会計名及び科目 | 一般会計 国税収納金整理資金 (款)還付金 (項)各税還付金
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部局等 | 国税庁 | |
還付金の根拠 | 国税通則法(昭和37年法律第66号) | |
高額還付金支払金額 | 2兆1198億5637万余円 | (平成20年1月〜12月) |
上記のうち還付加算金額 | 118億5261万余円 | |
上記のうち節減できたと認められる還付加算金額 | 27億8942万円 |
標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の処置を要求する。
国税の納税者は、国税通則法(昭和37年法律第66号。以下「通則法」という。)等の定めるところにより、課税標準額、税額等を記載した確定申告書を法定申告期限までに税務署長に提出して、国税を納付しなければならないこととされている。
一方、納税者は、国税として納付した税額が本来納税すべき税額より多いためその全部又は一部について還付を求める場合などには、還付金額を記載した確定申告書(以下「還付申告書」という。)を税務署長に提出することとされている。
そして、税務署長は、当該還付申告書に記載された還付金額を還付金として遅滞なく納税者に支払うこととされている。
税務署長は、国税を還付する場合には、通則法第58条等の規定により、還付することとなった国税の申告期限の日など所定の日の翌日から還付金の支払決定日までの日数に応じて、還付金の額に一定の割合を乗じて計算した金額を還付加算金として、当該還付金に合わせて支払うこととされている。 この割合は、本来、通則法第58条の規定により年7.3%とされているが、租税特別措置法(昭和32年法律第26号)第95条の規定により、毎年、各年の前年の11月30日を経過する時における日本銀行法(平成9年法律第89号)第15条第1項第1号の規定により定められる商業手形の基準割引率に年4%の割合を加算した割合とされており、20年分については年4.7%、21年分については年4.5%とされている。
この還付加算金は、納税者が国税の納付を遅延した場合に延滞税が課されることなどとのバランスを考慮したもので、一種の利子に相当するものとされている。
貴庁は、納税者から還付申告書の提出を受けた場合の税務署における還付金の支払事務を、おおむね次のとおり行うこととしている。
ア 国税の調査、課税処理を行う賦課部門において、提出を受けた還付申告書に記載されている事項の確認等を行い、税目別等に区分した後、還付申告書に記載されている事項を国税総合管理システム(Kokuzei Sougou Kanriシステム。以下「KSKシステム」という。)に入力するために、還付申告書の写しである「整理表」を分離する。
そして、整理表を還付申告書の受付順に50枚程度の1単位(以下「バッチ」という。)に取りまとめて、光学式文字読取装置(Optical Character Reader。以下「OCR」という。)等を使用してKSKシステムにデータ入力を行い、その後、整理表を還付金の支払等を行う管理部門に送る。
イ 管理部門において、上記のアで入力されたデータを「還付金照合リスト」としてKSKシステムから出力して、当該還付金照合リストと賦課部門から送られてきた整理表とを個別に照合して、入力誤りや他の税目の未納の有無等の確認を行った上で、還付金の支払を行う。
貴庁は、国税の不正な還付や誤った還付を防止するなどのために、申告書の記載内容に誤りがある場合など一定の場合には、還付金の支払を保留する取扱い(以下、この取扱い を「還付保留」という。)としている。
還付保留とした申告については、前月分のすべてのバッチに係るデータ入力を終了した後に行う当該蓄積データの一括処理(以下「月次処理」という。)によりKSKシステムから出力される「還付保留法人調査票」(以下「調査票」という。)等に基づき、賦課部門において還付保留を解除するための審査を行うこととしている。
そして、過去の税務調査の実績や申告内容等から見て還付することが相当と認められるものについては、還付保留の解除を決定して、その旨を遅滞なく管理部門に連絡することとしている。
なお、資本金額が1億円以上の法人等に係る還付保留については、各税務署は、当該税務署を管轄する国税局又は沖縄国税事務所(以下「国税局等」という。)に還付申告書と併せて調査票等を送付して、国税局等の調査部がその調査票等に基づき還付保留を解除するための審査を行うこととしている。
また、貴庁は、平成20年5月から、上場法人等(注1)
については、法人の実態の検討や還付理由の解明など還付保留を解除するための審査を簡素化するとともに、納税者が国税電子申告・納税システムを利用して提出した還付申告書(以下「還付申告書(電子)」という。)に係る還付保留については、従来、月次処理によってしか出力することができなかった調査票等を、月次処理を待つことなく随時に出力することができるように、KSKシステムを変更している。
消費税の納付税額は、消費税法(昭和63年法律第108号)の定めるところにより、課税期間中の課税売上げに係る消費税額から課税仕入れに係る消費税額を控除した税額となっている。すなわち、課税仕入れに係る消費税額が課税売上げに係る消費税額より多い場合には、その差額が還付されることとなっている。
