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  • 平成20年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第7 財務省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

埠頭監視力メラシステムの定期保守点検業務の積算について、労務単価に係る基準等を作成することなどにより、仕様書における業務内容及び作業の実態に即した適切なものとするよう改善させたもの


(3) 埠頭監視力メラシステムの定期保守点検業務の積算について、労務単価に係る基準等を作成することなどにより、仕様書における業務内容及び作業の実態に即した適切なものとするよう改善させたもの

会計名及び科目 一般会計(組織)税関 (項)税関業務費 (平成19年度は、(項)税関)
部局等 7税関等
契約名 埠頭監視カメラシステムの保守契約等13契約
契約の概要 埠頭監視カメラシステムの障害を予防して、常時正常に使用できる状態に保つための保守点検業務を行わせるもの
契約の相手方 3会社
契約 平成19年4月〜20年11月 一般競争契約及び随意契約
定期保守点検業務に係る積算額 1億1541万余円(平成19、20両年度)
低減できた積算額     8170万円(平成19、20両年度)

1 埠頭監視カメラシステムの定期保守点検業務の概要

(1) 埠頭監視カメラシステムの概要

 財務省は、全国の9税関等(注1) が行う輸出入貨物、船舶、航空機及び旅客に対する監視取締りに用いる各種の監視取締機器を整備している。
 監視取締機器のうち埠頭監視カメラシステム(以下「監視カメラ」という。)は、埠頭の照明灯柱等に設置されたカメラを庁舎内の監視室から職員が遠隔操作することなどにより、不審な人物、船舶等を監視するもので、カメラ、無線伝送装置、操作卓、モニター等の機器及びこれらの機器を連結して制御するためのネットワークシステムから構成されている。監視カメラは、平成7年度から、港の輸出入貨物、出入国旅客等の規模に応じて順次設置されており、19年度末で311台、20年度末で323台のカメラが設置されている。
 9税関等は、監視カメラを購入契約又はリース契約により設置している。そして、設置した監視カメラの障害を予防して常時正常に使用できる状態に保つための保守点検については、リース契約の内容に保守点検業務が含まれている監視カメラを除いて、毎年度、保守契約を締結しており、保守契約の対象となったカメラは、19年度で217台、20年度で142台となっている。

9税関等  函館、東京、横浜、名古屋、大阪、神戸、門司、長崎各税関、沖縄地区税関

(2) 定期保守点検業務の概要

 保守契約は監視カメラの動作確認等を中心とした年1回の定期保守点検、障害発生時等の問い合わせ等に対応するヘルプデスク及び障害等発生時に正常な状態に修復することなどを行う随時保守を内容としており、9税関等が19、20両年度に一般競争契約及び随意契約により締結した契約は、21契約、契約額1億8182万余円となっている。なお、随時保守については、障害等の発生に応じて別に精算を行うこととしているので、上記の契約額には随時保守相当額は含まれていない。
 そして、財務省は保守契約の予定価格の積算についての基準等を作成していないことから、9税関等がそれぞれ独自に予定価格の積算を行っており、定期保守点検及びヘルプデスクについて、作業者1日当たりの労務単価に作業に必要となる日数を乗ずるなどして算定している。
 定期保守点検の業務の主な内容は、仕様書によると、〔1〕 カメラの分解点検及び清掃、〔2〕 電源ケーブル等の点検、〔3〕 カメラ等の取付金具類の点検、〔4〕 無線伝送装置の点検、清掃等となっているが、契約書及び仕様書では、当該業務に従事する作業者の具体的な技術資格等については定められていない。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院は、経済性等の観点から、上記の定期保守点検に係る予定価格の積算は仕様書における業務内容及び作業の実態に即したものとなっているかなどに着眼して、作業者1日当たりの労務単価に作業に必要となる日数を乗ずる方法による積算を定期保守点検とヘルプデスクとに区分して行っていた7税関等(注2) において、19、20両年度に3会社(注3) と締結された保守契約13契約、契約額1億3460万余円を対象として、契約書、仕様書、積算根拠資料等の書類により会計実地検査を行った。

(注2)
7税関等  東京、横浜、名古屋、大阪、神戸、門司各税関、沖縄地区税関
(注3)
3会社  NECネクサソリューションズ株式会社、株式会社日立国際電気及び三菱電機株式会社

(検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。
 すなわち、7税関等は、監視カメラの定期保守点検には相当高度な技能が要求されるため、市販の積算参考資料に掲載されている一般的な労務単価は採用できないなどとしていた。このため、7税関等は、監視カメラの購入先の業者からの聞き取り調査又は日本電子計算機株式会社が取りまとめている大手メーカー6社の技術者サービス料金を参考にするなどして、作業者1日当たりの労務単価を80,000円から105,600円までと算定した上でこれに作業に必要な日数を乗ずるなどして、定期保守点検業務を1億1541万余円と積算していた。
 しかし、予定価格の積算に当たって参考としている上記のサービス料金は、システム設計、システムテスト等のシステム開発のような高度な技能が要求される業務を行うシステムエンジニアに対する単価であり、定期保守点検の業務の主な内容として仕様書で定めているカメラの分解点検、清掃等は、システムエンジニアのような高度な技能が要求される業務とは異なるものである。また、作業者名簿によれば、作業は電気工事士等により実施されていた。
 このように、定期保守点検に係る仕様書における業務内容及び作業の実態からみて、予定価格の積算に用いている労務単価が割高になっている事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。

(低減できた積算額)

 定期保守点検に係る労務単価について、カメラの分解点検、無線伝送装置の点検等を行うとしている仕様書における業務内容から、市販の積算参考資料に掲載されている電工(注4) の単価(1日当たり13,400円から18,700円まで)等を用いることとして、前記13契約の積算額を修正計算すると、計3368万余円となり、前記の積算額1億1541万余円を約8170万円低減できたと認められた。

電工  電気工事について相当程度の技能及び電気工事士等の必要な資格を有して、屋内外における通信設備等の工事に関する作業について主体的業務を行うもの

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、7税関等において予定価格を積算する際に仕様書における業務内容及び作業の実態に即した労務単価についての検討が十分でなかったことにもよるが、財務省において税関等が監視カメラの保守契約の予定価格を積算するに当たっての基準等を作成していなかったことによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、財務省は、21年9月に監視カメラの定期保守点検業務の予定価格の積算を適切に行うよう次の処置を講じた。
ア 定期保守点検業務に採用する労務単価やその他の費用に係る予定価格の積算を作業の実態に即したものとするために、積算方法の基準を作成した。
イ 上記の基準を各税関等に対して通知して、21年9月以降に締結される21年度の定期保守点検業務に係る契約から統一的に適用することとした。