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  • 平成20年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第7 財務省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

物納財産として引き受けた土地に係る国有財産台帳の価格改定を適切に行うよう改善させたもの


(4) 物納財産として引き受けた土地に係る国有財産台帳の価格改定を適切に行うよう改善させたもの

  
会計名及び科目 一般会計 (組織)財務局 (項)財務局共通費
(平成19年度は、(項)財務局)
部局等 関東財務局、6財務事務所等
国有財産の分類 (分類)普通財産 (区分)土地
価格改定の概要 各省各庁の長がその所管に属する国有財産について、原則として5年ごとにその現況を財務大臣の定めるところにより評価し、その評価額により台帳価格を改定するもの
検査の対象とした物納財産の土地の件数及び台帳価格 4,293件  494億4106万余円 (平成17年度末)
上記のうち価格改定が過大となっていた土地の件数及び台帳価格 214件12億5215万円
上記の結果過大となっていた国有資産等所在市町村交付金交付額  
 
211万円
 92万円
 303万円
(平成19年度)
(平成20年度)
上記の結果過小となっていた国有資産等所在市町村交付金交付額  
 
 29万円
 32万円
 61万円
(平成19年度)
(平成20年度)

1 制度の概要

(1) 国有財産台帳及び物納財産の台帳価格等の概要

 各省各庁の長は、国有財産法(昭和23年法律第73号)等の規定に基づき、国有財産の区分及び種目、所在、数量、価格等を記載する台帳(以下「国有財産台帳」といい、この国有財産台帳に記載する価格を「台帳価格」という。)を備えて、国有財産の管理又は処分を行っている。
 そして、財務省の財務(支)局、財務事務所等(以下、これらを合わせて「財務局等」という。)が管理又は処分を行っている国有財産の中には、相続税法(昭和25年法律第73号)に基づき、相続税として金銭に代えて税務署等に納付された土地等の財産(以下「物納財産」という。)を引き受けたものが含まれている。この物納財産を新たに国有財産台帳に登録する場合の台帳価格は、国有財産法施行令(昭和23年政令第246号。以下「施行令」という。)等の規定に基づき、当該物納財産を国有財産台帳に登録した時点ではなく相続開始時点の評価額によることとされている。

(2) 物納財産として引き受けた有償貸付中の土地の価格改定

 財務局等は、施行令の規定に基づき、その所管に属する国有財産につき、原則として5年ごとにその年の3月31日の現況において、財務大臣の定めるところにより評価して、その評価額により台帳価格を改定(以下「価格改定」という。)することとなっており、最近では、平成18年3月末時点の評価で価格改定が行われている。そして、この価格改定は、土地については、相続税評価方式又は時価倍率方式により行うこととされている。このうち、時価倍率方式は、例えば、18年3月末時点の評価による価格改定の場合、13年3月末価格改定時又は取得時(13年度から17年度まで)の台帳価格に、時価倍率(台帳価格を価格改定時の時価に換算するため財務省が定めた倍率)を乗ずることにより、18年3月末価格改定時の台帳価格を算定する方法である。財務局等は、時価倍率方式を用いる土地については、18年3月末価格改定のために定められた時価倍率(以下「18年3月末時価倍率」という。)を用いて自動計算で価格改定を行っている。
 また、13年度以降に物納財産として引き受けた土地の中には有償貸付中の土地があり、これらの土地の価格改定を時価倍率方式で行う場合には、「財務省所管普通財産(土地)の台帳価格改定に関する評価の特例について」(平成17年財理第1605号)に基づき、相続開始時点から18年3月末までの期間に対応する時価倍率を求めて使用することとされている。そして、財務局等は、13年度以降に物納財産として引き受けた有償貸付中の土地のうち相続開始時点が12年度以前のもの(以下「そ及物納財産」という。)については、18年3月末時価倍率とともに13年3月末価格改定以前の時価倍率を用いる必要があり、18年3月末時価倍率のみを用いた自動計算では価格改定に対応できないことから、個別に相続開始時点から18年3月末までの期間に対応する時価倍率を算定して価格改定を行っている。

