ページトップ
  • 平成20年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第9 厚生労働省|
  • 不当事項|
  • 補助金|
  • 補助事業の実施及び経理が不当と認められるもの

障害者自立支援給付費負担金の経理が不当と認められるもの


(10) 障害者自立支援給付費負担金の経理が不当と認められるもの

27件 不当と認める国庫補助金 174,811,634円

 障害者自立支援給付費負担金(以下「負担金」という。)は、障害者自立支援法(平成17年法律第123号。以下「法」という。)に基づき、障害者及び障害児(以下「障害者等」という。)の福祉の増進を図ることなどを目的として、市町村(特別区を含む。以下同じ。)が、都道府県知事の指定する障害福祉サービス事業者等から居宅介護、共同生活介護、共同生活援助等の障害福祉サービス(以下「指定障害福祉サービス」という。)等を受けた障害者等に対して、介護給付費、訓練等給付費等(以下「自立支援給付費」という。)を支給した場合に、その支給に要する費用の一部を国が負担するものである。自立支援給付費は、指定障害福祉サービス等に通常要する費用につき、厚生労働大臣が定めた基準により算定した費用の額の100分の90に相当する額となっていて、残りの額は原則として障害者等が負担する(以下、この額を「利用者負担額」という。)こととなっており、この利用者負担額は負担金の交付対象とはならない。
 法による制度は、それまでの身体障害、知的障害等の障害の種類ごとに異なる法律に基づいて行われていた支援費制度に代えて、一元的に福祉サービス等を提供する制度として、平成18年4月に創設されたものであり、負担金の交付額については、交付要綱等に基づき、次のように算定することとなっている。
〔1〕  所定の方式によって算定した基準額と、自立支援給付費の支給に要した費用(以下「対象経費の実支出額」という。)から寄附金その他の収入額を控除した額とを比較して少ない方の額を選定する。
〔2〕  〔1〕 により選定された額を国庫負担対象事業費として、これに補助率100分の50を乗じて得た額を交付額とする。
 また、法の円滑な実施を図り、法の施行に伴う激変緩和等を図るため、18年度に、障害者自立支援対策臨時特例交付金が都道府県に対して交付されて基金が造成されている。この基金からは、都道府県及び市町村が指定障害福祉サービス事業者等を対象として、制度の変更に伴う収入減の一部を保障するための助成措置として実施する事業運営円滑化事業等の特別対策事業に対して、助成金が交付されている。
 本院が、23都道府県の137市区町村において、会計実地検査を行ったところ、13都府県27事業主体において、負担金の算定に当たり、誤って、対象経費の実支出額を二重に計上したり、対象外経費を計上したりなどしていたため、負担金174,811,634円が過大に交付されていて、不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、事業主体において、対象経費の実支出額の算定に当たり、交付要綱に基づく国庫負担対象事業費の範囲及び計数について調査確認が十分でなかったこと、都府県において、事業実績報告書の審査、確認が十分でなかったことなどによると認められる。
 前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例1>

 品川区は、平成19年度の対象経費の実支出額の算定に当たり、共同生活介護及び共同生活援助に係る自立支援給付費の一部を二重に計上するなどしていたため、国庫負担対象事業費が32,261,458円過大に算定されていた。
 したがって、適正な国庫負担対象事業費に基づいて国庫負担金を算定すると1,582,916,744円となり、交付額との差額16,130,729円が過大となっていた。

<事例2>

 春日部市は、平成19年度の対象経費の実支出額の算定に当たり、誤って、負担金の交付対象となる自立支援給付費には該当しない、前記の特別対策事業に係る対象経費等を含めていた。このため、国庫負担対象事業費が10,290,806円過大に算定されていた。
 したがって、適正な国庫負担対象事業費に基づいて国庫負担金を算定すると976,590,814円となり、交付額との差額5,145,403円が過大となっていた。
 前記の事態について、これを都府県別・事業主体別に示すと次のとおりである。

都府県名 補助事業者(事業主体) 年度 国庫負担対象事業費 左に対する国庫負担金交付額 不当と認める国庫負担対象事業費 不当と認める国庫負担金交付額 摘要
千円 千円 千円 千円
(273) 茨城県 つくば市 18、19 1,253,084 626,542 5,677 2,838 対象外経費を計上していたものなど
(274) 古河市 18 362,481 181,240 12,840 6,420
(275) 那珂郡東海村 18、19 257,353 128,676 21,500 10,750 経費を二重に計上していたものなど
(276) 埼玉県 深谷市 18、19 1,354,412 677,206 39,333 19,666
(277) 春日部市 19 986,881 493,440 10,290 5,145 対象外経費を計上していたもの
(278) 千葉県 山武郡大網白里町 19 185,306 92,653 6,297 3,148 経費を二重に計上していたものなど
(279) 東京都 中央区 18 237,677 118,838 12,922 6,461 対象外経費を計上していたものなど
(280) 港区 19 908,455 454,227 8,698 4,349
(281) 品川区 19 1,615,178 807,589 32,261 16,130 経費を二重に計上していたものなど
(282) 大田区 19 3,361,642 1,680,821 50,278 25,139 対象外経費を計上していたものなど
(283) 立川市 18 986,957 493,478 4,701 2,350 対象外経費を計上していたもの
(284) 東村山市 18 452,140 226,070 2,597 1,298 対象外経費を計上していたものなど
(285) 清瀬市 18、19 889,253 444,626 16,334 8,167
(286) 長野県 諏訪市 18 133,469 66,734 2,915 1,457 経費を二重に計上していたものなど
(287) 愛知県 豊田市 18、19 2,461,402 1,230,701 4,187 2,093
(288) 大阪府 堺市 19 5,395,495 2,697,747 33,850 16,925 対象経費の集計を誤っていたもの
(289) 藤井寺市 18 258,496 129,248 2,629 1,314 経費を二重に計上していたものなど
(290) 奈良県 奈良市 18、19 3,776,401 1,888,200 23,431 11,715 基準額の算出を誤っていたものなど
(291) 大和郡山市 18 307,670 153,835 17,676 8,838 対象経費の集計を誤っていたもの
(292) 島根県 安来市 18 181,395 90,697 5,845 2,922 経費を二重に計上していたものなど
(293) 広島県 大竹市 18 82,009 41,004 4,895 2,447 対象外経費を計上していたものなど
(294) 高知県 高知市 19 2,488,557 1,244,278 3,545 1,772
(295) 安芸市 18 93,113 46,556 5,026 2,513 経費を二重に計上していたものなど
(296) 南国市 18 184,774 92,387 4,151 2,075 翌年度予算で支払った経費を含めていたものなど
(297) 福岡県 久留米市 18 1,005,763 502,881 7,556 3,778 経費を二重に計上していたもの
(298) 大川市 18 138,533 69,266 5,249 2,624 経費を二重に計上していたものなど
(299) 佐賀県 武雄市 18、19 606,522 303,261 4,926 2,463 対象外経費を計上していたものなど
(273)—(299)の計 29,964,430 14,982,215 349,623 174,811