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国立障害者リハビリテーションセンターにおいて、看護の実態に即した入院基本料に係る届出を行っていなかったため、診療報酬が請求不足となっているもの


(73) 国立障害者リハビリテーションセンターにおいて、看護の実態に即した入院基本料に係る届出を行っていなかったため、診療報酬が請求不足となっているもの

会計名及び科目 一般会計 (部)官業益金及官業収入 (款)官業収入
  (項)病院収入
部局等 国立障害者リハビリテーションセンター(平成20年9月30日以前は国立身体障害者リハビリテーションセンター)
入院基本料の概要 厚生労働大臣が定める基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において、患者が入院した場合に1日につき所定の診療報酬として請求するもの
13対1入院基本料による診療報酬の請求額 598,368,547円 (平成18年11月〜21年4月)  
請求不足となっていた診療報酬の請求額 30,111,054円 (平成18年11月〜21年4月)  

1 国立障害者リハビリテーションセンター及び入院基本料の概要

(1) 国立障害者リハビリテーションセンターの概要

 国立障害者リハビリテーションセンター(平成20年9月30日以前は国立身体障害者リハビリテーションセンター。以下「センター」という。)は、障害者のリハビリテーションに関して、相談、治療、訓練、支援等を行うために、管理部、更生訓練所、病院、研究所及び学院を設置しており、このうち病院は保険医療機関の指定を受けている。
 そして、病院は、主として重度の障害者等を入院させていて、基本診療料の施設基準等(平成18年厚生労働省告示第93号。以下「施設基準等」という。)に定められている「障害者施設等入院基本料の施設基準」に適合しているものとして、地方厚生局長等(20年9月30日以前は地方社会保険事務局長。以下同じ。)に届け出た病棟(以下「障害者病棟」という。)において、障害者のリハビリテーションに係る診療等を行っている。

(2) 入院基本料の算定

 病院が保険医療機関として診療に要した費用については、診療報酬の算定方法(平成18年厚生労働省告示第92号)等により診療報酬として所定の診療点数に10円を乗ずるなどして算定することとなっている。そして、病院は、診療報酬のうち患者負担分を患者に請求し、残りの診療報酬については社会保険診療報酬支払基金等に請求している。
 診療報酬のうち入院基本料は、施設基準等に基づき、看護師及び准看護師(以下、これらを合わせて「看護職員」という。)の数が入院患者数に対して所定の割合以上であることなどの厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た(以下、当該行為を「届出」という。)保険医療機関において、患者が入院した場合に、その施設基準に掲げる区分に従い1日につき所定の診療点数を算定することとなっている。
 そして、施設基準等によれば、障害者病棟の入院基本料は、1日の入院患者数に対する看護職員数の比率等に応じて、次表のとおり、7対1入院基本料から15対1入院基本料までの4区分(18年4月から20年3月までの間は3区分)が設けられ、それぞれの診療点数が定められている。

 入院基本料の区分と診療点数

平成18年4月以降 診療点数 平成20年4月以降 診療点数
7対1入院基本料 1,555点
10対1入院基本料 1,269点 10対1入院基本料 1,300点
13対1入院基本料 1,092点 13対1入院基本料 1,092点
15対1入院基本料 954点 15対1入院基本料 954点

 また、届出の内容と異なった事情が生じた場合は、基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(平成18年保医発第0306002号。以下「取扱通知」という。)等に基づき、遅滞なく変更の届出を行い、変更の届出を行った翌月から変更後の入院基本料を算定することとなっている。ただし、暦月で1か月を超えない期間において、実際に勤務した1日当たりの看護職員数が届出による入院基本料の区分に適合する1日当たりの看護職員数を下回る割合が1割以内である場合など一時的な変動については、この限りではないとされている。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、センターにおいて、合規性、効率性等の観点から、入院基本料について、取扱通知等に基づいて適正な届出がなされ、看護職員の配置に見合った入院基本料の区分により適正な診療報酬を請求しているかに着眼して、18年4月から21年4月までに社会保険診療報酬支払基金等に請求した診療報酬を対象として、届出等の書類の提出及び看護職員の実際の配置状況等の報告を求めて、その内容を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。

(2) 検査の結果

 検査したところ、センターは、18年4月の診療報酬改訂に当たり、同年同月に、障害者病棟の入院基本料は13対1入院基本料に適合するとして届出を行い、同年同月以降、この区分により診療報酬を算定して、請求を行っていた。
 しかし、実際の看護職員の配置状況から1日の入院患者数に対する看護職員数の比率等をみると、18年8月からは診療点数のより高い10対1入院基本料の基準に適合していた。
 したがって、センターは、取扱通知等に基づき、届出の内容と異なる状態が1か月を超える期間となる18年9月の翌月の同年10月に10対1入院基本料に変更する届出を行い、同年11月からはこの区分により入院基本料を算定すべきであったと認められ、これにより、同年11月から21年4月までの間の障害者病棟の入院基本料に係る診療報酬の請求額を計算すると628,479,601円となることから、13対1入院基本料による請求額598,368,547円との差額30,111,054円の診療報酬が請求不足となっており、不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、センターにおいて、看護の実態に即した適正な診療報酬を請求することについての認識が十分でなかったこと、施設基準等に係る届出についての理解が十分でなかったことなどによると認められる。
 なお、センターは、本院の指摘により、21年4月に10対1入院基本料の変更の届出を行い、同年5月から10対1入院基本料により診療報酬を請求している。