(3) 国有資産等所在市町村交付金の概要等

 財務省は、国有資産等所在市町村交付金法(昭和31年法律第82号。平成19年9月30日までは国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律)に基づき、国が所有する固定資産で国以外の者が使用している土地、建物等について、原則として国有資産等所在市町村交付金(以下「交付金」という。)を市町村等に対して毎年度交付している。これは、国の所有する固定資産については、固定資産税が非課税となっていることから、これに代わるものとしてその所在する市町村等に対して交付するものである。
 そして、各財務(支)局は、交付金の対象となる資産が所在する市町村等に対して、原則として交付年度の初日の属する年の前年の3月31日現在における当該資産の台帳価格等を通知し、通知を受けた市町村等は、原則として台帳価格の合計額である交付金算定標準額(注1) に1.4%を乗じて得た額を交付金の額とする交付金交付請求書を各財務(支)局に送付しており、各財務(支)局はこれを確認の上、交付金を交付している。

交付金算定標準額  交付金を算定するため、対象資産の台帳価格の合計額を用いるなどして算出される額。ただし、台帳価格が、類似の固定資産の固定資産税の課税標準の価格と著しく異なるなどの場合には、台帳価格を修正した価格を用いて合計額を算出することができる。このため、台帳価格の合計額を上回る、又は下回る場合がある。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 国有財産台帳は国有財産を適切に管理するための基本的な帳簿であり、これには法令等に基づいて価格改定を適切に行うなどして正確な台帳価格等を記載をする必要がある。
 そこで、本院は、正確性、合規性等の観点から、18年3月末価格改定に際して個別に時価倍率を算定すべきそ及物納財産の価格改定が適切に行われているかなどに着眼して、そ及物納財産の件数が多い関東財務局管内の東京財務事務所において、会計実地検査を行った。
 そして、上記の検査において、そ及物納財産の一部に価格改定が適切に行われていないものが見受けられたことから、関東財務局に対して、同財務局及び管内の11財務事務所等(注2) が管理するそ及物納財産4,293件(台帳価格494億4106万余円)を対象として価格改定について調査を求め、その調査結果の内容について、価格改定に用いられた時価倍率や算定過程を確認するなどの方法により検査するとともに、同財務局及び管内の4財務事務所等(注3) において会計実地検査を行った。

(検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。
 関東財務局及び管内の6財務事務所等(注4) において、18年3月末価格改定に当たり、相続開始時点の確認が十分でなかったなどのため、そ及物納財産に対して、相続開始時点からの時価倍率を算定することなく、国有財産として引き受けた時点からの時価倍率を乗ずるなどして価格改定が行われたものが214件(台帳価格32億3667万余円)あった。そして、この214件について適正な台帳価格を再計算したところ19億8451万余円となり、214件すべてが過大となっていて、その過大額は12億5215万余円となっていた。
 また、この適正な台帳価格を基に交付金相当額を計算したところ、19年度13市等分211万余円、20年度12市等分92万余円、計303万余円が過大に交付されており、19年度6市分29万余円、20年度6市分32万余円、計61万余円が過小に交付されていると認められた。
 このように、国有財産台帳の価格改定が適切に行われていなかったり、その結果、適正な交付金が交付されていなかったりしていた事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。

(注2)
11財務事務所等  東京、横浜、千葉、甲府、宇都宮、水戸、前橋、新潟、長野各財務事務所、立川、横須賀両出張所
(注3)
4財務事務所等  東京、横浜、千葉各財務事務所、立川出張所
(注4)
6財務事務所等  東京、横浜、千葉、新潟各財務事務所、立川、横須賀両出張所

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、関東財務局において、同財務局及び管内の財務事務所等の価格改定を担当する部局(以下「担当部局」という。)に対するそ及物納財産に係る価格改定についての指導が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、関東財務局及び管内の財務事務所等は、20年8月までに、前記214件のそ及物納財産の台帳価格を適正な価格に訂正した。そして、同財務局は、訂正後の台帳価格に基づいて21年6月までに、21年度の交付金の交付を行った。また、同財務局は、国有財産台帳の価格改定が適切になされるよう次のような処置を講じた。
ア 21年3月に価格改定に関する事務処理マニュアルを作成して担当部局に配布し、物納財産として引き受けた有償貸付中の土地の価格改定について指導を行った。
イ 同マニュアルにより、担当部局における事務処理等の体制を明確に定めるなどして、価格改定事務の進ちょく状況を的確に把握して、事務処理が適切に行われたことを確認する体制を整備した。
 また、財務省においても、上記の関東財務局の不適切な事態の発生を受けて、21年3月に上記事務処理マニュアルを他の財務(支)局に配布するなどして、このような事態が再発しないよう注意を喚起する処置を講じた。