ページトップ
  • 平成20年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第9 厚生労働省|
  • 不当事項|
  • 予算経理

物品の購入等に当たり、虚偽の内容の関係書類を作成するなど不適正な会計経理を行って庁費を支払っているもの


(45)−(63) 物品の購入等に当たり、虚偽の内容の関係書類を作成するなど不適正な会計経理を行って庁費を支払っているもの

会計名及び科目 厚生保険特別会計(業務勘定) (項)業務取扱費
(項)保健事業費
       (項)福祉施設事業費
国民年金特別会計(業務勘定) (項)業務取扱費
(項)福祉施設費
平成19年度以降は、
 年金特別会計(業務勘定) (項)業務取扱費
(項)保健事業費
  (項)福祉施設事業費
船員保険特別会計 (項)業務取扱費
部局等 19社会保険事務局
不適正な会計経理により支払われた経費の概要 物品の購入等に係る庁費
不適正な会計経理により支払われた金額 69,643,711円(平成13年度〜19年度)

1 物品の購入等に係る会計経理の概要

 社会保険庁は、厚生労働省設置法(平成11年法律第97号)等に基づき、全国健康保険協会が管掌する健康保険の事業のうちの一部、政府が管掌する船員保険事業、厚生年金保険事業、国民年金事業等を適正に運営することを任務としている。そして、地方社会保険事務局は、同庁の地方支分部局として上記事業の事務を行っている。
 そして、地方社会保険事務局における事務で使用する備品、消耗品等の物品の購入等(以下「物品の購入等」という。)に係る経費は、社会保険庁の官署支出官から交付を受けた前渡資金から庁費として支払われている。
 また、地方社会保険事務局の物品の購入等に係る契約、支払等の会計事務手続については、会計法(昭和22年法律第35号)、予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号)等の会計法令等に基づき、おおむね次のとおり行われることとなっている。
〔1〕  物品管理官(地方社会保険事務局長)から物品の取得措置要求を受けた契約担当官(同局長)は、業者と契約を締結する。
〔2〕  契約担当官は、業者から物品が納入された後、上記の契約が適切に履行されたかを確認するため、納入された物品の品目、規格、数量、納品時期等について必要な検査を行った上で資金前渡官吏(会計係長等)に支払を依頼する。
〔3〕  支払の依頼を受けた資金前渡官吏は、業者からの請求が正当であるかなどを調査の上で、支払決議を行い業者に代金を支払う。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、社会保険庁及び全国の47社会保険事務局において、合規性等の観点から、物品の購入等は会計法令等に基づき適正に行われているかなどに着眼して、平成13年度から20年度までの間の物品の購入等に係る契約を対象に、契約書等の書類により会計実地検査を行った。また、地方社会保険事務局へ物品を納入した業者に赴き、当該業者及び地方社会保険事務局がそれぞれ保管している関係書類を照合し、物品の納品状況等を確認するなどして検査した。

(2) 検査の結果

 検査したところ、19社会保険事務局において、13年度から19年度までの契約について、虚偽の内容の関係書類を作成するなど不適正な会計経理を行って庁費を支払っていたものが、計274件、69,643,711円あった。
 これを、態様別に示すと次のとおりである(表参照)

ア 預け金
契約した物品が納入されていないのに納入されたとする虚偽の内容の関係書類を作成することなどにより庁費を支払い、当該支払金を業者に預け金として保有させて、後日、これを利用して契約した物品とは異なる物品を納入させていたもの

1社会保険事務局、2件、支払額884,084円

イ 一括払
支払決議等の正規の会計経理を行わないまま、随時、業者に物品を納入させた上で、後日、これらの物品が納入されたとする虚偽の内容の関係書類を作成することなどにより庁費を一括して支払うなどしていたもの

10社会保険事務局、49件、支払額5,385,780円

ウ 差替え
業者に虚偽の請求書等を提出させて、契約した物品が納入されていないのに納入されたとする虚偽の内容の関係書類を作成することなどにより庁費を支払い、契約した物品とは異なる物品に差し替えて納入させるなどしていたもの

7社会保険事務局、30件、支払額6,207,340円

エ 翌年度納入
物品が翌年度以降に納入されていたのに、関係書類に実際の納品日より前の日付を検査日として記載することなどにより、物品が現年度に納入されたこととして庁費を支払っていたもの

18社会保険事務局、192件、支払額56,756,377円

オ 先払い
物品は年度内に納入されていたが、関係書類に実際の納品日より前の日付を検査日として記載することなどにより、実際に物品が納入されるよりも先に庁費を支払っていたもの

1社会保険事務局、1件、支払額410,130円
 不適正な会計経理により支払われた庁費の地方社会保険事務局別・態様別内訳 (単位:件、円)
  地方社会保険事務局名 年度 ア 預け金 イ 一括払 ウ 差替え エ 翌年度納入 オ 先払い
件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額
(45) 青森 平成
13、18
1 577,395 5 753,795 6 1,331,190
(46) 岩手 15、16 2 352,275 6 1,039,773 8 1,392,048
(47) 宮城 16 5 240,534 1 267,750 2 766,500 8 1,274,784
(48) 山形 14〜18 7 584,321 7 184,854 6 1,952,301 20 2,721,476
(49) 茨城 15〜17 13 2,269,243 7 735,833 20 3,005,076
(50) 栃木 17 1 316,050 1 316,050
(51) 神奈川 13〜18 2 884,084 1 113,847 12 3,638,596 33 13,638,844 48 18,275,371
(52) 富山 15、16 2 184,800 1 356,160 3 540,960
(53) 石川 15〜17 4 96,638 1 577,500 5 1,427,783 10 2,101,921
(54) 愛知 13〜15 8 930,553 6 608,970 49 17,226,268 1 410,130 64 19,175,921
(55) 三重 15〜17 1 5,250 12 5,144,809 13 5,150,059
(56) 奈良 15、17
18
27 2,456,188 27 2,456,188
(57) 鳥取 14 7 2,202,165 7 2,202,165
(58) 岡山 15〜18 15 3,540,977 15 3,540,977
(59) 広島 15〜18 2 763,087 11 2,760,729 13 3,523,816
(60) 山口 15、18
19
3 1,200,465 3 1,200,465
(61) 長崎 18 1 849,237 1 849,237
(62) 鹿児島 17、18 6 197,507 6 197,507
(63) 沖縄 14 1 388,500 1 388,500
  19局 2 884,084 49 5,385,780 30 6,207,340 192 56,756,377 1 410,130 274 69,643,711

 これらのアからオの事態は、19社会保険事務局において、契約した物品が納入されていないのに納入されたこととして虚偽の内容の関係書類を作成するなど不適正な会計経理を行って庁費計69,643,711円を支払っていたもので、不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、19社会保険事務局において、物品の購入等に係る会計経理を行うに当たり、会計法令等を遵守することの認識が欠如していたこと、社会保険庁において、19社会保険事務局に対する会計事務処理手続の適正な執行についての指導監督等が十分ではなかったことなどによると認められる。