会計名及び科目 | 一般会計 (組織)厚生労働本省 | (項)医療保険給付諸費 | |
(項)生活保護費 | |||
(項)障害保健福祉費 | |||
年金特別会計(健康勘定) | (項)保険給付費及保険者納付金 | ||
平成19年度以前は、 | |||
一般会計 (組織)厚生労働本省 | (項)児童保護費 | ||
(項)生活保護費 | |||
(項)障害者自立支援給付諸費 | |||
(項)身体障害者保護費 | |||
(項)精神保健費 | |||
(項)老人医療・介護保険給付諸費 | |||
(項)国民健康保険助成費 | |||
年金特別会計(健康勘定) | (項)保険給付費 | ||
(項)老人保健拠出金 | |||
(項)退職者給付拠出金 | |||
平成18年度以前は、 | |||
厚生保険特別会計(健康勘定) | (項)保険給付費 | ||
(項)老人保健拠出金 | |||
(項)退職者給付拠出金 | |||
船員保険特別会計 | (項)疾病保険給付費及保険者納付金 | ||
平成19年度以前は、 | |||
船員保険特別会計 | (項)保険給付費 | ||
(項)老人保健拠出金 | |||
(項)退職者給付拠出金 | |||
部局等 | 社会保険庁、25都府県 | ||
国の負担の根拠 | 健康保険法(大正11年法律第70号)、船員保険法(昭和14年法律第73号)、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)、高齢者の医療の確保に関する法律(昭和57年法律第80号。平成20年3月31日以前は「老人保健法」)、生活保護法(昭和25年法律第144号)等 | ||
医療給付の種類 | 健康保険法、船員保険法、国民健康保険法、高齢者の医療の確保に関する法律、生活保護法等に基づく医療 | ||
実施主体 | 国、都府県20、市460、特別区23、町270、村53、後期高齢者医療広域連合23、国民健康保険組合82、計932実施主体 | ||
医療機関及び薬局 | 医療機関146、薬局37 | ||
過大に支払われた医療費に係る診療報酬等 | 入院基本料、特定入院料、調剤報酬等 | ||
過大に支払われた医療費の件数 | 346,542件 | (平成16年度〜20年度) | |
過大に支払われた医療費の額 | 1,095,678,253円 | (平成16年度〜20年度) | |
不当と認める国の負担額 | 593,826,959円 | (平成16年度〜20年度) |
厚生労働省の医療保障制度には、老人保健制度(平成20年3月以前)、後期高齢者医療制度(20年4月以降)、医療保険制度及び公費負担医療制度があり、これらの制度により次の医療給付が行われている。
ア 20年3月以前は、老人保健制度の一環として、市町村(特別区を含む。以下同じ。)が老人保健法に基づき、健康保険法、船員保険法、国民健康保険法等(以下「医療保険各法」という。)による被保険者(被扶養者を含む。以下同じ。)のうち、当該市町村の区域内に居住する老人(75歳以上の者又は65歳以上75歳未満の者で一定の障害の状態にある者をいう。以下同じ。)に対して行う医療
イ 20年4月以降は、上記アに代わるものとして創設された後期高齢者医療制度において、高齢者の医療の確保に関する法律(以下「高齢者医療確保法」という。)に基づき、当該市町村の区域内に居住する後期高齢者(75歳以上の者又は65歳以上75歳未満の者で一定の障害の状態にある者をいう。以下同じ。)に対して後期高齢者医療の事務を処理するために市町村が設けた後期高齢者医療広域連合(都道府県の区域ごとに当該区域のすべての市町村が加入。以下「広域連合」という。)が後期高齢者に対して行う医療
ウ 医療保険制度の一環として、医療保険各法に規定する保険者が、医療保険各法に基づき被保険者(老人(20年3月以前)及び後期高齢者(20年4月以降)を除く。)に対して行う医療
エ 公費負担医療制度の一環として、都道府県又は市町村が、生活保護法に基づき被保護者に対して行う医療等
これらの医療給付においては、被保険者(上記エの被保護者等を含む。以下同じ。)が医療機関で診察、治療等の診療を受け、又は薬局で薬剤の支給等を受けた場合、市町村、保険者又は都道府県(以下「保険者等」という。)及び患者がこれらの費用を医療機関又は薬局(以下「医療機関等」という。)に診療報酬又は調剤報酬(以下「診療報酬等」という。)として支払う。
診療報酬等の支払の手続は、次のとおりとなっている(図参照)
。
ア 診療等を担当した医療機関等は、診療報酬等として医療に要する費用を所定の診療点数又は調剤点数に単価(10円)を乗ずるなどして算定する。
