ページトップ
  • 平成20年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第10 農林水産省|
  • 不当事項|
  • 工事

国営かんがい排水事業の実施に当たり、据付工事の施工が適切でなかったため、ダム等の管理を行うための制御盤等の地震時における機能の維持が確保されていない状態となっているもの


(358) 国営かんがい排水事業の実施に当たり、据付工事の施工が適切でなかったため、ダム等の管理を行うための制御盤等の地震時における機能の維持が確保されていない状態となっているもの

会計名及び科目 食料安定供給特別会計(国営土地改良事業勘定)
      (項)土地改良事業費
  平成19年度以前は、
  国営土地改良事業特別会計 (項)土地改良事業費
部局等
(1)、(2) 九州農政局
(3) 九州農政局都城盆地農業水利事業所
工事名
(1) 都城盆地農業水利事業ダム水管理制御施設製作据付建設工事
(2) 都城盆地農業水利事業都城盆地地区水管理制御施設製作据付建設工事
(3) 平成19年度都城盆地農業水利事業前田南ファームポンド他(水管理整備)工事
工事の概要 平成18年度から20年度までの間に、木之川内ダムの新設に伴い、同ダム等の管理を行うための制御盤等を設置するなどのもの
工事費
(1) 217,875,000円 (当初契約額 194,250,000円)
(2) 232,050,000円 (当初契約額 207,795,000円)
(3) 79,275,000円 (当初契約額 70,350,000円)
529,200,000円 (当初契約額 472,395,000円)
請負人 日本無線株式会社
契約
(1) 平成19年1月 一般競争契約
(2) 平成19年9月 一般競争契約
(3) 平成20年9月 一般競争契約
支払
(1) 平成19年2月、20年4月 2回
(2) 平成19年11月、20年4月、21年2月、4月 4回
(3) 平成20年10月、21年4月 2回
不適切な施工となっている工事費
(1) 55,136,608円 (平成18、19両年度)
(2) 76,627,155円 (平成19、20両年度)
(3) 26,618,190円 (平成20年度)
158,381,953円  

1 工事の概要

 九州農政局及び同局都城盆地農業水利事業所(以下、これらを合わせて「九州農政局等」という。)は、国営かんがい排水事業の一環として、宮崎県都城市山田町山田地内等において、平成18年度から20年度までの間に、「都城盆地農業水利事業ダム水管理制御施設製作据付建設工事」等3件の工事を工事費計529,200,000円で実施している。
 これらの工事は、木之川内ダムの新設に伴い、同ダム等の管理を行うのに必要な24台の制御盤、分電盤等の機器(以下、これらを合わせて「制御盤等」という。)を工場で製作して、同ダムの管理所等に据え付けるなどのものである。そして、九州農政局等は、請負人が本件制御盤等を据え付けるに当たっては、「配電盤・制御盤の耐震設計指針(2003年6月)」(日本電機工業会技術資料JEM—TR144号。以下「JEM指針」という。)に基づいて耐震設計を行い施工させることとしている。
 そして、本件各工事の請負人である日本無線株式会社は、JEM指針等に基づき、制御盤等を床又は基礎に固定する際に使用するアンカーボルトについては「あと施工アンカーボルト(おねじ形)」(径12mmのもの計86本。以下「おねじ形ボルト」という。(参考図 参照)を使用することとすれば、地震時に、おねじ形ボルトに作用する引抜力が許容引抜力を下回ることから安全であるとして耐震設計を行い、これに基づき製作図を作成して、設計計算書等とともに九州農政局等に承認申請している。
 九州農政局等は、請負人が提出した上記の製作図、設計計算書等を審査の上承認して、これらにより制御盤等を製作し、ダムの管理所等に据え付けるよう指示を行うなどし、本件各工事を実施させていた。

2 検査の結果

 本院は、九州農政局等において、合規性等の観点から、本件各工事の施工が適切に行われているかなどに着眼して会計実地検査を行った。そして、これらの工事について、製作図、設計計算書等の書類及び現地の状況を検査したところ、制御盤等の据付工事の施工が次のとおり適切でなかった。
 すなわち、前記のとおり、九州農政局等が承認した製作図等においては、制御盤等をおねじ形ボルトにより固定することなどとしていた。しかし、実際には、請負人は、誤って、24台すべての制御盤等を、おねじ形ボルトではなく、JEM指針においては制御盤等の据付けに使用するアンカーボルトとして想定しておらず、許容引抜力の記載がない「あと施工アンカーボルト(めねじ形)」(径12mmのもの計86本。以下「めねじ形ボルト」という。)により床又は基礎に固定していた(参考図参照)。
 このめねじ形ボルトの許容引抜力は、JEM指針と同様に農林水産省において電気設備の耐震設計施工に関する指針とされている「自家用発電設備耐震設計のガイドライン(2005年8月)」(日本内燃力発電設備協会)によれば0.75kN/本となっていて、おねじ形ボルトの許容引抜力6.57kN/本を大幅に下回っているものである。
 以上のように、本件制御盤等の据付けについて、JEM指針において想定されていないめねじ形ボルトにより施工されている事態は、地震時に、制御盤等を固定しているアンカーボルトが床又は基礎から引き抜かれて、制御盤等が移動・転倒して破損するおそれがあり、本件制御盤等の機能の維持が確保されていない状態となっていて、据付工事の施工が適切でなく、これらに係る工事費相当額158,381,953円が不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、請負人が制御盤等を据え付ける際に、製作図等と異なるアンカーボルトにより施工していたことにもよるが、九州農政局等がこれに対して監督及び検査を十分に行っていなかったことなどによると認められる。

(参考図)

おねじ型ボルトの概念図、めねじ型ボルトの概念図