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  • 平成20年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第7 財務省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

職員に支給する諸手当等の予算執行に当たり、支出負担行為の計画を適時に示達する体制を整備することなどにより、適正な会計処理が行われるよう改善させたもの


(2) 職員に支給する諸手当等の予算執行に当たり、支出負担行為の計画を適時に示達する体制を整備することなどにより、適正な会計処理が行われるよう改善させたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)財務局 (項)財務局共通費
(平成19年度は、(項)財務局)
部局等 財務本省、5財務局
財務局の職員に対する基本給及び諸手当等の内容 俸給、通勤手当、管理職手当等に要する経費
5財務局の職員に対する基本給及び諸手当等の額 442億9114万余円(平成19、20両年度)
上記のうち適正でない会計処理を行った諸手当等の額 1億2298万円

1 財務局における支出負担行為の概要

 財務省は、財政法(昭和22年法律第34号)第31条の規定に基づいて、内閣から、国会の議決を経た一般会計に係る歳出予算の配賦を受けている。このうち、地方支分部局である財務局の職員に支給する俸給等に要する経費(以下「職員基本給」という。)や通勤手当、管理職手当等に要する経費(以下「職員諸手当等」という。)については、平成19年度においては(組織)財務局(項)財務局の中で、また、20年度においては(組織)財務局(項)財務局共通費の中で(目)職員基本給、(目)職員諸手当その他の科目に区分されている。
 配賦された歳出予算は、財政法、会計法(昭和22年法律第35号)、予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号)等(以下、これらを「会計法令等」という。)に定められた手続に従って執行されることとされている。
 そして、会計法令等によれば、各省各庁の長は、支出負担行為を支出負担行為担当官に行わせようとするときは、内閣から配賦された歳出予算の範囲内で、当該支出負担行為担当官に歳出予算を示達すること及びその示達は当該支出負担行為担当官ごとに「目」の区分別に金額等を定めた支出負担行為の計画(以下「計画」という。)を示達することにより行うこととされている。
 示達を受けた支出負担行為担当官は、計画に定められた「目」の金額を超えて支出負担行為を行ってはならないこととされている。また、当該支出負担行為について歳出科目に誤りがないか、計画に定められた「目」の金額を超過することはないかなどの確認が、官署支出官によって行われた後でなければ、支出負担行為を行うことができないこととされている。そして、このようにして、支出負担行為を行うことができる額(以下「示達の残額」という。)の統制が図られている。
 また、支出負担行為に基づき支出の決定等を行うなどした後に、歳出科目等に誤りがあった場合には、官署支出官等は、実務上、科目等を更正することができる取扱いになっている。
 財務省では、財務局に係る経費については、財務局の経費の配賦等に関する事務等を所掌している大臣官房地方課(以下「地方課」という。)が、財務局に対して示達する額を算定し、財務省所管の予算等に関する事務等を所掌している大臣官房会計課(以下「会計課」という。)にその示達を依頼して、依頼を受けた会計課が財務大臣名で各財務局に示達するなどの仕組みになっている。そして、(目)職員基本給、(目)職員諸手当その他の科目については、地方課が前年度の各財務局への示達額の実績額等を基にするなどして示達額を算定して会計課に依頼し、その依頼を受けた会計課が、年度当初の4月に配賦された歳出予算の大部分を各財務局の支出負担行為担当官に示達し、その後は各財務局の需要に応ずるなどして示達の追加を行っている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院は、正確性、合規性等の観点から、各財務局の職員基本給及び職員諸手当等の予算執行の状況について、会計法令等に従い適正に会計処理されているか、その内容に適合した歳出科目をもって執行され計上されているかなどに着眼して検査した。検査に当たっては、5財務局(注) が支出した職員基本給及び職員諸手当等19年度計224億2707万余円、20年度計218億6406万余円、合計442億9114万余円を対象として、計算証明規則(昭和27年会計検査院規則第3号)の規定に基づき本院に提出された計算書、証拠書類等を検査するとともに、財務本省及び5財務局において会計実地検査を行った。

(検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。
 すなわち、職員諸手当等の支出に際して、財務局の支出負担行為担当官が支出負担行為を行おうとしたところ、(目)職員諸手当その他の正当な科目に係る示達の残額が不足していて、これらの科目の支出負担行為を行うことができない状況となった。 一方、地方課は、示達の残額の不足が予測される財務局を十分把握していなかったり、財務局からの示達の追加要求の連絡を受けても、支給予定日までの示達は困難だとして会計課に示達を依頼していなかったりなどしていた。このため、財務局は、いったん、(目)職員基本給その他の正当ではない別の科目から支出負担行為を行って支出をし、後日、示達の追加が行われた後に、当該支出を行った科目を正当な科目に更正するという会計処理を行っていた。
 そして、このような会計処理を行っていた額が、5財務局において、19年度5件3676万余円、20年度2件8621万余円、計7件1億2298万余円見受けられた。
 このように、正当な科目の示達の残額が不足している場合に、後日、正当な科目に更正する意図のもとに、示達の残額に余裕のある別の科目から支出負担行為を行って支出をし、示達の追加が行われた後に、当該支出を行った科目を正当な科目に更正するという会計処理は、示達額以上の支出負担行為を許容することになるものであり、 また、予算の全体を把握していない財務局におけるこのような会計処理を放置すれば、「目」の予算額を超過した支出が行われることにつながりかねないこととなる。したがって、5財務局が行っていたこのような会計処理による予算執行は、支出負担行為制度の趣旨に照らして、適切とは認められず、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、財務省において、示達の残額の不足を把握した際に財務局が追加要求を行う時期や方法等を定めていなかったこと、地方課による示達の残額の不足の状況の把握や示達の追加についての会計課との連携が十分行われていなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、財務省は、21年9月に、財務局における職員諸手当等の予算執行に当たり、適正な会計処理が行われるよう、次のような処置を講じた。
ア 示達事務処理要領を制定することにより、示達の追加要求についての具体的な事務手続を定めて、財務局がこの事務手続により示達の追加要求を行うこととするとともに、財務局が地方課に提出する調書の様式を変更して、地方課と財務局の双方が示達の残額の不足見込時期を容易に把握できるようにするなどした。
イ 会計課に示達の依頼をする地方課等の部局に対して事務連絡を発し、示達の不足等の事実が判明したときは、会計課に速やかに報告するなどして、会計課との連携を図ることなどを周知した。

(注)  5財務局  関東、東海、近畿、中国、四国各財務局