イ 医療機関等は、上記診療報酬等のうち、患者負担分を患者に請求して、残りの診療報酬等(以下「医療費」という。)については、老人保健法に係るものは市町村に、高齢者医療確保法に係るものは広域連合に、医療保険各法に係るものは各保険者に、また、生活保護法等に係るものは都道府県又は市町村に請求する。
このうち、保険者等に対する医療費の請求は、次のように行われている。
(ア) 医療機関等は、診療報酬請求書又は調剤報酬請求書(以下「請求書」という。)に診療報酬等の明細を明らかにした診療報酬明細書又は調剤報酬明細書(以下「レセプト」という。)を添付して、これらを、国民健康保険団体連合会又は社会保険診療報酬支払基金(以下「審査支払機関」と総称する。)に毎月1回送付する。
(イ) 審査支払機関は、請求書及びレセプトに基づき請求内容を審査点検した後、医療機関等ごと、保険者等ごとの請求額を算定して、その後、請求額を記載した書類と請求書及びレセプトを各保険者等に送付する。
ウ 請求を受けた保険者等は、それぞれの立場から医療費についての審査点検を行って金額等を確認の上、審査支払機関を通じて医療機関等に医療費を支払う。
保険者等が支払う医療費の負担は次のようになっている。
ア 老人保健法に係る医療費(以下「老人医療費」という。)については、老人の居住する市町村が審査支払機関を通じて支払うが、この費用は国、都道府県、市町村及び保険者が以下のように負担している。
(ア) 老人保健法により、老人医療費については、原則として、国は12分の4を、都道府県及び市町村はそれぞれ12分の1ずつを負担しており、残りの12分の6については、各保険者が拠出する老人医療費拠出金が財源となっている。
(イ) 国民健康保険法により、国は市町村等が保険者として拠出する老人医療費拠出金の納付に要する費用の額の一部を負担している。
(ウ) 健康保険法等により、国は政府管掌健康保険等の保険者として老人医療費拠出金を納付している。
イ 高齢者医療確保法に係る医療費(以下「後期高齢者医療費」という。)については、広域連合が審査支払機関を通じて支払うが、この費用は国、都道府県、市町村及び保険者が以下のように負担している。
(ア) 高齢者医療確保法により、後期高齢者医療費については、原則として、国は12分の4を、都道府県及び市町村はそれぞれ12分の1ずつを負担しており、残りの12分の6については、各保険者が納付する後期高齢者支援金及び後期高齢者の保険料が財源となっている。
(イ) 国民健康保険法により、国は市町村等が保険者として納付する後期高齢者支援金に要する費用の額の一部を負担している。
(ウ) 健康保険法により、国は全国健康保険協会(注1)
が保険者として納付する後期高齢者支援金に要する費用の額の一部を負担している。
(エ) 船員保険法により、国は管掌する船員保険事業に要する費用として後期高齢者支援金を納付している。
ウ 医療保険各法に係る医療費については、国は、患者が、〔1〕 政府管掌健康保険等の被保険者である場合の医療費は保険者としてその全額を、〔2〕 市町村が行う国民健康保険の一般被保険者である場合の医療費は市町村が支払った額の43%を、〔3〕 国民健康保険組合が行う国民健康保険の被保険者である場合の医療費は国民健康保険組合が支払った額の47%を、それぞれ負担している。
エ 生活保護法等に係る医療費については、国は都道府県又は市町村が支払った医療費の4分の3又は2分の1を負担している。
国民医療費は11年度以降毎年度30兆円を超えており、このうち老人医療費は、高齢化が急速に進展する中でその占める割合が3割を超えている。このような状況の中で医療費に対する国の負担も多額に上っていることから、本院は老人医療費を中心に、合規性等の観点から、診療報酬等の請求が適正に行われているかに着眼して検査を行っている。
そして、近年では医療機関において、医師、看護師等の医療従事者が不足していて要件を満たしていなかったり、別途介護保険制度の介護給付等として行われるものを診療報酬として請求したりしている不適正と認められる事態が多く見受けられる。また、調剤報酬についても、算定要件を満たしていないのに請求しているなど不適正と認められる事態が多く見受けられる。そこで、本年の検査に当たっても、合規性等の観点から、これらの点を中心に検査することとした。
本院は、社会保険庁の25社会保険事務局及び25都府県において、保険者等の実施主体による医療費の支払について、レセプト、各種届出書、報告書等の書類により会計実地検査を行った。そして、医療費の支払について疑義のある事態が見受けられた場合は、地方社会保険事務局及び都府県に調査及び報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査を行った。
