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  • 平成20年度|
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国営中海土地改良事業の実施に当たり、用水路の目地補修工の施工が設計と著しく相違していたため、工事の目的を達していないもの


(359) 国営中海土地改良事業の実施に当たり、用水路の目地補修工の施工が設計と著しく相違していたため、工事の目的を達していないもの

会計名及び科目 国営土地改良事業特別会計 (平成20年度以降は一般会計)
      (項)土地改良事業費
部局等 中国四国農政局中海干拓建設事業所(契約庁)
  中国四国農政局(支出庁)
工事名 中海干拓事業古地井手川他用水路整備工事
工事の概要 用水路のコンクリートの目地からの漏水を防止するなどのために、平成19年度に、水路嵩(かさ)上工、目地補修工等を施工するもの
工事費
13,860,000円
(当初契約額15,750,000円)

請負人 株式会社ティー・エム・エス
契約 平成19年12月 公募型指名競争契約
しゅん功検査 平成20年3月
支払 平成20年4月
不適切な施工となっている工事費
1,779,901円
(平成19年度)

1 工事の概要

 この工事は、中国四国農政局中海干拓建設事業所(以下「中海事業所」という。)が、国営中海土地改良事業の一環として、鳥取県米子市車尾(くずも)南地内等において、農業用水の確保を図ることを目的として設置されている用水路(コンクリート三面張り構造)のコンクリートの目地(28本、延長計123.0m)からの漏水を防止するなどのために、平成19年度に、水路嵩(かさ)上工、目地補修工等を工事費13,860,000円で実施したものである(参考図 参照)。
 このうち目地補修工は、目地に新たにシーリング材を充てんして、コンクリートとシーリング材を十分に接着させることにより水密性を確保し、目地からの漏水を防止するものである。そして、中海事業所は、コンクリートとシーリング材のはく離を防止するなどのために、次のように設計し、これにより施工することとしていた(参考図 参照)。
ア 各目地を中心として、その両側2cmの位置にコンクリートカッターで深さ3cmの切込みを入れ、コンクリートをコンクリートブレーカーで切削して、幅4cm、深さ3cmの溝状の切削部を作り、その内部を清掃する。
イ 切削部にシリコーン系のシーリング材を充てんする前に、切削部に地下水等が浸入するのを防止するため、止水セメントを厚さが1cmになるように塗布する。
ウ 止水セメントの表面にシーリング材を充てんする。その際、シーリング材をコンクリートと十分に接着させ水密性を保持するため、接着厚さを2cm確保することとする。

2 検査の結果

 本院は、中海事業所において、合規性等の観点から、施工が適切に行われているかなどに着眼して会計実地検査を行った。そして、本件工事について、設計図書、工事写真等の書類及び現地の状況を検査したところ、目地補修工の施工が次のとおり適切でなかった。
 すなわち、止水セメントの塗布状況が工事写真等では確認できなかったことなどから、現地において8本の目地について計11か所を選定して、シーリング材をはがすなどして施工状況を確認したところ、次のような状況になっていた(参考図 参照)。
ア 各目地を中心として、その両側2cmの位置に入れることとされている切込みは、11か所すべてにおいて、各目地の片側にだけ4cmの位置に入れていた。
イ 切込み深さは3cmとされているのに、11か所のうち4か所においては、コンクリートを切削する際にコンクリートブレーカーにより切込み面を損傷しており、切込み深さが確認できない状況であった。また、残りの7か所においては、深さが0.5cmから1.0cm(平均0.75cm)となっており、このため、充てんされたシーリング材とコンクリートとの切込み面における接着厚さは、設計の2cmを大幅に下回っていた。
ウ 止水セメントは11か所のすべての箇所において、塗布されていなかった。
 また、その後、中海事業所が、上記の8本の目地以外の20本の目地について施工状況を確認したところ、これらについても同様の状況となっていた。
 したがって、本件目地補修工は、施工が設計と著しく相違していたため、シーリング材とコンクリートとの接着厚さが不足するなどしていて、シーリング材がはく離することなどにより、水密性が確保されず漏水を生ずるおそれがある状態となっていて、工事の目的を達しておらず、これに係る工事費相当額1,779,901円が不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、請負人が目地補修工について粗雑な施工をしていたのに、これに対する中海事業所の監督及び検査が十分でなかったことなどによると認められる。

(参考図)

用水路(コンクリート三面張り構造)の概念図、目地の概念図、実際の施工