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  • 平成20年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第9 厚生労働省|
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  • 補助事業の実施及び経理が不当と認められるもの

在宅福祉事業費補助金が過大に交付されているもの


(17) 在宅福祉事業費補助金が過大に交付されているもの

7件 不当と認める国庫補助金 71,525,000円

 在宅福祉事業費補助金(以下「補助金」という。)は、在宅の老人等の福祉の向上を図ることを目的として、市町村(政令指定都市及び中核市を除き、特別区を含む。以下同じ。)が行う在宅介護支援センター運営事業又は介護予防・地域支え合い事業に対して都道府県が補助する場合に要する費用、都道府県又は市町村等(政令指定都市、中核市及び市町村。以下同じ。)が行う居宅介護等事業等、在宅介護支援センター運営事業又は介護予防・地域支え合い事業に要する費用等について、その一部を国が補助するものである。
 補助金の交付額の算定方法等を上記の各事業ごとに示すと以下のとおりである。

ア 居宅介護等事業等

 この事業は、市町村等が、身体障害者又は障害児若しくは知的障害者(以下「身体障害者等」という。)が居宅において日常生活を営むことができるよう、当該身体障害者等の身体その他の状況等に応じて、都道府県知事が指定する居宅支援事業者から、入浴、排せつ、食事等の介護その他の生活全般にわたる援助(以下「指定居宅支援」という。)を受けた身体障害者等に対して、当該指定居宅支援に要した費用について、居宅生活支援費を支給などする事業である。
 この事業に係る補助金の交付額は、次のとおり算定することとされている。
(ア) 所定の基準額と、補助の対象とされている経費(以下「対象経費」という。)の実支出額とを比較して、少ない方の額を選定する。
(イ) (ア)により選定した額と総事業費から寄附金その他の収入額を控除した額(以下「差引額」という。)とを比較して少ない方から、所定の利用者負担額を控除して算出した額を補助対象事業費として、この額に2分の1を乗じて得た額を補助金の交付額とする。

イ 在宅介護支援センター運営事業

 この事業は、市町村等が、在宅の要援護高齢者等に対して、在宅介護等に関する総合的な相談に応ずるなどの業務を行う在宅介護支援センターを運営する事業である。
 このうち、市町村が行う事業について補助する場合の補助金の交付額は、次のとおり算定することとされている。
(ア) 運営費の上限額として定められている基準額と対象経費の実支出額とを基幹型在宅介護支援センター(以下「基幹型センター」という。)及び地域型在宅介護支援センターの各箇所ごとに比較して、各箇所における少ない方の額を算定上の基準額(以下「算定基準額」という。)として選定する。
(イ) (ア)により選定した算定基準額の合計額と差引額とを比較して少ない方の額を選定し、その額に4分の3を乗じて得た額と都道府県が補助した額とを比較して少ない方の額を補助対象事業費として、この額に3分の2を乗じて得た額を補助金の交付額とする。
 そして、基幹型センターには、社会福祉士等の資格を有する職員を配置することとされており、これらの職員の人件費については、基幹型センターの運営業務に従事した分を対象経費の実支出額に含めることができるとされている。

ウ 介護予防・地域支え合い事業

 この事業は、都道府県又は市町村等が、要援護高齢者等に対して、要介護状態にならないための介護予防や生活支援等のサービスを提供する事業である。
 このうち、市町村等が行う事業について補助する場合の補助金の交付額は、次のとおり算定することとされている。
(ア) 政令指定都市又は中核市が行う事業について補助する場合
 所定の基準額と対象経費の実支出額とを比較して少ない方の額と差引額とを比較し、少ない方の額を補助対象事業費として、この額に2分の1を乗じて得た額を補助金の交付額とする。
(イ) 市町村が行う事業について補助する場合
 所定の基準額と対象経費の実支出額とを比較して少ない方の額と差引額とを比較して少ない方の額を選定し、その額に4分の3を乗じて得た額と都道府県が補助した額とを比較して少ない方の額を補助対象事業費として、この額に3分の2を乗じて得た額を補助金の交付額とする。
 この事業のうち、食の自立支援事業は、調理が困難な高齢者等に対して、定期的に居宅を訪問して栄養のバランスのとれた食事を提供するとともに、当該高齢者等の安否確認を行う事業である。そして、この事業においては、平成17年6月の介護保険法(平成9年法律第123号)の改正に伴い、同年10月から、食材料費だけでなく調理費の実費相当分についても利用者負担とされており、これらの経費については対象経費から除くこととされている。

 本院は、25都道府県の184市区町村において会計実地検査を行った。その結果、5府県の7事業主体において、居宅介護等事業等の対象経費の実支出額の集計を誤ったり、基幹型センターに配置されている社会福祉士等の職員が基幹型センター運営業務以外の業務に従事した人件費を対象経費の実支出額に含めていたり、食の自立支援事業において利用者負担である調理費の実費相当分を対象経費に含めていたりして、補助金の交付額の算定を誤ったため、補助金交付額計877,671,000円のうち計71,525,000円が過大に交付されていて、不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、事業主体において、交付要綱等の理解が十分でなかったこと、厚生労働省又は府県において、事業主体から提出された事業実績報告書の審査、確認が十分でなかったことなどによると認められる。
 これを補助事業者又は間接補助事業者別に示すと次のとおりである。

府県名 補助事業者
(間接補助事業者)
事業 年度 補助対象事業費 左に対する国庫補助金交付額 不当と認める補助対象事業費 不当と認める国庫補助金交付額 摘要
千円 千円 千円 千円
(325) 栃木県 栃木県
(栃木市)
介護予防・地域支え合い事業 17 31,247 20,831 2,189 1,459 補助対象外の調理費相当分を含めていたもの
(326) 富山県 富山県
(氷見市)
在宅介護支援センター運営事業 16、17 37,850 25,232 4,287 2,858 補助対象外の人件費を含めていたもの
(327) 長野県 飯田市 居宅介護等事業等 18 6,217 3,108 2,614 1,308 対象経費の実支出額の集計を誤ったもの
(328) 大阪府 大阪市 介護予防・地域支え合い事業 17 1,281,876 640,938 106,039 53,020 補助対象外の調理費相当分を含めていたもの
(329) 大阪府
(吹田市)
17 129,525 86,350 4,779 3,186
(330) 福岡県 福岡県
(久留米市)
17 125,611 83,740 12,933 8,622
(331)
(中間市)
17 26,209 17,472 1,609 1,072
(325)—(331)の計 1,638,535 877,671 134,451 71,525