会計名及び科目 | 一般会計 (組織)厚生労働本省 | (項)厚生労働本省 | |
労働保険特別会計 | (雇用勘定) | (項)職業能力開発強化費 | |
(項)技能継承・振興推進費 | |||
(平成19年度以前は、(項)雇用安定等事業費) | |||
部局等 | 厚生労働本省(平成13年1月5日以前は労働本省) | ||
契約名 | 生涯職業能力開発事業等9事業に係る委託(平成12、13両年度、15年度〜20年度) | ||
契約の概要 | 労働者のキャリア形成支援に関する専門的な指導助言、ホワイトカラー労働者の職務遂行のために必要となる専門的知識の習得を支援する職業能力習得支援制度の推進等の事業の実施 | ||
契約の相手方 | 中央職業能力開発協会、35都道府県職業能力開発協会 | ||
契約 | 平成12年4月ほか 随意契約 | ||
支払額 | 9,070,571,026円 | (平成12、13両年度、15年度〜20年度) | |
過大になっている支払額 | 62,333,807円 | (平成12、13両年度、15年度〜20年度) |
厚生労働本省(平成13年1月5日以前は労働本省。以下「本省」という。)は、職業に必要な労働者の能力の開発及び向上を促進することにより、職業の安定と労働者の地位の向上を図ることなどを目的として、中央職業能力開発協会(以下「中央協会」という。)及び都道府県職業能力開発協会(以下「都道府県協会」という。)に対して、生涯職業能力開発事業等9事業(注1)
(以下、これらの9事業を合わせて「生涯職業能力開発事業等」という。)の実施を委託している。
このうち、中央協会は、生涯職業能力開発事業等のうち各都道府県内で実施される企業内キャリア形成支援推進事業等5事業(注2)
(以下、これらの5事業を合わせて「企業内キャリア形成支援推進事業等」という。)の一部について、15年度までは(企業内キャリア形成支援推進事業等のうち外国人基礎技能研修生受入事業等は16年度まで)、各都道府県協会に対して再委託していた。そして、外国人基礎技能研修生受入事業等を除く企業内キャリア形成支援推進事業等は、16年度以降、本省から都道府県協会への直接の委託契約に変更されている。
生涯職業能力開発事業等は、事業主等に対し、労働者のキャリア形成支援に関する専門的な指導助言や情報提供を行ったり、ホワイトカラー労働者が、担当職務を適切に遂行するために必要となる専門的知識の段階的かつ体系的な習得を支援する職業能力習得支援制度の推進等の事業を実施したりするものである。
生涯職業能力開発事業等に係る委託費の対象経費は、事業の実施に必要な人件費、謝金、旅費、庁費等の経費であり、各委託事業に係る委託費の交付、精算等の手続は、本省が定めた「生涯職業能力開発事業(都道府県職業能力開発協会分)の委託について」(平成16年3月能発第0331015号厚生労働省職業能力開発局長通知)等によると、おおむね次のとおりとなっている。
〔1〕 本省は、事業の実施に当たり、中央協会又は都道府県協会から委託事業実施計画書の提出を受けて、その内容が適当と認めるときは、中央協会又は都道府県協会との間で委託契約を締結する。そして、当該委託契約に基づき、概算払により委託費を交付する。
〔2〕 中央協会又は都道府県協会は、事業が終了したときは、事業の成果を記載した委託事業実施結果報告書・委託事業費精算報告書(以下「精算報告書」という。)を本省に提出する。
〔3〕 本省は、中央協会又は都道府県協会から提出された精算報告書の内容を審査して、適当と認めるときは委託費の額を確定して精算する。
本院は、本省、中央協会及び39都道府県協会(注3)
において会計実地検査を行い、15年度から20年度までの間に、中央協会及び39都道府県協会に支払われた委託費を対象として、合規性等の観点から、委託費が事業の目的に沿って適正に支払われているかに着眼して、精算報告書等の書類により検査した。そして、適正でないと思われる事態があった場合には、更に本省、中央協会及び39都道府県協会に調査及び報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査を行った。
また、中央協会は、15、16両年度に、企業内キャリア形成支援推進事業等の一部を39都道府県協会に再委託していたことから、これらの再委託した事業の実施に要した支払額についても同様に検査した。
なお、検査の過程において不適正な事態等が判明した場合には、可能な範囲において過去の年度までさかのぼって検査を実施した。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
本省は、中央協会及び35都道府県協会(注4)
が12、13両年度、15年度から20年度までの間に実施した生涯職業能力開発事業等について、中央協会及び35都道府県協会から提出された精算報告書等に基づき、委託費の支払額を計9,070,571,026円と確定して精算するなどしていた。
しかし、中央協会及び35都道府県協会において、次のとおり、委託費が過大に支払われていた。
ア 中央協会から12、13、15、16の各年度に企業内キャリア形成支援推進事業等の一部を再委託されていた38都道府県協会(注5) においては、委託費から、〔1〕 旅費を不正に支払っていたり(2都道府県協会)、〔2〕 委託事業とは関係のない用務に係る人件費や会議終了後の懇親会に係る飲食費等委託事業の対象外の経費を支払っていたり(38都道府県協会)、〔3〕 賃金や光熱水費等を過大に支払っていたり(7都道府県協会)、〔4〕 翌年度の委託事業に係る経費を支払っていたりなど(14都道府県協会)している事態があったにもかかわらず、中央協会は、これらの経費を含めて再委託による事業の実施に要した経費としていた。このため、委託費計29,140,866円が過大に支払われていた。
イ 本省が直接委託をしている35都道府県協会においては、16年度から20年度までの間に、委託費から、〔1〕 旅費を不正に支払っていたり(2都道府県協会(注6)
