会計名及び科目 | 一般会計 (組織)国税庁 (項)国税庁共通費 |
部局等 | 東京国税局(支出庁)、渋谷税務署(処分庁) |
賠償金の支払額 | 5,196,800円(平成20年度) |
不当と認める賠償金の額 | 5,196,800円(平成20年度) |
政府は、地方税法(昭和25年法律第226号)第325条等の規定により、知事又は市区町村長が住民税等の賦課徴収に当たり、政府に対して、所得税又は法人税の納税者が政府に提出した申告書等又は政府が行った更正等の書類を閲覧し、又は記録することを請求した場合には、関係書類を知事等又はその指定する職員に閲覧させ、又は記録させることとなっている。
国税庁は、国、地方を通じる税務行政の効率化と適正な税務執行の確保のため、国と地方の協力関係を推進する必要があることから、知事等からの閲覧要求に応じる書類を定めている。税務署は、これらの書類を知事等の請求を受けてその指定する職員に対して閲覧に供することで、地方公共団体に対して納税者の課税額等を周知している。
上記に基づき、税務署が地方公共団体への閲覧に供している書類の一つに訂正確認決議書(以下「決議書」という。)がある。決議書は、訴訟等が提起された課税処分について、判決等により、当該課税処分が取り消され、課税額等に訂正があった場合に、このことを確認するために作成される書類である。
この決議書は、税務署内において、国税局国税訟務官室から訴訟が終了した旨の通知を受けた課税部門が作成することとなっている。その後、この決議書を地方公共団体への閲覧に供するとともに、上記の通知を管理部門に回付し、管理部門は還付金を支払うこととなっている。
渋谷税務署管内の納税者が、品川税務署管内に在住していた時に提出した「平成11年分所得税確定申告書」への更正及び過少申告加算税賦課決定の課税処分に対して起こした訴訟について、20年2月、東京高等裁判所において国側敗訴の判決があり、3月に同判決が確定した。同月12日、渋谷税務署は東京国税局国税訟務官室から訴訟が終了した旨の通知を受けて、同月14日に還付すべき所得税と還付加算金等を合わせ319,825,400円を納税者に支払った。
その後、同人から住民税を徴収していた品川区から10月28日に裁判の敗訴に伴う課税額等の訂正の有無について問い合わせがあったため、渋谷税務署は、11月13日に課税額等の訂正があったことを品川区に連絡した。これを受けて品川区は同月14日に住民税の変更決定通知を行い、還付すべき住民税と還付加算金を合わせ240,421,500円を納税者に支払った。
このため、品川区は、渋谷税務署に対して、課税額等の訂正の周知が遅延したとして、遅延した期間に係る還付加算金に相当する額の賠償を求めた。両者は、21年2月24日、品川区が課税額等の訂正を知り得た日の翌日から還付のため支出を決定した日までの期間に係る還付加算金に相当する金額5,196,800円を国が賠償することで合意し、3月24日に、東京国税局から品川区に対して支払がなされた。
本院は、上記の賠償金の支払について、東京国税局から事態の通報があったのを受け、合規性等の観点から、地方公共団体への課税額等の周知に関する事務処理が適切に行われていたかなどに着眼して、同局及び渋谷税務署において会計実地検査を行った。
検査したところ、渋谷税務署における地方公共団体への課税額等の周知に関する事務処理について、次のような適切とは認められない事態が見受けられた。
渋谷税務署の資産課税部門は、20年3月12日に東京国税局国税訟務官室から、前記の訴訟について一時所得とした課税処分を取り消して譲渡所得とする判決が確定し、訴訟が終了した旨の通知を受けた。同部門の担当者は、管理部門へ訴訟が終了したことを連絡するとともに、本件課税処分が所得税に関するもので個人課税部門にも関係していたことから上記の通知を個人課税部門へ回付したが、決議書は作成しなかった。
一方、個人課税部門の担当者は、同日、管理部門へ上記の通知を回付したが、決議書については、同通知の回付を資産課税部門を通じて受けたため資産課税部門が作成するものと認識して、これを作成しなかった。
このため、渋谷税務署では10月28日に品川区から課税額等の訂正に係る問い合わせがあるまで決議書を作成していなかった。
上記のように、課税額等の周知に関する事務処理において、決議書を作成せず、課税額等の訂正の周知が遅延したため、品川区に損害を与え、品川区に賠償金5,196,800円を支払う結果となったことは不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、渋谷税務署において、個人課税部門と資産課税部門の両部門に関係する課税処分であると認識しながら決議書の作成について十分な協議が行われなかったため、決議書を作成しておらず、地方公共団体への課税額等の周知に関する事務処理が適切を欠いていたことによると認められる。