医療施設運営費等補助金(救命救急センター運営事業分)は、地域住民の救急医療の確保を目的として、重篤救急患者の医療を確保するために、初期救急医療施設、第2次救急医療施設及び救急患者の搬送機関との円滑な連絡体制の下に、都道府県知事の要請を受けた病院の開設者が行う救命救急センター(以下「センター」という。)の運営事業に対して都道府県が補助する事業に対して、その費用の一部を国が補助するなどの事業である。
このうち、都道府県が補助する事業に係る補助金の交付額は、センターごとに、次のように算定することとなっている。
〔1〕 所定の基準額と対象となる経費の実支出額(以下「実支出額」という。)とを比較して少ない方の額を選定する。
〔2〕 〔1〕 により選定された額(以下「選定額」という。)と総事業費から診療収入額及び寄附金その他の収入額を控除した額(以下「差引額」という。)とを比較して少ない方の額に3分の2を乗じて得た額と、都道府県が補助した額とを比較して少ない方の額を補助対象事業費として、これに補助率2分の1を乗じて得た額を交付額とする。
上記の総事業費及び実支出額の対象となる経費は、給与、退職金等の人件費、修繕費、減価償却費等の運営費等、センターの運営実態を反映する経費となっている。ただし、建物、構築物及び医療機器等備品で、国庫補助を受けて整備したものに係る減価償却費については、対象となる経費から除くこととなっている。
そして、センターの運営実態を反映する経費が明確に算出できない場合は、センターの診療収入を病院全体の入院及び外来の診療収入の合計額で除して得た割合(以下「病院全体収入比率」という。)等を用いて案分計算により算出することとなっている。
本院が、平成19年度3府県15市等計18事業主体、20年度1県2市等計3事業主体において会計実地検査を行ったところ、次のような事態が見受けられた。
部局等 | 補助事業者等 | 間接補助事業者等 | 補助事業 | 年度 | 国庫補助金交付額 | 不当と認める国庫補助金交付額 | 摘要 | |
千円 | 千円 | |||||||
(79) | 福岡県 | 福岡県 | 学校法人久留米大学(事業主体) | 救命救急センター運営事業 | 15〜17 | 93,476 | 38,262 | 給与費の案分計算を誤っていたものなど |
学校法人久留米大学は、平成15年度から17年度までに係る上記センターの運営事業について、選定額と差引額とを比較して、15年度及び16年度は差引額が、17年度は選定額がそれぞれ少ない方の額であるとして、福岡県から県補助金の交付を受けて、同県に事業実績報告書を提出していた。そして、同県は、この差引額又は選定額に3分の2を乗ずるなどして補助対象事業費を計186,953,000円として、これに対する国庫補助金計93,476,000円の交付を受けていた。
しかし、同法人は、差引額の算定に当たり、給与費等の算出の際に、病院全体収入比率を用いずにセンターの診療収入を病院全体の入院のみに係る診療収入で除した割合により案分計算を行ったり、減価償却費の算出の際に、建物等の取得価格から国庫補助を受けて整備したものを控除した額により減価償却費を算定すべきであるのに、国庫補助金等の交付額のみを控除した額に基づいて算定したり、修繕費の算出の際に、施設の新設工事に係る費用を計上したりなどしていたため、差引額が過大となっていた。
したがって、適正な差引額を算定すると15年度から17年度までのいずれの年度も差引額が選定額を下回ることから、これにより補助対象事業費を算定すると計110,428,000円となり、補助対象事業費が過大に精算されていた。そして、適正な補助対象事業費に基づき国庫補助金を算定すると計55,214,000円となり、交付額との差額計38,262,000円が過大となっていて、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同法人において補助制度の内容についての理解が十分でなかったこと、同県において同法人から提出された事業実績報告書の審査、確認が十分でなかったことなどによると認められる。
上記の事態については、厚生労働省は、従来発生防止に取り組んでいるところであるが、さらに、事務処理の適正化について補助事業者等への指導を徹底するとともに、都道府県における実績報告等に係る審査等の強化を図る必要があると認められる。