検査の結果、25都府県に所在する146医療機関及び37薬局に対して932実施主体が行った16年度から20年度までの間における医療費の支払が、346,542件で1,095,678,253円過大となっていて、これに対する国の負担額593,826,959円が不当と認められる。
これを診療報酬等の別に整理して示すと、次のとおりである。
診療報酬等 | 実施主体 (医療機関等数) |
過大に支払われた医療費の件数 | 過大に支払われた医療費 | 不当と認める国の負担額 |
件 | 千円 | 千円 | ||
〔1〕 入院基本料 | 214市区町村等 (38) |
5,848 | 221,116 | 128,652 |
〔2〕 特定入院料 | 52市区町村等 (3) |
5,284 | 373,619 | 189,610 |
〔3〕 入院基本料等加算 | 267市区町村等 (26) |
17,830 | 132,038 | 73,296 |
〔4〕 初診料・再診料 | 212市区町村等 (26) |
28,368 | 103,069 | 53,738 |
〔5〕 在宅医療料 | 44市町等 (18) |
2,979 | 61,618 | 34,558 |
〔6〕 処置料 | 314市区町村等 (9) |
10,591 | 36,206 | 19,537 |
〔7〕 医学管理料 | 77市区町村等 (10) |
8,764 | 29,441 | 17,147 |
〔8〕 リハビリテーション料等 | 196市区町村等 (16) |
13,285 | 47,913 | 27,020 |
〔1〕 −〔8〕 の計 | 766実施主体 (146) |
92,949 | 1,005,023 | 543,561 |
〔9〕 調剤報酬 | 444市区町村等 (37) |
253,593 | 90,654 | 50,265 |
〔1〕 −〔9〕 の計 | 932実施主体 (183) |
346,542 | 1,095,678 | 593,826 |
注(1) | 複数の診療報酬について不適正と認められる請求があった医療機関については、最も多額な診療報酬で整理した。 |
注(2) | 計欄の実施主体数は、各診療報酬等の間で実施主体が重複することがあるため、各診療報酬等の実施主体数を合計したものとは符合しない。 |
このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められる。
ア 実施主体及び審査支払機関において、医療機関等から不適正と認められる診療報酬等の請求があったのにこれに対する審査点検が十分でなく、特に、診療報酬請求上の各種届出についての確認が必ずしも十分でなかったこと
イ 地方社会保険事務局及び県において、医療機関の医療従事者が不足していることを把握できる資料があるにもかかわらずその活用が必ずしも十分でなかったこと
ウ 地方社会保険事務局及び都府県において、医療機関等に対する指導が十分でなかったこと
上記の医療費の支払が過大となっていた事態について、診療報酬等の別に、その算定方法及び検査の結果の詳細を示すと次のとおりである。
〔1〕 入院基本料
入院基本料は、患者が入院した場合に1日につき所定の点数が定められている。入院基本料のうち療養病棟入院基本料は、患者の疾患、状態等について厚生労働大臣が定める五つの区分に従い、所定の点数を算定することとされている。
検査の結果、16府県に所在する38医療機関において、入院基本料等の請求が不適正と認められるものが5,848件あった。その主な態様は、療養病棟入院基本料に定められた区分のうち、より低い点数の区分の状態等にある患者に対して高い区分の点数で算定していたものである。
このため、上記5,848件の請求に対して214市区町村等が支払った医療費が221,116,023円過大となっていて、これに対する国の負担額128,652,206円は負担の必要がなかったものである。
〔2〕 特定入院料
特定入院料には、精神療養病棟入院料等があり、厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方社会保険事務局長に届け出た医療機関において、その届出に係る所定の点数を算定することとされている。ただし、精神療養病棟入院料は、医療機関において、医師の数が医療法(昭和23年法律第205号)に定める標準となる数(以下「標準人員」という。)を満たしていない場合には、算定できないこととされている。