また、消費税は国内において行う取引に対して課税されるものであることから、その取引が輸出等の国外における取引に該当する場合には、売上げに係る消費税を免除することとなっている。このため、国外における取引が多い輸出業者については、課税仕入れに係る消費税額が課税売上げに係る消費税額より恒常的に多くなり、その差額を還付することとなる。
消費税の課税期間は、原則として、個人事業者は暦年、法人は事業年度とされているが、恒常的に消費税の還付を生ずる輸出業者については、還付金が還付されるまでの間の課税仕入れに係る資金負担の軽減を図ることを目的として、消費税法第19条の規定により、課税期間を1か月(年12回申告)又は3か月(年4回申告)に短縮することができる特例が設けられている。
貴庁が支払った還付加算金を含む還付金支払決定済額は、17年度5兆9705億余円、18年度7兆1215億余円、19年度7兆5423億余円となっていて、年々増加している。
そして、前記のとおり、還付加算金は、支払までの日数に応じて還付金の額に一定の割合を乗じて計算されるものであることから、還付金が高額であるほど、また、支払事務に多くの日数を要するほど多額となる。
そこで、経済性等の観点から、還付申告に係る支払事務に要する日数が長期間となっているものについて、税務署等における還付金の支払事務等が適切に行われているかなどに着眼して検査を実施した。
還付金支払決定済額の多い源泉所得税、法人税及び消費税について、全524税務署が20年1月から12月までの間に支払った還付金のうち、法人の還付申告書により生じた1件300万円を超える還付金(還付加算金を含む。)を対象として、計算証明規則(昭和27年会計検査院規則第3号)に基づき提出された国税収納金整理資金支払命令額計算書及び同計算書証拠書類により検査した。
また、3国税局及び38税務署において会計実地検査を行い、還付金の支払事務の実態を確認するとともに、貴庁に対して調査、報告及び関係資料の提出を求めるなどして検査した。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
524税務署が支払った上記の検査の対象とした還付金の件数、金額及びそのうちの還付加算金の金額は、表1のとおり、支払件数計76,277件、還付金計4兆1811億8382万余円、還付加算金計338億2540万余円となっている。
そして、上記の検査の対象とした還付金のうち、高額還付金(本院において、国税局等別に1税務署当たりの還付処理件数を勘案して設定した1件当たり一定金額(注2)
以上の還付金)は、表1のとおり、支払件数計1,157件、還付金計2兆1198億5637万余円、還付加算金計118億5261万余円となっていて、その割合は件数比では1.5%と低いものの、金額比では35.0%と3分の1を上回るものとなっている。
そこで、高額還付金について、支払事務の状況や還付保留の解除の状況について検査した。
表1 検査の対象とした還付金の支払件数及び支払額(平成20年1月〜12月) | (単位:千円) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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(注) 円単位で集計した後、千円未満を切り捨てているため、各税の金額を合計しても合計額とは一致しない。
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高額還付金の支払事務に要した日数を検査したところ、表2のとおりとなっている。
表2 高額還付金の支払事務に要した日数及び支払額(平成20年1月〜12月) | (単位:千円) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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(注) 円単位で集計した後、千円未満を切り捨てているため、各日数の金額を合計しても合計額とは一致しない。
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高額還付金の支払事務に要した日数は、10日以内のものが134件(11.5%)、11日以上のものが1,023件(88.4%)となっていて、平均23日となっている。
多くの税務署では、高額還付金があっても他の還付申告と区分することなく、申告書の受付順に50件程度のバッチに取りまとめて支払事務を行っているが、一方、高額還付金に係る申告を他の還付申告と区分して支払事務を行っている税務署もみられた。
高額還付金に係る申告を他の還付申告と区分することなく支払事務を行っている事例を示すと次のとおりである。
麹町税務署は、A株式会社の消費税の還付金の還付申告書を法定申告期限の平成20年6月2日に受け付けた。
賦課部門は、その還付申告に係る整理表を他の還付申告と区分することなく通常どおり50件程度のバッチに取りまとめてから、OCRによりデータ入力を行い、受付から3日後の同月5日に管理部門に整理表を送った。
そして、管理部門は、還付金照合リストと当該整理表の照合等に12日間を要して、同月17日に照合等を終えたが、他の還付金の支払に併せて支払うこととしていたた め、A株式会社の照合等が終了してから10日後の同月27日に25日分の還付加算金を含む還付金を他の還付金の支払と併せて支払った。
