会計名及び科目 | 一般会計(組織)厚生労働本省 | (項)介護保険制度運営推進費 |
(項)介護納付金年金特別会計へ繰入 | ||
平成19年度以前は、 | ||
(項)老人医療・介護保険給付諸費 | ||
(項)国民健康保険助成費 | ||
(項)社会保険国庫負担金 | ||
(項)生活保護費 | ||
部局等 | 17都府県 | |
国の負担の根拠 | 介護保険法(平成9年法律第123号)、健康保険法(大正11年法律第70号)、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)、生活保護法(昭和25年法律第144号) | |
実施主体 | 市80、区2、町53、村4、一部事務組合1、広域連合1、計141実施主体 | |
事業者 | 指定通所介護事業者9、指定通所リハビリテーション事業者・介護老人保健施設1、介護老人保健施設1、指定介護療養型医療施設23、計34事業者 | |
不適切に支払われた介護給付費に係る介護サービスの種類 | 通所介護サービス、通所リハビリテーションサービス、介護老人保健施設サービス、介護療養施設サービス | |
不適切に支払われた介護給付費の件数 | 25,566件(平成14年度〜20年度) | |
不適切に支払われた介護給付費の額 | 380,360,993円(平成14年度〜20年度) | |
不当と認める国の負担額 | 118,045,480円(平成14年度〜20年度) |
介護保険は、市町村(特別区、一部事務組合及び広域連合を含む。以下同じ。)が保険者となって、市町村の区域内に住所を有する65歳以上の者及び40歳以上65歳未満の医療保険加入者を被保険者として、被保険者の要介護状態等に関して、必要な保険給付を行う保険である。
被保険者が、介護保険法(平成9年法律第123号)に基づく居宅サービス及び施設サービス(以下、これらを「介護サービス」という。)を受けようとする場合の手続については、次のとおりとなっている。
ア 要介護者又は要支援者(以下「要介護者等」という。)に該当すること及びその該当する要介護状態区分等について、市町村の認定を受ける。
イ 介護支援専門員等に依頼するなどして、介護サービス計画を作成する。
ウ 介護サービス計画に基づいて、都道府県知事の指定等を受けた居宅サービス事業者又は介護保険施設(以下、これらを「事業者」という。)において介護サービスを受ける。
事業者が介護サービスを提供して請求することができる報酬の額(以下「介護報酬」という。)は、「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準」(平成12年厚生省告示第19号)及び「指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準」(平成12年厚生省告示第21号)(以下、これらを「算定基準」という。)等に基づき、介護サービスの種類ごとに定められた単位数に単価(10円〜10.72円)を乗ずるなどして算定することとなっている。
市町村は、要介護者等が事業者から介護サービスの提供を受けたときは、当該事業者に対して介護報酬の100分の90に相当する額(以下「介護給付費」という。)を支払うこととなっている。
介護給付費の支払手続は、次のとおりとなっている(参考図1
参照)。
ア 介護サービスの提供を行った事業者は、介護給付費を記載した介護給付費請求書等(以下「請求書等」という。)を、市町村から介護給付費に係る審査及び支払に関する事務の委託を受けた国民健康保険団体連合会(以下「国保連合会」という。)に送付する。
イ 国保連合会は、事業者から送付された請求書等の審査点検を行い、介護給付費を市町村に請求する。
ウ 請求を受けた市町村は、金額等を確認の上、国保連合会を通じて事業者に介護給付費を支払う。
介護給付費は、100分の50を公費で、100分の50を被保険者の保険料でそれぞれ負担することとなっている(参考図2 参照)。
そして、公費負担については、介護保険法に基づき、国が100分の25、都道府県及び市町村がそれぞれ100分の12.5(平成18年度から施設サービス等については国が100分の20、都道府県が100分の17.5及び市町村が100分の12.5)を負担している。
また、国は、健康保険法(大正11年法律第70号)及び国民健康保険法(昭和33年法律第192号)に基づき、医療保険者(注1)
が社会保険診療報酬支払基金に納付する介護給付費納付金に要する費用の額の一部を負担している。
本院は、合規性等の観点から、介護報酬の算定が適切に行われているかに着眼して、31都道府県において、146事業者に対する介護給付費の支払について、介護給付費の請求に係る関係書類等により会計実地検査を行った。そして、適切でないと思われる事態があった場合には、更に都府県に事態の詳細な報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査を行った。