検査の結果、3県に所在する3医療機関において、特定入院料等の請求が不適正と認められるものが5,284件あった。その態様は、医師の数が標準人員を満たしていないのに、精神療養病棟入院料を算定していたものである。
このため、上記5,284件の請求に対して52市区町村等が支払った医療費が373,619,982円過大となっていて、これに対する国の負担額189,610,560円は負担の必要がなかったものである。
〔3〕 入院基本料等加算
入院基本料等加算には、療養病棟療養環境加算等があり、それぞれ所定の点数が定められている。そして、これらの加算の多くは、厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方社会保険事務局長に届け出た医療機関において、その基準に掲げる区分に従い所定の点数を算定することとされている。ただし、療養病棟療養環境加算等は、医師の数が標準人員を満たしていない場合には算定できないこととされている。
検査の結果、16都府県に所在する26医療機関において、入院基本料等加算等の請求が不適正と認められるものが17,830件あった。その主な態様は、医師の数が標準人員を満たしていないのに、療養病棟療養環境加算等を算定していたものである。
このため、上記17,830件の請求に対して267市区町村等が支払った医療費が132,038,220円過大となっていて、これに対する国の負担額73,296,573円は負担の必要がなかったものである。
〔4〕 初診料・再診料
初診料は患者の傷病について医学的に初診といわれる医師の診療行為があったときに、再診料はその後の診療行為の都度、それぞれ算定することとされている。ただし、特別養護老人ホーム、養護老人ホーム(定員111名以上の場合)、身体障害者更生施設、身体障害者療護施設、知的障害者入所更生施設(定員150名以上の場合)等の施設に配置されている医師(以下「配置医師」という。)がこれら施設の入所者に対して行っている診療については、その診療が別途介護保険制度の介護給付等として行われているものであることから、初診料、再診料は算定できないこととされている。
また、医療機関に上記の施設が併設されている場合、当該医療機関の医師がこれら施設の入所者に対して行っている診療についても、初診料、再診料は算定できないこととされている。
検査の結果、13都府県に所在する26医療機関において、初診料、再診料等の請求が不適正と認められるものが28,368件あった。その主な態様は次のとおりである。
ア 配置医師が特別養護老人ホーム等の入所者に対して行った診療について、初診料、再診料を算定していた。
イ 医療機関の医師が当該医療機関に併設されている知的障害者入所更生施設等の入所者に対して行った診療について、初診料、再診料を算定していた。
ウ 配置医師でない医師が、定期的に特別養護老人ホーム等の入所者の診療に当たっている場合、その医師は実質的には配置医師とみなすべきであるのに、初診料、再診料を算定していた。
このため、上記28,368件の請求に対して212市区町村等が支払った医療費が103,069,112円過大となっていて、これに対する国の負担額53,738,996円は負担の必要がなかったものである。
〔5〕 在宅医療料
在宅医療料のうち在宅患者訪問看護・指導料等は、医療機関が、在宅で療養を行っている患者であって通院が困難なものに対して、看護師等を訪問させて看護又は療養上必要な指導を行った場合等に算定することとされている。また、歯科診療の訪問歯科衛生指導料等は、歯科医師が歯科訪問診療を行った患者等に対して、歯科医師の指示に基づき、歯科衛生士等が訪問して、療養上必要な実地指導を行った場合等に算定することとされている。ただし、介護保険の要介護被保険者等である患者に対しては、これらの診療が別途介護保険制度の介護給付として行われるものであることから、在宅患者訪問看護・指導料、訪問歯科衛生指導料等は算定できないこととされている。
検査の結果、11府県に所在する18医療機関において、在宅医療料等の請求が不適正と認められるものが2,979件あった。その主な態様は、介護保険の要介護被保険者等である患者に対して、在宅患者訪問看護・指導料又は訪問歯科衛生指導料等を算定していたものである。
このため、上記2,979件の請求に対して44市町等が支払った医療費が61,618,119円過大となっていて、これに対する国の負担額34,558,601円は負担の必要がなかったものである。
〔6〕 処置料
処置料には、一般処置料、皮膚科処置料等があり、それぞれの処置の種類ごとに所定の点数が定められている。そして、処置に当たって薬剤を使用した場合は、実際に使用した薬剤の総量に基づいた薬剤料の点数を合算して算定することとされている。