一方、高額還付金に係る申告を他の還付申告と区分して支払事務を行っている参考事例を示すと次のとおりである。
直方税務署は、B株式会社の消費税の還付金の還付申告書を法定申告期限の平成20年6月2日に受け付けた。
賦課部門は、通常、整理表を50枚程度のバッチとして取りまとめてからOCRによりデータ入力を行うところ、B株式会社の還付申告金額が多額であることなどから、その還付申告書の整理表1件を他の還付申告と区分して、速やかにデータ入力を行い、受付の翌日の同月3日に管理部門に整理表を送った。
そして、管理部門は、還付金照合リストと当該整理表との照合等を速やかに行い、3日後の同月6日に4日分の還付加算金を含む還付金を支払った。
高額還付金に係る申告については、他の還付申告に比べて同じ支払事務1件でも還付加算金の額が多額となることから、他の還付申告と区分して支払事務を行うことによりその日数を短縮することで、還付加算金を節減することが可能であると認められる。
高額還付金のうち、上場法人等に係る申告の状況は858件、還付金計1兆8749億3464万余円、還付加算金計92億9684万余円となっており、高額還付金の太宗を占めている。
上場法人等の還付申告については、前記のとおり、20年5月から還付保留を解除するための審査を簡素化していることから、審査に要する日数を短縮することができ、これにより支払事務に要する日数をより短縮することが可能であると認められる。
また、消費税に係る高額還付金のうち、上場法人等を除く輸出業者で課税期間が1か月及び3か月のものは56件、還付金計451億5740万余円、還付加算金計1億2635万余円となっている。
消費税の課税期間を1か月(年12回申告)又は3か月(年4回申告)としている輸出業者の還付申告については、還付の理由が輸出による免税であることが明らかであることから、還付保留を解除するための審査に要する日数を短縮することができ、これにより支払事務に要する日数を短縮することが可能であると認められる。
高額還付金で還付保留となっていたもののうち、還付申告書(電子)以外の還付申告書の受付から還付保留の解除決定までの日数が確認できた121件について、支払事務に要した日数を検査したところ、平均で30日となっており、このうち、賦課部門において整理表のデータ入力を行ってから還付保留の解除までに要した日数は平均で16日となっていた。
還付保留を解除するための審査は、月次処理により出力された調査票等に基づき行われていることから、整理表のデータ入力を行ってから月次処理までの間は還付保留を解除するための審査ができないこととなり、その日数は平均で3日となっていた。
前記のとおり、貴庁は、20年5月から、還付申告書(電子)の還付保留に係るものについては、月次処理を待つことなく随時に調査票等を出力できるようにKSKシステムを変更するなどして還付保留解除の迅速化を図っていることから、還付申告書(電子)以外の通常の還付申告に係る還付保留についても同様の取扱いとすることにより、還付保留を解除するまでの日数を短縮することが可能であると認められる。
上記(1)、(2)及び(3)のことから、還付金額が高額な申告、特に上場法人等の還付申告や輸出業者の消費税に係る還付申告については、他の還付申告と区分して支払事務を行うことにより、また、還付保留となったものについては、保留解除までの日数を短縮することにより、支払事務に要する日数を短縮することが可能であると認められ、ひいては還付加算金を節減することが可能であると認められる。
そこで、支払事務に要する日数が11日以上の高額還付金1,023件に係る還付加算金108億5170万余円について、その支払事務に要する日数を、10日(注3)
として計算すると、還付加算金の額は計80億6228万余円となり、27億8942万余円節減できたと認められる。
還付加算金は、所定の日の翌日から還付金の支払決定日までの日数に応じて加算される利子に相当するものであり、還付金が高額であるほど、また、支払事務に要する日数が長くなるほど多額となる。
したがって、還付金額が高額な申告、特に上場法人等の還付申告や輸出業者の消費税に係る還付申告を他の還付申告と区分していないことなどから支払事務に多くの日数を要していて、その結果、還付加算金を多額に支払っている事態は適切とは認められず、改善の要があると認められる。
このような事態が生じているのは、貴庁において、還付金額が高額な申告を他の還付申告と区分して支払事務を短縮するよう、国税局等及び税務署に対して指導及び監督を十分に行っていないこと、また、還付金額が高額なもので還付保留となった申告に係る調査票等を月次処理による出力としているなどのため、還付保留の解除までに日数を要していることなどによると認められる。
貴庁による還付金の支払額は今後も多額に上ることが見込まれ、これと合わせて支払われる還付加算金も多額に上ることが見込まれることから、還付加算金の節減を図ることが重要である。
ついては、貴庁において、還付金額が高額な申告、特に上場法人等の還付申告や輸出業者の消費税に係る還付申告で金額が高額なものについて、他の還付申告と区分して、支払事務に要する日数の目標値を設定するなどして早期に支払事務が完了するよう、国税局等及び税務署に対して十分な指導及び監督を行うこと、また、還付申告書(電子)以外でも、金額が高額なもので還付保留となった申告に係る調査票等を随時に出力できるよう取扱いを変更して、適正な審査を確保しつつ、支払事務に要する日数を短縮することなどの改善の処置を要求する。