介護保険は、介護保険法(平成9年法律第123号)に基づき、市町村(特別区、一部事務組合及び広域連合を含む。以下同じ。)が保険者となって、市町村の区域内に住所を有する65歳以上の者(以下「第1号被保険者」という。)等を被保険者として、加齢による疾病等の要介護状態等に関して、保健医療サービス及び福祉サービスの給付を行う保険である。
介護保険については各種の国庫助成が行われており、その一つとして、財政調整交付金が交付されている。財政調整交付金は、市町村が行う介護保険財政が安定的に運営され、もって介護保険制度の円滑な施行に資することを目的として、各市町村における介護給付等に要する費用の総額の5%に相当する額を国が負担して、それを各市町村に交付するもので、普通調整交付金と特別調整交付金とがある。
普通調整交付金(以下「交付金」という。)は、市町村における第1号被保険者の総数に占める75歳以上の者の割合(以下「後期高齢者加入割合」という。)及び所得段階の区分(第1段階から第6段階まで)ごとの第1号被保険者の分布状況(以下「所得段階別加入割合」という。)が、市町村間で格差があることによって生ずる介護保険財政の不均衡を是正するために交付するものである。
交付金の交付額は、次により算定することとなっている。
(注1) | 調整基準標準給付費額 当該市町村における前年度の1月から当該年度の12月までにおける介護給付に要した費用及び予防給付に要した費用等の合計額
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(注2) | 調整率 当該年度に交付する普通調整交付金の総額と市町村ごとに算定した普通調整交付金の総額とのかい離を調整する割合
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上記のうち、普通調整交付金交付割合は、後期高齢者加入割合補正係数と所得段階別加入割合補正係数を用いるなどして算出した割合であり、このうち、後期高齢者加入割合補正係数は、当該市町村において、介護保険事業状況報告(月報)により報告することとされている前年度の1月報告分(12月末の人数)から当該年度の12月報告分(11月末の人数)までの後期高齢者数を基に算出される後期高齢者加入割合を、国から示されるすべての市町村における後期高齢者加入割合と比較した係数である。
交付金の交付を受けようとする市町村は都道府県に交付申請書及び事業実績報告書を提出して、これを受理した都道府県は、その内容を添付書類により、また、必要に応じて現地調査を行うことにより審査の上、これを厚生労働省に提出して、厚生労働省はこれに基づき交付決定及び交付額の確定を行うこととなっている。
本院が、21都道府県の143市区町、3一部事務組合及び6広域連合において、平成18、19両年度に交付された交付金について会計実地検査を行ったところ、次のような事態が見受けられた。
県名 | 交付先 (保険者) |
年度 | 交付金交付額 | 左のうち不当と認める額 | 摘要 | |
千円 | 千円 | |||||
(317) | 沖縄県 | 沖縄県介護保険広域連合 | 18、19 | 2,556,973 | 5,329 | 後期高齢者加入割合補正係数の算出を誤っていたもの |
沖縄県介護保険広域連合は、後期高齢者加入割合補正係数の算出に当たり、後期高齢者数について、前年度の1月報告分(12月末の人数)から当年度の12月報告分(11月末の人数)までの人数を基に算出すべきところ、誤って、前年度の2月報告分(1月末の人数)から当年度の1月報告分(12月末の人数)までの人数を基に算出していた。
このため、普通調整交付金交付額計2,556,973,000円のうち計5,329,000円が過大に交付されていて、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同広域連合において制度を十分に理解していなかったこと、沖縄県において事業実績報告書の審査、確認が十分でなかったことなどによると認められる。
上記の事態については、厚生労働省は、従来発生防止に取り組んでいるところであるが、さらに、市町村に対して適正な交付申請等のための指導の徹底を図るとともに審査確認の徹底を図るよう、都道府県に対して指示するなどの必要があると認められる。