内訳書のうち税務署分において長期掛金の金額に10億円を加え補正していたが、これは18年12月分賞与支給時に内訳書のうち局・署合計分において長期掛金の金額が10億円を超えて、10桁目の金額が印字されないために不一致が生じていたことから、今回も同様の事態であると思い込んだためであり、10億円を超えた控除項目がどれであるか確認していなかった。そして、人事課では、内訳書の決裁の過程で、各控除項目の金額を合計した額と控除額計の金額が一致するかを比較するなどして検算していたが、各控除項目の金額の正確さまでは確認していなかったため、上記の給与事務担当者の誤りを看過していた。
したがって、同局の給与計算事務において、内訳書の補正及び確認を適切に行っていなかったため、源泉所得税が10億円納付不足となり、不納付加算税50,000,000円及び延滞税36,556,100円、計86,556,100円を支払う結果となっていたことは不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同局において、給与システムで作成される内訳書の控除項目には10桁目以上の金額が印字されないため、各控除項目の金額を合計した額と控除額計の金額が一致しない場合には、その原因となった控除項目を特定して補正する必要があることを認識していながら、内訳書の補正及び確認が適切に行われておらず、給与計算事務が適切を欠いていたことによると認められる。