検査の結果、17都府県に所在する34事業者に対して23都道府県の141市区町村等が行った14年度から20年度までの間における介護給付費の支払について、25,566件、380,360,993円が適切でなく、これに対する国の負担額118,045,480円が不当と認められる。
これらの事態について、介護サービスの種類ごとに示すと次のとおりである。
ア 通所介護サービス
指定通所介護事業所において、要介護者等に通所介護サービス(注2)
を提供したときは、算定基準等によると、前年度の1月当たりの平均利用延べ人員数による事業所規模(300人以内が小規模型通所介護費、300人超が通常規模型通所介護費)に従い、1日のサービスの所要時間の区分(3時間以上4時間未満、4時間以上6時間未満及び6時間以上8時間未満)に応じて定められた単位数等により、介護報酬を算定することとなっている。
しかし、4指定通所介護事業者は、前年度の1月当たりの平均利用延べ人員数が300人を超えていたのに、通常規模型通所介護費の区分によらず小規模型通所介護費の区分により介護報酬を算定するなどしており、また、5指定通所介護事業者は、当該事業所における要介護者等へのサービス提供時間が6時間を下回っていたのに、6時間以上8時間未満の所要時間の区分で介護報酬を算定していた。このため、介護給付費4,519件、27,975,311円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額9,293,458円が過大となっていた。
イ 通所リハビリテーションサービス
指定通所リハビリテーション事業所において、要介護者等に提供する通所リハビリテーションサービス(注3)
については、算定基準等によると、常勤の医師が1人以上配置されていない場合には、翌月の介護報酬の算定において所定の1日当たりの単位数に100分の70を乗じて得た単位数により算定することとなっている。
しかし、1指定通所リハビリテーション事業者は、常勤の医師が配置されていないのに、上記の100分の70を乗ずることなく単位数を算定していた。このため、介護給付費5,289件、45,312,229円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額15,609,899円が過大となっていた。
ウ 介護老人保健施設サービス
介護老人保健施設において、要介護者等に提供する介護老人保健施設サービス(注4)
については、算定基準等によると、常勤の医師が1人以上配置されていない場合には、翌々月の介護報酬の算定において所定の1日当たりの単位数に100分の70を乗じて得た単位数により算定することとなっている。また、常勤の管理栄養士を1人以上配置し、医師、管理栄養士等が共同して、入所者ごとの食形態等に配慮した栄養ケア計画を作成し、入所者ごとの栄養管理を行っているなどの算定基準に適合しているものとして届出を行った場合には、栄養マネジメント加算として1日につき12単位を加算して介護老人保健施設サービスの介護報酬を算定することとなっている。
しかし、1介護老人保健施設(前記イの1指定通所リハビリテーション事業者と同一)は、常勤の医師が配置されていないのに、上記の100分の70を乗ずることなく単位数を算定しており、また、1介護老人保健施設は、栄養ケア計画を作成していないなど、栄養マネジメント加算の算定基準に適合していないのに、1日につき12単位を加算していた。このため、介護給付費2,560件、68,516,318円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額20,786,425円が過大となっていた。
エ 介護療養施設サービス
指定介護療養型医療施設(療養病床を有する病院又は診療所)において、要介護者等に提供する介護療養施設サービス(注5) については、算定基準等によると、医師等の員数が医療法(昭和23年法律第205号)等に定められている員数に満たない場合には、その翌月の介護報酬の算定において所定の1日当たりの単位数から85単位(18年3月までは75単位)を減算することとなっている。
しかし、23指定介護療養型医療施設は、医師の員数が医療法等に定められている員数を満たしていないのに、上記の減算をしていなかった。このため、介護給付費13,198件、238,557,135円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額72,355,698円が過大となっていた。
