ページトップ
  • 平成20年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第9 厚生労働省|
  • 不当事項|
  • 補助金|
  • 補助事業の実施及び経理が不当と認められるもの

次世代育成支援対策交付金の経理が不当と認められるもの


(4) 次世代育成支援対策交付金の経理が不当と認められるもの

8件 不当と認める国庫補助金 27,292,000円

 次世代育成支援対策交付金(以下「交付金」という。)は、次世代育成支援対策推進法(平成15年法律第120号)に基づき、地域における子育ての支援、母性及び乳幼児の健康の確保等の次世代育成支援対策の着実な推進を図ることを目的として、市町村(特別区を含む。以下同じ。)が5年を一期として策定する次世代育成支援対策の実施に関する計画により、毎年度策定する事業計画に掲げる病児・病後児保育事業(平成18年度以前は「乳幼児健康支援一時預かり事業」)や育児支援家庭訪問事業等の事業を対象として、これらの事業の実施に要する経費について、その一部を国が交付するものである。
 交付対象事業のうち病児・病後児保育事業は、保護者の子育てと就労の両立を支援することなどを目的として、病気であるため集団保育が困難な児童を対象として通常の保育とは別に市町村が実施するものである。
 この事業は、市町村が自ら設置する保育所等(以下「公立施設」という。)又は社会福祉法人等が設置する保育所等に付設された専用スペースに看護師等を配置して実施するなどのもので、〔1〕 保育所に通所中等の児童が病気の回復期であり、かつ、集団保育が困難な期間において、当該児童を一時的に預かる病後児保育、〔2〕 病気の回復期に至らない場合であり、かつ、当面症状の急変が認められない場合において、当該児童を預かる病児保育等がある。
 交付金の交付額は、交付要綱において、市町村が事業計画に掲げる事業について、事業ごとの事業量に応ずるなどして定められた基準点数により算出された合計点等を基に厚生労働大臣が認めた額と、市町村が実施した各事業の総事業費の合計額から寄付金その他の収入額の合計額を控除した額に2分の1を乗じた額(以下「国庫補助基本額」という。)とを比較して、少ない方の額とすることとなっている。
 そして、上記の交付対象事業において、市町村職員が交付金の交付対象事業とそれ以外の事業に従事している場合、当該職員が交付対象事業の業務に従事した時間等に係る人件費等に限り交付対象事業費とすることとなっている。
 本院が、20道府県の63市町において、会計実地検査を行ったところ、6府県の8市町は、公立施設で実施された病児・病後児保育事業等の事業費を算定するに当たり、交付の対象とならない通常の保育等に係る人件費を含めていたことなどから、事業費が過大となっていた。
 このため国庫補助基本額が過大に算定されていて、適正な国庫補助基本額に基づいて交付金の交付額を算定すると計572,690,000円となり、交付金交付額計599,982,000円との差額計27,292,000円が過大に交付されていて、不当と認められる。
 上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

 東大阪市は、平成19年度に、通常の保育も実施するA子育て支援センターにおいて、病後児保育を行った看護師2名及び保育士2名の人件費の合計額21,347,000円を、当該センターの病児・病後児保育の事業費として計上するなどして、交付金を161,239,000円と算定し、同額の交付を受けていた。
 しかし、実際は、上記4名は病後児保育だけでなく通常の保育も行っていて、上記の事業費には、これに係る人件費を含めていた。
 したがって、上記4名の人件費を、病後児保育に従事した時間数と通常の保育に従事した時間数とで案分するなどして、適正な事業費を算出すると2,331,634円となり、19,015,366円が過大となっていた。そして、これに基づくなどして適正な交付金を算定すると154,080,000円となり、当初の交付金161,239,000円との差額7,159,000円が過大に交付されていた。

 このような事態が生じていたのは、事業主体において病児・病後児保育事業の事業費の算定についての理解が十分でなかったこと、また、厚生労働省において事業主体から提出された事業実績報告書の審査、確認が十分でなかったことなどによると認められる。
 前記の事態について、これを府県別・事業主体別に示すと次のとおりである。

府県名 補助事業者
(事業主体)
年度 国庫補助基本額 厚生労働大臣が認めた額 交付金交付額 不当と認める交付対象事業費 不当と認める交付金交付額 摘要
千円 千円 千円 千円 千円
(153) 群馬県 伊勢崎市 18、19 175,686 177,896 175,686 3,320 1,661 病児・病後児保育事業費等の算定を誤っていたもの
(154) 埼玉県 和光市 19 26,990 24,495 24,495 18,032 6,521
(155) 石川県 白山市 18、19 81,269 80,955 79,557 8,026 2,302
(156) 鹿島郡中能登町 19 12,055 10,237 10,237 8,530 2,448
(157) 長野県 上田市 18、19 80,957 80,423 80,423 9,568 4,250
(158) 愛知県 一宮市 19 36,421 38,225 36,421 1,325 663 病児・病後児保育事業費の算定を誤っていたもの
(159) 大阪府 箕面市 19 33,801 31,924 31,924 8,329 2,288 病児・病後児保育事業費等の算定を誤っていたもの
(160) 東大阪市 19 163,827 161,239 161,239 19,494 7,159
(153)—(160)の計 611,010 605,394 599,982 76,629 27,292