会計名及び科目 | 厚生保険特別会計 (業務勘定) | (項)業務取扱費 |
国民年金特別会計 (業務勘定) | (項)業務取扱費 | |
平成19年度以降は、 | ||
年金特別会計 (業務勘定) | (項)業務取扱費 | |
船員保険特別会計 | (項)業務取扱費 | |
部局等 | 社会保険庁、3社会保険事務局等 | |
支給又は負担すべきでなかった経費 | 職員の給与、国家公務員共済組合負担金 | |
支給又は負担すべきでなかった金額 | 165,377,616円(平成15年度〜17年度) |
国家公務員法(昭和22年法律第120号)は、一般職の国家公務員が職員団体の業務に専ら従事(以下「専従」という。)することを禁じている。ただし、所轄庁の長の許可を受けた場合には、専従することを例外的に認めている。この許可を受けた職員は、許可が効力を有する間は休職者とされ、国から何らの給与の支給を受けてはならないこととされている。
また、国家公務員共済組合法(昭和33年法律第128号)の規定により、職員が専従している期間中は、当該職員の短期給付に要する費用、介護納付金の納付に要する費用、長期給付に要する費用等のうち国が負担する部分(以下「共済負担金」という。)を、職員団体が負担して、毎月、国家公務員共済組合に払い込まなければならないとされている。
社会保険庁は、平成19年11月に年金業務・組織再生会議(注1)
からの要請を受けて、9年4月1日から19年9月30日までの間における同庁職員の服務違反行為の有無等について実態調査を行った。その結果、3社会保険事務局(注2)
管内の計30名の職員が、許可を受けずに、国家公務員としての給与を受けながら専従(以下「無許可専従」という。)していたことが判明したことから、20年4月にその調査結果を同会議に報告した。
(注1) | 年金業務・組織再生会議 日本年金機構法(平成19年法律第109号)に基づき、政府が、社会保険庁の廃止に伴う日本年金機構の設立に際して、職員の採用についての基本的な事項等に関する意見を整理するために学識経験者を構成員として開催したもの
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(注2) | 3社会保険事務局 東京、大阪、京都各社会保険事務局
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社会保険庁によると、無許可専従は、長年の慣行として17年3月まで行われていたとしている。そして、同庁は、無許可専従をしていた前記30名の職員に対して、無許可専従をしていた期間(以下「無許可専従行為期間」という。)中に支給した給与の返納を求めることとした。
この返納額は、原則として、無許可専従行為期間中に支払った俸給に諸手当を加えた給与支給総額(注3)
としているが、当該期間中において一部本来の業務に従事していた場合には、その期間中の給与支給総額から本来の業務に従事していた割合(以下「従事割合」という。)に応じた額を控除した額としており、返納額を9年4月から17年3月までに係る分として計833,207,120円と算出している。
そして、このうち、会計法(昭和22年法律第35号)の規定により時効(5年)が成立している15年9月以前の分を除いた83,899,616円については、既に全額が国庫に返納されている。また、時効が成立している分の749,307,504円についても、前記30名の職員に対して自主返納を求めており、21年9月現在で708,590,535円が返納されている。
本院は、合規性等の観点から、社会保険庁及び前記の3社会保険事務局において、無許可専従をしていた者(以下「無許可専従行為者」という。)に対する給与の支給はどのようになっていたか、共済負担金の取扱いは適正かなどに着眼して、無許可専従行為期間のうち、資料が保存されている15年4月以降に支給又は負担された給与及び共済負担金を対象に、基準給与簿、出勤簿等を確認するなどにより会計実地検査を行った。
検査の結果、東京、大阪両社会保険事務局及び京都社会保険事務局管内の社会保険事務所(以下「3社会保険事務局等」という。)は、前記の社会保険庁の調査結果のとおり、15年4月から17年6月までの間に、無許可専従行為者21名に対して、15年4月から17年3月までの無許可専従行為期間に係る給与計149,760,919円(金額は従事割合に応じた額を控除した後の額。以下同じ。)を支給していたことを確認した。
さらに、同期間に係る共済負担金計15,616,697円についても、社会保険庁が負担して、国家公務員共済組合(社会保険職員共済組合)に支払っていたが、前記のとおり、無許可専従行為者は、その期間中、本来の業務に従事していないものであるから、社会保険庁が負担していた上記の共済負担金については、負担すべきではないものと認められる。
したがって、3社会保険事務局等において、社会保険庁が認定した無許可専従行為者21名に対して支給した無許可専従行為期間に係る給与149,760,919円及び同庁が負担した同期間に係る共済負担金15,616,697円、計165,377,616円は支給又は負担すべきでなく、不当と認められる。
なお、このうち、給与については、前記のとおり、返納が完了し又は同庁において自主返納を求める処置が執られており、共済負担金については、本院の指摘により、同庁において返納等の処置が執られた。
このような事態が生じていたのは、3社会保険事務局等において、無許可専従に対して適切な対応を怠り、長期にわたり不適正に給与を支給するなど、法令等を遵守することの認識が著しく欠如していたこと、社会保険庁において、職員が専従している場合の共済負担金の取扱いについての認識が十分でなかったこと並びに3社会保険事務局等に対する職員の服務管理及び給与支給事務の適正な執行についての指導監督が十分ではなかったことなどによると認められる。