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  • 保険給付

雇用保険の失業等給付金の支給が適正でなかったもの


(69) 雇用保険の失業等給付金の支給が適正でなかったもの

会計名及び科目 労働保険特別会計(雇用勘定) (項)失業等給付費
部局等 厚生労働本省(支給庁)
107公共職業安定所(支給決定庁)
支給の相手方 275人
失業等給付金の支給額の合計 求職者給付 143,991,561円 (平成15、16両年度、18年度〜21年度)
就職促進給付 15,696,098円 (平成18年度〜21年度)
159,687,659円
不適正支給額 求職者給付 47,447,223円 (平成15、16両年度、18年度〜21年度)
就職促進給付 15,696,098円 (平成18年度〜21年度)
63,143,321円

1 保険給付の概要

(1) 雇用保険

 雇用保険は、常時雇用される労働者等を被保険者として、被保険者が失業した場合及び被保険者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合等に、その生活及び雇用の安定を図るなどのために失業等給付金の支給を行うほか、雇用安定事業等を行う保険である。

(2) 失業等給付金の種類

 失業等給付金には、次の求職者給付及び就職促進給付のほか、教育訓練給付及び雇用継続給付の4種がある。
ア 求職者給付には7種の手当等があり、このうち基本手当は、失業等給付金の支給額の大半を占めており、失業者の生活の安定を図る上で基本的な役割を担うもので、受給資格者(注) が失業している日について所定給付日数を限度として支給される。
イ 就職促進給付には5種の手当等があり、このうち再就職手当は、受給資格者が基本手当を受給できる日数を所定給付日数の3分の1以上かつ45日以上残して安定した職業に就いた場合に支給される。

 受給資格者  被保険者が、離職して労働の意思及び能力を有するにもかかわらず職業に就くことができない状態にあり、原則として、離職日以前2年間に被保険者期間が通算して12か月以上(平成19年9月30日以前に離職した者については、離職日以前1年間に被保険者期間が通算して6か月以上)あることの要件を満たしていて、公共職業安定所において基本手当を受給する資格があると決定された者

(3) 失業等給付金の支給

 上記の手当は、公共職業安定所が次のように支給決定を行い、これに基づいて厚生労働本省が支給することとなっている。
ア 基本手当については、受給資格者から提出された失業認定申告書に記載されている就職又は就労(臨時的に短期間仕事に就くこと)の有無等の事実について確認して、失業の認定を行った上、支給決定を行う。
イ 再就職手当については、受給資格者から提出された再就職手当支給申請書に記載されている雇入年月日等について調査確認の上、支給決定を行う。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、全国47都道府県労働局(以下、都道府県労働局を「労働局」という。)の438公共職業安定所(平成21年3月末現在)のうち、20労働局管内の183公共職業安定所において会計実地検査を行い、主として18年度から20年度までの間に失業等給付金の支給を受けた者(以下、失業等給付金の支給を受けた者を「受給者」という。)から11,919人を選定して、合規性等の観点から、これらの受給者に対する失業等給付金の支給決定が適正に行われているかに着眼して、受給者から提出された失業認定申告書等の書類により検査した。そして、適正でないと思われる事態があった場合には、他の年度分も含めて更に当該公共職業安定所に調査及び報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査を行った。

(2) 不適正支給の事態

 検査の結果、18労働局の107公共職業安定所管内における15、16両年度及び18年度から21年度までの間の受給者275人に対する失業等給付金(支給額159,687,659円)のうち、63,143,321円が適正に支給されておらず、不当と認められる。これを給付の種別に示すと次のとおりである。

ア 求職者給付

 107公共職業安定所管内の受給者265人に対する基本手当(支給額143,991,561円)のうち、47,447,223円が適正に支給されていなかった。
 このような事態が生じていたのは、受給者が誠実でなく、再就職していながらその事実を失業認定申告書に記載していないなどのため、同申告書の内容が事実と相違するなどしていたのに、上記の107公共職業安定所において、これに対する調査確認が十分でないまま支給決定を行っていたことによると認められる。

イ 就職促進給付

 55公共職業安定所管内の受給者71人に対する再就職手当の支給額15,696,098円全額が適正に支給されていなかった。
 このような事態が生じていたのは、受給者が誠実でなく、再就職手当支給申請書に事実と相違した雇入年月日を記載するなどしていたのに、上記の55公共職業安定所において、これに対する調査確認が十分でないまま支給決定を行っていたことによると認められる。
 なお、これらの不適正支給額については、本院の指摘により、すべて返還の処置が執られた。
 これらの不適正支給額を労働局ごとに示すと次のとおりである。

労働局名 公共職業安定所 本院の調査に係る受給者数 不適正受給者数 左の受給者に支給した失業等給付金 左のうち不適正失業等給付金
千円 千円
北海道 札幌 等10 672 30 18,907 5,603
札幌 等4 152 6 1,657 1,657
小計 20,565 7,261
青森 青森 等5 379 15 8,759 1,973
青森 等2 79 2 350 350
小計 9,110 2,324
宮城 塩釜 等5 336 11 4,923 481
塩釜 等3 81 3 717 717
小計 5,641 1,199
東京 飯田橋 等10 793 19 15,052 6,974
飯田橋 等5 271 6 1,452 1,452
小計 16,505 8,427
神奈川 横須賀 等5 252 9 4,168 1,804
横須賀 等2 68 3 591 591
小計 4,759 2,395
石川 金沢 等6 444 19 9,161 2,828
金沢 等2 73 2 292 292
小計 9,453 3,121
福井 福井 等4 308 5 1,404 503
武生 等3 73 3 275 275
小計 1,679 778
静岡 浜松 等6 427 15 7,194 1,333
浜松 等5 166 8 1,082 1,082
小計 8,276 2,416
大阪 大阪東 等9 508 14 6,289 4,271
大阪東 等5 205 8 1,742 1,742
小計 8,032 6,014
和歌山 和歌山 等6 408 15 9,277 2,982
新宮 等2 31 2 287 287
小計 9,565 3,269
島根 松江 等5 388 16 6,751 1,029
松江 等4 136 6 1,947 1,947
小計 8,699 2,976
岡山 岡山 等6 449 13 5,765 1,114
岡山 等4 144 5 898 898
小計 6,663 2,013
山口 山口 等6 347 13 5,219 2,018
山口 等3 109 3 923 923
小計  6,143 2,941
福岡 福岡中央 等6 457 15 10,061 2,968
久留米 等2 65 5 1,018 1,018
小計 11,079 3,986
佐賀 佐賀 等4 259 14 5,488 1,105
武雄 等3 44 3 908 908
小計 6,397 2,013
長崎 長崎 等4 274 9 6,148 693
長崎  58 1 319 319
小計 6,467 1,012
大分 大分 等5 265 11 7,314 3,625
大分 等3 64 3 581 581
小計 7,896 4,207
沖縄 那覇 等5 432 22 12,103 6,134
那覇 等2 60 2 647 647
小計 12,750 6,781
求職者給付計 107か所 7,398 265 143,991 47,447
就職促進給付計 55か所 1,879 71 15,696 15,696
合計 159,687 63,143

注(1)  上段は求職者給付に係る分、下段は就職促進給付に係る分である。
注(2)  公共職業安定所数及び不適正受給者数については、各給付間で重複しているものがあり、実数はそれぞれ107か所、275人である。

 上記の事態については、厚生労働省は、従来発生防止に取り組んでいるところであるが、さらに、受給資格者に対する指導を強化するとともに受給資格者から提出された失業認定申告書等に係る調査確認の強化を図る必要があると認められる。