検査の結果、8都県に所在する9医療機関において、処置料等の請求が不適正と認められるものが10,591件あった。その主な態様は、人工腎(じん)臓の処置に使用される薬剤について、実際に使用した量よりも多い量により薬剤料を算定していたものである。
このため、上記10,591件の請求に対して314市区町村等が支払った医療費が36,206,880円過大となっていて、これに対する国の負担額19,537,313円は負担の必要がなかったものである。
〔7〕 医学管理料
医学管理料のうち特定疾患療養管理料等は、生活習慣病等を主病とする患者に対して、治療計画に基づき療養上必要な管理を行った場合等に算定することとされている。ただし、配置医師が特別養護老人ホームの入所者に対して行っている診療については、その診療が別途介護保険制度の介護給付等として行われているものであることから、特定疾患療養管理料等は算定できないこととされている。
また、診療情報提供料(A)は、医療機関が、患者の同意を得て、当該患者が居住する市町村又は介護保険の指定居宅介護支援事業者等に対して、診療状況を示す文書を添えて、当該患者に係る保健福祉サービスに必要な情報を提供した場合や、在宅で療養を行っている患者の同意を得て、薬局に対して、診療状況を示す文書を添えて、当該患者に係る在宅患者訪問薬剤管理指導に必要な情報を提供した場合などにそれぞれ算定することとされている。ただし、介護保険の要介護被保険者等である患者に対しては、同一月において、介護保険の居宅療養管理指導等を医師が行い居宅療養管理指導費等を算定している場合、診療情報提供料(A)は、市町村若しくは指定居宅介護支援事業者等又は薬局に対する情報提供に係るものには算定できないこととされている。
検査の結果、8県に所在する10医療機関において、医学管理料等の請求が不適正と認められるものが8,764件あった。その主な態様は次のとおりである。
ア 配置医師が特別養護老人ホームの入所者に対して行った診療について、特定疾患療養管理料等を算定していた。
イ 介護保険の要介護被保険者等である患者に対して居宅療養管理指導費等が算定されているのに、診療情報提供料(A)を算定していた。
このため、上記8,764件の請求に対して77市区町村等が支払った医療費が29,441,875円過大となっていて、これに対する国の負担額17,147,307円は負担の必要がなかったものである。
〔8〕 リハビリテーション料等
リハビリテーション料のうち摂食機能療法は、摂食機能障害を有する患者に対して、個々の患者の症状に対応した診療計画書に基づき、所定の訓練指導を行った場合に算定することとされている。ただし、治療開始日から3月を超えた場合は、1月に4日を限度として算定するなどとされている。
検査の結果、8都県に所在する16医療機関において、リハビリテーション料等の請求が不適正と認められるものが13,285件あった。その主な態様は、多くの入院患者に対して長期にわたり摂食機能療法を多日数実施してリハビリテーション料を算定していたものである。
このため、上記13,285件の請求に対して196市区町村等が支払った医療費が47,913,248円過大となっていて、これに対する国の負担額27,020,020円は負担の必要がなかったものである。
〔9〕 調剤報酬
調剤報酬のうち薬剤服用歴管理料の服薬指導加算は、処方された薬剤について、直接患者又はその家族等から服薬状況等の情報を収集して薬剤服用歴に記録して、これに基づき薬剤の服用等に関して必要な指導を行った場合に算定することとされている。
また、在宅患者訪問薬剤管理指導料は、在宅で療養を行っている患者に対して、医師の指示に基づき、薬剤師が患家を訪問して薬学的管理指導を行った場合に算定することとされている。ただし、介護保険の要介護被保険者等である患者に対しては、この指導が別途介護保険制度の介護給付として行われるものであることから、在宅患者訪問薬剤管理指導料は算定できないこととされている。
検査の結果、13都府県に所在する37薬局において、調剤報酬の請求が不適正と認められるものが253,593件あった。その主な態様は次のとおりである。
ア 薬剤服用歴の記録に基づき薬剤の服用等に関して必要な指導を行うことなどの算定要件を満たしていないのに、服薬指導加算等を算定していた。
イ 介護保険の要介護被保険者等である患者に対して在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定していた。
このため、上記253,593件の請求に対して444市区町村等が支払った医療費が90,654,794円過大となっていて、これに対する国の負担額50,265,383円は負担の必要がなかったものである。
