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  • 平成20年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第9 厚生労働省|
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  • 補助事業の実施及び経理が不当と認められるもの

技能向上対策費補助金の経理において、補助対象経費の精算が過大となっているもの


(21) 技能向上対策費補助金の経理において、補助対象経費の精算が過大となっているもの

17件 不当と認める国庫補助金 105,392,883円

 技能向上対策費補助金(以下「補助金」という。)は、雇用保険法(昭和49年法律第116号)に基づき、雇用保険の被保険者等の職業能力の開発及び向上を促進するために、都道府県職業能力開発協会(以下「都道府県協会」という。)が行う職業訓練、職業能力検定等の業務に要する経費について補助する都道府県に対して、その経費の一部を国が補助するものである。
 補助金の補助対象経費は、役職員の人件費、一般運営費及び当該技能向上対策事業の実施に要する経費とされている。そして、補助金の交付額は、〔1〕 厚生労働省職業能力開発局長が定める算定基準に基づき算定された額と、〔2〕 都道府県が補助対象経費について補助した額のうち都道府県の負担した額と、〔3〕 都道府県協会が実施した本件補助事業に係る支出済額から本件補助事業に係る事業収入及びその他の収入(会費収入及び寄付金収入を除く。)を控除した額に2分の1を乗じて得た額とを比較して最も少ない額とされている。
 本院が、39都道府県(注1) 及び39都道府県協会(注2) において会計実地検査を行ったところ、17都道府県協会(注3) において、補助対象経費に、〔1〕 不正に支払った旅費を含めていたり(1都道府県協会)、〔2〕 適正な退職手当積立金の積立額を上回る額の積立金を含めていたり(17都道府県協会)、〔3〕 本件補助事業の補助対象経費とは認められない減価償却引当金等を含めていたり(13都道府県協会(注4) )、〔4〕 本件補助事業とは関係のない人件費や会議終了後の懇親会に係る飲食費等の経費を含めていたり(17都道府県協会)していたため、補助対象経費が過大に精算されているなどしていて、補助金105,392,883円が不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、事業主体において、補助金の適正な会計経理に対する認識が欠けていたこと、17府県(注5) において、本件補助事業の審査・確認及び17都道府県協会に対する指導が十分でなかったこと、厚生労働省において、本件補助事業の審査・確認及び17府県に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。
 前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例1>

 岡山県職業能力開発協会は、平成15年度から19年度までの間に、出張の事実がないのに出張したこととしていたり、宿泊する日数を水増しするなどしたりして不正に支払った旅費を補助対象経費に含めていたり、適正な退職手当積立金の積立額を上回る額の積立金を補助対象経費に含めていたりなどしていたため、補助対象経費が計60,503,583円過大に精算されていた。
 したがって、適正な補助対象経費に基づいて補助金を算定すると計132,531,905円となり、交付額計18,838,095円が過大となっていた。

<事例2>

 岐阜県職業能力開発協会は、平成15年度から19年度までの間に、本件補助事業の補助対象経費として認められない減価償却引当金等を補助対象経費に含めていたり、本件補助事業とは関係のない人件費や会議終了後の懇親会に係る飲食費を補助対象経費に含めていたりなどしていたため、補助対象経費が計70,678,654円過大に精算されていた。
 したがって、適正な補助対象経費に基づいて補助金を算定すると計130,611,691円となり、交付額計23,948,309円が過大となっていた。

 前記の事態について、補助事業者別、間接補助事業者別に示すと次のとおりである。

補助事業者 間接補助事業者
(事業主体)
年度 補助対象経費 左に対する国庫補助金 不当と認める補助対象経費 不当と認める国庫補助金 摘要
  千円 千円 千円 千円
(336) 山形県 山形県職業能力開発協会 16、17、20 327,146 79,616 11,887 2,253 精算過大
(337) 群馬県 群馬県職業能力開発協会 15、17〜19 579,039 94,111 36,294 6,279
(338) 富山県 富山県職業能力開発協会 15〜17 364,399 81,581 22,935 6,832
(339) 岐阜県 岐阜県職業能力開発協会 15〜19 951,830 154,560 70,678 23,948
(340) 三重県 三重県職業能力開発協会 15、16 236,908 43,159 16,188 1,988
(341) 滋賀県 滋賀県職業能力開発協会 16、18、19 402,354 90,716 25,427 2,397
(342) 大阪府 大阪府職業能力開発協会 18、19 562,799 97,644 29,229 12,683
(343) 兵庫県 兵庫県職業能力開発協会 15〜18 764,433 148,539 42,487 6,849
(344) 奈良県 奈良県職業能力開発協会 15、16 151,252 45,999 18,128 1,342
(345) 鳥取県 鳥取県職業能力開発協会 15、17 148,646 39,581 13,759 1,879
(346) 岡山県 岡山県職業能力開発協会 15〜19 640,058 151,370 60,503 18,838
(347) 山口県 山口県職業能力開発協会 18 111,549 28,369 2,694 1,065
(348) 徳島県 徳島県職業能力開発協会 15〜18 302,161 89,738 34,331 10,880
(349) 香川県 香川県職業能力開発協会 18、19 126,335 33,731 4,396 1,562
(350) 愛媛県 愛媛県職業能力開発協会 15〜19 432,714 99,975 16,842 3,857
(351) 高知県 高知県職業能力開発協会 15 59,868 21,710 3,435 1,002
(352) 大分県 大分県職業能力開発協会 18、19 196,902 51,152 8,784 1,732
(336)—(352)の計 6,358,401 1,351,553 418,007 105,392

 上記の事態については、厚生労働省は、従来本件補助事業の適正な実施について都道府県を指導しているところであるが、さらに、都道府県に対して本件補助事業に係る審査、確認及び都道府県協会に対する指導監督の一層の強化を要請するとともに、都道府県に対する指導や確認の強化を図る必要があると認められる。

(注1)
 39都道府県  東京都、北海道、京都、大阪両府、青森、秋田、山形、福島、茨城、群馬、埼玉、千葉、神奈川、富山、山梨、長野、岐阜、静岡、愛知、三重、滋賀、兵庫、奈良、和歌山、鳥取、岡山、山口、徳島、香川、愛媛、高知、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄各県
(注2)
 39都道府県協会  東京都職業能力開発協会、北海道職業能力開発協会、京都、大阪両府職業能力開発協会、青森、秋田、山形、福島、茨城、群馬、埼玉、千葉、神奈川、富山、山梨、長野、岐阜、静岡、愛知、三重、滋賀、兵庫、奈良、和歌山、鳥取、岡山、山口、徳島、香川、愛媛、高知、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄各県職業能力開発協会
(注3)
 17都道府県協会  大阪府職業能力開発協会、山形、群馬、富山、岐阜、三重、滋賀、兵庫、奈良、鳥取、岡山、山口、徳島、香川、愛媛、高知、大分各県職業能力開発協会
(注4)
 13都道府県協会  山形、群馬、富山、岐阜、滋賀、兵庫、奈良、鳥取、岡山、徳島、愛媛、高知、大分各県職業能力開発協会
(注5)
 17府県  大阪府、山形、群馬、富山、岐阜、三重、滋賀、兵庫、奈良、鳥取、岡山、山口、徳島、香川、愛媛、高知、大分各県