介護保険は、介護保険法(平成9年法律第123号)に基づき、市町村(特別区、一部事務組合及び広域連合を含む。以下同じ。)が保険者となって、市町村の区域内に住所を有する65歳以上の者等を被保険者として、加齢による疾病等の要介護状態等に関して、保健医療サービス及び福祉サービスの給付を行う保険である。
介護保険については各種の国庫助成が行われており、その一つとして、市町村が行う介護保険事業運営の安定化を図るため、介護給付費負担金(以下「負担金」という。)が交付されている。
毎年度の負担金の交付額は、「介護保険の国庫負担金の算定等に関する政令」(平成10年政令第413号)等に基づき、次により算定することとなっている。
各算出要素については、次のとおりとされている。
ア 介護給付及び予防給付に要する費用等の額は、当該年度に、国民健康保険団体連合会(以下「国保連合会」という。)が審査決定した市町村負担分の居宅介護サービス費、施設介護サービス費、特定入所者介護サービス費等及び市町村が支払決定した高額介護サービス費、居宅介護住宅改修費等の介護給付並びに予防給付に要する費用の額(以下、これらを「介護給付費等」という。)に、国保連合会に対する審査支払手数料を加えた額とされている。
また、介護給付費等の算定に当たっては、損害賠償金、徴収金、返還金、加算金等の収入額を介護給付費等から控除することとされている。
イ 国の負担割合は、介護給付費等の費用の区分に応じて、次のように定める割合とされている。
(ア) 施設等分は、介護給付費等のうち、施設介護サービス費、指定施設サービス等に係る特定入所者介護サービス費、特定施設入居者生活介護費等及び介護予防特定施設入居者生活介護に係る予防給付費であり、負担割合は15/100
(イ) その他分は、介護給付費等のうち、上記施設等分以外の介護給付費等であり、負担割合は20/100
負担金の交付手続については、〔1〕 交付を受けようとする市町村は都道府県に交付申請書及び事業実績報告書を提出して、〔2〕 これを受理した都道府県は、その内容を添付書類により、また、必要に応じて現地調査を行うことにより審査の上、これを厚生労働省に提出して、〔3〕 厚生労働省はこれに基づき交付決定及び交付額の確定を行うこととなっている。
本院が、21都道府県の143市区町、3一部事務組合及び6広域連合において、平成18、19両年度に交付された負担金について会計実地検査を行ったところ、5県の5市において、介護給付費等について施設等分及びその他分の区分を誤り国の負担割合が高いその他分を過大に算定するなどして、負担金の交付額を過大に算定したため、負担金交付額計10,846,662,675円のうち計75,372,603円が過大に交付されていて、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、各市において法令等を十分に理解していなかったこと、各県において事業実績報告書等の審査確認が十分でなかったことなどによると認められる。
これを県別・交付先(保険者)別に示すと次のとおりである。
県名 | 交付先 (保険者) |
年度 | 負担金交付額 | 不当と認める負担金交付額 | 摘要 | |
千円 | 千円 | |||||
(312) | 埼玉県 | さいたま市 | 18 | 6,684,198 | 48,054 | 施設等分及びその他分の区分が誤っていたもの |
(313) | 千葉県 | 鴨川市 | 18 | 434,448 | 6,737 | 同 |
(314) | 愛知県 | 豊明市 | 18 | 395,741 | 2,959 | 施設等分及びその他分の集計が誤っていたものなど |
(315) | 佐賀県 | 伊万里市 | 18、19 | 1,434,584 | 16,218 | 施設等分及びその他分の区分が誤っていたもの |
(316) | 宮崎県 | 都城市 | 19 | 1,897,689 | 1,403 | 返還金を収入額として控除していなかったもの |
(312)—(316)の計 | 10,846,662 | 75,372 |