(注2) | 通所介護サービス 指定通所介護事業所において、在宅の要介護者等に通ってきてもらい行う、入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活を送る上で必要となるサービス及び機能訓練
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(注3) | 通所リハビリテーションサービス 指定通所リハビリテーション事業所において、在宅の要介護者等に通ってきてもらい、計画的な医学的管理の下に行う理学療法、作業療法等
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(注4) | 介護老人保健施設サービス 介護老人保健施設に入所する要介護者等に対する看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話
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(注5) | 介護療養施設サービス 指定介護療養型医療施設の療養病床等に入院する要介護者等に対する療養上の管理、看護、医学的管理の下における介護その他の世話及び機能訓練その他必要な医療
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このような事態が生じていたのは、事業者において算定基準等に対する認識が十分でなく介護報酬の算定が適切でなかったのに市区町村等において審査点検が十分でなかったこと、都府県において事業者に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。
これを都府県別に示すと次のとおりである。
都府県名 | 実施主体 (事業者数) |
年度 | 不適切に支払われた介護給付費の件数 | 不適切に支払われた介護給付費 | 不当と認める国の負担額 | 摘要 |
件 | 千円 | 千円 | ||||
青森県 | 弘前市等10市町村(1) | 17〜20 | 6,247 | 108,765 | 34,905 | イ、ウ |
宮城県 | 仙台市等10市町(2) | 15〜20 | 1,545 | 26,263 | 7,991 | エ |
秋田県 | 能代市等7市町(1) | 18〜20 | 1,602 | 5,063 | 1,491 | ウ |
福島県 | いわき市等2市(1) | 19 | 149 | 2,895 | 875 | エ |
東京都 | 大田区等2市区(5) | 17〜19 | 2,408 | 13,801 | 4,344 | ア |
新潟県 | 新潟市等15市町村等(3) | 17〜19 | 1,290 | 26,052 | 7,784 | エ |
富山県 | 富山市等8市区村等(3) | 17〜19 | 850 | 14,440 | 4,127 | エ |
長野県 | 長野市(1) | 20 | 291 | 2,369 | 772 | ア |
岐阜県 | 岐阜市等12市町(2) | 17〜20 | 1,394 | 23,752 | 6,308 | エ |
静岡県 | 静岡市等22市町(2) | 15〜18 | 2,915 | 47,402 | 15,040 | エ |
滋賀県 | 大津市等11市町(1) | 18〜20 | 1,249 | 26,632 | 6,681 | エ |
大阪府 | 高槻市等4市町(1) | 18〜20 | 333 | 3,758 | 1,166 | ア |
奈良県 | 山辺郡山添村(1) | 20 | 229 | 1,428 | 495 | ア |
熊本県 | 天草市等2市(1) | 14〜20 | 684 | 13,894 | 4,771 | エ |
大分県 | 竹田市等2市(1) | 18〜20 | 420 | 8,138 | 2,567 | エ |
宮崎県 | 東臼杵郡美郷町(1) | 18〜20 | 1,258 | 6,616 | 2,513 | ア |
鹿児島県 | 鹿児島市等32市町(7) | 15〜20 | 2,702 | 49,084 | 16,207 | エ |
計 | 141市区町村等(34) | 14〜20 | 25,566 | 380,360 | 118,045 |
注(1) | 計欄の実施主体数は、都府県の間で実施主体が重複することがあるため、各都府県の実施主体数を合計したものとは符合しない。 |
注(2) | 摘要欄のア、イ、ウ、エは、本文の不適切な支払の事態の介護サービスの種類 に対応している。 |
上記の事態については、厚生労働省は、従来発生防止に取り組んでいるところであるが、さらに、都道府県等に対して事業者に対する指導を徹底させるなど、介護保険の適正な運営が図られるよう技術的助言を行う必要があると認められる。