会計名及び科目 | 厚生保険特別会計 | (健康勘定) | (項)保険料収入 |
(年金勘定) | (項)保険料収入 | ||
(児童手当勘定) | (項)事業主拠出金収入 | ||
(業務勘定) | (項)延滞金 | ||
平成19年度以降は、 | |||
年金特別会計 | (健康勘定) | (項)保険料収入 | |
(厚生年金勘定) | (項)保険料収入 | ||
(児童手当勘定) | (項)事業主拠出金収入 | ||
(業務勘定) | (項)延滞金 | ||
部局等 | 福島社会保険事務局、6社会保険事務所等 | ||
不適正な会計経理の内容 | 虚偽の書類を作成するなどして滞納保険料等の債権を消滅させており、後日、当該滞納保険料等が納付されると、これを別の事業所の滞納保険料等として収納するなどしているもの | ||
上記に係る滞納保険料等の額 | 77,501,366円(平成16年度〜19年度) |
社会保険庁は、健康保険法(大正11年法律第70号)及び厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)等に基づき健康保険及び厚生年金保険の事業を運営、監督している。
そして、社会保険庁における保険料の徴収、督促、滞納処分等の会計経理は、各地方社会保険事務局管下の社会保険事務所又は社会保険事務局社会保険事務室(以下「社会保険事務所等」という。)が行っている。このうち保険料の滞納処分等に係る事務手続は、健康保険法、厚生年金保険法、国の債権の管理等に関する法律(昭和31年法律第114号)等に基づき、おおむね次のとおり行われることとなっている。
〔1〕 納期限までに保険料を納付しない事業所に対して督促してもこれに応じない場合は、その事業所の事業実態、財産等について調査を行い財産を差し押さえてこれを換価し、滞納保険料及び延滞金に充当する。また、当該事業所が破産等を申し立てた場合は、破産管財人等に対して、滞納保険料等に相当する換価代金の配当を要求する(以下「交付要求」という。)。これらの手続がとられると、滞納保険料等の徴収権の消滅時効(納期限の翌日から起算して2年)は中断する。
〔2〕 滞納処分の後に、差し押さえた財産に換価価値がなかったなどの場合は、差押え及び交付要求を解除した上で、滞納処分の執行を停止することができる。そして、滞納処分の執行を停止すると、滞納保険料等の徴収権の消滅時効が再び進行することとなり、消滅時効が成立した場合は不納欠損処理を行う。
本院は、従来、保険料の徴収について、合規性等の観点から、保険料の徴収、督促、滞納処分等の会計経理が適正に行われているかなどに着眼して検査を行ってきたが、平成19年12月に、社会保険庁から福島社会保険事務局管内の6社会保険事務所等(注)
において滞納保険料等の不適正な収納処理が行われていたことが公表された。
そこで、本院は、合規性等の観点から、上記の不適正な収納処理の是正及び滞納保険料等の債権管理が適正に行われているかに着眼して、6社会保険事務所等において、債権管理簿、滞納処分票等により会計実地検査を行った。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
6社会保険事務所等は、16年度から19年度までの間に48事業所から滞納保険料等計137,440,557円の納付を受けていた。
しかし、このうち77,501,366円については、6社会保険事務所等は、滞納処分等に係る事務処理の軽減を図るなどのためとして、徴収権の消滅時効が成立したこととする虚偽の書類を作成するなどして不納欠損処理を行い、これにより保険料等債権を消滅させるなどしていたものについて、後日、当該事業所等から滞納保険料等が納付されたことから、これを本来収納すべき事業所以外の132事業所の滞納保険料等として収納するなどしていたものである。
したがって、これらの会計経理は著しく適正を欠くものであり、上記の滞納保険料等計77,501,366円が不当と認められる。
上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。
A会社は、保険料等36,224,731円を滞納していたが、平成14年3月に破産手続を行った。平社会保険事務所は翌4月に同会社の破産管財人に対して当該保険料等債権に係る交付要求を行い、この時点で徴収権の消滅時効は中断していた。しかし、平社会保険事務所は、16年3月に、徴収権の消滅時効が成立したとする虚偽の書類を作成して不納欠損処理を行い、保険料等債権を消滅させていた。その後、18年3月に破産管財人から配当金23,175,325円が支払われたため、これを領収し、A会社とは別の16事業所の滞納保険料等として収納していた。
このような事態が生じていたのは、6社会保険事務所等において、保険料等の収納業務に従事していた職員に国の会計経理は法令等に従って適正に行わなければならないとの認識が著しく欠けていたこと、福島社会保険事務局及び6社会保険事務所等において、監督者による関係書類の点検や指導監督が十分でなかったことなどによると認められる。
なお、福島社会保険事務局は、本院の指摘を踏まえて、本件の一連の収納処理について、21年12月末までに是正措置を執ることとしている。