異常補てん交付金交付事業は、社団法人配合飼料供給安定機構(以下「安定機構」という。)が、配合飼料価格安定対策事業実施要綱(昭和50年50畜B第302号農林事務次官依命通知。以下「要綱」という。)等に基づき、輸入原料価格が著しく高騰して、配合飼料が大幅に値上がりした場合において、その畜産経営者に及ぼす影響を緩和するため、畜産経営者に対する価格差補てんを行う社団法人全日本配合飼料価格・畜産安定基金(以下「商系基金」という。)、社団法人全国配合飼料供給安定基金(以下「全農基金」という。)及び社団法人全国畜産配合飼料価格安定基金(以下「畜産基金」という。)に対し異常補てん交付金を交付するものであり、農林水産省は、当該異常補てん交付金の財源の一部として安定機構に対して国庫補助金を交付している。
上記の各基金は、要綱等により、安定機構から異常補てん交付金の交付を受けたときは、各基金に加入している畜産経営者に対して、配合飼料の購入実績に応ずるなどして、農業協同組合等を通じて速やかに異常補てん金を交付するものとされている。
そして、異常補てん金の交付対象となる畜産経営者は、牛、豚、鶏等を一定規模以上常時飼養し、各基金の会員である飼料会社等が供給する配合飼料を購入する計画を有するなどする者とされている。
本院が、この事業について安定機構、商系基金、全農基金及び畜産基金において会計実地検査を行うとともに、78農協等において異常補てん金の交付状況等を調査したところ、次のような事態が見受けられた。
部局等 | 補助事業者等 | 間接補助事業者等 | 補助事業等 | 年度 | 事業費 | 左に対する国庫補助金等交付額 | 不当と認める事業費 | 不当と認める国庫補助金等相当額 | |
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | ||||||
(412) | 農林水産本省 | 社団法人配合飼料供給安定機構 | 社団法人全日本配合飼料価格・畜産安定基金等3基金 (事業主体) |
異常補てん交付金交付 | 18、19 | 33,870 | 16,935 | 9,398 | 4,699 |
愛媛東予養鶏農業協同組合(以下「農協」という。)は、自らが異常補てん金の交付対象となる畜産経営者であるとして、加入している商系基金から計7,024,702円の異常補てん金の交付を受けていた。また、農協は、農協の組合員で全農基金又は畜産基金に加入している畜産経営者(以下「加入畜産経営者」という。)に対する異常補てん金として、両基金から計26,846,096円の交付を受けていた。
しかし、農協は、家畜を飼養していないことから、異常補てん金の交付対象となる畜産経営者に該当せず、異常補てん金の交付対象とはならないものであった。また、農協は、加入畜産経営者による配合飼料の購入実績を水増しするなどして、全農基金及び畜産基金から異常補てん金の交付を計2,373,602円過大に受けていた。
したがって、農協は、商系基金から計7,024,702円、また、全農基金及び畜産基金から計2,373,602円、合計9,398,304円の異常補てん金の交付を不適正に受けていたものであり、この結果、当該異常補てん金と同額の異常補てん交付金が安定機構から各基金に過大に交付されていたことになり、これに係る国庫補助金相当額4,699,152円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、農協において、本事業の適正な実施に対する認識が十分でなかったこと、前記の各基金において、本事業に対する審査及び確認が十分でなかったこと、安定機構において、本事業に対する審査及び確認並びに前記の各基金及び農協に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。