以上を医療機関等の所在する都府県別に示すと次のとおりである。
都府県名 |
実施主体(医療機関等数) | 過大に支払われた医療費の件数 | 過大に支払われた医療費 | 不当と認める国の負担額 | 摘要 |
件 | 千円 | 千円 | |||
青森県 | 26市区町村等(2) | 2,176 | 128,754 | 63,570 | 〔2〕 〔4〕 |
福島県 | 109市区町村等(17) | 53,027 | 115,416 | 65,826 | 〔1〕 〔4〕 〔5〕 〔7〕 〔8〕 〔9〕 |
茨城県 | 89市区町村等(14) | 22,120 | 59,876 | 32,989 | 〔1〕 〔3〕 〔4〕 〔5〕 〔6〕 〔7〕 〔9〕 |
群馬県 | 8市町村(2) | 177 | 3,854 | 2,147 | 〔3〕 〔6〕 |
埼玉県 | 134市区町村等(10) | 41,408 | 30,445 | 17,143 | 〔1〕 〔3〕 〔7〕 〔8〕 〔9〕 |
千葉県 | 70市区町村等(10) | 5,516 | 25,153 | 14,406 | 〔1〕 〔3〕 〔4〕 〔5〕 〔6〕 〔7〕 |
東京都 | 273市区町村等(13) | 37,301 | 61,792 | 30,361 | 〔3〕 〔4〕 〔6〕 〔6〕 〔9〕 |
新潟県 | 17市町村等(2) | 5,855 | 3,846 | 2,121 | 〔9〕 |
富山県 | 8市町等(5) | 1,358 | 8,355 | 4,620 | 〔3〕 〔4〕 〔8〕 〔9〕 |
静岡県 | 122市区町等(8) | 15,523 | 139,997 | 67,460 | 〔1〕 〔2〕 〔3〕 〔4〕 〔6〕 〔7〕 〔8〕 〔9〕 |
愛知県 | 56市町村等(13) | 9,216 | 54,155 | 31,743 | 〔1〕 〔3〕 〔4〕 〔5〕 〔6〕 〔7〕 〔9〕 |
滋賀県 | 22市町等(3) | 1,665 | 11,149 | 6,123 | 〔1〕 〔5〕 〔7〕 |
京都府 | 7市等(1) | 406 | 2,544 | 1,529 | 〔3〕 |
大阪府 | 109市区町等(15) | 25,460 | 33,005 | 18,673 | 〔1〕 〔3〕 〔4〕 〔5〕 〔9〕 |
兵庫県 | 81市町等(19) | 10,968 | 110,200 | 62,498 | 〔1〕 〔3〕 〔4〕 〔5〕 〔6〕 〔7〕 〔8〕 |
奈良県 | 91市区町村等(9) | 5,479 | 56,253 | 34,574 | 〔1〕 〔5〕 〔8〕 |
和歌山県 | 2市(4) | 165 | 6,179 | 3,376 | 〔1〕 〔5〕 |
島根県 | 6市町等(2) | 603 | 5,122 | 2,858 | 〔1〕 〔4〕 |
広島県 | 51市町等(12) | 51,206 | 44,008 | 24,914 | 〔1〕 〔3〕 〔4〕 〔5〕 〔9〕 |
香川県 | 11市町等(2) | 131 | 4,515 | 2,837 | 〔3〕 〔5〕 |
高知県 | 46市区町村等(3) | 34,658 | 8,778 | 4,694 | 〔9〕 |
長崎県 | 20市町等(5) | 4,640 | 11,129 | 5,656 | 〔1〕 〔3〕 〔8〕 〔9〕 |
大分県 | 26市町等(5) | 9,704 | 12,307 | 6,631 | 〔1〕 〔4〕 〔9〕 |
宮崎県 | 36市区町村等(5) | 3,313 | 148,834 | 81,581 | 〔1〕 〔2〕 〔3〕 |
鹿児島県 | 16市町等(2) | 4,467 | 10,003 | 5,483 | 〔3〕 〔6〕 |
計 | 932市区町村等(183) | 346,542 | 1,095,678 | 593,826 |
注(1) | 計欄の実施主体数は、都府県の間で実施主体が重複することがあるため、各都府県の実施主体数を合計したものとは符合しない。 |
注(2) | 摘要欄の〔1〕 〜〔9〕 は、本文 の過大となっていた支払の事態の診療報酬等の別に対応している。 |
上記の事態については、厚生労働省は、従来発生防止に取り組んでいるところであるが、さらに、地方厚生(支)局(注2) 及び都道府県に対して、把握した情報を有効に活用しながら医療機関等に対する指導を実施するよう努めるとともに、審査支払機関、保険者等に対する指導の徹底を図るよう助言等を行う必要があると認められる。