)、〔2〕 委託事業とは関係のない用務に係る人件費や旅費等委託事業の対象外の経費を支払っていたり(35都道府県協会)、〔3〕 賃金や事務所借料等を過大に支払っていたり(11都道府県協会(注7)
)、〔4〕 翌年度の委託事業に係る経費を支払っていたりなど(15都道府県協会(注8)
)していた。このため、委託費計33,192,941円が過大に支払われていた。
したがって、次表のとおり、中央協会及び35都道府県協会が12、13両年度、15年度から20年度までの間に実施した生涯職業能力開発事業等に係る適正な委託費の額は計9,008,237,219円となり、前記の委託費の支払額計9,070,571,026円との差額計62,333,807円が過大に支払われており、委託費の経理が適正を欠いていて、不当と認められる。
表 | 生涯職業能力開発事業等における過大な支払額 | (単位:円) |
年度 | 委託費の支払額 | 適正な委託費の額 | 過大な支払額 |
平成12 | 2,025,545,778 | 2,025,443,928 | 101,850 |
13 | 1,330,464,796 | 1,330,169,570 | 295,226 |
15 | 2,615,211,914 | 2,587,098,588 | 28,113,326 |
16 | 1,101,056,271 | 1,090,451,974 | 10,604,297 |
17 | 826,083,580 | 814,729,933 | 11,353,647 |
18 | 625,789,604 | 617,536,400 | 8,253,204 |
19 | 505,990,798 | 502,477,521 | 3,513,277 |
20 | 40,428,285 | 40,329,305 | 98,980 |
計 | 9,070,571,026 | 9,008,237,219 | 62,333,807 |
このような事態が生じていたのは、中央協会において、再委託先である38都道府県協会から提出された精算報告書の審査が十分でなかったこと、35都道府県協会において、委託費の適正な会計経理に対する認識が欠けていたこと、本省において、中央協会及び35都道府県協会から提出された精算報告書の審査が十分でなかったことなどによると認められる。
上記の事態については、本省において、委託先に対する経理指導を徹底するとともに、委託費の精算に当たっては、委託先から提出された精算報告書に係る審査の徹底を図るなど再発防止に努める必要があると認められる。
(注1) | 生涯職業能力開発事業等9事業 生涯職業能力開発事業、企業内キャリア形成支援推進事業、生涯教育開発業務、高度熟練技能基盤強化支援事業、外国人基礎技能研修生受入事業等、キャリア形成支援体制の整備に係る業務、平成20年度ものづくり立国の推進事業、職業能力習得支援制度事業及び平成20年度キャリア支援企業等育成事業
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(注2) | 企業内キャリア形成支援事業等5事業 企業内キャリア形成支援推進事業、生涯教育開発業務、高度熟練技能基盤強化支援事業、外国人基礎技能研修生受入事業等及びキャリア形成支援体制の整備に係る業務
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(注3) | 39都道府県協会 東京都職業能力開発協会、北海道職業能力開発協会、京都、大阪両府職業能力開発協会、青森、秋田、山形、福島、茨城、群馬、埼玉、千葉、神奈川、富山、山梨、長野、岐阜、静岡、愛知、三重、滋賀、兵庫、奈良、和歌山、鳥取、岡山、山口、徳島、香川、愛媛、高知、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄各県職業能力開発協会
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(注4) | 35都道府県協会 東京都職業能力開発協会、北海道職業能力開発協会、京都府職業能力開発協会、山形、福島、茨城、群馬、埼玉、千葉、神奈川、富山、山梨、長野、岐阜、静岡、愛知、三重、滋賀、兵庫、奈良、和歌山、鳥取、岡山、山口、徳島、香川、愛媛、高知、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、鹿児島、沖縄各県職業能力開発協会
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(注5) | 38都道府県協会 東京都職業能力開発協会、北海道職業能力開発協会、京都、大阪両府職業能力開発協会、秋田、山形、福島、茨城、群馬、埼玉、千葉、神奈川、富山、山梨、長野、岐阜、静岡、愛知、三重、滋賀、兵庫、奈良、和歌山、鳥取、岡山、山口、徳島、香川、愛媛、高知、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄各県職業能力開発協会
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(注6) | 2都道府県協会 山梨、岡山両県職業能力開発協会
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(注7) | 11都道府県協会 山形、埼玉、神奈川、山梨、岐阜、和歌山、鳥取、徳島、高知、福岡、沖縄各県職業能力開発協会
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(注8) | 15都道府県協会 京都府職業能力開発協会、山形、群馬、千葉、神奈川、山梨、長野、静岡、兵庫、鳥取、岡山、香川、高知、熊本、大分各県職業能力開発協会
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