部局等 | 補助事業者等 | 間接補助事業者等 | 補助事業等 | 年度 | 事業費 | 左に対する国庫補助金等交付額 | 不当と認める事業費 | 不当と認める国庫補助金等相当額 | |
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | ||||||
(400) | 東北農政局 | 宮城県 (事業主体) |
— | 経営体育成基盤整備 | 18、19 | 66,895 | 33,447 | 17,969 | 8,984 |
(401) | 東海農政局 | 岐阜県 (事業主体) |
— | 経営体育成基盤整備 | 19 | 140,952 | 70,476 | 19,635 | 9,817 |
(400)(401)の計 | 207,847 | 103,923 | 37,605 | 18,802 |
これらの補助事業は、2県が、ほ場区域内の河川等に橋りょうを新設するために、下部工として橋けた台の築造、上部工としてプレストレストコンクリート桁(けた)(以下「PC桁」という。)の製作、架設等を実施したものである。
これらの橋りょうの設計は、重量の大きな車両が通行することから、一般道路と同様に「道路橋示方書・同解説」(社団法人日本道路協会編。以下「示方書」という。)等に基づいて行われている。そして、示方書によると、設計で想定されない地震動が作用するなどした場合でも上部構造の落下を防止することができるように、落橋防止システムを設けることとされている。この落橋防止システムの構成は、落橋防止構造、桁かかり長(注1)
、変位制限構造(注2)
等の中から、橋りょうの形式、地盤条件等に応じて適切に選定することとされている。
このうち落橋防止構造は、上部構造の両端が剛性の高い橋台に支持されていて上部構造の長さが25m以下の橋りょうについては、橋軸方向の変位が生じにくい橋りょうに該当して、その設置を省略することができることとされている。ただし、地震時に橋りょうに影響を与える液状化が生ずる砂質土層等の不安定となる地盤がある場合には、予期しない大きな変位が生ずることがあるため、落橋防止構造の設置を省略してはならないとされている。
また、落橋防止構造と変位制限構造は、地震時において要求される役割、両構造が作用し始める時期及び変位量が異なることから、これらを兼用すると、一方の機能の喪失が他方の機能の喪失に結びつくため、兼用してはならないとされている。
しかし、2県は、地震時に液状化が生ずる砂質土層の地盤がある場合であるのに落橋防止構造の設置を省略したり、落橋防止構造と変位制限構造を兼用したりしていて、橋りょう上部工等(事業費計37,605,007円)の所要の安全度が確保されていない状態になっており、これらに係る国庫補助金相当額計18,802,503円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、2県において、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのにこれに対する検査が十分でなかったこと、示方書についての理解が十分でなかったことなどによると認められる。
(参考図)
(参考図)
これを事業主体別に示すと次のとおりである。
宮城県は、栗原市金成金生(かんなりきんせい)地内において、ほ場区域内の一級河川夏川に橋りょう(橋長18m、幅員7.2m)を新設するために、橋台2基の築造、PC桁の製作、架設等を実施していた。
同県は、本件橋りょうのPC桁の両端が剛性の高い橋台に支持されていること、PC桁の長さが17.9mであることから、橋軸方向の変位が生じにくい橋りょうに該当し、落橋防止構造の設置を省略しても耐震設計上安全であるとして、これにより施工していた。
しかし、本件橋りょうの設計の基礎となっている設計計算書をみると、橋りょうを設置する地盤には、地震時に橋りょうに影響を与える液状化が生ずると判定された砂質土層があった。このため、本件橋りょうは、地震時に不安定となる地盤がある場合に該当して、落橋防止構造を設置する必要があったのに、同県は、誤って、この判定結果を用いることなく、落橋防止構造の設置を省略していて、本件橋りょう上部工等(工事費相当額17,969,397円、これに係る国庫補助金相当額8,984,698円)は、所要の安全度が確保されていない状態になっていた。
また、岐阜県は、海津市南濃町志津地内において、ほ場区域内の排水路に橋りょう(橋長19.2m、幅員8.2m)を新設するために、橋台2基の築造、PC桁の製作、架設等を実施していた。
同県は、本件橋りょうを設置する地盤には地震時に液状化が生ずると判定された砂質土層があり、地震時に不安定となる地盤がある場合に該当することから、落橋防止構造の設置が必要であるとして、落橋防止構造についてはアンカーバーを設置することとしていた。そして、変位制限構造については、落橋防止構造の設計地震力が変位制限構造のそれより大きく、変位制限構造の機能を完全に補完することが可能であるなどとして、その機能を落橋防止構造により兼用させる設計として、これにより施工していた。
しかし、示方書によると、落橋防止構造と変位制限構造は兼用してはならないとされており、設置したアンカーバーが、地震時の当初に変位制限構造として作用する際に、予期しない損傷が生じた場合には、その後落橋防止構造として機能しないこととなり、本件橋りょう上部工等(工事費相当額19,635,610円、これに係る国庫補助金相当額9,817,805円)は、所要の安全度が確保されていない状態になっていた。