会計名及び科目 | 一般会計 | (組織)文部科学本省 | (項)科学技術振興費 | ||||||||||||
部局等 | 文部科学本省 | ||||||||||||||
契約名 | 科学技術試験研究委託 | ||||||||||||||
契約の概要 | 神経疾患に対する神経幹細胞を用いた細胞療法を臨床へ応用することを目指すもの | ||||||||||||||
契約の相手方 |
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契約 |
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支払額 |
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不当と認める委託費の支払額 |
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文部科学省は、「経済活性化のための研究開発プロジェクト」の一つとして「再生医療の実現化プロジェクト」を国立大学法人等に委託するなどして実施している。
そして、平成15年度から19年度までの間に「神経疾患に対する神経幹細胞を用いた細胞療法を臨床の場へ」という試験研究業務を国立大学法人岡山大学(16年3月31日以前は岡山大学。以下「岡山大学」という。)に委託しており、委託費として15年度から19年度までに計41,700,000円を支払っている。
岡山大学は、15年度から17年度までの間に上記受託業務のうち、「パーキンソン病に対する胎仔・胎児神経幹細胞移植に関する研究」という試験研究業務を和歌山県立医科大学(18年4月1日以降は公立大学法人和歌山県立医科大学。以下「県立医科大学」という。)に再委託して実施しており、再委託費として15年度から17年度までに計9,650,000円を支払っている。
また、同省は、18、19両年度に「神経疾患に対する神経幹細胞を用いた細胞療法を臨床の場へ」(パーキンソン病に対する胎仔・胎児神経幹細胞移植に関する研究)という試験研究業務を県立医科大学に委託して実施しており、委託費として18、19年度に計4,050,000円を支払っている。
文部科学省が作成している「科学技術振興費主要5分野の研究開発委託事業委託業務事務処理要領」(平成14年文部科学省制定。以下「事務処理要領」という。)等によると、委託費は設備費、運営費、一般管理費等と再委託費から構成され、このうち運営費は、研究に使用する消耗品(以下「研究用物品」という。)等の経費とされており、一般管理費は、設備費、運営費等の合計額に一定比率を乗じて算定されている。また、再委託費についても委託費に準じて、設備費、運営費、一般管理費等から構成されている。
本院は、合規性等の観点から、委託費が事務処理要領等に従って適切に管理されているかなどに着眼して、文部科学省、岡山大学及び県立医科大学において会計実地検査を行った。そして、納品書、請求書等の書類により検査するとともに、委託費の管理が適切でないと思われる事態があった場合には、同省及び両大学に報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。
検査したところ、岡山大学及び県立医科大学において、次のとおり不適正な会計経理を行っている事態が見受けられた。
ア 岡山大学における委託費の経理について
(ア) 岡山大学は、委託業務を実施している研究者から、研究用物品を15年度から19年度までに計19,356,514円で購入したとする納品書、請求書等の提出を受けるなどして、その購入代金を業者に支払っていた。
しかし、このうち4,456,583円は、納品書等に記載された研究用物品とは異なる工具器具備品の購入等に係る経費であった。
(イ) 県立医科大学は、岡山大学から委託を受けた再委託業務を実施している研究者から、15年度から17年度までに計8,392,000円の研究用物品を購入したとする納品書、請求書等の提出を受けて、その購入代金を業者に支払っていた。
しかし、同研究者は、その全額について、業者に架空の取引を指示して虚偽の納品書、請求書等を作成させ県立医科大学に架空の取引に係る購入代金を支払わせて、これを業者に預けて別途に経理していた。
イ 県立医科大学における委託費の経理について
県立医科大学は、委託業務を実施している研究者から、18、19両年度に計3,587,000円の研究用物品を購入したとする納品書、請求書等の提出を受けて、その購入代金を業者に支払っていた。
しかし、同研究者は、その全額について、前記の(ア)と同様に県立医科大学に架空の取引に係る購入代金を支払わせて、これを業者に預けて別途に経理するなどしていた。
したがって、これらについては本件委託業務に要した経費とは認められず、岡山大学において15年度から19年度までの一般管理費相当額を含めた計14,350,470円(県立医科大学への再委託に係るもの9,650,000円を含む。)、県立医科大学において18、19両年度の一般管理費相当額を含めた計4,050,000円、合計18,400,470円が過大に支払われていて、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、研究者において、委託費の原資は税金であり、事実に基づく適正な会計経理を行うという基本的な認識が欠けていたこと、委託費を管理する岡山大学及び県立医科大学において、研究用物品の納品検査等が十分でなかったこと、文部科学省において、受託者に対して委託費の不正使用の防止について必要な措置の導入や指導を行っていたものの、その周知徹底が十分でなかったことなどによると認められる。